下水道の獣   作:あらほしねこ

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下水道の獣

「さあ、みんな準備はいいかな、忘れ物はないね?」

「はい!お師匠様!」

 まるで遠足に出発する教師と生徒のようなやりとりに、巡礼尼僧と若い戦士は優しく苦笑する。それでも、彼ら一党の背嚢には弁当やお八つなどではなく、探索用の装備資器材が各々の役割に応じて納められ、その上に複数の麻袋に仕分けられた毒餌を積んだ背負子が取り付けられた。

 退役軍人の復帰、そして、ギルドから要請されていたものの、一党の頭目である彼の故障のため一時延期となっていた下水道調査。あれから一週間ほど延びてしまったが、その分準備は万端。装備にしても、面子の仕上げにしても。後は、慎重に事を運び、先を焦らない。

「それにしても尼僧殿、貴重な奇跡をこんなことに使わせてしまって、本当に申し訳なかったね」

 槍使いが差し入れした薬草もそうだが、巡礼尼僧が治癒の奇跡と整骨の施術を時間をかけて、そして、入念に施した甲斐あって、魔女の一撃で傷めた腰痛はすっかり追い払われていた。

 それにしても

 巡礼尼僧は、治療のための施術を施す際に見た、退役軍人の全身に刻まれた傷痕を思い出す。歴戦の証明、という事でもあるのだろうが、補助のため共にいた半闇狩人が思わず息を呑むほどの、無数の火傷や創傷、裂傷の痕。

 まるで、魔神王の使徒と戦ったが如し、で、ございますね。

 半闇狩人に対しては、やれ酔って焚火の上で転んだだの、足を踏み外して階段から転げ落ち床板を突き破っただの。ろくでもない話ばかり。

 本当に、不思議な御仁でございます。巡礼尼僧は、この、気のいい、しかし、どこか掴みどころのない男を前に、その時のことを思い出しながらふっと笑みを漏らす。

「なにをおっしゃいますか、黒騎士様。お役に立てればと願いこそすれ、迷惑と思ったことなどございません。それに、狩人様もよくお力をお貸ししてくださいましたゆえ、今日のこの日を迎えられたのでございます」

「そうだね、本当にそうだったね」

 そして、退役軍人は若い戦士に向き直ると、丁寧に一礼した。

「君も、若い子の世話で忙しいだろうに、力を貸してくれて感謝するよ」

「よしてください、先生。これじゃ、まるで戦争に行くみたいじゃないですか」

 苦笑交じりにこたえる若い戦士に、退役軍人は嬉しそうに頷く。

「そうだね、でも、まるで冒険者みたいだ。やっと夢がかなった気分だよ」

「いや、もうだいぶ前から冒険者じゃないですか」

「ハハハ、いや、失敬失敬、たしかに、そうだったね」

「それはそうと、先生。やっぱり、剣は使わないんですか?」

 いつもの装備に身を固めた退役軍人、その腰には、愛用のフランジメイスが一本。

「大鼠や黒蟲なら、これで十分だよ。それに、君たちが付いているからねぇ、大丈夫さ」

「そうですか……」

 少し残念そうにうなずく若い戦士、あの剣技を振るう退役軍人の姿を見てみたかった。図々しいとは判っている、剣士の端くれとして正直な思いではあるものの。

「それよりも君、ちゃんと兜は持ってきただろうね。冒険者として顔を売りたいというのはわかるけど、頭の守りだけはしっかりした方がいいよ」

「ええ、だからこう、探して引っ張り出してきましたよ」

 若い戦士は、腰の帯革に提げていた兜を外して退役軍人に見せる。あまり使われた形跡がないようだが、手入れはされている。まあ、及第点か。

「うん、うるさいことをいうようだけど、礫一個頭に当たっても、人間というのは途端に弱ってしまうからねぇ」

 戦場での経験から出た言葉、それに応えるように、半闇狩人も、被っている革帽子の顎紐を確かめる。見た目大きなキャスケット帽に似たその中には、彼女の頭の形に合わせて削ったコルクの塊が詰め込まれている。

 さすがに、メイスや刀剣の一撃には厳しいが、棍棒や礫の一発くらいなら気が遠くなることもない。特に頭の保護は譲らなかった退役軍人が、女の子なんだから可愛らしい方がいいじゃあないか。そういって、奮発してくれた革帽子。

「それに、あんな暗がりの中まで、わざわざ顔を見に来る人なんていないよ」

 退役軍人は、なぜか楽しそうに笑う。

「顔は、人がいるところで存分に見せたらいいからねぇ」

 まあ、それでも、私みたいにみっともない顔になってしまっていたら、台無しだからねぇ。そんな冗談を交えながら、退役軍人は気楽そうに笑う。

「さて、それじゃあみんな、行こうか」

 とその時。

「お弟子ちゃん、お弟子ちゃん」

 いざ出陣、その時半闇狩人に声をかけたのは、獣人女給。包みを抱えて、ぱたぱたと厨房から駆け寄ってくる。

「あ、はい、なんでしょうか」

「これ、あたしからの差し入れ。お腹すいた時とか、みんなで食べて?」

 獣人女給が差し出した、油紙を何重にも巻いた包みと、蜂蜜の小瓶。半闇狩人の鋭敏な感覚は、微かに漂う香りから包みがパンケーキであることに気付き、ふわりと表情を明るくする。

「ありがとうございます、みんなでいただきますね」

「うんうん、それじゃ、気をつけて、いってらっしゃい」

「はい!いってきます!」

 

 

「この辺でいいですか、先生」

「そうだね、お願いするよ」

 退役軍人の一党は、地下下水道の最深部へ向かって順調に歩みを進める。時折、大鼠や黒蟲の群れと遭遇することはあっても、後列からの半闇狩人が射かける矢で漸減、そして、それをかいくぐってきたものは、退役軍人と若い戦士の連携で問題なく駆逐していく。

 今の所、幸運にもあの時の山津波のような大群にはまだ遭遇していない。しかし、そうなった場合は背負子ごと毒餌を放棄し、全力で撤収という段取りは徹底してある。無理して強行突破する必要はないし、理由もない。

 そういう時は素直に帰ろう、帰れればまた来れるからね。と、いつもの調子であった。

「やはり、みんながいてくれると違うねぇ。これなら、なんとか全部置いて帰れそうだよ」

「ですが黒騎士様、この人数で事が進んでいるということは、そうでなければ危険という事ではございませんか?」

「やっぱり、尼僧殿もそう思うかい?」

 巡礼尼僧の問いかけに、退役軍人はだいぶ軽くなった背負子の感触を確かめながら応える。そう、確かに、彼女の言う通り。

 ここまで順調にこれたのは、巡礼尼僧や若い戦士の加勢もそうだが、入念に計画を練った上でのことでもある。これが、何も知らない判らない、素人同然の若者が1人2人でうろちょろすればどうなるか。

「――――――やっぱり、こうなってしまうよねぇ」

 退役軍人は、小さく肩を落としながら嘆息しつつ、石畳の上に散乱する白い欠片と衣服の切れ端に目を落とす。そして、手分けして集めようと動いた半闇狩人と若い戦士を一旦制止すると、自ら石畳の上に散らばるそれを観察する。

 その遺骨には鼠の牙で齧られたような跡が残るが、それ以上の損傷はない。大鼠以上の牙を持つもの、そして、刀剣や鈍器。それらによるものではないと判断し、退役軍人は半闇狩人たちを招き呼ぶと、その散らばる中から協力して認識票を探す。

「申し訳ございません、この方は、他のどなたかのものでございます」

 ようやく見つけた白磁の認識票、巡礼尼僧に確認を求めるも、そこに刻まれた名前を見て、彼女は違うと言うように静かに首を振り、文字通り、ここに散った冒険者へ合掌を捧げる。

(しかし、妙だね)

 確認の済んだそれら遺骨や衣服、遺品の破片と共に、認識票を麻袋に納めながら、退役軍人は心の中で呟く。こんな所で、ひとり寂しく命を落としたのだ、無念でないはずがない。なのに、動屍體(ゾンビ)にも食屍鬼(グール)にもならず、こうしてこの場で朽ちていくに任せたという事は。

 ――――――誰かが弔ったからではないか。

 ふと、退役軍人の頭をかすめたもの。しかし、それを口にすることはない。それを皆に聞かせるに値する根拠を示せない以上は。

「君、申し訳ないけれど、帰りに必ず迎えに来るからね、いましばらくここで待っていておくれ」

 小さな麻袋に納めた遺骨に向かい、まるで生あるものに対するように語りかけた退役軍人は、壁際に安置した遺骨に黙祷した後ようやく立ち上がる。

「お師匠様……」

「大丈夫だよ、待たせて済まなかったね、さあ、それじゃあ、先に進もうか」

 気遣うような半闇狩人に、退役軍人は努めて明るく応えながら先を促す。そして、彼の一党は再び地下下水道の奥へと進んでいく。

 もう既に、退役軍人が描き上げた地図の上で未到達とされる領域に到達している。そして、時折立ち止まりながら、退役軍人はギルドが配布していた地図と、自分が描き直している地図とを見比べながら、これまで進んできた道順をこれまで以上に慎重に確認する。

「まさか、こんなに広いなんてねぇ。いくらなんでも、ここまでとは思わなかったよ」

 長年の放置がたたったか、石積みが崩れ先に進めない場所があれば、逆に、崩れた壁の向こう側に、確認されていない通路らしき空間が現れていたりする。そも、こんな深くまで潜る必要もないから、把握されていないのは当然なこと。

 元々下水道掃除とは、大鼠や黒蟲が抜け出し町に入り込まないよう駆除すればいいものであって、こんな深部まで探索することは求められていない。

「これは、今回は範囲を絞った方がいいね。闇雲に進んでいては、いざという時素早く戻れなくなってしまうよ」

 小さな蝋燭の明かりの下で、ギルドの地図と自分が作成した地図を見比べながら、退役軍人は呆れたようにつぶやく。そして、それを覗き込む半闇狩人や、若い戦士も同様に賛意を示してうなずいていた。

 なんだか、嫌な予感がするねぇ

 退役軍人は、思った以上に不穏な空気を漂わせはじめた坑道の中で、微かに表情を険しくする。自分に限ったことではないだろうが、悪い予感に限って良く当たる。これは、現役時代から続いた、あまり自慢できない特技。しかし、その亡霊の囁きじみた声に従い続けてきたことで、どうにか今まで生き延びてこられた。

「黒騎士様、毒団子もほぼ置き終わったことでもありますし、今日の所は、そろそろ打ち切りになされては?」

「そうだねぇ……」

 巡礼尼僧の意見具申にうなずきながら、退役軍人は、目の前の崩れた壁の石積みを乗り越え、汚水が落ちていく急傾斜を注意深く見おろす。

 こんな場所、描いてなかったじゃあないか。

 退役軍人は、その、あまりにも不穏な様相を醸し出す急傾斜を見やる。ざあざあと音を立てて、漆黒の深淵へと流れ落ちていく汚水。その先は、見通せないほどの闇。

 それでも、建築当時には管理すべき施設があったのか、そして、この下にさらに何らかの施設があるのか。かなりの急傾斜ではあったが両側に通路、と言えなくもない石畳の坂が、カンテラの蝋燭の灯に浮かび上がるのが辛うじて見えた。

 元は、これほど無防備に開かれた場所でなかったであろうことは、崩れた石積みに埋もれかけた小部屋らしき空間の様子から伺えた。経年劣化や湿気で壁が崩れ、剥き出しになったのであろう排水口。恐らく、この先にあるものに、今回の異常事態の原因があるのかもしれない。

 しかし、今は一党の面子を連れて降りるつもりはない。読みが甘いとのそしりを覚悟で言えば、こんなに早く対象を見つけられるとは想定外だった。

 それに、文字通りここが下水道の最深部へ至る道の一つであろうことは、状況から見て容易に想像できる。この場所を見つけただけでも十分な成果と言えるだろう。退役軍人は、そう自分を納得させることにした。

「そうだね、尼僧殿の言う通りだよ。今日の所は――――――」

 帰ろう、そう言いかけた退役軍人の表情が険しく吊り上がる。そして、微かに震えを帯びた半闇狩人の声。

「お師匠様、なにか大きな足音が――――――」

 彼女の声は、暗闇の中からゆっくりと近づく凶暴な気配にかき消される。まだ距離は十分離れているはずなのに、これほどまでに強烈な瘴気と怒気の持ち主とは何者か。

「みんな、背負子は捨てて。君と尼僧殿は下がりなさい」

 退役軍人は、背負子を捨て、フランジメイスを握り直す。そして、同じように、他の面子も残った毒団子の袋や背負子を捨てる。そして、半闇狩人と巡礼尼僧を背にした退役軍人は、若い戦士と防壁を造るかのように武器を構えた。

「お師匠様・・・・・・あそこの角の向こう、来ます、あと20歩ほどです・・・・・・!」

 緊張する声と共に半闇狩人が指さす、通路の曲がり角。漂う瘴気と凶暴な気配を漂わせ、闇の中からゆっくりと歩み現れた獣の影。

 カンテラで保護されているにもかかわらず、蝋燭の火が怯えるように揺れる。そして、辛うじて届いた明かりに反射する幾つかの光。

(まさか、悪魔犬の群れが――――――?)

 まさに不覚、そして迂闊。ありとあらゆる状況を想定と言って置きながら、まさか、町のすぐ真下の地下下水道に、こんな危険な怪物がいたとは。

 相当光を嫌悪しているのか、蝋燭の光が届く距離に近づこうとしない。しかし、紅く光る無数の目は、統制の取れた動きでこちらの様子を伺い続けている。

(こんなことなら、彼も連れてきてあげればよかったねぇ)

 退役軍人は、麻袋に納めて安置してきた遺骨を思い出す。これでは、撤退の際に回収していく余裕はない。こんな時にでさえ、退役軍人の思考は高速で回転し、これまで辿ってきた道筋、そして、記憶している構造を次々と呼び出しては、一党の戦力と装備でこの状況から悪魔犬達を出し抜いて、地上まで脱出する順路を組み立てる。

「お師匠様!あれは――――――!」

「UUUWOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 何かに気付いた半闇狩人の声は、暗闇の中から轟く咆哮に打ち消される。そして、ついに下水道の獣が、退役軍人たちの一党を攻撃目標と認識した。

 凄まじい咆哮と共に突進してくる獣、それは、闇に紛れて姿は見えない。しかし、牛や馬よりも大きい、いや、それ以上であることは疑いようもない足音と咆哮。そして、暗闇の中を猛然と突進してきた獣は、山津波のような勢いで退役軍人たちを蹴散らし、跳ね飛ばすように駆け抜けた。

 刹那、小さい悲鳴と水音。

「いけない!!」

 水路に落ちたのは、半闇狩人と巡礼尼僧。軽装で目方が軽い分、下水道の獣の体当たりには抗いようもなく、流れに巻かれ排水溝に飲み込まれた気配。そして、獣は30歩ほど先で立ち止まり、再びこちらに向けて凶暴な怒気を吹きつけてくる。

「―――やっぱり、君の言うことを聞いておけば良かったよ」

「先生……!?」

「気をつけたまえ、アレは――――――」

 下水道の獣の正体を告げようとしたその刹那、再び凄まじい咆哮が轟き渡る。暗闇の向こう、彼らの退路に立ちふさがる下水道の獣。辛うじて見通す姿に、退役軍人は小さく歯噛みする。

 こうなったら、自分達も排水口に飛び込むしかない。しかし、そこで追撃を受ければ、ふたりとも行動不能、最悪の場合は――――――

 ここは自分が残り、先に彼を生かせるべきか。しかし、放水口の先が安全である保証もない。どうする、しかし、ここでとどまって、彼女らふたりを見殺しにするなど到底できない話。それに、ここでこの怪物を相手にしても無事でいられる保証はない。いずれにせよ選択肢はない。決断し、若い戦士に声をかけようとしたその時、

「先生、行ってください」

「何を言ってるんだ、君は!あれは――――――!」

 若い戦士は愛用の剣を構えつつ、いたずらっぽく笑いながら退役軍人に先を促す。

「大丈夫です、俺もすぐ追いかけますよ」

「……わかったよ、でも、時間稼ぎなんて考えないで、君もすぐ来るんだよ」

「わかってます、早く行ってあげてください、あの子、きっと待ってますよ?」

「すまない、それじゃあ、先に行って待ってるからね!」

 若い戦士の覚悟と決意、しかし、退役軍人は、それでも彼に呼びかけると、意を決したように深淵に続く急傾斜へ身を躍らせた。

 

 

 数えて300、それまでは絶対に踏みとどまる。

 若い戦士は、可能な限り油断なく剣を構えながら、暗闇の向こう、下水道の獣と対峙する。もちろん、退役軍人に言われた通り、ここであれを倒す努力はしない。

 ほんの一瞬、蝋燭の光が届き、目に映った下水道の獣の姿。あれが見間違いでなければ、どう逆立ちしても、自分の力も剣も届きなどしない。先生が警戒するのも当然だ、あんなバケモノ、魔法の武器を振るうか、銀等級でもなければ対処の仕様もない。

 だから今は、自分にできることをやる。

(63―――78―――84――――――)

 頭の中でゆっくり数える数字、それは、構えた剣の呼吸、足運び、体裁きのリズムと調子が重なり、やもすれば乱れそうになる呼吸や、足元を野兎のように飛び跳ねる恐怖を鎮めていく。

「UUUWOOOOOOOOOOOO!!」

 再び、鼓膜をつんざくような咆哮。そして、下水道の獣が突貫してくる。

(94―――101―――120――――――!)

 硫黄の臭気と共に迫る鉤爪、それに対して、構えた剣を振るい迎え撃つことはせず、咄嗟に手首を返し、腕全体を覆う盾のように構えた瞬間、火花を上げてその上を獣の鉤爪が滑り抜けていく。

(132――――――!?)

 視界の隅に閃いた光、そして、鋭く迫る生臭い臭気。若い戦士は、考えるよりも先に剣を翻した瞬間、凄まじい衝撃が両腕を振動させ、弾き返された剣が自分の額を強打する。

(145―――159―――170――――――!)

 兜がなかったら即死だった。衝撃で滲んだ涙を、素早く目を瞬かせてかき消しながら、若い戦士は排水口の位置を確かめながら剣を構え直す。いや、もう剣を振るう必要はない。どのみち、もうこれ以上ここに留まるつもりはない。

(193―――209―――213――――――)

 相当に光が嫌いなのか、下水道の獣は、相変わらず怒気をまき散らしながらも、光源を警戒し嫌悪するかのように、一撃で仕留められる間合いを図り続けている。

 無理もない、あれが奴なら、どんなに小さな光でも近寄りたくはないはずだ。特に、祈る者の世界から持ち込まれ、祈る者の手によって灯された光には。

 いずれにせよ、退役軍人が置いていった蝋燭のカンテラ。これが、今自分の命をつないでいる、まさに命の灯。

(240―――258―――271――――――)

 逸る気持ちと恐怖を抑えつけ、同じ調子で数字を数え続ける。そして、若い戦士は、兜の緒を確かめ、油断なく剣を鞘に納めた。

(283―――295――――――!)

 カンテラの明かりを互いに挟んで対峙しつつ、若い戦士はじりじりと足をにじらせる。そして、

(3―――2―――1!!)

 頭の中の数字を数え終わった瞬間、若い戦士は、排水口へと飛び込んだ。

 

 

 運がよかったのはここまでか。

 暗闇の中で、激痛に疼く全身を横たえた若い戦士は、湿った石畳の上で荒く息を吐き続ける。とりあえず、あの獣は追ってこないようだ。しかし、自分も相当まずいことになった。骨は折れていないようだが体が言う事を聞かない。

 飛び込んだ先が、石積みの坂。しかし、思った以上の急傾斜に足を取られ、まるで崖を転がり落ちるように全身を強打し続けた強烈な衝撃と打撃。それでもまだ、アレと戦い続けるよりはましだったかもしれないが。

(畜生………!)

 自分の不甲斐なさに、若い戦士は暗闇の中でぎりと歯噛みする。自分はいつもこうだ、肝心な時に、肝心な所で、ろくでもない骰子の目を引き当てる。そう、あの時も、そのせいで、岩喰怪虫(ロックイーター)の餌食となってしまったあの子――――――

 手足の感覚はなかなか戻ってきてくれない、こうしている時間はない、ないはずなのに。もう、ここで終わりなのだろうか。何の役にも立てないまま、ここで終わってしまうのだろうか。

 冗談じゃない。

 若い戦士は、歯を食いしばり、指を、腕を、足を、ひたすらに動かそうとする。こんな所で終わってたまるか、意地、執念、決意、それらが必死に全身を叱咤する。そして、わずかに動き出した右手。朦朧とする頭を懸命に巡らせ、意識をつなぎとめる。

 こんなところで、終われるかよ!

 声にならない叫び、咆哮、そう、こんなところで終われない。

 そうだよね

 ざあざあという水音に混じって聞こえた声、とうとう幻聴まで。

 きみは、いつもいっしょうけんめいだったもんね

 かつての仲間の懐かしい声、もう一度聞きたかった、あの声。

 できるよ、きみなら

 幻覚でもなんでも構わない、あの時、あの少女野伏の分まで歩き続けると決めたのだから。

 だから、こんなところで終わらない。

 じわりと動き始めた腕は、なにかに導かれるように腰の雑嚢へとたどり着く。そして、指先に触れたのは、あの時もらった薬草の小さな包み。

「―――ありがとうございます、先生。いただきます」

 水薬は、背嚢ごとどこかへ飛んでいってしまった、探している時間もない。巡礼尼僧もいない今、これだけが頼り。若い戦士は退役軍人に礼を言い、注意された通り、気持ち程度の一欠片を取り出して口に入れ、何度も噛み締めた。

「っふお゛ぇっっ!?」

 途端に、恐ろしいえぐみが口の中の血の味を塗り潰し、思わず嘔吐しそうになる。しかし、懸命にそれを耐え、どうにか飲み込んだ。それと引き換えに、全身を苛む激痛が徐々に軽くなり、指先や爪先からじわりと感覚が戻ってくる。

「………………っっ!」

 そして、無意味に沸き起こってくる高揚感と熱量。心なしか、闇さえも多少は見通せる感じがする。話にしか聞いたことはないが、これはもしかして、麻薬か覚醒薬と呼ばれた劇薬なのかもしれない。しかし、こうして体が動かせる。今は、それ以上は望まないし気にしてなどいられない。

「よし……これなら……これなら……!」

 若い戦士は、何度も死線を共にした愛用の剣を支えにして、祈るような姿で身を起こす。ぜいぜいと荒い息の下、若い戦士は、ふっと笑みを浮かべる。あの子が見ている、みんなが待っている、そうだ、こんなところで終われない、終われるわけがない。若い戦士は、ふっきれたような笑顔と共に歯を食いしばり、再び立ち上がった。

「先生、みんな……待っててください、今、行きます……!」

 

 

「お坊様、お坊様、だいじょうぶですか……!」

 急傾斜の排水口から放り出され、水面に叩きつけられながらも、運よく意識も装備も失わずに済んだ。半闇狩人は、暗闇の中に浮かび上がる石積みの河岸まで泳ぎ着く。とにかく、水が冷たい。それに、防水してあるとは言え、荷物も心配だ。急いで岸に這い上がり、まるで狼のようにぶるりと身を振るわせて水気を飛ばし、半闇狩人は巡礼尼僧を呼ぶ。

「狩人様、こちらでございます、狩人様」

 暗闇の向こうから聞こえる声、よかった、そう思いながら駆け寄ろうとしたその時、ふわりと抱きとめられた。暗闇を通して伝わる体温と、優しい匂い。つい気が緩みそうになるが、今はそんな場合じゃない、と気持ちを引き締める。

「お怪我はありませんか、お坊様」

「私めは大丈夫でございますよ、それより、何も見えないのはいささか困りました。それより狩人様こそ、お怪我はございませんか」

「わたしは大丈夫です、それより、やはり明かりを……」

 気遣うような半闇狩人の言葉に、巡礼尼僧は静かにそれを押しとどめる。

「私めは大丈夫でございますよ、今は蝋燭一本とて貴重です。大丈夫、たどり着く先はひとつ、黒騎士様も戦士様も、じきにここにおいでになるはずです。明かりは、その時にいたしましょう。それに、私めも、だいぶ目が慣れてまいりました」

「わかりました、私が代わりに周りを見ます。それから、安全な場所を探しましょう」

 覚悟と決意の言葉、こんな可愛らしい子が。暗闇の中で、巡礼尼僧は淡く笑う。こんな状況になっても、安全な場所、とは。

 初めて見た時は、純朴だがどこかいじけた感のある、気弱な娘にしか見えなかった。しかし、彼女の目に宿る光。まだ弱々しいが、瞳の奥に確かに灯るそれは、なぜか心を捉えて離さなかった。そして、その小さな光は、あの男の導きに育てられ、今こうして輝きを増そうとしている。それが、ただただ愛おしい。

「ええ、お願いいたします、狩人様」

 半闇狩人と巡礼尼僧が落ちた先は、下水道の水が最後にたどり着く巨大な石造りの溜池。巨大な鍾乳洞のような空間を利用したのか、周囲に石筍が並び立つその光景は古代神殿のよう。地表から伝わってきた雨水が天井から流れ落ち汚水を希釈しているのと、溜池が浸透桝としての働きをしているのか、地下下水道坑内のような不快感はさほどない。

 おそらく、ここから石灰岩に吸われ、さらに深部まで染み込んでいった水は、やがて地上のどこかに流れ出ているのかもしれない。滝音のような落水の音と、時折流れる水滴の音。地下の空気は冷ややかだが、湿度のおかげでそれほど辛くはない。しばらくの間、半闇狩人と巡礼尼僧は、背嚢から、敷物や天蓋に使う大きな帆布をひろげ、それをお互いに身を寄せ合うように被って冷気をしのぎつつ、退役軍人たちを待つ。

「お坊様、寒くありませんか」

 帆布を巡礼尼僧の方に寄せながら、気遣う言葉をかけてくる半闇狩人に、巡礼尼僧は淡く微笑みながら、それをやんわりと押しとどめる。

「私めは大丈夫ですよ、これも、修行の内でございますゆえ」

「そう、ですか――――」

 でも、そう言いかけた半闇狩人の耳と、小さな鼻が、暗闇の空気が微かに運んできたものを察知し、鋭い警告を彼女の脳に伝えた。

「狩人様?」

 静かに、しかし素早く立ちあがりながら、瞬時に記憶の片隅から蘇る醜悪な気配と臭い。なぜ、どうして、こんなところに、ゴブリンが――――――?

「―――お坊様、走って!」

 既にその時には、半闇狩人は巡礼尼僧の手を引き、暗闇の中を走り出した。微かに聞こえてくる足音や気配は20を下らない。こんな開けた場所で迎え撃っても一瞬で包囲され、袋叩きにあっておしまいだ。それでは、わざわざ死を招き入れるようなもの。どこか、どこかに立てこもれる場所は――――――

 半闇狩人は、未知の闇の中を、巡礼尼僧の手を引きながら走る。後ろからは、こちらを追うようについてくる足音と哂い声。間違いない、向こうも、こっちに気付いている。

 状況を理解した巡礼尼僧は、自分の手を引いて駆け出した半闇狩人について走り出す。しかし、その小さな手が、小さく震えていることに気付かないはずもなく。

 本当に、この子は。どこまでも、どこまでも健気な若き冒険者。巡礼尼僧は、その小さく暖かな手を握る手にそっと力をこめた。

 

 

 行き止まり

 通路の先に見えた石造りの門、その目の前に広がるのは、ちょうどギルドの酒場ほどの空間。しかし、湿気のこもるその場所は、長い年月の間手入れをする者もなく、石積みや石畳の傷みが激しくそこかしこが崩れている。そして、天井が一部崩落したのか、広間を分断するように石塁のような瓦礫が積みあがっていた。

「お坊様、こっちへ!」

 巡礼尼僧の手を引いて、半闇狩人は石塁の向こう側の音を確認した後、その向こう側に飛び込む。今ここにいるのは、自分と巡礼尼僧のふたりだけ。しかし、諦めない。諦めるには、まだ早すぎる。

「お師匠様は、必ず来ます」

 半闇狩人は、まるで自分自身に言い聞かせるように、強い意志の宿った目でつぶやく。そう、師は必ず来る。だからこそ、一刻でも、一瞬でも、時間を稼ぎ、持ちこたえるのだ。そして、素早く装備の残りを確認する。手元にあるのは、弓と小刀、投石紐。矢はあと10本かそこら、残念だけどもう当てにはできない。

 礫は、それなりにある。しかし、これっぽっちでは、到底あの数のゴブリンに対処できない。どうする、どうしたらいい、半闇狩人の頭の中で思考が高速回転し、結論を導き出した。

「うああああっっ!!」

 突然、大声を張り上げた半闇狩人は、そこかしこに落ちている崩れた石積みを持ち上げると、力を振り絞って頭上に持ち上げたそれを床に叩きつけ、粉々の石くれに変えた。

「狩人様!?」

「あああああっっ!!」

 思わず驚きの声を上げる巡礼尼僧に構わず、半闇狩人は、何度も何度も同じ行動を繰り返し、手当たり次第に石積みを破壊し続ける。

 作り出したのは、礫の山。これが、彼女の武器となる。自暴自棄になって、ただ闇雲に暴れまわり、感情を爆発させていたわけではない。気が触れたなどと見当違いもいい所。半闇狩人は、極めて冷静に状況を観察し、自分の武器を用意した。

「ここでお師匠様を待ちます、お坊様は、見張りをお願いします!」

 半闇狩人は、弓を背負うと、腰に巻いた投石紐を引き抜く。そして、今しがた作ったばかりの礫を傍らに山にすると、投石紐に石くれを巻き付け、金色の瞳で油断なく闇の向こうを見据える。

 そして、半闇狩人の耳が何かを捉えたように動いた瞬間、投石紐が鞭のように空を切り、撃ち放たれた礫は次々と闇の中へ吸い込まれるように消えて行った。

 

 

 匂う、匂うぞ

 只人と、闇人の雌の匂い

 只人の方は肉づきも良かった、大人しそうだったし、色々楽しめそうだ。

 闇人の方は、なんか妙な感じがした。

 弱そうだったし、色々苛めてから楽しんでやろう。

 期待と興奮でよだれが垂れる。

 旨そうな匂いが近づいてくる、もう少しだ、もう少しだ。

 そして、ほんの一瞬の衝撃の後、意識は永遠に暗転した。

 仲間の悲鳴が立て続けに起こる。

 中には、悲鳴すら上げられずに頭の中身をぶちまけてひっくり返る。

 はるか向こうから、次々と飛んでくる石礫。

 その度に、仲間が一匹、また一匹と減っていく。

 あの旨そうな匂いも、間抜けな連中の血や脳みその臭いでかき消される。

 いい加減にしろ、うっとうしい。

 そう思った瞬間、顔面で何かが弾け、何も考えることは無くなった。永遠に。

 

 半闇狩人は、石塁に足をかけ、次々と石礫を放つ。かつて故郷の山野で父と一緒に日々の糧を追い、弓と共に磨いた礫撃ちの技。無駄な回転など一切ない、鞭を振り抜くような動作で必殺の一撃を放ち続ける。そして、ややあって闇の向こう側から響く汚らしい悲鳴と苦悶の声。

 半闇狩人の息は少しも乱れることはなく、熟練兵士達が操るカタパルトさながらに次々と石礫を撃ち放つ。彼女が足元の礫を手にし投石紐に巻いた瞬間には、鋭い風切り音とともに石礫が撃ち出され、容赦なくゴブリンの骨を粉砕した。

 逃げも隠れもしない、むしろ、向こうから近寄ってくる間抜けな獲物。山野の鳥獣たちとくらべたら、投げたら当たる的当てのようなもの。だからこそ、この広間の入り口を奴らがくぐる前に、一匹でも多く潰す。

「お坊様!礫もってきて!お坊様!!」

 拾った回数で足元の礫を把握しているのか、半闇狩人が叫ぶ。もう丁寧にいつもの呼び方をしている余裕はない。そして、巡礼尼僧も、半闇狩人の声に応えてその足元に礫を積み上げていく。

「なんてことを……!」

 とうとう姿を現したゴブリンの群れ、しかし、その光景に半闇狩人は怒りと嫌悪で眉を吊り上げる。頭や顔面を砕かれて息絶えた仲間を、あるいは、重傷を負って動けなくなった仲間を、まるで盾のように掲げて押し寄せてくる姿。

 半闇狩人が放った石礫は、ゴブリンの死骸に当たり、鈍い音を立てて石畳の上に落ちる。その様子に、死骸を掲げたゴブリンや、その後ろにいるゴブリンからげらげらと愉快そうな哂い声があがる。

 そして、じわじわと前進するゴブリンの群れ。その距離は、もう30歩もない。しかし、半闇狩人は、その目をすぅっと細くすると、月夜の狼のようにその金色の瞳を鋭く光らせる。そして、一瞬背中を見せるように上半身をひねり、全身のバネと共に振り抜いた左手から石礫が飛んだ。

「GYA!?」

 突然、脳天に炸裂した衝撃。

「GUGYA!?」

 横っ面を強かに打ち据える衝撃

 石礫が、向きを変えて飛んでくる。

 上から、右から、左から

 まるで、獲物を狙う蛇の頭のように、空中で軌道を変えて。そして、たまらず仲間の死骸を取り落とした途端、さっきの強烈な礫が次々と飛んできた。

 半闇狩人は、右手に投石紐を持ったまま、左手に握った礫を振り抜き投げる。半闇狩人の指先と手首で微妙な回転を加えられた礫は、空中で軌道を変え、仲間の死骸を盾にしたゴブリンの脳天や横っ面に直撃する。そして、驚いて死骸を手放した瞬間を見逃さず、投石紐を振り抜き必殺の石礫を次々とお見舞いしていった。

 

 冗談じゃない。

 これでは、間抜けを盾にする意味がないではないか。

 しかし、雌どもはもう目の前に見えている。

 一斉にかかれば、ほら、もうすぐそこだ。

 かかれ、かかれ、一斉にかかれ!

 

 もはや、左様ならばこれまで。数を頼りに押し込もうとすしている気配を感じ取り、半闇狩人は覚悟を決めて、一瞬目を閉じる。それでも、それでも、我が師を信じて。半闇狩人は、腰の小刀を抜いて短弓の末弭(うらはず)に着剣し、弭槍(はずやり)を組み上げた。すべての矢を撃ち放った後は、これが自分の最後の武器。

「お気をつけ下さいませ、狩人様」

 背後からかけられた、巡礼尼僧の穏やかな声が、暗闇の中からすぅっと響く。

「地獄の番犬は、すぐそばに御座いますよ」

「――――――え?」

 その時、短く、鋭く響いた聞こえた笛の音。どうしてこんなところで?矢をつがえながら、後ろの巡礼尼僧に振り返ろうとしたその瞬間、暗闇の向こうから、暗闇の大気を振動させるほどの咆哮が轟いた。

「UUUWOOOOOOOOOOOO!!」

 門の向こうから、ゆっくりとその巨体をくぐらせるように現れた魔獣。三つの狼の頭、竜の顎をもつ尻尾。冥府の門で亡者達を見張り続ける地獄の番犬、ケルベロス。

 あの時、自分達に襲いかかってきた下水道の獣がなぜここに。まさか、ここまで追いかけてきたのか。それでは、師は?あの戦士は?まさか、この怪物に――――――?

 恐怖と衝撃で混乱しかける半闇狩人に目もくれず、ケルベロスは全てを吹き飛ばすような衝撃をはらんだ咆哮を上げた。

「GUUUWOOOOOOOOOOOO!!」

 青銅の塊を引き裂くかのような咆哮と共に現れた魔獣、思いもよらない怪物の出現に、ゴブリン共は一斉に恐慌状態に陥る。そして、先ほどまでの威勢を、そのまま逃走に切り替えたゴブリン共は、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い始める。そして、それがケルベロスの逆鱗に触れた。

 冥府の門前で、その扉を見張っていたはずの自分。それなのに、こんな薄汚い場所にいる。それよりも、ここには口にできるものがない。理に反し、冥府の門をすり抜け、現世に逃げ還ろうとする愚かな亡者共の屍肉が、幽魂がない。極度の空腹、極度の渇き、それが、余計怒りの沸点を低くした。

 うっとうしく目の前を逃げ散らかす奴ら、ケルベロスはゴブリン共の真っただ中に躍り出ると、三つの頭、竜の顎でゴブリンに牙を突き立て、噛み砕き引き裂いていく。

 ゴブリンの悲鳴、ケルベロスの咆哮、そして、肉や骨が砕け飛び散る音。巡礼尼僧を背後にかばい、半闇狩人は恐怖で引きつる全身を叱咤しながら、ひたすらその様子を注視し続ける。どこかに、どこかに落ちているかもしれない、小さな可能性の欠片。それを必死に探し続けて。

 


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