或る開発者の日常   作:瀧音静

5 / 6
今回はこれまで以上にコメディに寄った話……のつもり!

楽しんで読んでね!


子供は急に成長する

 事の発端は、あまり変わり映えのしない日常だった。

 自分たちを守る腕に抱かれ、心地のいい温もりを全身に感じ。

 幸せを謳歌しながら、目を覚ました時。

 薄く開けた目をこすりながら、まだ傍らにいるサリアが寝息を立てていることを確認すると、サイレンスは彼女の胸元に顔を埋め、グリグリと擦りつける。

 その場所が、自分の場所だとでも主張するかのように。

 そして、マーキングでもしているような勢いで。

 そうした行為は、自分を抱く腕にほんの少しだけ力が入ったタイミングで終わりを告げる。

 サリアが起きた証拠であるそれは、サイレンスが普段通りに戻るスイッチでもある。

 最後に、サリアの顎におでこを当て、名残惜しくも温かい布団から出ようとして。

 そこでようやく、半開きの扉と――そこからこちらを覗く、イフリータの姿を見つけてしまった。

 一気にシンとなる部屋の空気。

 止まる時間。言葉は出てこず、思考だけがグルグルと回るそんな世界は……。

 イフリータが言葉を発することで、解凍された。

 

「お、俺様……ちょっと散歩してくるよ」

 

 見てはいけないものを見たとでも言いたげな、何とも言えない表情を浮かべ。

 そっと踵を返すイフリータを追おうとして。

 ようやく覚醒した、けれども状況が把握できていないサリアが、布団から出ようとするまさにその瞬間のサイレンスを、自分の元へと抱き寄せる。

 当然抗議はしたし、結果としてはすぐに離してくれたのだが。

 すでにドアの向こうには、イフリータの姿など、存在しなかった。

 

 

「フィリ姉! フィリ姉!!」

「? 先ほどサイレンスの所へ行かれたはずでは?」

 

 廊下を駆けてくるイフリータの姿に首を傾げ、思ったことを口にしてみます。

 何故なら、サイレンスがイフリータを拒む筈がなければ、仮にサイレンスの部屋で出会えずとも、見つかるまで探すのがイフリータだからです。

 

「そう! そうなんだけどさ! 何か、俺様お邪魔虫だったみたいで」

 

 急に萎れ、元気がなくなる様が普段と違い困惑しますが、どうやらイフリータの発言から察するに自分の判断で戻ってきたようです。

 サイレンスに拒絶されたのであれば、一面が火の海になっていることは容易に想像できます。

 

「何があったのですか?」

 

 しかし、こうして私に話している以上、何か解決……ないしは助言を求めていると推測できます。

 ですので、一体彼女が何をもって自分がお邪魔虫だったと判断したのか、把握せねばなりません。

 

「サイレンスの部屋で……サリアとサイレンスが一緒に寝てた」

 

 …………エラー。記憶領域に該当する情報が存在しません。

 

 

「で、私の所に来た、と」

「はい。何か解決策をと思いまして」

「なー、どれなら燃やしていいんだー?」

「解決策って言われても……。イフリータの右手の棚にあるがらくたは燃やしていいよ」

 

 研究中にノックが二重にすると思えば、ドアの向こうからはフィリオプシスとイフリータが顔を出した。

 この二人が来たとあれば研究は中断。……どころか、開発中のミーボさえも全て隠さないと燃やされかねない。

 

「右手……右手……お箸持つ方だな!」

「助言はいただけないのでしょうか?」

 

 使えそうなパーツは全て引き抜いた後で、もはやオブジェクトとすら化していた棚の中の数個を指差すと、イフリータは嬉々としてその棚へと狙いを定める。

 

「助言って言うか、サリアとサイレンスが仲良くしてることがイフリータは嫌だったの?」

「? 俺様別に二人が仲良くするのは嫌いじゃないぞ?」

「? ですが、お邪魔虫と……」

「二人が楽しそうにしてんのに、俺様が居ていいのか分かんなかっただけだ。前に誰かが言ってたんだよな。二人で寝てるのを邪魔されたくねーって」

 

 どうにも話が分からない、と、イフリータに質問してみたが、これでようやく合点がいった。

 イフリータはイフリータなりに、気を使ったのだ。

 恐らくこのロドスの誰かが発した、『二人で寝ているのを邪魔されたくない』という言葉を自分なりに解釈し、その解釈を今回当て嵌めてみただけなのだ。

 であるとするならば、それはイフリータのただの思い込みでしかなく。

 こうしている間にも恐らく……。

 そう考えた時、慌てた足音が段々と近づいてきて。

 

「メイヤー! イフリータ来てない!?」

 

 自動ドアであるにも関わらず、何故だかいつもより早い速度で開いたそのドアの向こうには、息を切らしているサイレンスと、特に息切れせずに立っているサリアの姿があり。

 

「二人はもういいのか?」

「? イフリータ? 何のこと?」

「二人だけの時間はもういいのか?」

「「――っ!?////」」

 

 顔を真っ赤にしたサイレンスとサリアに連れられて、ラボを後にしていった。

 

「?」

 

 訳が分からないと首をかしげるフィリオプシスだったが、どうやら一件落着したらしいと判断したのか、私にお辞儀をしてラボを出ていく。

 ……さて、と。

 

「……あ、もしもしドクター? 実はさー、イフリータがラボで暴れちゃってちょーっと研究どころじゃないから、適当な空いてるスペースがあれば少しの間ラボ代わりに使わせてもらえないかなー?」

 

 イフリータが燃やした棚は消し炭になったし、棚があった場所も周囲が炭で黒ずんでいる。

 焦げた匂いは充満しているし、これじゃあ研究出来ないなー困ったなー。

 新しいスペースが割り当てられたら、即行でミーボで溢れさせて立ち退きとか言えないようにしてやろう。

 とりあえず、すでに役目を終えていたとはいえ燃やされ、私のラボ増大計画の為に犠牲になったがらくたに……合掌。




イフリータの立ち位置とか、アクナイのサリサイの関係見ると結構難しいからどうしようかと思ってたんですけど、なんかこんな感じになりました。

包み隠さずに言うと普通に家族です。
サリパパとサリママの可愛い子がイフリータです。
多分このまま進むと思われます……。






(感想とかくれたら露骨にやる気出すのでもしよければ……)
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