嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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兎美味しいかの山…

オオスが後で遊びでも何でも無理のない範囲で付き合うから永琳と話をさせてくれと頼んでいた。

永琳との話は終わった。オオスは一体どんな無茶ぶりをさせられるのだろうと構えていた。

 

だが、

「そういえば、貴方は仕事以外何しているのかしら?

オオスは輝夜から尋ねられた。輝夜も無茶ぶりではオオスは靡かないことを悟っていた。

 

「…じゃあ、ついてきますか?二人で」

オオスは輝夜に提案した。オオスは何もないときは季節の風情を楽しんでいるのだ。

 

「ええ!二人きりね!」

輝夜はそう言ってオオスについていくことにした。

…二人きりである。輝夜は張り切っていた。実に微笑ましいとオオスは他人事であった。

 

なお、永琳は輝夜に防犯グッズを大量に渡していた。

…永琳は鈴仙や鈴瑚達玉兎をいつでも出動できるようにしていた。

鈴瑚達は永琳の指示に臨戦態勢で聞き入っていた。

 

オオスは外の特殊部隊の任務を思い出した。丁度、あんな感じであった。

オオスから見て、月の賢者の頭脳をフルに使って準備していた。

無粋なので、何をするのか詳細は知らないが、永琳は輝夜に過保護だとオオスは思った。

 

 

 

そうして出てきたところに妹紅が現れた。妹紅は永遠亭の近くまで訪れていた。

妹紅の手には妖怪兎がいた。まだ人の姿を取れない未発達な兎のようだ。

ああいうのは、てゐや鈴仙達の管轄であるのだが、オオスは余り知らなかった。

 

…どうやら妹紅は迷子の妖怪兎を連れてきたようだとオオスは悟った。

 

「…今、良いところなのにどうしてこういうところに現れるのかしら?」

輝夜は妹紅に苛立ちを隠さずに言った。

…今、良いところなのだから邪魔するなと言わんばかりであった。

 

「…ああ、良いところに来たようだな」

妹紅は歓喜していた。オオスは輝夜と出かけるつもりらしい。

…ここで邪魔をしなくていつ邪魔をするのかと己を奮い立たせていた。

 

だが、

「大丈夫でしたか?」

オオスは二人を完全に無視して妖怪兎に声をかけた。

 

「きょうはぼうけんというのをしようとまよいましたー」

妖怪はそうオオスへ言った。どうやらオオスの予想通りただの迷子のようだった。

 

「なるほど。じゃあ、一緒に冒険しますか?」

オオスは兎へ問いかけた。…迷いの竹林の外へ冒険である。

 

「わーい!」

兎は無邪気に喜んでいた。オオスに着いて行く気満々である。

 

「輝夜さん。喧嘩するなら置いて行きますよ。どうせだから妹紅さんも行きませんか?」

オオスはそう言って、スタスタと妖怪兎を頭に乗せて勝手に歩いて行った。

 

「「…」」

輝夜と妹紅は顔を見合わせた。何故オオスはこんなにも無関心なのか。

二人の顔にはそう書いてあった。

 

 

 

迷いの竹林を抜け、道端の川沿いをオオス達は歩いていた。なお、今回、喧嘩は無しである。

…オオスは本気で二人を置いて行くつもりであるとわかったからだった。

 

水辺で生えるある種の草を集める子達がいた。

ここは人里から近く、安全であり、子供達の天然の遊び場だった。

 

「わー!」

妖怪兎がそれを見て走って行った。兎は珍しい水辺ではしゃいでいた。

…実に微笑ましい光景であるとオオスは思った。

 

「あんまり遠くに行くんじゃないですよ」

オオスは妖怪兎に声をかけた。

妖怪と兎の中間くらいの存在である。人間に害はない。

 

「お、兎だ」「今日は兎鍋にするか」「賛成!」

子どもたちはそんな微笑ましい会話して、兎を追いかけ始めた。

 

「ギャー!」

兎は子ども達から全力で逃げていた。…自身の本能が逃避を選択した。

 

「おい、あいつ喋るぞ!」「肉には変わらんだろう?…問題ない」「私にも分けてね!」

子ども達の微笑ましい会話をオオスはただただ見つめていた。

 

「兎美味しいかの山…」

オオスは不謹慎な歌を歌った。兎鍋である。

 

「…あれは何を集めているのかしら?」

輝夜はオオスの発言を聞かなかったことにした。

そして、未だに河辺で一人、何か草を集める女の子を見つめていた。

 

「わからん。女の子がこんな所で何しているんだか」

妹紅は輝夜と同調してオオスの発言を聞かなかったことにした。

河辺の光景を見てもわからなかった。

 

「肉が逃げたぞ!」「慎重に囲むんだ!…大輔やれ!」「おう!」

子ども達は肉を追いかけていた。彼らなりに作戦を練り、囲もうとしていた。

 

だが、

「ギャー!イヤー!!」

妖怪兎は全力で飛んで包囲網を突破していた。

兎は妖怪兎だけあってしぶとい。…オオスは両方とも中々やるなと思った。

 

「…助けなくて良いのか?」

妹紅はオオスに問いかけてきた。妹紅的には、流石に無視できなくなってきていた。

 

オオスは妹紅の問を無視した。…弱肉強食自然の理である。

 

それよりもオオスは別のことを考えていた。

妹紅は貴族、藤原家の娘だった。その後の人生はアレだろう。

そして、輝夜は今まで永遠亭にずっといた。知らないのも無理はなかった。

なので、オオスは河辺の光景について二人へ説明することにした。…兎は無視である。

 

「あれはジュズダマです。河辺に良く生えている草で、お手玉の材料にもなります」

オオスは輝夜達へ説明しはじめた。…兎については本当に無視していた。

 

「実は硬質で光沢がある宝珠の形をしています。ジュズダマ草をのせて揺すると、ポロポロ実が落ちるんです」

オオスはそう輝夜達の反応を伺いながら言葉を続ける。

二人とも何となく聞き入っているように感じた。二人ともあれが珍しいのかもしれない。

 

「…欧州だとそれを例えて『ヨブの涙』とも言いますね」

オオスは何でもないように補足した。…オオスとしてはこちらのが本命である。

 

ヨブの涙は、ヘブライの族長ヨブが神の不条理から来る苦難に耐え忍んだ涙のようであるからそう呼ばれている。

なお、ヨブ記は信仰厚きヨブがどこまで理不尽に耐えられるかというゲームを悪魔と神が楽しむという聖書指折りの鬼畜の所行である。

 

「雌しべのところに糸を通す穴が自然に出来ます。数珠が作れるからジュズダマです」

オオスは簡単なジュズダマについての説明を終えた。輝夜達はへえーという感じであった。

 

…なお、ジュズダマは最初からジュズダマと呼ばれていたわけではない。

オオスの知る限り、938年に書かれた『和名抄』ではジュズダマはツツタマと記述され、901年の『新選字鏡』ではタマツシと記述されていた。

オオスの私見では仏教の普及とともにジュズダマという名が一般化したのだと思っている。

 

「お手玉か…随分やってないな」

妹紅は藤原の忌み子として物だけを与えられた幼少期を思い出して言った。

…お手玉などその時以来かもしれない。

 

最初の三百年。年を取らない少女は不吉な存在として扱われ、逃げ続けていた。

妹紅はそんな擦り切れた日々の中で忘れていった。

 

「私も随分やっていないわね」

輝夜は手慰みとして翁と媼から与えられた玩具を思い出す。

今ではしばらくやっていない。やることを探しているが、今は盆栽が趣味なくらいである。

 

「…では、お手玉を作ってみますか?」

オオスは二人に尋ねた。この時期として相応しい風情ある行為であった。

オオスはジュズダマだけでは軽いので、お手玉の重しとして河原で小石でも拾って永遠亭で作ろうかと思った。

 

 

一方、子ども達と兎の弱肉強食の理にはケリがついていた。

 

「肉、ゲットだぜ!」「…ゲットって何だ?」「食べないでー助けて―!」

「獲物を捕らえた時の掛け声ってオオスの兄ちゃんが言っていた」

オオスは子ども達が肉を捕まえてはしゃいでる姿を見た。実に微笑ましい会話をしていた。

 

…オオスは子ども達へこれから水を差すことを内心謝罪した。

 

「やあやあ、子ども達」

オオスは子ども達へ声をかけた。オオスは見知った子ども達なので兎を無視していた。

 

「ごめんね。その肉…じゃない兎は知り合いのなんだ」

オオスは兎の助けを求め、怯える目を見て安心するように言った。

 

「食べるのは勘弁してくれないかな?しばらく紙芝居でのお菓子ただであげるから」

オオスは子ども達を説得した。…礼はすると確約して買収を提案した。

 

「やったぜ」「まあ、喋る兎とか食べる気しなかったし、いいよ」

「何となく兎鍋とか言って追いかけてただけだしね」

子ども達はオオスの説得に快く応じてくれた。何て優しい子達なのだろうとオオスは感動した。

 

オオスなら喋ろうが何だろうが食うのだが。

 

「ありがとう」

オオスは心から礼を言い、兎を受け取った。

 

「こわかった…ありがとー」

妖怪兎はオオスに抱き着いて感謝の言葉を述べた。

 

 

その光景は何も知らない第三者から見れば微笑ましい光景であった。

 

だが、

「…何だろう?どこからツッコんで良いかわからん」

事情を知っている妹紅はオオスの行動がおかしいことにツッコめない。

 

「…奇遇ね。私もよ」

輝夜もオオスの言動にツッコミたいが、最終的に兎を助けているのでツッコめなかった。

 

二人は適切な言葉を思いつかなかったが、外ではこういう事をマッチポンプといった。

 

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