嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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こう、撲殺とかがご趣味何ですか?

永遠亭前の竹林で玉兎三人は数十年ぶりの再会を果たしていた。

 

「お久しぶりー!元気してたー?」

清蘭は鈴仙に元気よく声をかけた。

 

だが、

「何で私の他に玉兎達がいるの!?」

鈴仙は驚きで再会の感動どころではなかった。

己の主人たち輝夜と…特に永琳は何だか疲れた顔で屋敷内に入って行った。

 

…鈴仙へ今から来る客人に驚くな、通して問題ないと永琳は言伝していたが。

 

「仕事も何もかもかなぐり捨てて来たの」

鈴瑚は鈴仙に対してそう吐き捨てた。…月の仕事は放棄したと宣言した。

鈴瑚にはもう月への未練は存在しなかった。

 

…何があろうが、オオスが望む限り地上で暮らすのだと鈴瑚は決意していた。

 

「私ももう地上の兎になったつもりだけど…」

鈴仙は鈴瑚の様子を見て只ならぬものを感じた。

話したいことはあるが、どう話しかけたら良いかと鈴仙は思案していた。

 

そこへ、

「積もる話があるようで何よりです」

喪服姿のオオスが鈴仙に話しかけて来た。

…永琳達が永遠亭にさっさと入ったので鈴仙への補足の為に一応様子を見に来ていた。

 

「あ、閣下!」

鈴瑚は満面の笑みでオオスを迎えた。

 

鈴瑚はまるでお師匠様である永琳を迎える時の自分のようだと鈴仙は思った。

…或いはそれ以上かもしれない。

 

「閣下って…まさか」

鈴仙はオオスが敬われている姿を見て、この光景の原因が目の前の男にあると悟った。

 

「閣下は閣下よ」

清蘭は鈴仙に言い切った。…余計なことを考えると埒が明かない存在である。

清蘭はオオスのことを理外の存在として扱うことにした。…敬慕の情は勿論あるが。

 

「現地部隊の私達は消耗品。それを拾い上げてくださったのが閣下よ」

清蘭は鈴仙に状況を端的に述べた。実際、オオスには大恩があった。

 

「イーグルラヴィの部隊ごと幻想郷に来たの。閣下の下に」

鈴瑚は清蘭に補足するように言い切った。

 

…鈴瑚はオオスに対してかなり狂信的だ。

その辺に触れないように気を付けようと鈴仙は思った。

 

「…ごめん。脳が理解を拒否しているわ」

鈴仙は本心からそう言った。言葉の意味はわかるが、滅茶苦茶過ぎて鈴仙は混乱していた。

 

なお、オオスが微笑ましい物を見るような様子で遠巻きに見ていた。…会話に入らない。

久しぶりの友との再会を邪魔するのは無粋と思っているようだと鈴仙は思った。

 

「…まぁ、だよねぇ。私もいきなり夢の世界に呼び出された時驚いたもの」

清蘭は過去を思い出す。夢でオオスがいきなり現れたのだ。

 

 

朗らかな音楽と白い背景と花々に囲まれた場所のソファーに清蘭は座っていた。

『オオスの部屋にようこそ。本日のゲストはイーグルラヴィの清蘭さんです』

『清蘭さんは餅つきをされているようですが、杵の先端の黒ずんだ赤い染みが評判ですね』

『こう、撲殺とかがご趣味何ですか?幻想郷のお花好きの妖怪の方と話が弾みそうですね』

清蘭は改めて最初から滅茶苦茶だったオオスを思い出した。

…本当に酷い会話だった。清蘭はオオスにペースを乱れされまくっていた。

 

 

「夢って槐安通路でってこと?それ以外だと獏が黙っていないんじゃあ…」

鈴仙は夢の世界ということで自分達、玉兎が使う通路で出会ったのか尋ねていた。

 

「閣下は夢の世界の造物主なの…あ、いけない。超越者なの」

鈴瑚はオオスが神呼ばわりすると怒るので、慌てて言いなおしていた。

オオスに止められなければ神殿でも何でも立てるのだが。鈴瑚はそれが残念だった。

 

「…それ話しても大丈夫なの?」

鈴仙は思わず尋ねた。漏れる事で主である輝夜や永琳に害がないか不安になった。

 

「閣下曰くもう話してもいいみたい。もう何も心配いらないって言っていたわ」

清蘭は鈴仙の心配は最もだと思い、補足して説明した。

 

「今後の私達は月の餅屋とかよ。閣下は現地の有力者に既に根回ししているの」

鈴瑚はオオスから聞いた今後の方針を鈴仙に言った。

 

鈴仙は思わずオオスを見た。この二人、ベラベラ喋っているけど大丈夫なのかと目で言った。

 

「…まぁ、玉兎の噂、話好きは仕方がない」

オオスは鈴仙に対して話を割り込む形で補足した。問題ないと言外に示す。

 

「ましてや今まで閉鎖された空間にいましたからね」

オオスは彼女達のお喋りも許してやって欲しいと暗に鈴仙に伝えた。

…鈴仙に伝わるかどうかは別として。

 

「いやいや…あそこ良かったですよ。まるで夢みたい…って夢だったわ」

清蘭はオオスの反応を見て、フォローするように言った。

 

…実際、閉鎖空間というより四季折々の風情ある場所だったと清蘭は思った。

あそこは夢というよりも仙界に近い空間、異界であると地上部隊の清蘭は思った。

 

「閣下が今後何をするつもりなのか私達は知らないわ。…お手伝いもできないの」

鈴瑚は残念そうに言う。オオスの手伝いを申し出たが却下されていた。

オオスの策を邪魔するようなことは鈴瑚もしたくない。…渋々引き下がっていた。

 

「…私が仮に死んだとしても、貴方達の今後は確約します」

オオスは二人へ幻想郷での暮らしの保証を改めて宣言した。

 

…オオスは阿求に根回し済みだった。

なお、阿求は月の兎、それも戦闘部隊をオオスが連れてきたことに唖然としていた。

 

「閣下…どうかご武運を」

鈴瑚は心から祈るように言った。せめて祈るだけでもさせて欲しいと願っていた。

 

「…戦いに行くんじゃないですけどね」

オオスは鈴瑚の様子に苦笑した。本当はそういうのも含めて辞めて欲しいのだが。

 

「それにまだ先の話です。辛気臭い話はなしにしましょう」

オオスはしんみりした空気の二人へ言った。問題ないと宣言した。

 

「月の都に何かするんですか?」

鈴仙は元月の兎、玉兎としてオオスに尋ねた。…永遠亭に仕えているがそれはそれである。

 

「それも含めて秘密です。まぁ、挨拶みたいなものですよ」

オオスは鈴仙の問をうやむやに返した。

…オオス的には言っても良いが面倒臭いという側面が強い。

 

「…貴方は本当に人間なんですか?」

鈴仙はオオスの夢への干渉といい、鈴仙の能力の無力化等を思って、つい溢した。

 

「あ、おい馬鹿!」

清蘭は鈴仙に叫んだ。オオスにそれは禁句であった。

 

そして、

「失礼な!私はどこからどう見ても善良なる里人でしょうが!」

オオスは鈴仙にキレた。人里の里人としての誇りを汚されたように感じたのだ。

 

「閣下は閣下よ。鈴仙は私達より付き合い長いって聞いていたけど…」

鈴瑚は鈴仙に呆れた。オオスに人外扱いは基本的にNGである。

神扱いじゃないだけマシであり、今回は鈴仙への注意に近い叱責だと鈴瑚は悟っていた。

 

「月の都が榛穢されたりして…」

鈴仙は最悪の光景を想像してしまい身震いした。

…オオスならやりかねないと鈴仙は思っていた。

 

「…同胞がいるからと言って良いことと悪いことがありますよ」

オオスは割と真実に近いことを言い出した鈴仙を窘めた。

 

「まぁ、もう月の都がどうなっても閣下の下で働くことになったんだ」

清蘭は完全にオオスに着いて行くことで腹を括っていた。

そうでなくとも地上で暮らすのだ。…オオスがいないことを想像するだけで胸が痛むが。

 

「今後、よろしくお願いしますね…先輩なのかなこの場合?…鈴仙先輩?」

鈴瑚は鈴仙を地上の先輩として扱うか否か悩んでいた。

 

「…じゃあ、私この邸の主達の様子を見てきますね」

オオスは玉兎達の微笑ましい会話に自分は無粋と思い、今度こそ永遠亭の中に入って行った。

 

 

 

オオスが永遠亭内に入り、玉兎三人だけになり話し始めていた。

…鈴仙的にはここからが本題であった。

 

「自然体で二人ともここへ入って来たから止めなかったけど…」

鈴仙はオオスがいなくなったのを確認して改めて言うことにした。

 

「うちのお屋敷の存在と場所を知ったということは、本当に月に帰るつもりがないのね」

鈴仙は二人の覚悟を読み取って言った。

清蘭も鈴瑚も永遠亭の場所を漏らしでもしたら永琳が抹殺しに来ることを確信していた。

 

「…他の面子も同じだよ。月へはもう帰らないし、興味もないのさ」

清蘭は鈴仙の言外の意図を察して言った。イーグルラヴィの部隊は全員もう帰らない。

 

自分達は価値がないと判断されていた事実を知ってしまった。

どう取繕うが、本来しない方が良いはずのオオスまでフォローし、励まそうが無理だった。

…何よりイーグルラヴィは大恩あるオオスをもう裏切れない。

 

「全ては閣下の御心のままに…です」

鈴瑚は何があろうとも今後はオオスの意思のままに行動することを誓い、宣言した。

 

「…鈴瑚ってあんな性格だったかしら?」

鈴仙は鈴瑚の様子を見て言った。何だ、あの狂信者はと鈴仙は思った。

 

「…私はまだマシだけど、他の面子は更に輪をかけてアレだよ」

清蘭は鈴仙に残酷な真実を伝えた。…実は鈴瑚はまだマシだった。

 

「本当に何したの…」

鈴仙はオオスが何をしたのかおっかなびっくりで興味を持った。

…同時に聞きたくもなかった。

 

「本人居ないから言うけど…」

清蘭はオオスがいないことを再度確認する。…聞かれたらオオスは怒るのだ。

鈴仙にオオスを自分達がどう思っているかを言おうとした。

 

「御方は救世主よ。…少なくとも私達にとっては」

清蘭はそう鈴仙に言い切った。

 

清蘭はオオスを『神』として内心扱っていた。文字通りの意味で、だ。

…他のイーグルラヴィの玉兎達も同様であると清蘭は断言できた。

 

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