海王神譚   作:川㟢

6 / 12
 ウミちゃんがダンジョンに潜るまでの日々。
 


第六話

 ヘスティアファミリア入団後の私の生活は、アルバイトとスキルの確認及び練習が主なものであった。

 

 アルバイトについてだが、ヘファイストスファミリアの武器屋での接客だ。このアルバイトはヘスティア様に連れられ、ヘファイストス様に面会した時に、ヘファイストス様に斡旋してもらったものだ。

 

 仕事もまともにしたことがない子娘に、ヘファイストス様の店で働くことを許してもらえるかと言うことが問題になったのだが、ヘファイストス様は二つ返事で了承してくれた。

 

 ヘファイストス様曰く、

 

 「貴方くらい容姿が整っていれば、集客率アップも見込めるからオッケーなのよ。」

 

 だそうだ。確かに男性が接客するよりも女性に接客して欲しいと思う冒険者は多いだろう。

 

 加えて鍛治系ファミリアにおいて最も名高いヘファイストスファミリアの店だ。私程度が接客したところで集客率が上がるとも思えないが、全てはヘファイストスの知るところだ。

 

 もしかしなくても神友であるヘスティア様の眷属ということで贔屓してくれているのかもしれないが、それはヘファイストス様の胸の内なので誰にもわからない。

 

 ともかく、真面目に労働すれば給料はしっかりと出るし、仕事中もヘファイストスファミリアの眷属の作った武器や防具を自然と目にすることができるし持つ機会だって少なくない。

 

 武器に関する目利きを少しはできるようになっているのではないかと思う。

 

 さらにダンジョンに潜る現役冒険者の話を耳にすることもできる。武器や防具、ダンジョンと言った情報を収集することができる冒険者にとって魅力的な職場。

 

 近い未来、冒険者になることが半ば決定している私にとっては実りのある職場であるし、接客も楽しくできていると思う。冒険者は柄の悪いイメージだが、問題行動を起こす人は殆どおらず、安心して働ける職場だ。

 

 それなりの期間アルバイトをしているわけだが、やはり武器や防具といった装備品にも興味が湧くのは必然的であり、勿論私もそのうちの一人だ。

 

 中でも不壊属性(デュランダル)と呼ばれる属性を持つ特殊な武器について興味深かった。値段もかなりするものであり、我がヘスティアファミリアの貯蓄では天と地がひっくり返ったとしても買うことができないくらいの値段だ。

 

 不壊の文字の通り、武器が壊れることはなくなるようである。

 

 だが私には限界というものがあるように思われる。

 

 武器に限らず、物には経年劣化というものが存在する。どれだけ丁寧に手入れしていても壊れないものなどないようにも思われる。

 

 経年劣化という概念が不壊属性(デュランダル)という属性に対しても影響を及ぼすかは、私にはわからない。

 

 だが、不壊と呼ばれるものがあるのなら、絶対に破壊するという概念があってもおかしいとは思えない。これから先の未来で、そんな概念を持つ武器が生まれる可能性がないとは言えない。

 

 矛盾という言葉があるが、そういったことが起きた時、不壊属性(デュランダル)という属性を持つ武器はどうなってしまうのだろう。必ず起こるような未来ではないが楽しみである。

 

 さて、私のスキルも武器に対して与える負荷は小さくないことが予想できる。

 

 水を生成し操作するスキル。そして雨をも降らすスキル。高圧水流や嵐のような水流に対して、耐えることのできる武器はあれど、耐久性が優れるような武器は、値段的にも安くないだろう。

 

 そうなるとパーティーを組むことになるとすれば、私の立ち位置的には、必然的に武器を使わないような立ち位置、すなわち後衛になることになるだろう。

 

 勿論パーティを組むことになればという前提条件があればという話である。

 

 悲しいことに、私がヘスティアファミリアに入団した時から少なくない時間が経ったのに、新規入団者は一人もいない。何故なのだろうか・・・

 

 恐らくだが、私が冒険者としてダンジョンに初アタックする時には、ソロで潜ることになりそうだ。ヘスティア様の了承をいただけるか心配だ。

 

  ーーーーーーーーーー

 

 アルバイト、そして身体づくりと並行して行なったのは、自分のスキルの確認、そして制御だ。

 

 いくら自分のスキルとは言え、発現してまだ間もない。生まれて間もない赤子と同じように、スキルを最大限発揮することはできない。

 

 ありふれているようなスキルならまだしも、私のスキルは、オラリオだけでなくこの世界を見てみても、ユニークと呼べるようなものだ。一つずつ慎重に確認していくことが重要だった。

 

 まずは「あめふらし」についてだが、このスキルは、範囲や降る雨の強さを間違うことがなければ、周囲に被害を与えないことは間違いないスキルだった。

 

 試しに、オラリオを中心とする半径5キロ程は余裕で雨を降らすことができた。どれくらい遠くまで雨を降らすことができるかは、検証が必要だ。

 

 このスキルに懸念点があるとすれば、ダンジョン内で使えるかということだ。

 

 特に、冒険の序章となる上層部分は、洞窟内部といっていい造りになっていると聞く。

 

 正常に雨を降らすことができるのか、はたまた雨漏りするように天井から降ってくるのか。要検証だろう。

 

 

 次は「海王帝(カイオーガ)」についてだ。

 

 やはり、このスキルは使い方によっては人を殺せさえする。使用用途を一歩でも間違えれば、残酷で凶悪なスキルと化す。ヘスティア様、胃薬の用意は大丈夫ですか?

 

 さて詳細についてだが、まずは成長速度の高補正について。これについては、ダンジョンに潜り経験値(エクセリア)を得ることがないのでなんとも言えない。ステータスの更新もしていないので、ダンジョンに潜るであろう未来の自分に期待!という感じだ。

 

 次は水の生成についてだ。精神(マインド)を消費せずに水を生成できるとあって、アビリティの制約による限界などはなさそうだった。

 

 だが制約による限界がないだけであり、普通に疲労はする。伝説のポケモンと言われたカイオーガだって、嵐を起こしたりすれば、多少の疲労はあるだろう。

 

 それを、神の恩恵(ファルナ)があるとはいえ、人間の身体で起こすには、負担がかかることは明らかだ。最も、レベルを上げていけばどうなるかわからないが。

 

 とりあえず、私の身体で嵐を起こさないことはないだろうが、負担が大きいのは明らかであり、オラリオにおいて嵐を起こすには被害が大きいのは明白だ。その上、余計な者たちに目をつけられでもしたら大変なため、検証はしていない。

 

 また、一歩間違えれば自分が溺れかねないようなスキルでもある。私が本当にカイオーガだとすれば、溺れることはないが所詮スキルを持ったただの人間。多量の水の扱いには注意すべきだろう。

 

 ダンジョンにおいても水の生成ができるかどうかはまだ検証しなければならないが、できるとすれば戦闘能力は大きく上昇するだろう。

 

 生成される水については、カイオーガにちなんで海水という可能性もあったが、間違いなく真水であったため安心だった。これには、ヘスティア様も大喜びで、私一人がいるだけで日々の生活において水に困らなくなるということがわかった。

 

 ダンジョンでも水の生成ができるとすれば、生活用水というライフラインを担うことができるのは大きな強みになることだろう。ファミリアの遠征などでは重宝しそうなスキルである。

 

 ともかく、このスキルについてもまだまだ検証しなければならないことは沢山あるため、要検証と言えるだろう。

 

 次に「流水操作」についてだ。

 

 これも使い方によっては、人を死に至らしめる。

 

 水を操作するというだけあって、水をいのままに操ることができた。

 

 整形して固体のような形にしたり、高圧水流を飛ばすことが可能だったりともう何でもありなスキルだった。

 

 やりようによっては、ポケモンに出てくるようなハイドロポンプやアクアブレイクのような技を模倣することもできるだろう。夢が広がるスキルである。

 

 このスキルも海王帝(カイオーガ)の一つであるため、なれないうちは疲労することもわかっている。身体に大きく負担がかからない程度に徐々に慣らしていければと思う。

 

 恐らくこれから先のダンジョン探索において、私の攻撃手段のほとんどがこのスキルあってのものになると思う。

 

 水を生成するだけでは、それは相手に対して脅威になり難い。いかに操作するかが重要になってくる。

 

 最後に「魔導書(グリモア)作製」についてだ。このスキルも十分ぶっ壊れ性能であるが、今の私からしたら、死んでいるスキルと言っても過言ではない。

 

 なぜならば、作製した魔導書(グリモア)の能力は、私の基本アビリティである魔力に依存した程度の魔法を覚えることしかできないからだ。

 

 今の私が作る魔導書(グリモア)など、覚えられる魔法はダンジョン探索においても役に立つことがないものがほとんどだろう。

 

 また、これはあくまで私の予感なのだが、私がつくる魔導書(グリモア)から発言する魔法は、水の属性を持つ魔法がほとんどである気がする。

 

 私の「海王帝(カイオーガ)」というスキルのせいなのか、はたまた私自身がカイオーガになりたいと願った成果はわからないが、ともかく私が使えるような技術でないと、私が作る魔導書(グリモア)を読んだとしても魔法が発現しない気がするのである。

 

 ポケモンの世界には、技を任意で覚えさせることのできる道具が存在している。技マシンと呼ばれる存在であるが、私の作製し出来上がる魔導書(グリモア)は、それと酷似するような気がしてならない。

 

 まだまだ、あくまで予感の範疇であるため、このスキルについてもレベルや基本アビリティが成長したら検証を要するスキルであると言えるだろう。

 

 ともかく、私がダンジョン探索を始めるのは、そう遠くない未来であろう。スキルについても、完璧と言えないまでも制御できるレベルにあるわけで、何より主神であるヘスティア様にも、働かさせてもらっているヘファイストス様にも頭が上がらない。

 

はやくダンジョンに潜ることができるようになる程度には準備を終えたいものである。

 

 




 グリモア作製については独自解釈です。技マシンとグリモアって似てるなぁと思って、作品を書き始める前から思っていました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。