僕とブイズの旅   作:憩 恋子

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………………やべえ、ブイズの鳴き声わかんねえ。
感覚で行くか? いやいや、アニメ版のブイズの鳴き声知ってる人がいたら不快に思うかも……。

求む! ブイズの鳴き声を知ってるニキネキ!


第1話 シャワーズとサンダース

 透き通るような冷たい空気を肺一杯に取り込み、のそりのそりと寝袋から這い出た僕の顔面に眠気が吹っ飛ぶほどの水がかけられた。

 犯人はもちろん彼女しかいない。

 

「こら、シャワーズ! 寝起きの僕に水をかけちゃ駄目だっていつも言ってるだろ!」

 

 びしょ濡れになった顔を拭いながら怒ると、彼女は笑いながら逃走を図る。しかし、それをこの僕が許すはずもない。

 

「おりゃあ‼︎」

 

 地を蹴って走り出すシャワーズへ僕は飛びかかる。初速ならば僕の方が速かったようだ。振り返ったシャワーズと目が合う。——存分に驚いてくれたらしい。

 シャワーズに怪我がないように、然りとて目が回るように僕は抱きつき、地面をひたすら転がる。最後には僕の背中が木にぶつかって止まったが、僕のターンはまだ終わっていない。

 目を回すシャワーズを乱暴に撫で回す。彼女はかまってちゃんのくせに撫で回されると恥ずかしがるのだ。

 

「くっくっくっ、どうだ! 恥ずかしいだろ? くすぐったいだろ? 絶対に離してやらないからな!」

 

 僕の腕から逃れようと暴れ回るシャワーズを強引に押さえつけ、ぐりんぐりんに撫で回す。そりゃあもうぐでぐでに撫で回してやると次第に抵抗は弱まり、最後にはなすがままになっていた。

 ヒレが刺さって痛くないのかって? ……痛いに決まってるじゃん。でもそれを補って余りあるくらい可愛いんだ。痛みも愛情ってね。

 ふと無心になってこねくり回していたシャワーズを見ると、頰を赤らめ息を荒げて僕を見つめていた。少々やりすぎたようだ。

 

「ほら、シャワーズ。抱っこしてあげるからおいで」

 

 力が抜けきっていたシャワーズは最後の気力を振り絞って立ち上がり、僕の胸へ飛び込んできた。

 

「よーしよし、これに懲りたらもう悪戯なんてするなよ? 朝からこれ以上汚れるのは勘弁だからな」

 

 シャワーズは一鳴きして僕の首元に顔を埋めた。可愛いやつだ。

 彼女を抱えて野宿していたポイントまで戻ってみると、他の子達が既に座って待っていた。

 

「待たせてごめんな。今から朝ごはんの用意をするから、もうちょっとだけ待っててくれるか?」

 

 みんな口々に鳴いて快く許してくれた。ありがたい限りだ。…………ただ、ローテーションを組んで寝起きに悪戯するのはやめてほしい。

 まさか寝るのが大好きなリーフィアやみんなの姉貴分であるブースターまでもが悪戯をするとは思わなかったけど、仲良きことは美しきかなと昔の人も言った通り仲が良いのは万々歳だ。

 そんなことを考えながら彼女達の朝食を用意し、最後に自分の分を用意した。

 

「よし、じゃあいただきまーす!」

 

 僕の今日の朝食はマラサダだ。そう、あのサンムーンに出てくるアローラ地方にあるマラサダショップのマラサダだ。しかもしかも、幻のマボサダだ。

 …………もったいなくてリュックに入れっぱなしだったんだけど、食べても大丈夫だろうか。

 いや、もしかしたらアメリカの腐らない菓子と名高いトゥ◯ンキーと友達だったりしたら大丈夫かも……。

 

「こらっ、サンダース! 食べちゃダメ! これ悪くなってるかもしれないからあげられないんだって!」

 

 リュックの奥底に眠っていた危ないブツを嬉々として食べようとするサンダースを手で制し、躊躇していても仕方がないとマボサダに食らいつく。

 ——めっちゃ美味い。

 食レポなんて前世でもしたことがないから上手く出来るか自信がないけど、とりあえず今まで食べたどのマラサダよりも美味いことは確信したと言っておこう。というか、前世でもこれほど美味いものを食べた記憶はあまりない。

 

「これがホンマの天上の食べ物や〜」

 

 ついそんなことを呟いてしまい、恥ずかしくなって辺りを見渡す。良かった、誰もいなくて………………あれ? 僕のマボサダは?

 右手に持っていたマボサダが消失した。

 

「…………」

「サンダースさん……?」

「………………」

「……………………」

「…………………………」

「お前ェ! 僕の朝食をォ!」

 

 僕から顔を背けているが確かに咀嚼しており、口元からポロポロと何かを零していた。

 サンダースの顔を引っ掴み、無理矢理こちらを向かせる。目が水を得た魚ポケモンのように泳ぎまくっている。ただ口からは甘い匂いが、先ほどまで食べていたマボサダの香りが漂っていた。

 

「—— ふふふふふっ、絶対に許さないからなぁ? 食べ物の恨みは怖いぞぉ?」

 

 サンダースは未だ咀嚼を続けており、その顔はマボサダの美味さに蕩けている。

 

「今日からサンダースの食事はから〜いモノ限定にしてやろうかぁ?」

「…………⁉︎」

 

 サンダースの表情が強張った。知ってるぞ、サンダース。君が辛いものを苦手としていることを。

 

「謝ったら許さないこともないけど、サンダースはどうやって謝ってくれるのかなぁ」

 

 固まったサンダースを睨んでいると、彼女はおもむろに僕の顔へ近づいてくる。

 

「いやちょっと待って何を————‼︎」

 

 彼女は僕の唇を舌で強引にこじ開け、先ほどまで咀嚼していたマボサダを流し込んできた。

 マボサダの甘さの中にサンダースから無意識に放たれた静電気のような微弱な電気が僕の口内を駆け巡る。

 

「ふぁ、ふぁえ……! ふぉれいじょうはふぁえになるぅ……」

 

 痺れた舌が未だ動かない。ただサンダースの舌が乱暴に侵入しては僕の中へ甘い痺れを残していく。

 

 こうして僕のファーストキッスはサンダースに奪われたのだった。

 

 

 

 こ、こんなことじゃ許してあげないんだからねっ⁉︎

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