Re:ゼロから始まる闇の道化生活   作:アーロニーロ

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すみません、こっちが第一話です。


きっかけ

 「え?グッ、ギ、ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 突如として襲ってきた身体中の痛みに俺は絶叫し、発狂した。

 

 痛い!痛い!!痛い!!!身体中が焼けるように痛い!!俺はすぐにその場でのたうち回った。恥も外聞も捨てて痛い、痛いと、痛みを誤魔化すようにその場で転がりながら泣き叫び続けた。元々痛い、辛いなどが大嫌いだった俺にとってこれほどの痛みはとても受け入れられるようなまではなかった。それから俺はその場でのたうち回った。痛みの余り、どれほど転がっていたか分からない。しかし、長い間転がっていたのだけはわかった。

 

 俺は、しばらくしてある程度痛みに慣れてきたころある事に気づいた。

 

「だ、誰なんだ?コ、コ、コイツは?な、なんで、お、俺の目線がこんなにもひ、ひ、低いんだ?」

 

 そう、この身体は俺の身体では無かったのだ。なぜなら、低いはずの俺の声は高く、今の俺の体はどう考えても子供のもので、高く見積もっても5歳程度の子供の身体だった。

 しかし、俺の身体がそのまま若返ったわけではないことはわかった。何故わかったかというと、俺の髪は白くは無かったからだ。

 そして、俺は周りを見渡してみた時、さらに、絶句した。

 

「こ、こ、此処は何処なんだ?」

 

 見渡す限りの草原が俺の目の前に広がっていた。

 

「だ、誰かいないのか?…ヒッ!」

 

 俺は後ろを見て悲鳴が漏れた。何故気付かなかったのか疑問に思うほど大きな館が俺の後ろにあり、その館は大きく崩れていた。そして、その館の中には大量の血で溢れていた。俺はその血の匂いの濃さにむせ返りその場で吐いた。

 

「ヒュー、ヒュー、こ、此処から離れないと」

 

 俺はその場から離れようと身体を動かそうとした瞬間再び身体中に痛みが走った。しかし、今度は腕や肩の方から痛みが走ったことに気付き。ふと、痛みが走った場所に目を向けた。

 

「な、なんだよ、なんなんだよこの怪我」

 

 俺?の肩は深々と切り裂かれていて、腕もへし折れたのか関節がもう一つ増えていた。俺はいよいよ恐怖した。得体の知れない身体に、得体の知れない場所に、得体の知れない怪我に、俺はただひたすら恐怖した。そんな状況に置かれた俺は、

 

「い、いやだ、だ、誰かぁ、助けてぇ、助けてくれ」

 

 助けを求めた。みっともなく誰かにすがるように求めるようにその場を歩き始めながら助けを求めた。傍目から見れば見苦しいであろうその様は今の俺にはどうでも良いものだった。幸いと言っていいのか微妙だったが下半身は無傷とはいかないが無事で歩くのになんの問題も無かった。

 

 しばらく歩いていると村が見えた。俺は泣きたくなるほど安堵して歩く速度を早めた。途中で疲れ果てて倒れたくなっても助かりたい一心で我慢し、その場を歩き続けた。すると十分ほどで村に到着した。恐る恐る村の中を入ると少しも時間も立たずに中年の女と遭遇した。村人の姿を見て安心した俺は泣きながら助けを求めた。

 

 しかし、

 

「あ、あの!助け「ごめんなさいねぇ」…え?」

 

「す…すぐ、“誰か"が…来るからね」

 

「え、は、え?」

 

 そう言うと中年の女は、その場を早足で去っていった。

 

「え?どういうこと?」

 

 俺はその光景に戸惑いながらもすぐに近くを歩いている青年に声をかけた。

 

「あ、あの!助けてください!」

 

「……」

 

 今度は、青年は声も掛けられずにその場を去っていった。それから俺は同じことを何度も繰り返した。その度に村人たちは無視するか「誰かが助けてくれる」と言いその場を焦ったように去っていくだけだった。

 

「なんで、誰か…」

 

 フラフラと転びそうなほど危うい歩みで歩いていると。

 

「おやおや、大丈夫かい?」

 

「え?」

 

 ふと、声をかけられた。顔を上に向けるとそこには二十代半ばほどの青年が立っていた。しかし、少しだけ違いがあり先ほどまでの村人とは違い身なりが良かった。

 

「ひどい怪我じゃないか!少し、止まって!」

 

「あ、あの」

 

「もう大丈夫だから、少し深呼吸しなさい」

 

「う、っく」

 

「って、おいおい!どうしたんだい!?」

 

 俺は自分が今救われていると理解した瞬間涙が止まらなかった。やっと誰かに手を差し伸べられたと理解した瞬間嬉しくてしょうがなかった。泣き止み落ち着いた頃、ようやく礼が言えた。

 

「あの、本当にありがとうございます」

 

「いやいや、大丈夫だって。君、親御さんは?」

 

「……いません」

 

「ふーん、そっかぁ。よし、わかった。その怪我治すために今から治療院へ向かうからついてきてくれ」

 

「わ、わかりました」

 

 そう言うと、青年は軽い応急処置をした後に俺と手を繋ぎ森の奥へと進んだ。少し不安に駆られたがすぐに見えた屋敷をみて安心した。

 

「すまないが少しだけ待っててくれないか、今竜車がくるんだけど、ああ、来た来た」

 

「竜、車って……え?」

 

 俺はすぐに見えた光景に絶句した何故なら目の前に今緑色の硬質の肌、見上げるほどの巨躯、黄色く鋭い双眸をした巨大な竜が荷台を引いて現れたからだ。

 

 は?いやまて、竜車?竜車って言ったか、こいつは?いや、まさか、この世界はリゼロの世界……なのか?いや、そう考えるには証拠が少なすぎる。そう思うとすぐに平静を取り戻し改めて青年の顔を見た。

 

「おや?竜車には初めて乗るかい?」

 

「は、はい」

 

「はは、なら楽しんでいってくれ」

 

 そう言うと青年は俺を抱き抱えて竜車に入った。中には護衛らしき人が数人いた。入ってすぐに竜車は出発した。いつもだったら興奮しながら外の風景を眺めていたが怪我のこともありそんな余裕もなく半ば気絶するように俺は眠りについた。

 

 

「おーい、ついたぞー少年」

 

 身体が揺さぶられると同時に声が聞こえた。うわ、マジか俺、恩人の前で爆睡こいてたのかぁ、ないわー。そう思いながら身体を起こす。痛みですぐに目が覚めた。

 

「あ、あの、何から何までありがとうございます」

 

 そう礼を言いながら俺は外を出る。すると、

 

「え?」

 

 そこはあたり一面が森だった。道を間違えたのか。そう問おうと後ろを見た瞬間。動きが止まった。理由は、笑みを浮かべていたからだ。これだけだったら俺を励ますために笑っていると考えられた。しかし、今の青年の顔に刻まれた笑みは恐ろしく醜いものだった。

 

「あ、あの」

 

「早く、降りろよ」

 

 青年は冷たい声でそう言うと俺の腹を強く蹴り飛ばした。

 

「ぎゃっ」

 

 俺は竜車から転がり落ちた。

 

「ぷっ、あはは!『ぎゃっ』って!なんだよ、その声。俺を笑わせる気かよ!最っ高に面白いから大成功だぞ、お前、あはははは!」

 

「え?え?」

 

「お前は鈍いなぁ、まぁ、わかるように言ってやるよお前のことなんて助けるわけないだろ」

 

 突如の出来事に俺はフリーズした。は?なんで、こんなことする。騙されたってことか?

 

「いやぁー、よかったよかった。暇で暇でしょうがなかったんだよぉー。こっちはさぁー」

 

「暇って、どういうことですか?」

 

「待て待て、喋るな。一回黙れ」

 

「あの!だから、どういう意味かって「黙れって言ってんだろ」」

 

 そう言うと青年は再度俺の腹を蹴飛ばした。今度は鳩尾にあたり俺はもう一度吐いた。

 

「うげえ、汚ったないなぁ。これだから孤児は」

 

「な、なんで「黙れって言ってんだ。もっかい蹴り飛ばされたいの?」……」

 

「よぉーし、いい子だ。そんないい子なお前にチャンスをやろう。光栄に思えよ」

 

 チャンス?絶対ロクでもないな。まぁ、生き残るにはそれを飲むしかないな。

 

「……なんですか」

 

 そう問うと男はニヤリと笑いながら言った。

 

「お前が今からやる試練を通過できたら、さっき言った治療院に連れていってやろう。失敗したら…そのお粗末な頭でもわかるよな」

 

「……わかりました。やります」

 

 もう、それ以外道がない。だから、乗るしかない。

 

「いい返事だ。おい、連れてこい」

 

 男がそう言うと護衛の男が森の奥から何かを連れてきた。俺はそれを見て目を見開き凍りついた。男はそんな俺を見て嗤っていたが、俺にはそんなのは気に入らなかった。だって、当たり前だその生き物は俺の好きな作品にしか登場しないはずの生き物だからだ。

 

「ウル、ガルム」

 

「おお、なんだよお前知ってんのかよ。説明するまでが楽しいのに萎えるなぁ」

 

 んなことどうでもいい。いやまて、まさか。

 

「そいつと戦って勝ったら治療院に連れて行ってやる。それが今回の試練だ」

 

「」

 

 あまりの出来事に凍りついた。周りを見渡すと護衛らしき人たちもニヤニヤと笑っている。いや、待て、そんなの。

 

「無理に決まってる」

 

「おや、じゃあ、諦めるのかい?だったらそのまま犬死にしてくれ僕も見てみたいんだ。魔獣に踊り食いされるとどんな風になるのかさ」

 

 考えろ!考えろ!いかにこの場を抜け出すか考えろ!まず、怪我云々の問題以上に体格差が絶望的だ。万全の状態でもこの身体じゃあ一分もせずに捕まって犬の餌だ。絶対絶命にもほどが、

 

「いつまで突っ立ってんだ。うちの飼い犬は、血気盛んだぞ」

 

 瞬間、ウルガルムの姿が消えた。それと同時に俺の肩が少し軽くなった。

 

「え?」

 

 後ろの方から、クチャクチャと音が聞こえる。後ろを振り返ると口を赤く濡らしたウルガルムがいた。軽くなった肩に目を向けると、俺の肩が大きくえぐれていた。ウルガルムに肩を噛みちぎられたことを理解した瞬間。傷口が熱を浴びそして、

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 叫んだ。こちらに来て?二度目の絶叫だ。嗤い声が聞こえるがそんなことが気にならないほど痛い!ていうかまずい!目で追うことも出来なかった。逃げるのは無理だ。嘘だろ、俺は死ぬのか?

 

「なんで…」

 

「ん?」

 

「なんでこんなことするんですか……」

 

 ふと、何故か俺はそう言った。すると、半笑いしながら男は答えた。

 

「そんなの簡単だよ。理由はなぁ、このルグニカが平和だからだよ」

 

「……は?」

 

 何を、言ってるんだ…コイツは。

 

「…どういう意味だ」

 

「あー、なんて言うかな。この国は平和すぎるんだよ。平和ってのは恐ろしく退屈だからなぁ、だから俺は遊ぶんだよ。例えば、村人に法外な税を要求したり、お前みたいに犬に食わせてみたりしてさ」

 

「あ、」

 

 ようやく理解した。なんで村人たちはおれを助けなかったのかを。助けなかったんじゃない、助けられなかったのか。だったらなんで。

 

「俺には、そのことをなんで教えてくれなかったんだ」

 

「そんなもの俺の機嫌がしばらく悪かったからだよ。俺の怒りの向けどころを探していたところにちょうどお前が来たんだ。連中も喜んでるだろうよ」

 

 それを聞いた瞬間、俺の中の何かにヒビがはいったような気がした。ふざけんな、俺はそんな理由で死ぬのか?

 

「長くなったな、もういいだろう?できる限り長く苦しんで俺の娯楽になってくれ」

 

 ふざけんな。こんな男の娯楽がわりに死んでたまるか。どうせ死ぬならせめて、一矢報いてやるよ。

 

「じゃあな、クソガキ。死んでくれぇ!?」

 

 男の言葉が詰まった。まぁ、当たり前だ。俺が全力で股間目掛けて頭突きをかましたからだ。火事場の馬鹿力というやつか予想よりも早く動けた気がする。

 

「ギャアアアア!!」

 

「ハッ、ザマァみろ」

 

 飼い主に異常が起きたからかウルガルムの動きが鈍った。よし、予期せず隙ができた。今のうちに、

 

「てめぇ!!」

 

「うぐっ」

 

 逃げようとした瞬間。俺は1人の護衛らしき人に殴り飛ばされた。やっばい、コイツらのこと忘れてた。ああ、これは完全に詰んでしまった。

 

「殺す!殺す殺す殺す!!!この俺様にこんな恥をかかせやかって!!!このクソガキがぁぁ!!」

 

「ギャア!」

 

 激昂した男が蹲った俺に向けて何度も蹴りつけた。額を切って血が目にかかったせいか視界が真っ赤に染まる。蹴りつけが十秒ほど続いた後、男は。

 

「もういい!!望み通りすぐに殺してやるよ!!殺せぇ!!ウルガルムゥ!!」

 

 男がそう言うと犬の威嚇のような鳴き声が近くで聞こえた。ああ、今度こそ俺は死ぬのか。いやだ、いやだいやだ、俺はまだ。そう思い俺は頭を抱え目をギュッとつまり来る痛みに備えた。しかし、一向にそれは訪れない。何事かと思い顔を上げると目を見開いた。だって、当たり前だ。俺に死を与えるはずだった、ウルガルムの首が宙を舞っていたのだから。周りを見ると男も護衛も口を開けて惚けていた。

 

「一体…何が」

 

 俺が茫然とつぶやいていると。森の奥から複数の影が現れた。いや、影ではない。それは黒い装束に身を纏った集団だった。理解が追いつかないまま、影たちは道を開けその場に恭しく頭をたれた。

 

 俺はそうしてここで、悪意の塊と顔を合わせることとなる。

 

 ――痩せぎすの男だった。

 

 黒い装束の男たちに囲まれるその男は、自らも黒の法衣に身を包んでいる。

 身長は以前の俺よりもやや高く、深緑の前髪が目にかかる程度の長さに整えられている。頬はこけており、骨に最低限の肉と皮を張りつけて人型の体裁を取っている、と表現するのが適当に思えるほど、生気が感じられない肉体の持ち主だ。

 

 ただし、その狂気的にぎらぎらと輝く双眸がなければの話ではあるが。

 

 男は身を傾けて、地面に身体を伏せている俺をジッと観察している。曲げた腰の上でさらに首を九十度傾け、ぎょろついた目で無遠慮に眺める姿は常軌を逸した奇体さを露わにしており、事実その男の言動は常人と一線を画していた。

 

「おやおや、このようなところにいるとは全く探すのに苦労したのデス」

 

 ひとしきり、舐めるように俺を上から下まで眺めた男は、納得したような頷きでもって周囲の男たちに賛同を示す。

 黒装束の人影は男の肯定に顎を引き、無言のまま男の言葉の続きを待つようだ。

 

 男は人影の沈黙を守る姿勢になんらリアクションせず、ひとり考え込むように右手で自分の左手を握りしめ――手首に生じている傷口に親指をねじ込み、血が滴るそれを意に介さず、自らの血肉を穿り返す。

 

「あぁなぁたが、『傲慢』デスよね?」

 

 姿勢を曲げたまま振り返り、男は奇妙な体勢のまま俺を振り仰ぐ。問いを発したその口に、傷口を抉った血に染まる親指を差し込み、鉄の味をその舌でねぶりながら恍惚に、澱んだ光を放つ瞳を震わせて。

 

 問いかけられた俺は返事が出来ない。身体中が軋むように痛むのもあるがそれ以上に衝撃的すぎて声が出ないのだ。

 

 何を勘違いしたのか男は音を立てて唇から指を抜くと、

 

「あぁ、そうデスか。これはこれは、失礼をしておりました。ワタシとしたことが、まだご挨拶をしていないではないデスか」

 

 男は色素の薄い唇をそっと横に裂き、禍々しく嗤うと、ゆっくり丁寧に腰を折り曲げ、

 

「ワタシは魔女教、大罪司教――」

 

 腰を折った姿勢のまま、器用に首をもたげて真っ直ぐ俺を見つめ、

 

「『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティ……デス!」

 

 名乗り、両手の指で俺を指差し、男は――ペテルギウスはケタケタと嗤った。

 

 

 ケタケタ、ケタケタ、ケタケタと。




思った以上に長くなりました。
読みにくかったらすみません。
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