あの後、帝国の増援が駆けつけ、私は辛うじてその場から逃げ出すことが出来た。
テネブラエの領主であり、ルナフレーナ様の母であるシルヴァ様が殺され、ルナフレーナ様は、ノクティスとレギス陛下を逃すために自ら敵の手に落ちることとなった。
それから、テネブラエはニフルハイム帝国の支配下に置かれ、ルナフレーナ様は幽閉されてしまった。
その後、王都イムソムニアへと戻り、レギス陛下へと此度の戦闘の結果を報告した。
レギス陛下は、グラウカ将軍がドラットー将軍であったことを知るとひどく落ち込んでいた。
長年付き添ってくれた臣下が、自分に対してひどい憎しみを抱いていたことを知ったのだ。落ち込むのも無理はない。
それから、ドラットー将軍の統括であった王の剣は、帝国のスパイがいる可能性を考慮し、一時解体となった。
それからと言うもの、私はレギス陛下から、長い休暇を言い渡され、時間を持て余していた。
今までが忙しすぎたため、急に時間が有り余ってしまいどうすれば良いのか分からないでいた。
朱雀の軍令部にいた頃も、仕事に追われることがほとんどで自分の時間など録になかった覚えしかない。
こんな時かつての相棒のトンベリが居たら、退屈もしないのだが…と考えているとレギス陛下から私を呼ぶ召集があった。
何事かと思い、すぐに王座の間へと向かう。
「すみません、お待たせしました。此度の召集、私に何の用でございますか?」
「急に呼び出して、すまないな。今回のテネブラエの件、お前に迷惑を掛けたことを謝罪したくてな」
「その様な必要はありません。此度の件、私はノクティス王子とルナフレーナ様の護衛の任務を遂行したまでです。レギス国王陛下が私などに謝罪をする必要はありません」
「もう私のことを父親とは呼んでくれないのだな…」
「あいにく私は、既にルシスの名を捨てた身でございます。レギス国王陛下を父親呼ばわりなど身に余る所存です」
「そうか…つまらないことを聞いたな、許せ」
「御意」
「では、話は終わったようですし、私はこれで退室させてもらいます」
「まぁ、待てクラサメよ、今お前には休暇を命じているはずだな。だから、時間を持て余しているだろう?」
「…そうでは、ありますが…」
「今から言うことは、一人の愚かな父親の戯れ言だと流してもらって構わない。すまなかった……!!私は父親失格の男だ…お前も愛すべき息子だと言うのに、私は……ノクティスが生まれてから、お前に構うことを止め、神の御告げを理由にルシスからお前を追放し、挙げ句の果てには、お前を王の剣へと配属し、まだ幼いと言うのに戦場に立たせてしまった…許してくれとは言うつもりはない。ただ、お前に謝らせて欲しい。今回のドラットー将軍の謀反の件で私は自分の不甲斐なさをお前に尻拭いさせてしまった。すまない…!!」
レギス陛下は本当に申し訳なさそうに私に対して頭を深く下げた。
「頭をお上げ下さい陛下。私はルシス王家から追放されたことなど恨んでおりません。貴方に対して思うことがないと言えば、嘘になりますが、私は当の昔に貴方と私の母親から親の愛を受け取りました。貴方が本当に謝るべきは、私などではなく、帝国に故郷を追いやられてしまった民たちに対してです。今回のドラットー将軍の件もルシス王家からの庇護を受けられなくなったことに対する恨みが発端だと本人の口から伺いました。あなたは、真の王を重視するあまり、民が見えていない」
「自分の息子にこれほどまでに言い負かされるとは、国王失格だな…。なら、私はどうすればいいのだ。このままではノクティスは…ノクティスは…」
「貴方のノクティスに対する厚い保護に、親バカ以外の何か理由があるのですか?」
「お前も一応王家の人間だ。知る権利はある、真の王に選ばれてしまったノクティスは、いずれこの星を救う運命を託されている。だが、ノクティスは、その運命を遂行すると、命を失ってしまうのだ…」
そう言うと、レギス陛下は、片手で両目の目尻を押さえた。
「クラサメよ、お前もこの世界にシガイと呼ばれるモンスターが日が落ちると出現することは知っているな?いづれ世界は、太陽の光が通らなくなり、闇が一日中覆い続けることになるのだ。その闇を祓うことが出来るのが選ばれた王ノクティスと言うわけだ」
「レギス陛下が言いたいことは分かりました。この世界はいずれ闇に覆われることになり、それを解決するためには、ノクティスの命を落とす必要があると言うことですね」
「概ねその通りだ」
「他に方法はないのですか?」
「ない。これは六大伸の一人である剣神バハムート様からの啓示であった。何度、神に尋ねても来るべき日を解決するにはこの方法しかないと言われてしまった」
「陛下は、神に言われたからその運命を受け入れると言うのですか?」
「あぁ、私にはもう既にどうすることは出来ない。今の私に出来ることは、これ以上帝国に侵攻されないために魔法障壁を張り続けることだけだ」
「なら、私は何も言いません。私は私なりの方法でノクティスが死なずに済む方法を探します」
「そうか…。お前にはこれまで以上に苦労をかけることになる。」
「大丈夫です。振り回されるのは慣れていますから」
そう言って私は、今度こそ王座の間から退室する。
私にやるべきことが今見つかった。私がするべきことはノクティスが死なずに済む方法を探すこと。
探し回って見つからなかった場合は、その時は…私が…
ーーーーーーーーーー
ノクティスが死ぬ運命に抗うために、私は文献を読み漁った。
そうして、分かったことは、遠い昔、かつてこの世界は、古代文明『ソルハイム』という文明が栄えており、帝国の飛空艇や魔導アーマーなどの機械文明が繁栄していた。
繁栄した人類は、愚かにも神に戦争を仕掛け、六神の人柱である、炎神イフリートを取り込み、魔大戦が勃発した。
結果は、ソルハイムという文明が滅びることとなった。
六神達は、こうした争いを繰り返さないために、人間に神々の奴隷になる代わりに、力を授けた。
超常の力を授かった二人の男女は、その力を使って人類を繁栄させた。
男は、その力を使って、ある国の王となった。その国の名前はルシス王国、我々の遠い先祖に当たる。
女は、神々から星の力と逆鉾を受け取り、誓約や傷を癒す治療の力、神々との対話をすることが出来る神凪となった。
そうして、約2000年前までは、平和は続いたらしい。
約2000年ほど前に、ルシスにある流行り病が流行する。
それによって、多くの民が死ぬことになったらしい。
これを危惧したルシス王と神々は、ルシス王国を建設し、神々は、ルシス王にクリスタルと光耀の指輪を授け、ルシス王家にその守護を命じる。
ルシス王の尽力によって、流行り病は、収束の一途をたどったが、当時のルシス王はそれを終えると死んでしまった。
その時から、ルシス王国に12体の巨大な像が建設され、死んだ歴代国王の魂が収まる棺となっている。
ここに納められた歴代の国王の魂は来るべき時まで、封印されることになっている。 その来るべき時とは、ノクティスが使命を果たすときのことなのだろう……
ルシス王家の成り立ちを知り、私は憂鬱な気分になった。
ノクティスが死ぬ運命は2000年以上も前から決まっていたことだった…? それならあの父が諦めてしまう気持ちも分かってしまう。 私は、ノクティスに自由に生きて欲しいと思う、私は既に一度死んだ身だ。代われるなら代わってやりたい…そう思わずには居られない……。
だが、まだノクティスの運命の時まで、まだ時間があるはずだ。
それまでに私に出来ることは…必ずあるはずだ。