城塞都市ガークラを攻め落として早半日が経過した。ペテルギウスの元に到着した俺は戦った疲れもあってすぐに寝てしまった。起きたときペテルギウスに怠惰だ何だなんだのとどやされるのかと思ったら、
「聞いたのデス、エピタフくん!あのレグルスが認めるくらいの働きをしたそうではないデスか!自分に甘く他人に人一倍厳しいあの男が認めたほどの活躍をしたアナタの勤勉さに!働きに!ああ!脳が震えるるるるるるるるる!!」
と、めちゃくちゃ褒められた。ただ、起き抜けにあのテンションの高さは寝起きの悪い俺にとって大分鬱陶しかった。後、どうでもいいけど眠りが浅すぎて全然寝た気がしないんだけど。あまり寝付けなかったこともあり少し憂鬱になりながら俺はパンドラの元へと向かった。
「さて、私に何の様でしょうか?エピタフ司教?」
「手土産ですヨォ♪パンドラ様♡」
俺はそう言うと体内からクルガンの死体を取り出した。それを見たパンドラは目を軽く見開き驚いた様を見せる。その様子に少し俺は笑みを浮かべたがすぐに顔を戻し、話を続ける。
「オヤァ?反応がないのは寂しいですネェ、パンドラ様?」
「いえいえ、ある程度要件について予測していたのですが、これほどのものとは思っても見なかったので驚いているのですよ。しかし、これは嬉しい手土産ですね。ありがとうございますエピタフ司教」
よかったぁ、お気に召した様だな。
「それよりもよろしいのですか、エピタフ司教?」
「と言いますと?」
「『八腕』のクルガンを自身に混ぜなくても?」
ああ、そゆこと。まあ、確かに取り込めば確実な戦力アップに繋がるけどさぁ。
「取り込まなかった主な理由はですネェ、彼の戦闘経験はワタクシとは合わなかったからですヨォ♪」
「合わない、ですか」
「エエ、まあ、わかりやすく言ってしまうと彼の腕は8本あるのに対してワタクシの腕は2本でショウ?その時点で戦闘の仕方に差が生じてしまうのですヨォ。ワタクシの権能は相手の能力値と経験が自身にかち合う事で初めて真価を発揮するのですから。取り込んで力を得られたとしても得られるのは力だけですからネェ。マァ、取り込まない理由はこんなもんですヨ」
まあ、本音をいくつか混ぜたけど実際には原作ブレイクを避けるためにもクルガンの死体は混ぜられないってのが本音なんだよね。
「なるほど…。わかりました、この死体は有効に使わせていただきますね。ありがとうございますエピタフ司教」
パンドラはそう言うと微笑みながら魔女教徒の1人にクルガンの死体を渡した。ああ、なんて言うか本当に疲れた。さて、要件が済んだ以上ここにいる意味もないし帰るか。俺が振り返り帰ろうとすると。
「ああ、待ってください、エピタフ司教」
……なにこれなんてデジャヴ?クルガンの死体が気に入らなかったのかなぁ?
「なんです?」
「いえ、これほどの土産を貰った以上私も何かお礼に何か贈ろうかと思いまして、なにがいいですか?」
随分と義理堅いなぁ、パンドラは。つーか、欲しいもんかぁ。そーだなぁ。
「部下」
「ん?」
「部下が欲しいですネェ」
「部下、ですか?」
今回の苦労を通して欲しいと思ったのはやっぱり有能なサポーターだ。個人的には強い奴が好ましい。後、索敵と料理が得意な奴。え?何で料理が得意な奴が欲しいかって?理由は単純。まだ魔女教徒初めて4日目だけど自分でメシを作んのがいい加減めんどくさいからだ。目の前で考え込むパンドラを見ながらそんな事を考えていると。
ふと、身体に電流が走ったかの様な衝撃に似た何かに襲われた。その衝動に駆られながら俺は懐にあった福音書を取り出し内容を見た。空白であったはずの用紙には『村にいる人々を殺さずに囚われている1人の男を攫え』と書かれた文が書いてあった。ご丁寧に村の座標付きで。
はぁぁぁぁぁ、一つ仕事を終えて疲れた矢先にこれかよ。本気で俺をここに送りつけた魔女に殺意を抱きながらも俺はパンドラに向き直り話をした。
「パンドラさん。ワタクシ、今福音書から命令が下されたのでそれでは失礼「待ってください。良ければ私が送りますよ?」…いいのですカァ?」
俺が訝しみながらパンドラに聴くとパンドラはいつものようににこりと微笑むと。
「ええ、勿論ですとも」
そう答えた。
◇
場所は変わってルグニカの山の中にある辺境の村。俺は今その村の森の中でギルティラウの隠密性を利用しながら囚われて男を探していた。
はあ、何でこんな面倒なことをしてるんだろうか?つーか、1人も殺すなってどういうことなのさ?気配を殺すのって結構面倒いんだけど?流石に顔も知らない人を探すのに30分も時間をかけているとイライラし始めている。途中で現れた魔獣を取り込んで力を蓄えられてなければこの苛立ちはさらにやばいことになっていただろう。それにしても、
「なんつーとこに村を建設してるんですかネェ?この部族は」
そう、この森は魔獣の群生地、と言うには少し規模が小さいが歩けば何度か出くわす程度には魔獣に出会すほど魔獣が多かった。
アニメや小説を見ていた時にフェリスなどが魔獣の群生地であるメイザース領に屋敷を建てているロズワールの異常性を指摘した際、俺自身フェリスが嫌いだったことも相まって何を大袈裟な、と鼻で笑ったが。魔獣を『混ぜる』ために何度も魔獣と相対した今だからわかるが魔獣の住処に村を作るのはハッキリ言って異常だ。
魔獣は普通の獣とは違い恐ろしく好戦的で縄張りに入った瞬間には襲いかかるくらいには獰猛だ。パッと見た感じ屋敷などがないことから独立した部族なのはわかるがこれは果たして生活面では大丈夫なのだろうか?俺が少し呆れかえっていると。
「おい、早くしろ」
「わかってるって、ったく何だって俺たちがこんな面倒臭い事をしなきゃ何ないんだ」
「気持ちはわかるが早く終わらせよう。後で長から叱られるのは俺たちなんだぞ」
「はいはい、それにしても何だって長はアイツを殺さないのかねぇ?世話をする方の身にもなれってんだ」
「仕方ないだろ大切な儀式なんだから」
2人の男達は口々に愚痴を漏らしながら森の奥へと向かって行った。どうやら福音書に記された男はアイツ等に付いていけば会えるらしい。早速、攻略の糸口を見つけた俺は2人の後をつけた。
◇
歩いて10分もしないうちに一つの洞窟が見えてきた。その中を少し進むとそこには福音書の通り男がいた。しかし、男は片目や喉を潰され、四肢は指を全て切り落とされ、残った目も閉じないように目蓋を固定されていた状態で固定されていた。うわっ、エッグいなぁ。さっき言ってた儀式ってやつか?すると、
「おい!起きろ!飯を届けに来たぞ!」
「なあ、もういいじゃん帰ろうぜ?」
「いいわけないだろ、そんなに早く終わらせたいんだったらお前がやれ」
「はいはい、わかりましたよ。ほ〜ら、アーン」
そう言いながら男は固定されている男の口に飯をねじ込んだ。しかし、いきなりそんな風に扱ってまともに食べられるはずもなく。
「ゴホ、オェ」
「うぇ、汚っ、テメェ服が汚れたじゃねぇか!!」
そう言うと服を汚された男は怒りに任せて殴り始めた。洞窟内にニブイ音が鳴り響く。すると、もう1人の男が止めに入った。
「おい、止めろ!死んだらどうするんだ!?コイツが死んで困るのは俺たちなんだぞ!」
「チッ、わかったよ。オイ、よかったなぁ。助かってよぉ」
2人の男が去るのを見届けると俺は隠密を解除した。そして、固定された男を見る。酷いなぁ、これは。儀式って言ってたけどなんの儀式なんだこれ?まあ、これでミッションコンプリートってね。俺は固定された男に触れて持ち帰りやすい様自身に『混ぜた』。うーん、マジで戦力になんねぇな。正直言っていない方がマシってくらいだ。俺はそう思いながらその場を後にした。
◇
「お疲れ様です。エピタフ司教」
「ありがとうございますネェ。パンドラ様♪」
「それにしてもこちらが福音書に記されていた男ですか?」
「ええ、そうですヨ」
「その、何と言いますか…」
パンドラが寝転がらせている青年を見ながらその先を言いづらそうに言葉を濁す。まあ、言いたいことはよくわかる。贔屓目に言っても死ぬ一歩手前のゴミである。その点に関しては大いに同意できる。何だって福音書はこんな奴を拾ってこいと?俺が少し疑問に思っていると。
「ああ、そうだ、エピタフ司教。彼に何か混ぜては如何です?そうすれば多少は戦力になるはずですが」
「無理、ですネェ」
「と、言いますと?」
「簡単な話、耐え切れないんですヨォ。一般人に他のものを混ぜるというのは」
そうなのだ。他人に『混ぜる』ことは出来る。しかし、やろうとすると肉体の方が耐え切れないのだ。例えば人間同士混ぜようとすると弾けてしまうのだ。
何故弾けるのかというと同じ生き物同士を混ぜると魂がそれを拒否して反発し無理矢理混ぜると反発に肉体が耐え切れず自壊してしまうのだ。同じ種を混ぜるということは言ってしまえば磁石のS極とS極を引き合わせているのと同じ状態になのだ。
ならば、魔獣を混ぜる?これは出来る。ただし、混ぜられるのには限度がある。混ぜられる量というのはいわば受け入れられる量、致死量のようなものなのだ。
例えば人間はコーヒーの場合は70杯ほど飲めば死に至るのと同じように混ぜるものにも限度があるのだ。どれだけ強くても混ぜられる生き物は3〜5体が限界でそれ以上は耐え切れないのだ。俺でも大体取り込めて四大精霊を全て混ぜてその後に数十体ほど魔獣を混ぜたらおそらく限界だ。ラインハルトを取り込んだ日には1発で爆散である。
え?何でそんなに色々と知ってるかって?ガークラで散々試したからだよ。それにここまで弱っているなら多分1体も混ぜられないんじゃないかな?いずれにせよ役に立たないのは事実だ。この男の処遇に頭を悩ませていると。
「おや?この人、加護を持っていますね」
「ホウ。どんな加護かわかったりします?」
「ええ、わかりますよ。ちょっと、待ってください」
そう言うとパンドラは青年の身体に触れ始めた。にしても加護かぁ。珍しいなぁ。まあ、あんまりすごいもんじゃないんだろうけどさ。半ば期待せず待っていると。
「わかりました。珍しいですね、『受容の加護』ですね」
…ん?受容の加護?
「なんですかそれ?」
「わかりやすく言えば受け入れて耐えられる加護ですかね、死に至る毒や病気などを受け入れて耐えられるというものです」
は!?チートじゃあねぇか!もしかしたら、そう思った俺は試しに道中で出会った魔獣10体を青年に混ぜてみる。
「マジ、みたいですネェ」
青年の四肢は禍々しい獣の様なものに変わっているだけで四散しなかった。すると、
「う、あ、」
「オヤァ?お目覚めですカァ?」
「ヒィ、」
青年はゆっくりと体を起こしと、俺の存在に気づくと大きく後退りした。
「ヒドイですネェ、せっかく助けてあげたというのに」
「え?あ、え?」
俺がそう言うと青年は困惑した様に自身の両手両足を確認した。しばらくしてから青年はボロボロと涙を流した。え?恐っ、何?
「あ、ありがとう、ありがとうございます」
涙ながらに青年は俺に感謝してきた。ああ、なるほどね四肢が戻ってきて嬉しいのか納得したわ。それにしても、思わぬ戦力が手に入ったなぁ。これなら後いくつか混ぜても問題なさそうだな。俺は今後の展開に頭を回していると。
「エピタフ司教」
「…何です?パンドラ様?」
パンドラが話しかけてきた。会った時から思ってたけど多いな話しかけてくんの。
「混ぜるので有ればもっといいものがありますよ」
ん?もっといいもの?なんだそれ?
「それはどこに?」
「来てください」
俺はパンドラについていった。しばらくして、壁に着いた。何をするのか疑問に思うとパンドラが壁に触れ何かを呟いた。すると、壁に大きな穴が空いた。うわ、流石ファンタジー。奥に続く階段を降りて広間に着く。そこには強大な圧力を放つナニかの死体ががそこにあった。待て、何なんだこれ?クルガンの比じゃない。なんなんだこれ?
「……パンドラ様?これは一体?」
「ふふ、初めて貴方の驚く顔が見れました。嬉しいです」
「パンドラ様?」
「これの名前は"石塊"ムスペル。四大精霊の内の一体です」
はっ?なんつーもん持ち込んでんだ!いや待て、まさか。
「コイツを混ぜろと?」
「ええ、そうです」
「無理ですネェ」
即答した。無理だ。いくら「受容の加護」を持っていたとしてもこれは無理だ。器が保たなくなり逆に取り込まれそうだもん。しかし、
「やるだけでもいいのでやってみましょう」
「無理だと言ってるので「失敗した場合は私が権能を使って直しますので安心してください」…」
んー、博打が過ぎる。成功させる確率を上げるためには器を強化する必要があるその為には。
「パンドラ様ァ」
「なんですか?」
「カペラを呼んでくれませんかネェ?」
カペラの権能がいる。
◇
「呼ばれてきてみれば。男を強くするために手伝え?ハッ、意味がわからねぇですよ。帰っていい?」
「エルメダ司教?呼び出された以上帰るのはダメですよ?」
「チッ、わかりましたよ、パンドラ様。オイ、クズ肉ちゃっちゃと終わらせやがりますよ」
「ヒヒ、りょーかい」
まさか、本当に対価なしで来るとはちょっと予想外だわ。まあ、何にせよ早めに終わらせよう。ただ、その前に。
「おさらいですガァ、ワタクシがムスペルの死体を混ぜます。その間に」
「あたくしが権能を用いて器を強大なものに変更させるでしょう?いい加減聞き飽きたんですよ」
「ふふ、それでは始めましょうか。私もどうなるのか楽しみです」
手順の確認をしたけど問題無し。さて、あとは。
「最後に確認ですガァ、いいんですねェ?」
確認だけした。
「勿論です」
まあ、Noって言っても実行したんだけどねまぁ何にせよここまで覚悟が決まってるんだったら問題無しだな。
「では、気張ってくださいネェ。負けたら死にますヨォ」
そう言うと俺はムスペルの死体と青年の身体に触れ、権能を発動させた。瞬間、青年の声にならない叫び声が洞窟内をこだました。俺を通して凄まじいエネルギーが通っていくのがわかる。そして、それと同時に青年の身体にヒビのようなものが走る。
「カペラさぁん!」
「わかってやがりますよぉ!!」
少しずつ確実に青年の身体が大きくなっていく。それに合わせて受け入れられる力の量が増えていくのがわかる。この作業を続けること数分。ようやく俺の中を通り続けた力の本流がなくなった。ふと、青年がどうなっているのか確かめる。するとそこには10メートルにも及ぶ背丈の筋骨隆々な大男がそこにはいた。髪は逆立ち、口元には大きな牙が生えていた。生きているのか確かめるべく脈を測る。力強い鼓動を感じる。つまり、
「成功、ですネェ」
俺はどこか疲れを含ませながら。
「ふふ!驚きました!まさか、これほどのものが仕上がるとは!」
パンドラは言葉に興奮を含めながら。
「ま、あたくしが手伝ったんですから成功して当たり前なんですねぇ」
カペラは当たり前だと言いながらどこか興奮したように成功を祝った。すると、
「終わった、のですか?」
岩のような巨人が体を起こした。それだけで凄まじい圧が俺にいや俺たちにかかる。
「ええ、終わりましたヨォ。よく耐えましたネェ、ハッキリ言って驚きですヨォ」
本当にね。コイツの精神力が成功の鍵だったと言っても過言じゃないだろうな。まあ、それはさて置き。
「パンドラ様ァ、ちょっとだけいいですかァ?」
「ふふ、試したいんですね。わかりますよ」
「あーっと、あたくしも見てみたいですねぇ。コイツの暴れっぷりを!」
「さて、今からアナタの故郷に行くのですが里帰りしますゥ?」
「…わかりました。ただ、一つだけお願いがあるのです」
「と、言いますと?」
「村人を私の手で殺す許可をっ!!」
言葉の節々に恐ろしいほどの殺意や憎悪を感じる。まあ、あんな目に合えば誰でもそう思うか。
「ええ、いいですヨォ」
「感謝いたします!」
「では、パンドラ様」
「ええ、行きましょう」
俺たちは転移した。その数分後、3つほどあった山々が更地に変わった。
◇
「イヤァ、壮観ですネェ」
山だった場所を俺は巨人のうえから眺めた。いやマジで一方的だった。なんて言うかthe蹂躙ってかんじだった。もう容赦無し。腕を軽く振っただけで山がえぐれてたもん。カペラはある程度したら帰っちゃったし、パンドラはこの景色を心地良さそうにみている。少し、強化し過ぎたかな?俺は少し『混ぜた』ことを後悔していると、
「主よ」
「……」
「主よ」
「…もしかして、ワタクシのこと言ってます?」
「勿論でございます。私に力を与えて頂いた貴方様に一つお願いがあるのです」
何となく予想つくけど。
「なんです?」
「貴方様の部下にしてください」
予想通り。答えは勿論。
「いいですヨォ」
「オオッ!ありがたき幸せ!」
はしゃぐ巨人。足踏みだけで大地が響いた。
「よろしくお願いしますネェ。えーっと」
「私に名はありませぬ」
名前なしかぁ。流石に名無しとは呼べないしそうだなぁ。
「マキア」
「はっ?」
「今後、アナタはマキアと名乗りなさい♪」
そう言うと巨人は呆気に取られた表情をしてすぐに大声で泣いた。
「オオッ!オオオオオオオオオオオオオオオオッ!なんというッ!なんという幸せッ!ありがとうございます!主よ!」
大袈裟過ぎじゃね。まあ、何にせよ。
「有能な部下Get♪」
この日、俺は後に『厄災』と呼ばれるようになる部下を手に入れた。
最近バイトを始めたので少し更新速度が落ちます。
"石塊“ムスペルなのですが。今から百年ほど前にレグルスが仕留めています。何故皆気づかないかと言うとパンドラが皆に「ムスペルはまだ生きている」と錯覚させているためです。仮に本作で登場したとしてもそれは分身体ということにしてます。