もしCCAアムロが一年戦争にタイムスリップしたら 作:BLAUFALK
「君の意見を聞きたいな、ミライ」
ブライトがミライに尋ねる。
アムロをガンダムから下ろすべきか判断しかねている。
遡ること1時間前_カイと揉めている様子を偶然見かけた。
厭戦気分とも取れる様子のまま、激戦が予想される戦場に彼を投じたら敵前逃亡でもしてしまうのではないか。
場数は少ないながらも一介の連邦軍士官として非常に不安を感じていた。自分は軍人であり、個人として戦うべき理由のあるなしに関わらず戦う。
だが彼はどうだ…?
_もし逼迫した戦況であればひっぱたいてでも戦わせていただろうが、シェリー中尉やエイガー少尉らガンキャノン隊といった正規軍人と戦力を有している以上、本人が戦いを厭がるならばそこまでする必要性を感じられない。戦いを強要するほどの状況ではないのだ。
_彼曰く。
"この戦争は一部の人間の私利私欲から始まった。
地球連邦政府の邪な欲望はスペースノイドを蔑ろにしてまで優先された。食べ物や水はまだしも空気にまで税をかけられ馬車馬の如く働かせられながら、一方で特権階級がそんな苦労を味わうことなく地球の暮らしを存分に満喫している。
無論全てのアースノイドがその限りではないし自身も幼少は地球で育ったが、そんな風に思われているとは知らなかった。父は戦前から技官として働いていたし、母は…まあその。田舎で農耕なりやってたかと。
話を戻すと、そんな抑圧に堪えかねたのが地球から最も遠いコロニー群であるサイド3。
他サイドがそれなりに交易順調であるのに対して航路が長く、にも関わらず税率の考慮や調整はされず、貧困に喘いでいた。
そんなサイド3に希望の星としてやってきたのが連邦政府議会の議員であったジオン・ズム・ダイクン。
ダイクンの思想は瞬く間にスペースノイドに広まり、没後もその絶大なカリスマをもって今なおジオン公国がザビではなく『ジオン』を名乗らざるを得ないほどである。
一方でダイクンの思想を先鋭化し歪めたのがデギン・ソド・ザビとその倅であるギレン・ザビ。
このような圧政と専横にまみれなお生き続ける我らこそ偉大な同志ダイクンが言い遺した『ニュータイプ』つまりは『種としての優れた人類』なのであると唱えた。
ただし実態は逆らうものを鏖殺し全てを我が物として独占する煽動のための方便であり、それは一週間戦争のコロニー潰しやダイクンの思想を全否定するほどに地球へ未曾有の甚大な被害をもたらしたコロニー落としが証明している。
地球連邦政府とジオン公国の悪しき点が分かったところで、モビルスーツの脅威はあれども、なお国力で地球連邦が勝るのは理由がある。
それは旧時代の戦史の積み上げによって_血で作られたと言っても過言ではない戦争のドクトリンと兵器製造。
それはジオン公国の蛮行が決定打となった地球連邦軍軍人の大半を占めるコロニー出身者の連邦支持。
ゆえに連邦軍が攻勢に転じればよほどの事態がなければ勝つであろうと。ザビ家一党さえ除けばジオン軍は空中分解するのかもしれない。
…問題は戦後のほうである。
銃後の社会において連邦政府が地球の復興を優先するのは想像に易い。そしてこの戦争がスペースノイドに対する不安と猜疑心をもたらす。
何故ならばひとたび武器を手に、戦争はおろか歯向かうことも考えられなかったスペースノイドが戦争の味を覚えてしまったからだ。
ゆえに地球出身者なりで固めた連邦軍を作りスペースノイドを弾圧するのだろうと。
裏を返せば今のジオン軍と同じ様なことを今度は連邦が行うのではないか。
そして旗頭を失ったジオン軍は大半が武装解除されるかもしれないが、必ずしもその限りではない。
それは旧時代において残党となり各地にて蜂起したり独立戦争に荷担した例があるからだ。
地球圏全土を巻き込んだこの戦争が、どだい旗頭を喪った程度で終わると考えるほうが難しい。
_ならば今ここで俺たちが戦っているのは何のため?
自分が生き残るため。それは大前提だとしてもだ。
連邦政府のためでもなし間違ってもジオン公国でもない。
俺たちが戦わなくちゃならないのは、一握りの連中の欲望を叩き潰すためか?
それとも半世紀でも宇宙に出て人間の智恵はそんなもんだって乗り越えられるとを証明した事を守っていくためか?"
およそカイには途中からスケールが大きすぎて最後のアムロの困り事について何とも答えることができなかった。
戦争の根は深く、ただ憎いから殺して殺されてというほど単純ではなかったからだ。
ハヤトやリュウ、そしてマチルダ中尉は何に殺されたのか?それは複数の視点で考えるべきだということだけを理解した。
ブライトにとってはそんな煮え切らない問いとそれでも自身は連邦の士官だという矜持がある。
だからこそ客観的意見をミライに求めた。
「そうね…あまり考えすぎるのはあまり良くはないわね。聞くかぎりあり得なくはない話なんでしょうけど、今はとりあえずアムロは二軍くらいにしておいたらどうかしら?前回の襲撃のこともあるわ、理由にはなるんじゃなくて?」
「ふむ…だがガンダムはどうする?遊ばせておくわけにもいかんしな。激戦は必至だ、置き物にするわけにもいかん」
「失礼。何の話か知りませんが、ブライト艦長。ガンダムを貸しては戴けませんか?」
「エイガー少尉。いつから」
「坊主が二軍のあたりから聞いてましたよ。正直ガンキャノンは近接能力が低いですからね、余っているなら使わせて貰えると助かります」
「しかし操縦はどうです、出来ますか?」
「大丈夫ですよ、まだ開発中ですが小官はガンダム6号機の開発責任者かつ予定パイロットですからね。シミュレータも経験済みです」
「6号機?なるほど、それは任せても良さそうですね。ではこれで行くか…」
------------------------------------------------------------------
「エイガーさん、本当に行けるんですか?」
ジャイアント・ガトリングを取り付けて機体バランスの調整を手伝いながらアムロが聞く。
2号機はアムロに替わりエイガーが搭乗し、オデッサ作戦中に改装が完了する予定の1号機にアムロが乗る。
「坊主に心配されるほどじゃないさ!…といってもキャノン砲の一門でも欲しかったかなこれは」
「それにしても実弾メインで行くんですね?」
「ビームライフルの運用データは見せてもらったし、ハイパー・ビームライフルのスペックも見たが、ちょっと後者は信頼性の点が置き去りになっている感があるからな…暴発しちゃ目も当てられん。うしろのガンキャノンD型なんかまさにそれだ」
「テスト機らしいですよ、組み上がったばかりとか」
「今後生産が主軸となるジムD型系列のパーツ使ってコストを下げるって趣旨の機体だがスペック上のジェネレーター出力はガンキャノンより上がってる。そっちの壊れたガンキャノンは79[G]ジムのパーツで直そうとして相性が悪かったんだろ?まああのジム急造な面があるから仕方無いのかもしれないが…心配だ」