Re:ゼロから始まる闇の道化生活   作:アーロニーロ

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説明

 

 

 「……い、……きろっ!」

 

 声がする。

 

「おい……お…ろっ!」

 

 誰かが呼んでいる声がする。聞こえづらいが少しずつその声が明確に聞こえてくる。その呼びかけが何度か続いた後、

 

「おい!しっかりしろ!起きるんだ!」

 

 その呼びかけが明確に聞き取れた。ふと、目の動きだけで周りを見渡す。すると、周りには騎士が何人かいるのが見えた。お、これはもしかして。

 

「目が覚めたか!?」

 

「こ……こ…は……?」

 

「ここか?ここはルグニカ王国の治療院だ。あんな大怪我をした後だ。まだ、無理に喋らなくていい」

 

「い…え、もう、大丈夫……です」

 

 隣に立っていた、騎士風な男にそう優しく諭された。よし、潜入成功!今からやりたくもない騎士生活の始まりだぁ。はぁ、やだやだ。内心これからこの王国で騎士となり生活しなければならないことに本気で嫌気がさしながらも覚悟を決めた。

 

「わかった。じゃあ、いくつか質問させてくれ。なんだって、あんな所に居たんだ?」

 

 その質問をされた瞬間、俺は怯えたように体を震わせる演技をした。そして、それを見かねた若い男の騎士は少し同情しながら言った。

 

「喋りたくないなら無理に喋らなくていい。ゆっくり、自分の速度で話しなさい」

 

「大……丈夫、で、す。俺は、餌だった」

 

「餌?」

 

「は…い、白鯨を…討伐、する、王国騎士、団の気を、晒すための、餌」

 

「なに?」

 

 俺の言葉に若い男の騎士は目と言葉が少しだけ鋭くなった。それを見た俺はビクッと怯えたフリをした。それに気づいた若い男の騎士は少し反省したかのように目を瞑ると直ぐ言葉に優しさを込めながら話した。

 

「ああ、すまない。君に怒ったんじゃないんだ。因みにだが、それは誰がやったのか覚えているかい?」

 

「……魔女教の…大罪司教…って呼ばれてた…人が……俺の…ことを…殴りながら…笑い、ながら…言ってた」

 

 俺の言葉に若い男の騎士は大きく目を見開いた。自分だけでは対処しきれない問題だと悟ったのか若い男の騎士は「少しだけ待っててくれ」と言うと何処かに行った。よしよし、俺の演技も中々上手くいってるな。無感動なこの話し方も中々いいみたいだしこの調子で行こう。十分ほどしてから若い男の騎士が出て行った戸の奥から緑色の短髪の精悍というよりは厳つい顔立ちの巨漢の男が現れた。男は厳しい顔をしながら俺に話しかけてきた。

 

「はじめまして。私は近衛騎士副団長のマーコス・ギルダークだ。よろしく頼む」

 

 へ?マーコス?確か、未来の近衛騎士の団長さんだったか?今、副団長なのか?随分と大物が出てきたなぁ。思わぬ大物の登場にビックリしていると。

 

「すまないが、君の名前を教えてくれないか?」

 

 予想していたがあまり聞かれたくないことを聞かれた。つーか、名前かぁ。あん時は魔女教担当にボコされて考える余裕が無かったからなぁ今この場で言うためにも考えるかぁ。

 

「俺は……」

 

 少し吃ったふりをしながら自身の名前を考えてる。すると、

 

「フィエゴ」

 

「ん?」

 

「フィエゴ・ファイオス」

 

 口が勝手に考えてもいなかった名前がポロリと出た。は?なんで今俺は勝手に喋った?ていうか『ファイオス』ってこの世界に来てすぐに俺をウルガルムの餌にしようとしていた男が言ってた名前じゃないか?まさか、この体が名前だけ覚えていて反射的に本名を語ったのか?俺の中で色々と考察を立てていると。

 

「『ファイオス』、だと?」

 

 目を見開き驚いた顔をしたマーコスがそこにはいた。え?なんかやらかした?俺は自身が失態を侵したかヒヤヒヤしていると。

 

「おい、お前の祖父の名前はグラハム・ファイオスか?」

 

 いきなり祖父の名前を聞いてきた。ん?誰?グラハムって?そんな登場人物リゼロにいたか?本気で何を言ってるのかわからない俺はとあることを明かした。

 

「ごめん……なさい、俺…自分の名前以外覚えてないんです」

 

 それは自身が記憶喪失だということだ。これに関しては事実だけど納得してもらえるだろうか?この後の展開に不安を覚えていると。

 

「っ!なら、何か渡されなかったか?こう、護符のようなものとかなんでもいい!」

 

 護符?それってもしかして。

 

「これ、ですか?」

 

 そう言いながら俺は普段から身につけているアミュレットをマーコスに見せた。すると、確信していたのか驚かず少し目を伏せて考え始めた。ちょっとこれは予想外だ。反応次第じゃあ、マーコスから今日話した記憶を分離しなきゃいけなくなる。一応、弁明のためになんか言っとくか。

 

「言われたんです。顔も覚えてない誰かに。『それを肌身離さず持ち続けろ。決して忘れぬように』と」

 

 まあ、もっともこれ言ったのペテルギウスなんだけどね。俺がそう言うとマーコスは目を開き説明した。

 

「今から4年前にファイオス家の人間が皆殺しになった事件が起きた。私自身も現場に赴いたのだが凄惨すぎる光景だったから今でもよく覚えている。現場からはファイオス家に代々伝わる護符とファイオス家の三男が居なくなったいた。当時は三男坊も死んでいるものと思われていたがまさか生きていたとは。今まで何処に?」

 

 あー、なるほどね。つまり、この体の持ち主は憑依前からこのルグニカ王国に関わっていた一族だったってことね。だったら、尚のこと好都合だ、没落したとはいえ元々ルグニカに関係していた一族なら色々と融通が効くかもしれない。まあ、最も予想でしかないし詳しく聞いてみるか。

 

「えっと、俺はヴァラキア帝国の闘技場で四年間戦っていました」

 

「なに?」

 

 疑いの声を上げるマーコスに上着を脱ぎここ4年でついた傷や怪我を見せた。死んだ時に権能を発動させ死や致命的な怪我を肩代わりさせることが出来たが特に致命的でもなく残機がもったいないと思っていた傷は魔女教担当の魔力操作の練習として治癒していた為傷が残っていた。それが積もりに積もって全身にびっしりと怪我だらけになった。今になってこれらの傷がこんな所で役に立つとは、と内心苦笑いしていると、マーコスが痛ましいものを見る目でこちらを見ていた。

 

「すみません。お見苦しいものを見せました」

 

「いや、疑ったのはこちらの方だ。君は疑いを晴らすためにそうとしたに過ぎない。こちらこそ疑って申し訳ない」

 

 そう言うとマーコスは頭を下げた。やだ、この人マジでいい人。顔に似合わないマーコスの優しさに感動していると。

 

「それにしても、よくヴァラキアから脱出できたな」

 

「脱出できる手段を見つけてそれで脱出したんですけど、ヴァラキアから脱出してすぐに魔女教に捕まって……」

 

「なるほど、なんというか災難だったな」

 

 マーコスは俺の作り話に本気で同情したようにこっちを見た。つーか今更だけど俺の権能本当に便利だなぁ。そもそも、なんでこんなに俺の話を信用しているかというと。俺は俺の権能を使うことで自分の言葉から虚言や違和感を分離させている。そうすることでどのようなあからさまで違和感のある嘘をついたとしても例え『風見の加護』を保有していたとしても見抜くことが出来なくなるのだ。

 

「さて、お前には今道が二つほど選択できる」

 

「と、言いますと?」 

 

「まず一つ目は、独り立ちができるまで俺たちの支援を受けながら孤児院で過ごすこと」

 

 はい、論外。それじゃあ、福音の命令をこなせない。

 

「次に、この近衛騎士団で見習の騎士として働くことだ。これは本来用意されない道なのだが、没落したとはいえファイオス家の名前がデカイからこそ出来た道だ。さて、どちらを選ぶ?」

 

 当然こっちなんだけど。ファイオス家ってどんだけネームバリューがあったの?没落してなお騎士になれるって相当だよ?

 

「騎士になります」

 

「生半可な覚悟では到底なれん。足手まといだと判断したら当然切り捨てて、孤児院へと送る。それでもか?」

 

「はい」

 

 俺の福音書の命令だしね。本当は嫌だけど、逆らおうもんなら魔女教連中に殺されかねない。俺は内心嫌がりながらも即座に頷いた。

 

「よし、わかった。ただし、もう少しだけ待っててくれお前を受け入れてくれる奴らを見つけたい」

 

 へ?どゆこと?マーコスの言葉に俺は疑問を覚えた。

 

「どうゆうことですか?」

 

「ファイオス家の名前はデカイが没落している以上お前には後ろ盾が必要になるんだ。本来であれば俺が引き取っておくべきなんだが、すまないがそれどころじゃなくてな。取り敢えず必要なことだから納得してくれ」

 

 ああ、なるほどね。確かに原作でもフェリスがクルシュのカルステン家から支援してもらうことで騎士になれたしね。流石に俺だけ例外ってことにはなんねーか。ふと沸いた面倒くさいことに顔をしかめそうになると。

 

「なぁら、わたしがその役目を引き受けようじゃあないか」

 

 戸の方から所々を伸ばした間の抜けた喋り方をした声が聞こえた。え?ちょっと待てこの喋り方ってまさか。

 

「戸も叩かず入るとは礼儀がなって無いぞ」

 

「こぉれは、これは、失礼したぁよ。次からは気をつけるよぉじゃないか」

 

「そう言ったのは何度目だ?それに引き取る、だと?今度は一体何を企んでいる?ロズワール」

 

 俺がマーコスの睨む方へ顔を向ける。そこには髪は長めで藍色。左目が黄色、右目が青のオッドアイでまるで魔女教担当のような道化師の格好をした女がそこにはいた。知っている、俺はこの女をよく知っている。何故なら画面越しでいつも見ていたからだ。女は目を見開いている俺を見てにこりと笑うと自己紹介をした。

 

「はぁじめまして、私の名前はロズワール・J・メイザース。そぉろそろ、天寿まっとうしそぉうな宮廷筆頭魔術師だぁよ」

 

 

 突然だがロズワールという男について説明しようピエロのようなメイクを施した貴族で宮廷筆頭魔術師の称号を得ており、彼一人で軍隊に匹敵するほどの戦闘能力を持つ。 格闘術の腕前もかなり高い。

 

 所々を伸ばした間の抜けた喋り方をし、腹の内を読めない捉えどころのない性格。

 

 髪は長めで藍色。左目が黄色、右目が青のオッドアイ、高い地位を持つが、亜人趣味とも呼ばれ、変わり者として知られている。後々、ハーフエルフであるエミリアを擁立しているのもその一つである。 全系統のマナすべてに適性があり、いわゆる天才という奴だ。そして、その正体は400年間もの間、自分の子孫に魂や記憶を転写し続けており、精神的には初代ロズワールと同一人物。

 

 その目的は敬愛する師・エキドナと再会を果たすため、彼女の作り出した福音書の予言通りに事態を進めること。

 

 原作内での徽章盗難を巡る一連の事件、四章での屋敷の襲撃も福音書の記述に沿ったロズワール自身の指示であり、 第一部の最大の黒幕と言える。

 

「想いというものは、長い時間を経ても変わることがなく、他の全てを犠牲にしてでも貫くべきものだ」という信念の持ち主で主人公のスバルがやり直しの力をもつことを知っており、それを利用すべく彼を「エミリアだけに尽くす傷だらけの騎士」にしようと目論んでいた。

 

 それにしても、原作内でも重要性がトップクラスの奴がここに来るとは……。一応、Jってことはまだ先代か?でも、天寿まっとうって言ってる段階でもうすぐLに変わんのは間違いないな。にしても、なんだって俺を引き取ろうとする?あの合理的を突き詰めたような怪物が私情なんてまずあり得ない。となると、『叡知の書』に俺を引き取れたでも命令されたのかな?だとしたら俺と同じかぁ、いやになるな。でも、ハッキリ言って原作の中心とも言えるメイザース家に関われるのは好都合だ。

 

「……あの、本当に引き取ってくれるんですか?」

 

「なっ!?」

 

「ああ、勿論だぁとも。わたしは君を歓迎しよぉとも」

 

 俺の反応にマーコスは驚き、ロズワールは笑みを深くした。うわぁ、スゲェ。言葉の一言一言に胡散臭が隠れてて本音が一切ない。おもわず顔を顰めそうになったよ。俺が必死に平静を装い無害な子供を演じていると。

 

「おい、ロズワールは辞めておけ。ハッキリ言ってあいつと関わるのはいい選択とは言えない」

 

「おぉや、本人の前でそんなこと言うなんてひどぉいなぁ」

 

 確かにマーコスさん辛辣だなぁ。まあ、俺も原作の知識がなきゃ断ってたと思う。だけど、

 

「でも、俺のことを受け入れてくれる家は必ず現れるとは言えないのでは?」

 

「むっ、確かにそうかも知れんが。コイツのことを一通り知っている上で忠告しているのだが本当に大丈夫なのか?」

 

 俺の質問にマーコスが吃った。悲しいことに実際その通りなんだよね。没落した貴族なんて受け入れる方がハッキリ言っておかしい。仮に受け入れられる奴はよっぽど資産を持ってるか。なんか裏があるかなどっちかだ。だから、原作に関われるのもあるがこのまま早めに引き取られるという安牌を取るためにも。

 

「大丈夫、です」

 

「どうしても、嫌になってももう変えられないぞ」

 

「わかってます」

 

「はあ、わかった。おい、ロズワール今からこの子を引き取るに当たっていくつか手続きをしてもらうからな」

 

「はぁいはい、わかってぇるよ」

 

 ロズワールはそう言うとマーコスと共に出ていこうとする。おっとその前に。

 

「あ、あの」

 

「ん?なんだぁい?」

 

「フィエゴ・ファイオスです。よろしくお願いします」

 

 自己紹介されると思ってなかったのかキョトンとした顔を見せたかと思うとすぐににこりと笑った。うへぇ、いつ見ても胡散臭い。

 

「こぉちらこそ、よろしくねフィエゴ君」

 

 そう言うとロズワールは今度こそマーコスと共に出て行った。




・グラハム・ファイオス
→フィエゴの祖父。ヴィルヘルムよりも10歳ほど年上。亜人戦争で『剣浪』と言われるほどの剣の腕前を持つ。純粋な実力では全盛期のヴィルヘルムとほぼ互角だったとのこと。
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