が、果たしてこれが嫉妬シチュと呼べるかは不明。
お眼鏡に叶えばいいのですが果たして。
「なるほど、ではこの場合は先にこちらを叩くのが正解なのか」
「正解かどうかは状況次第だ。……だが、経験上こちらを先に叩いた方が勝率が高い」
ドクターに呼び出されて部屋に向かうと、そこでは二アールとサリアが戦闘シミュレーションを間に挟んでにらめっこの真っ最中。
当のドクターはその様子を眺めながら暇そうにしていて。
私が部屋に入ると、まるで救世主とでも言わんばかりに会話を投げてきた。
「おお! メイヤー! 待ってたぞ! 研究開発は進んでいるか?」
断言するけど、絶対に興味がない。
いや、興味がないというか、そんなことはどうでもいいが正しいと思う。
今この場でのドクターの狙いは、適当な理由を付けてクソほど暇なこの空間から逃げ出したい、に違いないのだから。
――だから、
「サリア、これって何の集まり?」
「ん? メイヤーか。何、最近になって敵が手強くなってきている。そこで戦術指揮を執る者で集まって勉強会をと思ってな」
「あー、なるほど」
絶対ドクターが嫌いな奴だ。
だから私をだしにしてまで逃げようとしてるのね。
……けど、逃がさないよ。
「じゃあドクターの意見も聞いてみようよ。サリアがどう言ったって、最終決定はドクターがするんだし」
「ふむ、そうだな。ドクターはどう思う?」
「え? ……いや、俺もサリアと同じ考えだったぞ、うん」
「だがドクター、この部隊は囮で別動隊が裏から回ってくるかもしれないぞ?」
「その時は前線の指揮を二人のどちらかに任せて後方の指揮を執るさ。二人とも医療の心得がある重装だし、信頼しているしな」
「……だからと言って指揮系統丸投げは感心せんがな?」
「あの時のことについては誠に申し訳なく思っていておりまして――」
どうやら巻き込めたらしい。
とばっちりで呼ばれたことで少しだけ不機嫌になったけど、その光景を見て少しだけ胸がすいた気分。
私は指揮なんて全くの畑違いだし、さっさとラボに戻ろう。
そう思ってドクターの部屋を後にし、ラボへと向かう途中、明らかに誰かを探している様子のサイレンスに遭遇。
……探してるのはどっちかな? イフリータかな? それともサリアかな?
「誰か探してるの?」
「っ!? べ、別に……。急ぎじゃないから……」
あ、これサリアの方だ。かといってサリアは今ドクターたちと勉強会の最中だし……。
それだけ伝えておこうかな。
「サリアならドクター達と戦術指揮に関する勉強って言ってたよ?」
「ありがt……じゃなくて、違うから」
取り繕えてないし、バレてないと思ってるのかなぁ……。
まぁ、微笑ましいからいいけど。
……って、あれ? サリアもサイレンスも基地内に居るってことは、二人とも休み?
……それでサリアはサイレンスと一緒には居ないんだ。――珍しい気がする。
「もし急ぎの様があるんなら、みんなドクターの部屋にいるよ」
「だから、急いでない」
とは言いつつもドクターの部屋へ向けて駆けだすあたり、分かりやすいなぁと。
さて、研究研究。呼び出されて無駄にした時間を取り返さなくっちゃ。
*
なんで。なんでなんでなんで。
せっかく休みが合ったのに、朝から来ないの。
顔すら見せないの。……どころか、私以外と活動しているの。
用事があるならせめて声をかけて欲しかった。何時まで予定があって、何時から私の所に来る、と。
じゃないと、朝から貴女を待っていた私がバカみたいじゃない。
いつ来てもいいようにと構えていたのに、その時にはもう他の人と動いていたなんて、私が滑稽すぎる。
部屋に怒鳴り込もうと思ったけど、タイミングがいいのか悪いのか、ドクターの部屋の扉は開いて、中からはサリアと二アールと、ドクター。
楽しそうに談笑している様子を見て、胸のあたりがきゅうと苦しくなる。
――だから、
「? サイレンs――」
私は如何にも、他の用事だと言わんばかりに視線すら寄こさず、俯いたまま早足で、その場を通り過ぎた。
*
「? サイレンs――」
勉強会を終え、部屋に戻ろうとすると前方からサイレンスがやってきて。
何か用事かと思い声をかけようとすると、そんなことは知らないとばかりに無視して行ってしまった。
「ドクター、すまない! 続きはまた今度」
その様子は胸をざわつかせるもので、私の本能が追えと全力で叫んでいて。
「お? おう」
ドクターの返事も待たずに、サイレンスを追いかける。
そもそも、この辺りはドクターの部屋以外に目的となる場所はない。
つまり、ここに姿を見せた時点でドクター、ないしドクターの部屋に用事があるのは確定。
それを通り過ぎるという事は、尋ねた目的が達成されたか、サイレンスの中で、優先度が下がったかである。
――だから、
「サイレンス!」
廊下の角を曲がるタイミングで、サイレンスの手を掴むことに成功。
そのまま逃がさず会話へと突入する。
「何?」
「こちらのセリフだ。何か用があったのではないか?」
「……無い」
「嘘を言うな。この辺りで目的になる場所はドクターの部屋くらいだ。それを通り過ぎるのは不自然でしかない。ドクターに用事があるのならあの場で声をかければいいわけだし、そうなると私に用があると――」
「用なんか、無い」
私が問い詰めれば、理由も、理屈もなくただただ「無い」の一点張りをするサイレンス。
ああ、何となくだが察した。私が悪いのだろうな。
「ちょっと失礼するぞ」
そう宣言し、掴んだサイレンスの手を上へ。
釣られてその手を見上げるサイレンスを少し押し、壁へと押し付ける。
押し付けると言っても、背中と壁の間には私が腕を回しているから、衝撃などは無かったはず。
そして、状況が受け入れられないままに困惑しているサイレンスへと、ゆっくりと唇を重ねる。
身長差があるが、あらかじめ上を向かせていたおかげであっさりと重ねることが出来た。
「~~~っ!!?////」
ここで状況がようやく飲み込めたようだが、今の状況でどれだけ抵抗しようと覆らない。
「ぷはっ。何があったんだ?」
落ち着くまで……というよりは観念するまで唇を離さず。
観念して体から力が抜けたのを確認して唇を離し、問いかける。
「……貴女が、構ってくれないから」
「……は?」
「せっかく休みが重なったのに、来てくれないから。顔も見せず、声も聞かせず、姿も見せずにいるから……」
キスをしたせいか、それとも感情を吐露しているせいか。
瞳が潤むサイレンスの言葉は、堰を切ったように溢れていく。
「いつもはそんなことないのに、今日に限ってそんなだし、ドクターや二アールと楽しそうに話ししてるし、私とは会話をしてないのに、笑ってくれてないのに、部屋に来ないのに、ドクターの部屋には行ってるし」
半分泣きじゃくりながら、捨てられるのを拒む子犬のような態度で言葉を吐き出すサイレンス。
「ご飯、作ってたのに。いつもみたいに朝から来るって、思ってたのに。いつまで待っても来なくて」
そんなサイレンスを、私は撫でる事しか出来なくて。
「サリアの顔を見たら、どうしていいか分からなくなって」
私の胸に顔を押し付けてくるサイレンスへと、私がかけることが出来た言葉はたった一言。
「……すまなかった」
だけであった。
改めて書くと、イチャラブ以外が難しいと思う駄馬です。
所望されたのは恐らく、すれ違い続けてお互いの事を違う方向に感じてしまい、拗れていく様だったかと思うんですけど、一話完結にしてたので自分には無理でした。
なので、思いつく限りサイレンスをめんどくさい感じにしたつもり。
けど実際はサリアの方がめんどくさそうという偏見。
今回はサイレンスが嫉妬したシチュだったので、次回はサリアが嫉妬するシチュを書きたいと思う所存。
果たしていつになるやら←