海王神譚   作:川㟢

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第三話

 

 着いたところは荒んだ教会であった。どうやらここが私たちヘスティアファミリアの活動拠点になるらしい。

 

 (私的には全然文句もない、寧ろ前より住み良い環境だと思うのだけれど・・・)

 

 前に住んでいたダイダロス通りは、秩序など存在しない。強さこそ正義、泥棒万歳。華やかなイメージを持つオラリオにおいて、掃き溜めのような場所であった。

 

 「ご、ごめんね!こんな廃教会で!騙すつもりはなかったんだ、最初に言ってしまうと誰もファミリアに入ってくれないと思ったんだ・・」

 

 なるほど、だからあれだけ念押ししたというわけか。確かに、未来の活動拠点となる場所が廃教会がホームである主神の恩恵など誰も授かりたくないだろう。

 

 「いいえ、気にしませんよ。最低限生活できる環境さえ整っていれば満足なので!」

 

 これに関しては本当だ。毎日の暮らしでさえ安定しない日々。そんな環境に比べれば廃教会でも、前住んでいたところに比べれば安全であり、十分な設備も整っている。前の環境に比べれば、雲泥の差だろう。

 

 「ウミ君は本当にそう思っているんだね。君には欲というものはないのかい?ほら!例えば、せっかく冒険者になるなら豪華なホームを活動拠点にしたい!とか、毎日美味しいものを食べてダンジョンに潜りたいとか!名声やお金なんかを手に入れるために冒険者になる子たちもいるんだぜ?」

 

 確かに住むところが綺麗、そして華やかであるに越したことはないだろう。だがそれだけだ。前世は病院、今世はスラムのような場所。私が住んでいたところはそんなところだった。

 

 ヘスティア様の言う通り、おそらく生活において困窮しているのだろう。娯楽といったものはほとんどない。

 

 (あれ?もしかしてファミリアに入った後もハードモードでは?)

 

 そう思ってしまうのは自分だけだろうか。

 

 「そうですね、ホームに関していえば特に不安はないですね。少し欲があるとすれば大きなお風呂に入りたいですね。冒険者やダンジョン云々に関しては、そこまで拘りはないですが、せっかくヘスティア様に恩恵を授けてもらえることですし、無理のない範囲で頑張ってみようと思います。」

 

 これは本当の話である。お風呂は前世の頃から憧れのもの、特に温泉や大浴場などといったものは、目で見て耳で聞いたことくらいなので体験してみたいのである。ダンジョン云々に関しても、前世ではあり得なかったことなので、身近にある今の環境を体験したいと思うのは自然であろう。

 

 「大きなお風呂かい?それならこの街にも大浴場があるよ!暇な時に言ってみればいいさ!」

 

 「大浴場ですか!機会があれば行ってみたいと思いますね!」

 

 ふむ、大浴場とな。そんな素晴らしいものがあるとは。この街で十四年も生きてきて初めて知ったのだが。前世でも今世でも大浴場とは無縁の私。少しテンションが上がってしまったが入ったことがないので入ってみたいのである。

 

 (機会があればとは言いましたが、必ず行ってみようと思います、ヘスティア様。)

 

 そう心の中で密かに誓うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、一通りホームも案内したし、そろそろファルナを刻んでも問題ないかい?ウミ君?」

 

 「問題ありません。」

 

 ホームの案内の最中、ファルナを刻むことによるステータスやスキル、発展アビリティなどについても一通り説明を受けたわけであるが、個人の特徴や力量、才能は勿論、気持ちや願望の変化によって得られる魔法やスキルが変わってくるようだ。

 

 「ウミ君にファルナを刻んだらどんなステータスが現れるのか、僕は今から楽しみだよ!何たってウミ君が最初の眷属で、僕もファルナを刻むのは初めてだからね!」

 

 ニコニコと満面の笑みを浮かべるヘスティア様。彼女は本当に神徳のある女神なのだろう。普段の振る舞いを見ればわかる。

 

 「ええ。よろしくお願いします!実は私も少し緊張しているんですよね。」

 

 これに関しては本当だ。恩恵を授かると言われれば、自分の隠れた力が目覚めさせると言い換えることもできる。自分の中にすごい力が隠されているかもしれないし、隠されていないかもしれない。

 

 ギャンブル要素に少し似ていると言えるのではないか。少し期待してしまう自分がいる。今後のステータス更新も楽しみになるだろう。

 

 ファルナを刻むのには、イコルと呼ばれる神の血が必要となる。改宗などでも用いるものであるが、人体に対して頻繁に使っていいものなのかと少し思う。

 

 「じゃあ刻んでいくからね。うつ伏せになって楽にしてくれるかい?」

 

 「了解しました。私がうつ伏せになり、ヘスティア様がファルナを刻むということは、後背部に文字が現れるということですね?」

 

 「そういうことになるね!物分かりが良くてよろしい!」

 

 ヘスティア様が自らの指を切り出血させ、私の身体の後背部に血を垂らす。すると眩い光が背中から感じられると同時に、私の身体に変化が起こったことが感じられた。

 

 「さてさて、ウミ君のステータスはどんな感じかなあ!?」

 

 ヘスティア様の語尾がつり上がったように感じたが、私のステータスに不具合や異常でも起きているのだろうか。

 

 「ウミ君!これが君のステータスだよ!!すぐにみて欲しい!」

 

 ヘスティア様はそう言って私のステータスが書かれた紙を渡してくる。

 

 (さてさて、私のステータスはどんなものなのか・・・)

 

 




パイの実の贅沢シュークリーム味、あれ美味しいですよね。
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