もしCCAアムロが一年戦争にタイムスリップしたら 作:BLAUFALK
(核爆発回避ルート②)
雲が出ており、地上では依然戦闘が続く。黒煙硝煙が煙る戦場の一端、タマネギに四つ足生えた愉快な形のモビルアーマー、MAX-03が後退したジオンの前線と進撃する連邦の中間地点に浮かぶ。
だがこのMAは愉快などとは言ってられない攻撃力を有する。本来は月での低重力下における対地攻撃兵器として、かつグラナダ防衛用に開発されたものであり、全8門の連装メガ粒子砲はその桁違いのジェネレーター出力を以て1門でさえマゼラン級の主砲以上もの威力を持つ。
ただし地上では試作段階のミノフスキークラフトに出力を持っていかれ、真価を発揮できない。ビッグトレー級やヘビィ・フォーク級への対抗兵器として期待されたものの試作機のみに留まる。
≪白…ヤツが土産だ、文句…あるまい!さあ先に仲間を返して……おうか!!≫
ケンの2号機がオート歩行し掌にケンが乗る。
岩影からハイパービームライフルで狙撃を狙うはアムロの1号機。
≪…ータだ、データはどうし……あの小娘は!≫
≪データなら中で操縦……メイが持っている≫
≪いいだ……そのままこっち………い!≫
≪こっちとはどこだ?この暗さで……、雲も出ているうえレーダーも……映らんからな。貴機……は?≫
≪手間を取らせるな、外人………≫
≪ああ、それか…。パイロットが素人だ、真っ直ぐにしかあるけない。降参……データを確認したらこの白いヤツに乗るといい≫
そう惚けてヤツを地上に降ろさせる。ここまで来る際に作戦を立てた。連邦の白いヤツといえばジオンの兵が恐れる機体。屍食ならば無傷で手に入れようとして迂闊に近づくだろう。そこを撃ち抜いて行動不能にし、その隙に取り付いたケンがコックピットを抉じ開けて救出するというものである。
見えた…MAX-04が雲間から降りてくる。連邦とジオンの双方がミノフスキー粒子を散布してレーダーは完全にダウンしているし、コックピットをマニピュレーターで抉じ開けるよりは確実な救出になる。
来い、そのまま、真っ直ぐ降りて来い…
≪……前にコックピットを開けろ!≫
≪ちぃ!≫
ケンの舌打ちと同時、中央のジェネレーター部分を、そして四脚を次々とハイパービームライフルが穿つ。そのままMAX-04は地表に落下するが
≪甘いな!≫
≪なに!?≫
無線の相手は生きている、そして小型で長距離からは視認しにくいアッザムリーダーが2号機周囲へトリカゴ状にワイヤーを放ち_電磁波フィールド形成前にビームの一条がアッザムリーダーを破壊する。
≪この俺の警告を無視………≫
無線先で銃声が1発、2発と続く。
≪ユウキィィィィッ!!≫
コックピットへケンが戻るがしかしオート解除前に連装メガ粒子砲が雲を突き抜けて2号機の右脚を破壊し転倒する。
≪掴まえた!そこだ!!≫
空からのビームの進路を辿り、ハイパービームライフルを3連射…しようとしたときにエネルギー・弾数に余裕があるにも関わらず。撃てない。こんな時に、エイガーの言っていた兵器としての完成度が低いライフルが1機目のMAX-04へ5連射した時点でオーバーヒートを起こしたのであった。
≪動け!動………ガンダムって呼ばれてるんだろ白いヤツ!!≫
≪無様だな!そこを動……、焼き殺してやる!≫
もう一基射出されたアッザムリーダーが2号機周囲を囲い、電磁波フィールドを形成する。
≪ケンさん!!≫
使い物にならないライフルを放り出し、1号機が全速で向かってアッザムリーダーを切り裂く。
が、同時に関節に施されたマグネット・コーティングが電磁波フィールドの影響を受けて動かなくなってしまう。そのまま2号機に被さるように崩れ落ちる。
≪フハ………ハ!連……白いヤツ…2機、倒したぞ!!≫
戦果を確認しようと2機目のアッザムが下降し、トドメを刺すべくホバリングで下方2門でロックオン。
≪さぁ、死…!?≫
しかしメガ粒子砲は放たれなかった。十分に近づいたところを2号機が腰にマウントしていたライフルを抜いて振り向き様に連射し、MAX-04が墜落する。
*****
「隊長………」
「しゃべるな!」
「隊長、メイさんも…必ず…宇宙へ…」
右脇腹を抜けた弾は致命弾にならなかったものの、左胸の器官、つまり心臓周辺に当たった弾が、その失血が、刻一刻とユウキ・ナカト伍長の生命を弱らせていく。
「隊長が、メイさんに…ご自分のお嬢さんを見ていたの…知っています…みんなが…見守って」
「いいからしゃべるな!安静にするんだ!」
「手を握って…下さい、隊長……どこ、ですか」
「!?俺はここだ!しっかりしろ!!」
「ケン…たいちょ…う…」
ユウキはそこで息を引き取った。砂塵、黒煙、硝煙舞う戦場で。墜落したMAX-04へと2号機を降りて走り、歪んだコックピットハッチを抉じ開けたとき。待ち構えていた屍食の男に左腕を撃たれてなお頭を撃ち抜いた。小さく呻くユウキの声を聞き、救い出すものの、間に合わなかった。
影響を受けた1号機をアースを取ることで復旧し、2号機を回収したアムロが、未だ戦場の真ん中で涙を流すケンを摘まみ上げて帰投する。
「離せ、彼女をここに置いていけない」
「ケンさん…貴方は生きているんですよ。このうえ貴方までこんなところにいちゃ、貴方は死にます!」
「クッ………これは、戦争だ!しかしっ、だからと言ってそんな、言葉でごまかすことができるのか!この血を、贖うべきは誰なのだ!誰にこの報いを!!」
大切な人を、仲間を、同僚を喪う…そうか。
アムロは以前カイに詰められたとき、彼の言葉に答えているようでその実、答えになっていなかったと考える。リュウ、マチルダ、スレッガー、ララァ、カツ、ハヤト、それからカラバを支えた同志。流れすぎた多くの血と死別が、既に経験したものとして今の彼らに涙すらしなかった。これではあまりにも酷薄ではないのか。
だが泣いてどうなるわけでもない。それが分かっていながら、残酷な運命に涙した。
*****
「ご説明いただこうか、ダグラス大佐」
「何をかね?マ大佐。そんな物騒なものまで向けてか」
「あくまでお惚けになる。宜しい、では順を追って聞かせていただきます」
オデッサ基地の有する滑走路、その管制塔でマ・クベが外人部隊_ケンらが所属するMS特務遊撃隊の司令、ダグラス・ローデンに銃を向ける。
「ニアーライト少佐から全て聞かせていただきましたよ、私の秘匿していた水爆とその偽装サイロ等の情報を奪い、連邦軍に流したと。どういうわけですかな?」
「奪う?私が?どうやって?」
呵呵呵とダグラスが笑う。それを挑発と捉え銃声一つ、当てはしないものの次は外さないとマ・クベが一歩踏み出、続くようにウラガン、リィ・スワガー、マニング、レンチェフが構える。
「フン。まさに策士、策に溺れる、か。これは滑稽よ。では冥土の土産に教えて差し上げましょう」
パチンと指を鳴らし、管制塔の窓をロープ降下で突き破って兵士が突入し立場が逆転する。マ・クベを除く全員が撃たれ、そして抵抗するまもなく背後から銃を突きつけられる。
「な…!?貴様…!」
「おっと。動かないことですな、マ大佐。ラル大尉の指先ひとつですよ」
「ニアーライト、いえマッチモニード。彼奴らですよ、貴方に、そして私にそれぞれ嘘の情報を流したのは」
一拍置いてダグラスが言葉を続ける。
「奴らは私に真偽の混じる情報を流した。本物はそう、連邦のエルラン中将と貴方を繋ぐ諜報活動と水爆関連。偽物は彼らが用意した戦術核の情報でした。オデッサ外周にあるように見せて、その実、オデッサ内部に仕掛けていたのですよ。もちろん戦術核も貴方が用意したことにしてね。それを逃れたいと泣きつく演技までしたし屍食部隊をけしかけたりもした…ええ実に用意周到でしたよ」
「クッ…私は!あくまで水爆を保険に使うつもりだったのだ!」
「まだ仰られるか。問題はそんなことではありません。真偽ない交ぜの情報で誘い込み、そして貴方はまんまと嵌められた…さて。聞こえているだろう?少佐」
≪外人部隊の分際で!ザビ家に楯突くつもり!?アナタ、いくらダイクン派だからって!この件はキャリフォルニアに着いたら報告するわッ≫
マッチモニード一行を積んだガウが滑走路から上がる。
≪楯突く?≫
またも呵呵呵と笑い、そしてガウがしこたま仕掛けられた時限爆弾により空中で爆散する。
「ザビ家を終わらせるのだよ。本来、ジオン・ダイクンはスペースノイド自立のためとはいえこのような大規模戦争なぞ望んでいない…マ大佐、今度は貴方にお答えいただきましょう。貴方がお持ちの壺の数々について」
「わ、私の、白磁の壺は!キシリア様への!」
「いいえ。壺に興味など毛頭ありませんな。私どもが興味があるのは、いったいどこからそのような骨董品を買い漁る資金が出ているのかということだ。占領地域の銀行という銀行の金庫が破られ、貴方が押収しているのは知っている。お答え戴けないなら死んでいただく」
マは端末とメモ帳等を渡す。
_いわゆるM資金、ついでにオデッサとその周辺でさかんに採掘したわりに計算が合わない鉱物資源の行方。
「ダグラス大佐、アデンへの撤退ルートはランス少佐の隊が確保しておりますがお急ぎ下さい。じき封鎖されてしまいます」
「結構。ではさようならだ、マ・クベ大佐」
ダグラスとラル隊の去った管制塔にはマ・クベの死体が転がっていた。こめかみを撃ち、マの拳銃を握らせて、手には発砲時の火薬を付着させた_すなわち拳銃自殺としか見て取れない状態にして。
「ひとつ言い忘れていたな、マ大佐。ザビ家を終わらせる、そして我々がネオ・ジオンとなるのだ」