Re:ゼロから始まる闇の道化生活   作:アーロニーロ

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お久しぶりです。しばらく大学が忙しすぎました。今後も、ペースは大分遅くなってしまうかもしれません。見てくださってる人には大変申し訳ありませんが。今後ともよろしくお願いします。


弟子入り

 

 

 あれから数日が経過した。今日がベアトリスの魔法教室の始まりだ。本当であれば昨日の段階でベアトリスの魔法の授業を受けるはずがまだ屋敷内を把握できていないため、昨日は屋敷内を把握するのに使われた。とりあえずこの数日の間でアンサートーカーもどき出来ることを把握した。

 

・東大の入試試験だろうが、現在世界最難関とさえ言われる日本の司法試験だろうが満点で、しかも試験勉強なしで一発合格可能

 

・初めて見る道具や機械でもマニュアルなしで完璧に使いこなせる

 

・医学や発明、そして戦闘にも応用可能

 

 ……うん、これだけ聞くと完全にチートだ。下手するとペテ公の『見えざる手』やレグルスの『獅子の心臓』などよりもよっぽどチートだ。まあ、当然だけどチートであるが故にデメリットが孕んでくる。俺の場合不安定であり、尚且つ微弱であるためか一歩間違えれば最悪消失したりすることがある。

 

 しかも、注意点としてアンサー・トーカーもどきが出せる答えはあくまで『能力者の性能と知識、経験によるもの』の為、どれほど優れたこのアンサートーカーもどきとしての能力があったとしても基本的にアホだったり知識が無かったり引用が可能である経験等が一切無い者の場合は能力そのものが無駄となりうる。 つまり、『金色のガッシュ』の主人公のあの能力によってチート的な力を発揮出来るのも、その根底にある基礎能力の高さによる裏打ちがあってこそである。

 

 まあ、一言でまとめると要するに。「バカには使えない」ってことだな。ハハハハハハ!

 

 ……ヤベェ、ヤベェよ。このままじゃあ能力が消え失せるかもしれない。それだけは嫌だ。こんだけ便利な能力が消え失せるのだけは勘弁してほしい。え?なんで消える可能性があるかって?はっきり言おう、俺はそんなに頭が良くない。

 

 前世では高校時代で化学期末のテストとかで一桁をとったことがある程度には良くない。今世の身体は違うからあんまり関係してこないかもしれないがそれ以前にこっちに来てからロクに勉強してない。なんだったら、文字をかけるか不安だ。そもそも、脳が未発達のためかアンサートーカーもどきの負荷もでかい。発現理由が戦い続けて死に続けていたからだと考えられる以上、多分戦い続けるというか鍛え続けていれば消えない可能性はあるがそれでも万が一がある。

 

 え?じゃあ、適当な本を読んで知識を深めろって?そもそも、文字が読めない以上、本を読むもクソもないんだよ。どうしよう……。方法はあるにはあるけど間違いなく本人は嫌な顔するよね?時間を確認するともう30分後には指定された時間になることがわかった。もう少し考えていたいが、そう思いながらも進み続ける秒針に対してため息をすると俺は自分の身だしなみを整えてドアに手をかけた。

 

 

「……随分と遅かったのよ」

 

「いやぁ、すいません。ベアトリス様の『扉渡り』が中々曲者で」

 

 へらへらと笑いながらベアトリスの嫌味を受け流すと、

 

「はぁ、まあいいのよ。次からは気をつけるかしら」

 

 ベアトリスは少し呆れたようにため息をしてこちらに来るよう促した。言われるがまま、俺はベアトリスの指定した椅子に座る。すると、

 

「では、これよりベティーの魔術講座を行うかしら」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「途中で眠りでもしたらぶっ飛ばしてやるのよ」

 

「はは、そうならないよう気をつけますよ」

 

「わかればいいのよ。それじゃあ、まずはどれほど魔法を扱えるのか確かめるから。お前、今ここで実演してみるのよ」

 

「え?」

 

 いやいや、待て待て。

 

「大丈夫、なのですか?」

 

「なにがなのよ?」

 

「ここで魔法を放てば禁書庫の本に傷がつくのでは?」

 

 そう言うと、ベアトリスは少しキョトンとした顔をしたかと思うとすぐに鼻で笑ってきた。

 

「ここはベティー自身が支配している空間なのよ。お前如きの魔法で傷つくほどやわな作りはしてないかしら」

 

 はい、腹立つ。じゃあ、そこまで言うんだったら。

 

「アルミーニャ」

 

 俺はベアトリスに向かって全力で魔法を放った。すると、数十本にも及ぶ紫紺の魔法が着弾する寸前で霞の如く消え失せた。予想はしていたけども、

 

「ここまで差があるとは……」

 

「当たり前なのよ。アル系列を使ってきたのには驚いたけど術式が粗すぎるかしら。せいぜい、20点ってとこかしら」

 

 ああ、もちろん100点満点中かしら。手をひらひらとぶらつかせながらベアトリスは俺に向けて辛口の感想を口にした。

 

「因みに減点された理由は何なのですか?先生」

 

「さっきも言ったけど魔法を構築するまでの過程における術式が粗すぎるのよ。込めた魔力量に対して出てきたミーニャの数が少なすぎるかしら。お前が込めた魔力量だったら本来これくらいは出せるかしら」

 

 そう言うとベアトリスは虚空から数百にも及ぶ紫紺の結晶を顕現させた。

 

「…冗談ですよね?」

 

「本当なのよ。というか、お前の術式が変なのかしら。なんなのよ、あの『過程を無視して結果だけを出しました』みたいな術式は。気持ち悪いったらありゃしないのよ」

 

 少し不愉快そうにそう言うベアトリスを尻目に俺は少し納得した。………ああ、なるほどね。つまりは、俺の腕にも問題があるけどあのアンサートーカー擬きが弊害だったわけね。まあ、俺の魔法が下手くそな理由は十二分にわかったけど。

 

「改善する方法はあるのでしょうか?」

 

「そんなもん簡単なのよ」

 

 そう言うと背後にある辞書のような本を何冊か取り出すと俺の前に置いた。

 

「魔法のイロハを知ること、これに限るかしら。まずは、この書物をひたすら読み続ける、そして、基礎を知り本質を知るそうすることで初めてお前は陰魔法の使い手としての入り口に立てるかしら」

 

 ベアトリスが自信満々に言い放つと同時に俺は机に置かれた複数の本の内比較的薄めの本を開き軽く流し読みする。うむ、読めん。アンサートーカー擬きのおかげなのか薄ぼんやり理解はできるけど根本的なものは分からん。ベアトリスの方をチラリと見やる。ベアトリスは腕を組みながら少し怪訝そうな顔をしていた。うん、言うしかないよね。

 

「あの、先生」

 

「ん?何かしら?」

 

「文字、読めません」

 

 瞬間、空気が凍った。顔を上げるとそこには恐ろしく面倒くさそうな顔をしたベアトリスがいた。

 

 

「申し訳ありません、先生」

 

「いいのよ。だけど個人的にははもっと早く言って欲しかったかしら」

 

 若干呆れられながらぐうの音も出ないことを言われながら今、俺はひたすらロ文字について学んでいた。いや、まあ、しかし

 

「想像以上にきついですね…」

 

「文句言うなら辞めるかしら。それにしてもイ文字が簡単とはいえ初めて10分足らずで全部覚えるなんてやけに物覚えがいいのよ…。お前、実はベディーを揶揄っているだけでほんとは文字の読み書きができるんじゃないかしら?」

 

「そんなことないですよぉ」

 

 ベアトリスに揶揄っているのではないかと疑われているがこれに関しては経験としか言いようがない。アンサートーカーもどきの力もあったとはいえ仮にも大学まで進学したのだ。異世界とはいえ五十音くらいおぼえられる。まあ、最も。

 

「漢字もどきのロ文字を覚えらんないのは元大学生失格ですねぇ」

 

「なんか言ったかしら?」

 

「いいえ、何でも」

 

 俺の呟きに敏感に反応し訝しむベアトリスの視線を受け流すと改めてロ文字について書かれた文章に齧り付いた。

 

 

 あれから二時間が経過した。その間ひたすらに書物を読み漁りわからないところがあればベアトリスに尋ねるを何度も繰り返していた。途中で飽きたのか安楽椅子で寝掛けていたのを見てペンをへし折るという事故を除けば、特にこれと言って問題なく進んでいた。そして、

 

「じゃあ、今からテストを行うのよ」

 

「ハイ」

 

「指さしたロ文字が何なのか答えるだけの簡単なテストかしら。間違えたらもう二時間追加なのよ」

 

「ワカリマシタ」

 

「ではテストするのよ。この記号は?」

 

「灰」

 

「それじゃこれ」

 

「猫」

 

 灰と猫というロ文字を見てふと、エミリアのお供である猫型の精霊を思い出し、ああ、コイツそう言えばパックのことキャラ崩壊したんじゃねぇの?って聞きたくなるほど好きだったことを思い出す。

 

「最後の問題」

 

「ワカリマセン」

 

「正解、ベティーが適当に書いたから、ベティーにも分からないのよ」

 

「ソウデフカ」

 

「……とりあえずロ文字の習得は大丈夫そうなのよ。文字が読めないと聞いた時は正直焦ったけど予想より遥かに早く終わって安心したのよ」

 

「ソウラスカ」

 

「お前、どんだけ勉強が嫌いなのよ!ほぼ最後にいたっては言語が成立していないかしら!」

 

 ベアトリスの声が頭に響き渡る。おい馬鹿やめろ、年単位で勉強してなかったせいなのか、それともいきなり情報敷き詰めたせいなのか分かんないけど頭が馬鹿みたいに痛ぇーんだよ。二日酔いってこんな感じなのかなぁーと若干現実逃避していると。すぐ近くでハァ、というため息が聞こえた。

 

「もう今日はここまでなのよ。取り敢えず自主的やれるよう魔力操作の練習の仕方をここに記しておくから持ち帰っておくかしら」

 

「ハイ、ワカリマシタ」

 

 俺はそう言うとフラつきながら立ち上がり禁書庫を後にする。

 

「シツレイシマシタ」

 

 俺がそう言うとベアトリスは本を見ながら虫を追い払うように手を振るった俺はそれを見た後、ドアを閉め。部屋に戻り、脳を休めるべく寝た。

 

 

フィエゴとベアトリスの勉強会が交わされた朝――時間はそこから半日ほど進む。

 

 場所はロズワール邸最上階、中央の主の部屋である。そこで夜の密談が行われていた。

 

「やぁあやあ、ベアトリス。教鞭払った感想はどうだったかな?」

 

 やわらかな声には艶があるが、その口調はどこまでも軽々しく、聞いているものに当惑の感情をもたらす類のものだった。

 部屋の主であるロズワールのその言葉に、しかし相対するベアトリスは慣れているのか気にした様子もなくそっけなく答える。

 

「……あいつの素質が悪くなかったのか、それとも失った記憶が少しだけ戻ったかわからないけど中々、悪くはなかったかしら」

 

「おやぁ?君にしては珍しい、気に入ったのかぁな?」

 

「そんなわけないのよ」

 

 少しというには判りやすいほど顔を歪めながらベアトリスは強めに言葉を返した。

 

「そうかい?なら今回百点満点で評価するとするならば彼は何点だになるんだぁい?」

 

「まず第一に文字の読み書きが出来なかったのに-40点、下手くそすぎる魔力操作に-30点、たった二時間勉強しただけでぶっ倒れたかけた段階でベティーの中で0点が確定したのよ」

 

 その教育担当の明確なダメ出しに、ロズワールはきょとんとした顔をして、直後に吹き出しながら破顔した。少しせき込むほど。

 

「あはぁ、そうかい、全然ダメかい。それは騎士を目指すとしては由々しき事態だねぇ、特に最後」

 

「だけど」

 

「うん?」

 

「才能に関しては良かったから、まあ、10点はくれてやるのよ」

 

 その言葉にロズワールは再度キョトンとすると今度はいやらしく笑った。

 

「へぇ、君がそこまで言うほどかい?」

 

「魔力量に関してはロズワール、お前と同程度。しかも、あんな短時間でロ文字を覚えるなんて聞いたことないのよ」

 

「魔力量が私と同程度なのは驚いたけど、そぉんなに、頭いいの?」

 

「二時間足らずでロ文字を暗記しやがったのよあいつ。しかも、文章の構文まであっさりと」

 

「それは…とんでもないな」

 

 それを聞くとロズワールはなにかを考えるように目を閉じて再度目を開けた。

 

「ベアトリス、肝心の話だ。――それで、間者の可能性はどうかな?」

 

 声音の調子は変わらないまま、ロズワールは笑みを崩さず問いかける。主語のない問いかけだが、求めている答えはわかっている。

 

「否定はできないのよ、だけどその目はかなり弱いと思うかしら」

 

「ふぅむ、その心は」

 

「今回の一件で良くも悪くも……というか、特に悪い意味で目立ちすぎかしら」

 

 問いに対する否定の言葉ではあったが、ロズワールはその返答に満足したように微笑む。我が意を得たり、とばかりのロズワールの微笑み。ベアトリスはうげぇ、という声が聞こえてきそうな顔をした。

 

「なるほど納得。まあ、誘ったのは私なんだけどねぇ」

 

 言いながら椅子を軋ませ、ロズワールが体の向きを変える。これまで机と正面から相対していた体を正反対――ちょうど、月明かりが煌々ときらめいている大窓の方へ。

 左右色の違う双眸が細められ、眼下の光景に彼は口の端をゆるませたまま、

 

「しぃかし、彼もめげないねぇ」

 

 執務室の窓から見下ろせるのは、屋敷の敷地内にある庭園だ。少し背の高い柵と木々に囲まれたその場所は、外から見えない代わりに屋敷の窓からは非常によく見渡せた。

 その月明かりを盛大に受ける庭園の端、そこに一心不乱に槍を振るう姿がある。そこそこ長く振るい続けたのか少し動きに精彩を欠いていたが勢いは全く衰えていなかった。

 

「いやぁ、ほんと、どんな経験してたらあんな風になるんだろぉねぇ?」

 

「そんなことベティーには知ったこっちゃないかしら」

 

「ふーん、そぉうかい?まあ、いずれにせよ何にせよいつかくる我らが宿願のためにも彼という『駒』は非常に有用だ。今後も頼んだぁよ、ベアトリス」

 

「……わかっているのよ」

 

「ああ、それとあと数年のうちに私"L"になるからそこんとこよろしくねぇ」

 

 そう言うとロズワールは一足先に部屋を後にした。ベアトリスは少し槍を振るい続けているフィエゴを見たかと思うとすぐにその場を立ち去った。

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