Fate/Kaleid caster ドラまた☆リナ外伝・星を紡ぐ武器を求める者   作:猿野ただすみ

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久しぶりの続きです。


奇襲

穂群原小5年1組の三時間目、水泳の授業。ミリィはプールサイドから、クロエの姿を眺めている。昨日キャナルから言われたことが気になり観察していたのだが。

 

(……どう見ても普通の子だよね?)

 

イリヤ達とキャッキャ楽しんでたり、水泳のタイムを測っている姿は、他の子達と何ら変わらない。……まあ、転校してくる少し前に「キス魔」事件を起こしたりしていたが、彼女の言を信じるのなら、ただの挨拶だったのだろう。たとえ祖父や大叔母が西洋出身で、チュッチュ挨拶してるわけでなかろうと、きっとそうに違いない。ミリィはそう心に言い聞かせていた。

 

「勝負よ、ミユ!」

「勝負?」

「負けた方はアイス奢りね」

 

なんだかイリヤが、美遊に勝負を挑んでいる。

 

「いいじゃない。わたしも参加させて!」

 

さらに(くだん)のクロエが加わり。

 

「もちろんリナも参加するわよね?」

 

と、リナも巻き込まれていた。

 

(……平和ねー)

 

先日の魔族絡みの騒動が嘘のようである。このまま何事も起こらずに済めばいいと思いつつ、口には出さないでおく。ミリィとて、フラグというものは知っているのだ。

 

 

 

 

 

放課後。慧とともに校門に差しかかると、そこには。

 

「青川くん、星見さん」

「「黒神」さん」

 

昨日と全く同じシチュエーションで、神名が待ち構えていた。

 

「あの、キャナルがまた、お話があるって…」

「うん、そんな気がしてた」

 

予想通りの理由に、ミリィは苦笑いを浮かべる。

 

「それじゃあ昨日と同じ…」

「ちょっと待って」

 

そう言ってミリィが、キョロキョロと辺りを見渡す。

 

「どうしたミリィ?」

「いや、昨日と似たシチュエーションだから、また声をかけられるんじゃないかと思って」

「……マンガかよ」

 

ミリィの行動に呆れる慧だった。

 

 

 

 

 

公園に移動すると、神名は昨日と同じ様に辺りを確認してから、キャナルと瞬時に入れ代わる。

 

「なあ、最初見た時より、入れ代わるスピード上がってないか?」

「あ、言われてみれば」

 

慧の疑問に相槌を打つミリィ。

 

「あの時は力の使いすぎで、強制的に戻りましたから。お互いが徐々に入れ代わる感じですね。

昨日はまだ本調子ではなかったので、入れ代わりに少々時間がかかりました」

 

そう言えば力を使いすぎた、とか言っていたと、あの時のことを振り返る慧。そして。

 

「ってか、毎日探索してただけで力を消費してんのに、昨日今日と入れ代わって大丈夫なのかよ?」

 

新たに浮かんだ疑問を口にする。

 

「探索と言っても、ただ探し回っているわけではありません。[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]の波長を媒介にした、魔法…、こちらで言う魔術を使った探索です。レプリカを使用しているために、範囲を狭めないと精度が安定しないのが欠点ですが。

最も昨日は神名に止められたので、探索には行ってません」

 

なるほど、と頷き、そして神名の意見は尤もと同意する慧。無茶も過ぎれば害にしかならない。もちろん無茶をしなければならない場面もあるだろうが、慧の考えでは今では無いと思っていた。

 

「えっと、わたしからもいいかな?」

「ええ、どうぞ」

「うん。ええと、その魔王の武器って、冬木市内にあるのは確実なの?」

 

ミリィは根本的な前提を聞いてくる。するとキャナルは少し困った表情になり言った。

 

「可能性が高い、としか言えませんね」

「どういうこと?」

「……本来なら、可能性が低いとするべきなのですが」

 

聞き返すミリィに、さらに返すキャナル。

 

「魔王の武器が現れたと想定される範囲が、こちらの予想よりも広いかも知れません。あくまでも推測に過ぎませんから。

また、こちらに現れた時期は時間の流れのズレを考慮しても、少なくとも100年以上前、数百年前と思われます。その間に他の地へ移動されているかも知れません」

 

どちらも可能性としては当たり前の事。しかしそうなると、一つ疑問が残る。

 

「それじゃあ、それでも未だに可能性が高い理由はなんだ?」

「それは、魔族がこの地に居たことです。彼らの目的もまた、魔王の武器でしょうから。つまり確信が持てたのは一昨日の事、というわけです」

 

まさか魔族の存在が、可能性が確信に変わるきっかけというのも皮肉な話である。

 

「……うん、わかった。話があるのに色々聞いて、ごめんね?」

「いえ、私の用事も、貴方方に聞きたいことがあったからですので」

「「聞きたいこと?」」

 

ミリィと慧が聞き返す。

 

「はい。あの、どちらか三時間目の授業で、水泳を受けてませんか? どちらも受けていなければ、それで話は終わりなのですが…」

 

六学年に、更にクラス分、2クラス同時でも分子は二。30クラスで十五分の一、24クラスでも十二分の一の確率である。しかし。

 

「あ、ウチのクラスがそうだったけど」

 

導入部の内容の通り、ミリィのクラス(5年1組)は水泳の授業を受けていた。

 

「そうですか。それではミリィさんにお伺いしたいのですが、授業中におかしな事は起きませんでしたか?」

「おかしな事?」

 

言われてミリィは少し考え込み。そして。

 

「そういえばイリヤ達の勝負の時、おかしいって言うか奇妙な感じだったわね」

「勝負、ですか」

「うん」

 

ミリィは頷き話を続ける。

 

「昨日の三人とリナって子が水泳で勝負したんだけど、飛び込んでから到着するまでの泳いでる姿を、見てないのよ」

「いや、さすがにミリィの勘違いじゃないか?」

 

そう思うのが普通だろう。だがミリィは首を横に振り。

 

「藤村先生と美々はストップウォッチ見てたし、クラスのみんなも遊んだり練習してたから気づかなかったかもしんないけど、わたしはクロを気にしてたから」

「なるほどな。でもだったら、どういうこった?」

 

答えの出ないふたりがキャナルを見る。

 

「そういう事、なんでしょうか…?」

「そういう事?」

 

ミリィが尋ねると、キャナルは一瞬言いあぐねながらも答えた。

 

「……実は三時間目にプールの方で、空間の歪みを感じたのです。けれどそれは十秒程度で収まりましたが」

「……イリヤ達全員、十一秒フラットだった」

 

藤村先生と美々が驚いている姿が印象に残っている。

 

「ならば、そうなんでしょう。おそらくその四名の方は、空間の歪みに巻き込まれ、そして帰還したのだと思います」

「冗談、……じゃないよな?」

「冗談でするのには、突拍子もないでしょう?」

 

確かに突拍子が無さ過ぎる。そもそも、キャナルの存在自体が突拍子もないのだが。

 

「……ん? どうした、ミリィ?」

 

黙って考え込んでいるミリィに気づいた慧が、声をかける。

その時のミリィは、リナについて考えを巡らせていた。

リナはミリィのクラスメイトで、同じクラスの女子の中でも、比較的会話を交わす間柄である。それは同時に、その程度の間柄ともいえる。

とはいえそんな彼女が、(くだん)のクロエと共に空間の歪みに飲み込まれ、そして戻ってきたのだという。……それだけなら、ただ巻き込まれたで済むだろう。だが、戻ってきたらしきリナは、そんな事、おくびにも出さない。それどころか、態度はいつもと全く変わらないでいる。

なにが言いたいのかといえば、もしかしたらリナも関係者なのかも知れない、という事だ。

ミリィはそこの所をふたりに伝えた。

 

「成る程。確かに可能性はありますね」

「だが、それ以外は変わったところはないんだろ?」

 

キャナルは頷き、慧は、ミリィを慮ったのか、はたまたただの疑問か、半ば尋ねるような発言をする。しかし。

 

「……あ」

「……なんか、あるのか?」

 

聞き返す慧に、こくりと頷くミリィ。

 

「一昨日の調理実習の時なんだけどね? わたしとリナが同じ班になったんだけど、クラス一騒がしい龍子をうちの班が引き取ることになったんだ。

それで、予想どおり騒がしく喚いてたんだけど、リナが何かぼそりと呟いたら、龍子が急に眠っちゃったのよ」

「何だ、それ」

「リナは、催眠術みたいなものって言ってたけど…」

「魔術、かも知れませんね」

 

キャナルのセリフに、ビクリとなるミリィ。

 

「地水火風の四大元素を除いた術では、眠り、明かり、治癒等は、比較的初めの方で覚える、所謂初級魔術です。つまり」

「魔術を扱う奴なら、使えてもおかしくないって訳か」

「はい。しかし…」

 

キャナルは少し考えるような表情を浮かべ、話を続ける。

 

「こちらの世界の[魔術師]と呼ばれる人達は、神秘の秘匿、つまり神秘を隠すのが常識だと、神名は言ってました。神秘が明らかになる程に神秘は薄れ、神秘を旨とする魔術は衰退していく、という事です。

それを踏まえて考えると、そのリナという少女の行動は、魔術師としては些か配慮に欠けた…、はっきりと言えば軽率な行動に思われます」

 

言われてみれば、確かにその通りである。

……余談だが、この時盛大にくしゃみをした、ふたりの女性魔術師が居たとかどうとか。

 

「なあ、いっその事、そのリナってのに直接聞いてみたらどうだ? ミリィと仲はいいんだろ?」

「仲がいいって言っても、穂群原小(ホムショー)の四神(三人)+αやイリヤズ+美遊みたいな、あそこまで仲良しって訳じゃないし、何よりリナ相手だと簡単にはぐらかされそうだから」

 

慧の意見に、苦笑いで答えるミリィ。

 

「……まあ、な。リナって、あの色々噂になってる稲葉リナの事だろ? 確かに一筋縄じゃいかねえか」

「……あの、噂ってどの様な?」

「一番有名なのは、[身体は子供、心は魔王]の稲葉リナ」

 

キャナルの疑問に慧が答えると、ミリィが複雑な表情を浮かべる。その二つ名を付けたのも、クラスメイトだったからだ。

 

「他にも[ゴジラも跨いで通る稲葉リナ]、略して[ゴジまたリナ]とか、[魔王の食べ残し]とか…」

「なにそれ、わたしも初めて聞いたんだけど」

 

ミリィが目を丸くする。因みにリナが聞いていたら、「どうしてその二つ名を…」等と驚いていたに違いない。

 

「……何だか、あまり関わり合いにならない方がいい方みたいですね」

「いや、怒らせなきゃ別に、普通…の……。ううん、なんでもない」

 

食欲魔少女っぷりや、スリッパを使った激しいツッコミを思い出し、口を噤むミリィだった。

 

 

 

 

 

「青川さん、星見さん、時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした」

「いや、別に構わねえよ」

「わたし達も必要な情報を聞けたわけだし。Win-Winってやつよ」

「うぃん…?」

 

少し思案顔になったキャナルだが、すぐに笑顔に変わる。

 

「うぃんうぃんの意味はわかりませんが、あなた方の様な前向きな考え方は嫌いではありませんよ」

 

その様なことを言われた二人は、少しばかり照れて視線を逸らす。

 

「それではまた」

 

そう言って宿主である神名に入れ代わった、その直後。ほんの二日前に感じたあの気配。

慧とミリィは左右に分かれて飛び退く。そのおり慧は、入れ代わった直後で反応の遅れた神名の手を引っ張り、抱きかかえるようにして倒れ込む。

 

「……ふむ。相変わらず勘は良いようですね」

 

()()に現れたのは、いつぞやの()()であった。

 

「やっぱりお前かっ!!」

 

キッと睨み怒鳴るように言う慧。すると。

 

「あああああの、あああ青川くん!? いいいつまで、その、抱きついて…!?」

「あ、すまね」

 

テンパった神名に言われて、慧は慌てて身を引いた。ただその口調から、まったく他意が無いのは見てとれるのだが。

 

(この、一級フラグ建築士!!)

 

その様子を見ていたミリィが、心の中でそんな事を毒づいていたりする。

()()はそんなミリィを見てニヤリと笑う。ミリィの、そのちょっとした嫉妬(負の感情)が気に入ったようだ。

 

「まったく、代わり端を襲うとは…!」

 

再び入れ代わり、すくりと立ち上がるキャナル。背負っていた鞄から[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]を取り出そうとするが。

 

「その様な隙を与えると、思っているのですか?」

 

気がつけば既に、キャナルの目の前に迫っていた()()。その手をキャナルの首許に伸ばし…。

 

バシュ! バシュ! バシュ!

 

乾いた音が鳴り響き。

 

「ガアアアアッ!?」

 

()()は伸ばしかけた腕をもう片方の腕で掴み、呻き声を上げた。その腕には三つの穴が開き、煙を上げている。

 

「こなくそっ!」

 

キャナルよりも先に行動を起こしていた慧が、鞄から黒鍵を取り出して刃を編み、()()に斬りかかる。()()は慌てて後ろに飛び退き、大きく距離をとる。そこへ。

 

バシュ! バシュ! バシュ!

 

再び響く、乾いた音。

 

「ガハァッ!?」

 

()()も再び、短く呻き声を上げ、すうっと姿を消し。

 

バシュ!

 

「ガッ!? まさかっ!!」

 

ミリィの背後に現れた()()()()は、()()()()()()()ミリィから銃弾を受けた。

後ろに飛び退きながらミリィが言う。

 

「同じ手を食らうほど間抜けじゃないわよ、わたしは!」

 

そう。()()が消えた直後に現れるのは、誰かの目の前か背後である。

慧は駆け込みながら斬りつけていたので、背後に出ても攻撃が当たらない可能性がある。

キャナルは既に[烈光の剣(ゴルンノヴァ)]を取り出し構えているので、反撃を食らう可能性がある。

必然的に、立ち止まった状態で攻撃をしていたミリィの後ろに現れた訳であったのだが。しかしミリィは、()()が消えた瞬間に数歩前へ飛び出し、片足を軸にして半回転、()()が現れた瞬間に引き金を引いたのだ。

そして更には。

 

「光よっ!」

「おりゃあああっ!」

 

驚き気をとられていた()()の目の前に、キャナルと慧は踏み込んでいた。

振り抜かれた二振りの剣。

 

「ぎひゃああああっ!!」

 

()()は情けない声を上げて消えていった。

 

「……倒したのか?」

「いえ、深手を負わせることは出来ましたが、滅ぼすことは叶わなかったようです」

 

光の刃を消しながら、キャナルは答える。

 

「そうか…」

 

慧も黒鍵の刃を消し、ひとつため息を吐いた。そしてミリィに向き直り。

 

「それよりお前、射撃の腕凄かったんだな」

 

そう尋ねる。するとミリィ自身も驚いた顔をしていたが、急に不敵な笑みを浮かべ。

 

「フフフ。何しろわたしは、2000の技を持つ女だからね!」

 

などと胸を張り、サムズアップをしながら言い放った。ハッキリ言おう。これはミリィの、口からでまかせである。銃の腕前には、彼女自身が驚いていたのだ。

そしてもちろん、親戚で幼馴染みでもある慧には全てお見通しであった。

 

「ふーん、そうか。それじゃあ、調理器具破壊は何番目の技なんだ?」

 

慧の問いかけに、ミリィの笑顔は引き攣り。

 

「慧の、ばかぁ!」

 

彼女は心の底から叫んだ。

 

(はぁ。まったく、締まりませんね)

 

キャナルは呆れつつも、苦笑いを浮かべながら暖かな目差しを向けるのだった。




時間軸は本編の、【魔法少女リリカルすれいや~ず!】とのコラボ(【世界(そら)の戒め解き放たれし】~【日常】)と同じ日になります。
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