地獄に送られて悪魔になってぼっちに召喚される話   作:オレンジ

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追記しました。


プロローグ

 「ようこそ死後の世界へ。私は、あなたに新たな道を案内する女神。あなたは本日午後13時42分に亡くなりました。辛いでしょうが、あなたの人生は終わったのです」

 

 「…はぁ」

 

 目が覚めると、俺は宇宙のようにキラキラした空間に椅子だけがある壮大で殺風景な景色の真ん中に立っていた。

 

 目の前には自分は女神だと名乗る現実にはありえない位の美女。そんな美女がお前は死んだのだと言ってくる。この人がそういうのだからそうなのだろうという説得力がある。

 

 「あなたには、いくつかの選択肢があります。それは、このまま日本で赤ん坊として生まれるか。天国的な所でお爺ちゃんみたいな暮らしをするか。さあどっち?」

 

「……じゃ、天国で」

 

 生前に未練はあれど、生まれ変わったところでそれはもう俺ではないし、それなら天国行くほうがましだろう。

 

 「あ、でもね? 天国ってのはね。あなた達が想像している様な素敵な所ではないの。死んだんだからもう食べ物は必要ないし、死んでるんだから、物は当然産まれないわ。作ろうにも材料もないし。天国にはね、何にもないのよ。ネットもなければテレビも漫画もゲームもない。そこに居るのは、すでに死んだ先人達のみなの。もちろん死んだんだから、エロい事だってできないし、そもそも体がないんだからできないわね。彼らと永遠に意味もなく、ひなたぼっこでもしながら世間話するぐらいしかやる事がないわ。それでも天国でいいの?」

 

 なんだそれ。でもなんか天国なんて行きたくないでしょ? 今ならうんたらっていう悪徳業者の臭いがする。この天国の話だってほんとかどうか怪しい。なんか胡散臭いんだよな。

 

 「天国で」

 

 「うんうん、天国なんて退屈な所行きたくってはぁ!? あんた正気!?」

 

 「むしろすでにくたばった奴らがいるのなら、そいつらと茶でもしばくぜ。あ、茶はないんだっけか? まぁいいや。することなくなってもずっと寝てるからお構いなく」

 

 「いやいやいや、アンタみたいなやつ初めてよ? まだ高校生でしょ? やり残したこととかあるでしょ? 未練とかあるでしょ!?」

 

 「どのみち手遅れだろ」

 

 「そこで! ちょっといい話があるのよお兄さん!」

 

 待ってましたとばかりに美女がこちらに体を乗り出してくる。

 

 ほら来た。どう考えても悪徳業者のそれだ。

 

 「いいって。天国で」

 

 「はぁ!? ふざけてんの!? 話だけでも聞きなさいよ!」

 

 「必死すぎて草」

 

 「きぃいいいいいいいいいいいい!!」

 

 最初の神聖さの欠片もない自称女神はその場で地団駄を踏む。

 

 こいつ、俺だけじゃなくて他にもやってるな。こいつの目的の片棒担がされる前に話を打ち切るか。

 

 「もういいか? はやく天国に送ってくれ。あんたと話してると疲れるんでね」

 

 「そんなにしゃべってないじゃない! あーはいはい。それじゃ、この魔方陣の中央から出ない様にね。もう二度と会いたくないわ」

 

 「それは良かった」

 

 「……わたし、何かした……?」

 

 若干、涙目になりながらいじけ出す自称女神。こいつほんとに女神か? 子どもでは? 体が大きいだけの子どもでは?

 

 親が怪しい宗教にハマって一家が離散した経験からどうも人を騙そうとしてくるような輩にはきつく当たってしまう。

 

 「ところで、ずいぶんと禍々しい魔法陣じゃない? まるでティナーにつかうひき肉にされそう。趣味悪くない?」

 

 「へっ? そんなわけ……あれ、これ……地獄への強制転送用のやつ……」

 

 「はぁ!? いくら腹立つからって、お前そういうことするのか!?」

 

 「ち、違う違う! ほんとにただのミスっていうか、手違いっていうか! しかもこれ強制転送用だから止めれないし……もう無理ね。ごめん」

 

 「ごめんで済むか! 済んでたまるか! まだ童貞なんだぞ!」

 

 「何のカミングアウト? あ、でも、苦しむアンタ見てたらなんかすっきりしたわ! 向こうでも頑張って! ぷーくすくす」

 

 「ふざけんなよ、この駄女神がァアアアアアアアアアア!」

 

 禍々しい魔法陣が徐々に俺の足元から上がってくる。同時にじわじわと足者とから粒子となって転送されているのでさながら拷問だ

 

 「はぁ!? 誰が駄女神よ! 取り消して! 今すぐ取り消して!」

 

 「いつか目にもの見せてやるからなぁああああああああ……」

 

 「うわっ、こわっ……えんがちょ」

 

 魔法陣が口元まで上がってきて声が出せなくなり、最後に目にしたのはそんなことを言いながら汚いものでも見るようにえんがちょする駄女神の姿だった。

 

 いつか泣かす。

 

 

 

このすば

 

 

 

 「えっ、なにこの魂。罪人じゃないじゃん」

 

 地獄に送られて、魂の選別をする段階でそんなことを言われた。

 

 だって俺、なにも悪いことしてねぇもん。

 

 「困ったな……送還……はできないな。無駄に神聖な気がこびりついてるし。地上に落とそうにも権限がなぁ……お前、このまま消滅するのと、長い時間かけて悪魔になるのどっちがいい?」

 

 小さい声で無下にするのも救いがなさすぎるとつぶやき、角の生えた目の前のマッチョで巨漢なオジサマが提案してくる。

 

 見た感じいかついのにずいぶんと親切な悪魔だ。

 

 「当然、悪魔になるほうで。イケメンにしてくれよ」

 

 「なんか、軽いな……まぁ、いい。とりあえず下級悪魔として働かせてやる。なに、数百年も働けば魂も完全に悪魔として変性する。励めよ」

 

 そこからはもう大変。来る日も来る日も魂の運搬。毎日毎日運んで、運んでさぼって怒られ、運んでさぼる。気分はピクミンにでもなったみたいだった。俺っちは黄色いヤツな。良くとんでたから。さぼってたって意味ね? つか、死ぬ奴多すぎるんだよ。もっと懸命に生きろよ。とか思ってたらこの世界、モンスターがいるらしい。流石の俺っちも目を疑ったね。日本じゃねぇのよ。俺っちの担当してた区画。死んだ挙句、地獄に送られたと思ったら重労働の毎日に国外追放ならぬ世界追放までされてたんだ。泣けるね、ほんと。

 

 だが、簡単には転ばないのが俺っちのスゴイところ。運搬してる際に色々と話を聞きつつ、その魂をからかって遊んでたらなんか強くなってたの。悪魔は人の悪感情を食べて成長するらしい。それを聞いたとき、ついに人ですらなくなったかとナーバスになったもんよ。5分くらいだけどね。根っこで人だった部分はだいぶなくなっていたらしい。そんでもって、強くなると当然絡んでくる下級悪魔ちゃんたちがいるわけ。まぁ俺っちの敵じゃないから死にかけながらも軽く倒してやった。

 

 そんな生活をいくらだっけかな。とにかくすごい長く過ごしてたら、ついにダンディちゃんにも認められて独り立ちってなったのよ。あ、ダンディちゃんってのは最初に俺を悪魔にしてくれた悪魔ね。悪魔悪魔ってややこしいな。マッチョでいいか。俺を悪魔にしてくれたマッチョがダンディちゃんね。おーけー?

 

 独り立ちってのはいうなれば自分の区画を持って魂を選別するわけ。こいつ気に食わないからキツイ拷問の後に消滅、こいつ意外といいやつだから重労働ののちご飯製造機にして使えなくなれば転生で、みたいなね。やることえげつない? 俺もそう思う。ほんとほんと。

 

 そこからさらに数十年……数百年? そのころになると、俺っちモテまくりのヤリまくり。自慢のビックマグナムが乾く暇がないくらい。常にサキュバスちゃんが周りにいて羨望のまなざしを独り占め。羨ましいだろ? そんなことばかりしてたらついたあだ名が色欲の悪魔。失礼しちゃうだろ? 俺っちはただ求められたから応えてただけなのにさ。このころから俺っちは『アモン』と名乗ることにした。この頃から、人間のだった時の記憶が完全に消えてしまった。我ながら泣いちゃうね。

 

 気が付くと魂の選別なんて面倒なことをやる立場じゃなくなって、地獄の公爵なんてものになっていた。サキュバスちゃんはみんな俺っちを熱いまなざしで見つめるわけよ。モテるって辛いね。そんな俺にも友人ができた。見通す悪魔のバニルってやつ。対象の過去や未来や現在を見通す力とかいうインチキ野郎。まぁ、俺っちにその力は効かないんだけどね。ざまぁ!

 

 そんなヤツがこういうわけだ、

 

 「これはこれは、アモンどの。ご機嫌はいかがかな? 時に、下級悪魔時代に周りに触れ回っていた青髪の駄女神とやらに復讐はできたのかな?」

 

 ガツンと頭を殴られたみたいな衝撃だったね。俺っちてば、忘れちゃいけないことを忘れていた。もはや何をされたのかすら思い出せないが、キッチンで料理してるときに黒光りするカサカサ移動するアイツを見た時みたいにこいつだけは許しちゃおけねぇっていう感情がふつふつと沸き上がった。

 

 俺はバニルに情熱的なキスをした後、情報をあつめるため、人間界へと残機を下ろすことにした。あの時の感動で震えるバニルの顔は忘れられないね。ほんと最高。え? 地獄で情報を集めないのかって? あれだけ触れ回ってダメなんだからダメだろ。あ、でも今思えば、下級悪魔だったから相手にされてなかっただけだったりするのか? そこに気が付くなんて俺っち天才!?

 

 まぁ、そんな折、召喚を呼びかける声が響いた。すぐにこれだとおもった俺っちは他の下級悪魔を押しのけて召喚に応じたってわけ。するとどうだ、召喚主は俺にこんなことを言ったんだ。

 

 「あ、あの! 私と友達になってくれませんか!?」

 

 この色欲の悪魔を呼び出しといて何の冗談だよって思ったね。いや、無理やり召喚に割って入ったのは俺っちなんだけどね。それにしたって悪魔と契約してまで願うことじゃないだろ?

 

 はい、回想終わり。

 

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