Re:ゼロから始まる闇の道化生活   作:アーロニーロ

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長くなりました。


面倒

 

 

 出て行く直前に何か思い出したのかロズワールが俺の元に戻り懐から対話鏡を取り出して渡した。

 

「いいかい、大体40分から一時間の間、君を引き取るために色々と書類を処理しなきゃならなぁいんだよ。だから、しばらくこの城内を探索すればいいと思うんだぁよ。時間になったら呼ぶから安心してぇね」

 

 屈んで俺と目線を合わせてそう告げると今度こそ去って行った。探索ってまあ、城内の中を探索って中々出来ないだろうしロズワールの言う通り探索くらいしてみるか。そう思った俺は立ち上がり魔女教担当につけられた傷が一切ないことに感動しながら城内の探索に向かった。

 

 

「飽きたな……」

 

 歩くこと十分。同じ景色が何度も何度も続いていたからか最初の感動は消え失せて今では周りの景色に俺は飽き飽きしていた。流石に代わり映えが無さ過ぎる。どっかに変死体でも落ちてねぇかなぁ。そんな物騒なことを考えていると。遠くの方で人影を見つけた。気になりその場に近寄るとそこには。

 

「むぅ……今日もおらぬのか。これほど余が足しげく通っておるというのに、無駄足を踏ませるとは実に怖いもの知らずな娘よ。まったく」

 

 頭から頭巾のようなものを被りながら欄干によじ登り何かを確かめる辺りを見渡しぶつぶつと何かを呟く不審者がそこにはいた。ええ……何あれ怖っ。俺が不審者の姿にドン引きしていると、ふとあることを思いついた。ん?まてよ。この不審者を警備の人間に渡せば俺の信頼を勝ち取れて騎士生活が楽になんじゃね?といったものだった。そうと決まれば有言実行。

 

「おい」

 

「む?なんだお主は」

 

 ……何だこの上から目線な不審者は。不審者の言動に眉を潜めながらも俺はここ四年で習得した歩法を使い接近し喉を掴み抑えた。

 

「へ?」

 

「動くな」

 

「な、何をするのだ!余が誰かと知っての狼藉か!?」

 

「少なくとも俺がやっているのは頭から深く頭巾を被りながら辺りを見渡す不審者をとっ捕まえただけだ。あと何でそんなに上から目線な物言いなのだ」

 

 俺がそう言うと捕まえた不審者はキョトンとした顔をした。そして、

 

「あ!ああ、そうかそうか!これは余の失態であった!」

 

 そう言うと不審者は深く被った頭巾を大慌てで外す。すると、頭巾の下からのは金色の髪と赤い目が現れた。え、待てよ金色の髪に赤い目って……まさか。

 

「この通り、余は不審者ではない。名をフーリエ・ルグニカである!さあ、この顔をとくと拝すがいいぞ!」

 

 お、王族かよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

 

 俺は今頭の中が真っ白になっている。当たり前だ不審者だと思いとっ捕まえた相手が王族だったのだ。無礼打ちで斬首とか有り得そうで怖い。

 

 ていうかよりにもよってフーリエ・ルグニカって。確か番外編で登場した人物だったよな。クルシュの数少ない友人でクルシュが王戦で王を目指す理由になった奴だったか?いずれにせよ何にせよこれはヤバイ。今の俺は側から見たら王族の首を締めているヤベー奴だ。仮に見られてなかったとしてもフーリエ本人からすれば印象最悪だ。こんなところで王族の心証悪くすれば後々の騎士生活に影響する。

 

 俺はすぐさま全力で脳内で打開策を考えた。そして閃き即座に行動に移した。

 

「……ルグニカ?王国の名前と一緒ということは王族か、もしくはそれに連なる人物か?」

 

「む?当たり前であろう。古今東西ルグニカの名を背負っているのは我々王族だけだ」

 

「失礼、私はなにぶん記憶を失っておりましてこの世界の常識には疎いのです」

 

「なんと!」

 

 今この場で最も最善な手を取った。その作戦名は『記憶がなくて間違えてしまいました大作戦』だ。大人には流石に通じないだろうけど子供には通じるはずだ。後はフーリエの心の広さによる。内心ハラハラしながらその場に跪き言葉を放った。

 

「この度はこの様な態度をとってしまい誠に申し訳ございません。かくなる上は自刃も「待て待て!この場は顔を隠していた余にも責はある!ましてや記憶が無き者に自刃せよ、など余はとてもではないが言えん!」…ですが」

 

 よぉし!フーリエの心が広くてよかった!ロズワールの家に引き取られてここからスタートって時にこんな失態をやらかして終わったって思ったけどよかったぁ!心の中で大はしゃぎしていると。

 

「すまぬが、お主の名前を教えて欲しいのだが……」

 

「っ!申し訳ございません。私は名をまだ名乗ってはおりませんでした。私の名前はフィエゴ・ファイオスと申します。陛下の慈悲深き裁定に私は感激しております。しかし、私のしたことはそう許されるものではありません。それなりの処罰を下して頂けたら幸いです」

 

「む、むぅ。そなたは記憶がないのにとても言葉を知っておるな。まあ、良い。王族として当然の判断をしたまでよ。故にこれ以上そなたを攻めはせぬよ」

 

 よし、確かに許してもらった。これ以上引き下がるとウザがられる可能性がある。今はこれ以上は関わるのは良くないな。俺は立ち上がりそう思い立ち去ろうとする。すると、

 

「あ、いや待て!」

 

 呼び止められた。え?何?まさか今の無しってオチ?ねぇよな?そんなこと。俺は不安に駆られながらも恐る恐る振り返りフーリエと向き合う。

 

「本当に悪いと思っているのだな」

 

「ええ、勿論でございます」

 

「ならば今から余の人探しに協力せよ。それがそなたに課す罰だ」

 

「……了解、しました」

 

「うむ!ではついて来い!」

 

 俺が了承するとフーリエはご機嫌に歩き始めた。ていうか人探し?まさか、クルシュか?まあ、それよりもだ。

 

「お待ちを殿下」

 

「む、何だ?」

 

「お探しの人物の特徴と見かけた場所について教えてください」

 

 そう、まずはそこからだ。いくらなんでもその人物の特徴がわからない以上どう探せばいいのか分からん。仮に予想通りクルシュだったとしても何処にいるのか分からない以上探しようがないし時間の無駄だ。俺の質問にフーリエは「それもそうだな」と言いながら答えた。

 

「うむ、そやつは遠目で見たからハッキリとはせんがよく覚えておる。若草色のドレスを見に纏った少女で、見た目は緑色の髪に琥珀色の目であったな。見た場所なのだがこの辺り、としか言いようがないな」

 

 緑色の髪に琥珀色の目。予想通りといかやっぱりクルシュだな。しかし、この辺りってこの城結構でかいから苦労するな。まあ、探すだけ探してみるか。じゃあ、まずは。

 

「殿下。少々質問なのですが。この時間帯にその少女に出会ったのですか?」

 

「ああ、その通りだが……。どうしたのだ?その様なことを聞いて?」

 

「いえ、それだけ聞ければ十分です」

 

 俺はそう言うと心中で「ムラク」と魔法を唱え欄干を飛び越えて壁をつたい屋根に登った。高いとこからなら相手を探しやすい。憑依した俺は前世と違い目がいいからすぐに見つかるだろう。仮に騎士連中に見つかり叱られたとしてもフーリエの名前を出せば逃れられる。俺はそう思いながら周りを見渡す。すると、花々が咲き誇る庭園に緑色の髪をした少女が居るのが見えた。俺はそれを確認すると急いでフーリエの元に戻った。

 

「殿下。お探しの人物が見つかったかもしれません。……殿下?」

 

 あれ?何でフーリエの奴スゲェ固まってんの?俺がそう思った通りフーリエは顔を驚愕に染めながら俺を見ていた。しかし、直ぐに動き出した。

 

「お、おおおおお主、今の動きは何だ!?」

 

「と、おっしゃいますと?」

 

「い、今の凄まじく身軽な動き、余は生まれて初めて見たぞ!」

 

 顔を驚愕に染めながらもフーリエはまるで新しい玩具を買ってもらった子供の様にはしゃいでいた。

 

「この様な小技で殿下に喜んでいただき光栄です」

 

「これで小技とは!素晴らしいではないか!何処で習ったのだ!?」

 

「その話は歩きながらどうでしょうか?お探しの少女ならばここから十分ほど歩いた場所におりましたので」

 

「うむうむ!そうしようではないか!」

 

 俺がそう提案するとフーリエは楽しそうに歩を進め俺はその後を追いながら俺が辿ってきたという名目で作った作り話をした。

 

 

 十分後、先程の明るさは何処へやら。陰鬱とした空気が俺とフーリエの間に充満していた。えーっと、やっぱり子供にはきつい話だったか?俺は念のため俯いたままうんともすんとも言わないフーリエに声をかけた。

 

「あ、あの、殿下。大丈夫ですか?」

 

「いや大丈夫だ。お主の辿ってきた人生を聞き言葉を失っただけだ」

 

 やっぱりね。そんなに重いかなぁ。俺は自身の作った作り話に少しやりすぎたかと疑問に思っていると。涙目になりながらフーリエは言った。

 

「よし!フィエゴよ決めたぞ!」

 

「何をでしょうか殿下?」

 

「これだけの苦悩を乗り越えてなお折れずにあり続けるお主のことを余が生涯誇りに思い続けることをだ!」

 

 Oh……、思いの他高評価すぎた。これは少し盛りすぎたな。確かに敵視されるのは問題だけど、それと同様にあまり高評価だと周りに反感を買いそうだ。「没落した家計の分際で」って感じで。それはあまり望ましくないなぁ。俺は今すぐ話を変えるべく話を考えていると。

 

「おや、到着したようですよ殿下」

 

「なぬ!」

 

 そう言うとフーリエの関心は俺からクルシュへと移った。ああ、よかったあんまりいい意味で目をつけられると騎士としては融通が聞くけど周りの印象が悪くなるからなぁ。

 

 つーか、大丈夫か?あんなに欄干に前のみりだと落ちるんじゃね?ああ、何だってこんなやつを心配しなきゃいけないのだろうか。内心、イラつきながらも俺は必要なことだと言い聞かせながら声をかけようとする。

 

 しかし、それよりも早くバランスを崩したフーリエが欄干から落下した。はっ?え、いや待てここ相当高かったぞ。

 

 俺はそう確信した瞬間咄嗟に権能を発動させ脚力を強化して飛び降りた。魔女因子の量が少ないこともあり強化は微々たるものだったが壁に着壁して壁の上を走り追いついたフーリエの腕を若干乱暴に掴み空中で俺が下敷きになるように体勢を変えた。次の瞬間、背中に柔らかい感触が腹にはフーリエの体重と勢いがついた分の質量が襲い掛かった。

 

「カハッ」

 

 口から空気が無理矢理吐き出される。一瞬呼吸ができなくなり焦ったがすぐに落ち着いてゆっくり息を吸う様にする。すると、すぐに呼吸ができるようになった。あ、危ねぇ。いや、下が土でよかった。

 

「フィ、フィエゴ!大丈夫か!?」

 

「だ、大丈夫です。殿下」

 

「う、うむ。それならば良いのだが……」

 

 心配そうにこちらに声をかけるフーリエだったが今はとりあえず声をかけないで欲しい。本気で腹が立ってるから。俺は殺意の波動に目覚めながらも立ち上がる。

 

 するとそこには目を丸くしてこちらを見つめる少女が立っていた。結い上げられた美しい髪に、琥珀色の澄んだ瞳。うん、間違いないクルシュ・カルステンその人だ。

 

 しっかし、美人だなぁおい。将来は間違いなく有望だなあこれは。クルシュの美しい顔立ちに舌を巻きつつもフーリエのほうに顔を向ける。そこには

 

「お、おお、おおお………!」

 

 顔を赤くしながら奇声をあげるフーリエがそこにはいた。その様子に笑いがこみ上げてきたが全力で止めてクルシュに向き直る。クルシュは目を丸くしながら頭上を確かめる。視線は頭上と、俺たちの間を行ったり来たりしていた。ああ、驚いてんのね。わかるよいきなり空から男2人が落ちてきたらそりゃ驚くわ。フーリエもクルシュの様子に気づいたのか両手を伸ばしたポーズをとりながら天真爛漫に話し始めた。

 

「なに、心配いらぬぞ!余はほれ、どこも怪我しておらぬ!不安にさせたようだが気にすらでない。余は全身凶器のような男なのでな!」

 

 ……何を言ってるんだ、こいつは?え?えっと、自分は大丈夫だから問題ないって言いたいんだよな?だからって、全身凶器はないわー。半ば呆れながらもクルシュの方に視線を向けるすると明らかにクルシュは俺たちに敵意を込めた目線を向けていた。その視線に気づいていないのかフーリエは何やら言いながらその場を去ろうとするが。その一歩はフーリエの前に立ち塞がったクルシュの見た目にふさわしい凛とした声と鋭い視線によって遮られた。

 

「そんな言い訳が通ると思ったのか?不審者め」

 

 クルシュはそう言いながら懐から短剣を取り出した。ああ、やっぱりこうなるのね。俺は半ば確信していながらも襲ってきた現実の非情さに遠い目をした。フーリエは短剣に気づいたのかあからさまに驚いていた。

 

「おお!?ふ、婦女子がそのようなもの持ち歩くようなものではないぞ!?」

 

「父上も嘆かれるが、こうして役立つこともある。不審な動きはしないことだ。私を女子と侮ることも。ーーーーー王城での不埒な企み、安く済むとは思わないことだ」

 

「む?む?むー?」

 

 クルシュの声は辛辣で、落ち着かせようとするフーリエの声に聞く耳を持たない。どうやら本気で俺たちを不審者と睨んでるらしく、彼女の瞳に躊躇いはなかった。まあ、顔隠してるフーリエを不審者と判断するのはいいけど初対面であろう俺まで不審者って。いや、怪しい格好してるフーリエと一緒だから勘違いしてもおかしくないのか?

 

 それはさて置き。いやぁ立派だわ、その年で子供とはいえ男2人に啖呵きって武器向けられるの。まあ、最も。

 

「ーーーー」

 

 震えた手さえ無ければ尚立派だったよ。それでも、憑依前の俺より遥かに立派だわ。心底どうでいいけどこういうのが後々『英雄』ってのになんだなぁ。まあ、でも短剣向けられまんまってのもあれだしな。

 

「私たちが怪しいのは認めよう、だが短剣は下ろしてくれ。でなければ迎撃する」

 

 少し闘気を混ぜながらそう伝える。まあ、これで短剣を下ろすでしょっと思いながら見つめる。しかし、予想に反してクルシュは顔を青くしながらもより一層短剣を握る力を込めながらこちらを気丈に睨んできた。……いや、これに耐えんのかまじでスゲェな。まあ、それはそれ、これはこれだ。俺は内心驚きながらも歩を進めた。

 

「お、おい、フィエゴ!お主、手荒な真似はするでないぞ!」

 

「何を言っている」

 

「わかっております。これが最後だから武器をおろしてくれ。手荒な真似はしたくない」

 

「そう言われておろすと思っているのか?」

 

「……忠告はしましたよ」

 

 俺はそう言うと手首に向けて素早く手刀を放つ。クルシュは咄嗟の痛みに短剣を手放した。それを見た俺はすぐに短剣を蹴飛ばし武器を遠くへやった。

 

「さて、詰みですね」

 

「……やるならば一思いにやれ。辱めは受けん」

 

 ……こいつ本当にガキ?セリフといい貫禄といい大人のそれなんだけど。俺がクルシュの在り方に驚いていると。

 

「そなた、実に良い女子であるのだな」

 

 後ろから、フーリエの声が聞こえてきた。一応無事かどうか確かめるために振り返ると落ち着いてきたのか顔が穏やかだった。クルシュもその様子に困惑するように瞳を揺らめかせた。

 

「……私に誤魔化しは通用しないぞ。嘘や企みは、私の目には透けて見える」

 

「本心で話しているというのに、そのような受け取られ方は心外であるぞ。一体、余の何がそんなに気に食わなと言うのだ。申してみるが良い!」

 

「殿下、おそらくお召し物にあるのでは?」

 

「その通りだ。言葉だけで信用に値するなど……待て今なんと言った?」

 

「ー?あ、ああ、そうかそうか!そうであった!先程かぶり直したのであったな!」

 

 俺とクルシュに指摘されてようやく自分がまだ変装用の頭巾を被り顔が隠れていたことに気付いた。フーリエは先程の俺と出会った時と同じように頭巾を脱ぐと金色の髪と紅い瞳があらわになった。それを見たクルシュの目が見開かれる。……まあ、俺も同じ行動を取ってたから同情するよ。俺はそう思いながらクルシュの目の前にいるフーリエについて説明した。

 

「こちらにおわしますは。ルグニカ王国の第四王子、フーリエ・ルグニカ様です」

 

「うむ、フィエゴよ説明ご苦労!この通り余とフィエゴは不審者ではない。さあ、この顔を拝すがよいぞ!」

 

 驚くクルシュを見て気を良くして、汗ばむフーリエは汗を拭いながらそう言った。ああ、俺この後の展開が読めたよ。

 

「大変なご無礼、申し訳ありません、殿下!かくなる上は自刃もいといません!」

 

 あれ、なにこれデシャヴ。話は簡単には纏まらず、俺が言ったセリフと似たようなことを言いながら跪くクルシュを見て俺は思わずため息をついた。

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