嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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異常存在

オオスはその日、とある場所に来ていた。…そこは彼だけの居場所であった。

 

「今更ながら高天原に攻め込むなんて言ったらあの神はどう思うだろうか」

オオスは神奈子の神話を思い出して言った。高天原とはこの場合、月を表していた。

 

神話が正しければオオスの解釈上、月と神奈子は仲が悪いはずなのである。

攻め込まれたら、攻め返すくらいには仲が悪い。今回、オオスはそれを利用しない。

 

だが、予め守矢神社が幻想郷へ転移すると知っていたら自分はどうしただろうかと考えていた。

 

「しかし、これは私の戦争。神であろうが出てくるのは許さない」

オオスは詮無きことを言ったとして、自らの月面戦争の開始を宣言した。

誰にも知られず、こっそりと。かつ大胆に隠れない。そんな月の異変。

…その第二幕の始まりであった。

 

 

 

月についた霊夢達は月の海に不時着した。

そこで、月の都の防衛と地上の監視などを請け負う「月の使者」綿月依姫に遭遇した。

 

戦闘になるも依姫は神降ろしの力で『祇園様』を降ろし、剣山によって霊夢達を一瞬で拘束した。

 

しかし、その瞬間の隙をつく形での咲夜の時間停止により、逆に拘束されていた。

 

そして、

「私達の目的は月の乗っ取りだ。…月は私のものだ!」

レミリア・スカーレットは堂々たる姿勢を持って月へ宣戦布告した。

 

「…八意様の言っていたとおりね。増長した幼い妖怪が海に落ちて来ると」

依姫は安心したように呟いた。ここまでは想定の範囲内だった。

 

「!?」

咲夜は依姫の背後から急に現れた炎に恐怖を感じ、一旦引いた。

 

「愛宕様の炎は全てを焼き尽くす。神の火。これ以上熱いものはほとんど存在しないわ」

圧倒的な力の差を地上からの侵略者へ見せつけていた。

 

 

 

「月まで攻めて来るというから期待してみれば…こんなものかしら?」

依姫は自分に対して全く相手にならない霊夢達へ向かって言った。

 

玉兎達はそれを高みから見下ろし嘲笑っていた。

…レミリアが怖くて挑みすらしなかった玉兎達が、である。

 

霊夢達は祇園様の剣山に拘束されていた。その事実を知るレミリアはキレかけていた。

 

そして、咲夜の剣山の拘束が『斬れた』。

 

「…な!?」

依姫は想定外のことが起き、驚いた。

 

「…つい、かっとなってしまったけど。私では無理ね」

咲夜は高みから見下ろす神に向かって一矢報いたかった。

 

オオスは地獄の銀のナイフと言っていた。神の信仰の欲望と言っていた。

なので、咲夜はこの拘束が解けないか試してみたら、できてしまった。

咲夜は試してみて斬れる等と欠片も思ってもいなかったので追撃はしなかった。

 

…自分では綿月依姫に勝てないと確信していたからだった。

 

「…『金山彦命』よ。あの者の持つ小刀を砂に返せ!」

依姫は咲夜のナイフに危機感を抱き、降参した咲夜に追撃をしてしまった。

 

だが、

「なっ!」

依姫は驚いた。…咲夜のナイフは砂にならなかった。

 

否、

「…他のナイフが皆砂になってしまいましたわ」

咲夜は身体中に仕込んだナイフが皆砂になった事実に驚いた。

だが、それ以上に彼から貰ったナイフ達だけ砂にならないことの方に安堵した。

 

「…随分、厄介な小刀ね。それ」

依姫は警戒した。神の力を否定する物質でできているのか、反発する神なのか。

…咲夜の小刀の本性が掴めないのだ。

 

「そう?お気に入りなんだけども」

咲夜は自分のお気に入りを褒められて嬉しそうに微笑んだ。

 

「…まるで私対策のための小刀ね」

依姫は赤い封筒に入った特筆事項を思い出した。…だが、まだ開くには程遠い。

 

「ちょっと聞きたいことができたわ」

依姫は咲夜に聞きたいことができた。

 

「…」

咲夜は時間停止でもう一度、拘束してこのナイフで一矢報いようとした。

 

しかし、

「『天津甕星』よ。大気に遮られない本来の星の輝きをこの者たちへ見せつけよ!」

依姫の圧倒的な力の前には時間停止すら無意味であった。

 

咲夜の時間停止は飽くまで自分の時間を早めることでできていた。

依姫は勘で咲夜の能力を見抜き、光をもって対抗したのだった。

 

咲夜は光を浴びて気絶した。人間に耐えきれる光量ではなかったのだ。

…依姫に殺す気がないので無傷ではあった。

 

「…」

依姫は咲夜へ近づこうとした。…だが、殺さない。

あの手紙にはこの者達を殺すと大変なことになると書かれていた。

 

「こ、降参だ。降参!」

魔理沙は慌てて止めに入った。…咲夜が殺されると思ったのだ。

 

 

 

魔理沙は咲夜がもろに光を浴びてしまって伸びて、自分達が拘束されている現状を読み取り最適解を導き出していた。

 

「幻想郷には知的で美しい決闘のルールがあるんだ。…スペルカード戦だ」

魔理沙は弾幕ごっこでケリをつけようと提案した。

 

「…こちらに勝ち目はないし、お互い大きな被害を被ることになる」

魔理沙は咲夜を指し示して言った。想定外だが、あいつのナイフが効いていた。

魔理沙はこれを利用しなければ譲歩が引き出せないと思っていた。

 

現に、依姫の周りの人兎達は依姫の力が一時的とはいえ無効化されたことに驚愕していた。

 

「…まあ、良いでしょう」

依姫は魔理沙の提案を認めた。

 

「ただし、その狸寝入りをしているメイドの小刀の正体を教えてくれたらね」

依姫は隙を伺う咲夜へ言った。

 

「…バレてましたの」

咲夜はバレていたのならと優雅な振舞いをもって答えた。

 

だが、

「でも、言いたくないですわ」

咲夜は断固として拒否した。

彼は無関係であり、ここは月だ。…溢せば彼が月の民から何をされるかわからない。

 

「咲夜!良く言ったわ!」

レミリアは月の先兵相手に吠えた自身の従者を褒めたたえた。…いつぞやの異変とは逆に。

レミリアはナイフが何なのか一切知らない。だが、その誇り高き姿勢を美しいと思った。

 

「…オオスとかいう男が関与している?」

依姫はブラフで言った。…手紙に書かれていた技術者の名だ。

信じられないが月に匹敵する物を作れるかもしれないと書かれていた。

 

「!?」

咲夜は思わず反応してしまった。何故その名が今出てくるのかと瀟洒な従者は取り乱した。

 

霊夢達も関係ない男の名が出てきたことに驚いた。…魔理沙以外は。

 

魔理沙は咲夜にナイフを渡したのがオオスだと知っていた。

そして、アレが地獄の銀などという出鱈目ではなく何等かの逸脱した物だと確信していた。

それは、魔法使いとしての勘であった。

オオスは元々虚実を交えて話す。違和感は既にあったのだ。

レミリアに効くだけのナイフなんておかしかった。

 

…そんな物をプレゼントして喜ぶ咲夜も可笑しいが。

咲夜はオオスの真意等お構いなく素で違和感なく受け取っていた。

魔理沙はオオスがどこまでこの月の侵略で暗躍しているのか頭を張り巡らせた。

 

しかし、

「…心配しなくても良いわ。彼は今回の侵略に関係ないことは知っています」

依姫は初心な小娘達の反応に苦笑して言った。

 

「月の民に関与できそうな人物は月のリストに載っているのよ」

依姫は虚実を交えて言った。嘘ではない。

 

八意様の手紙に記載された特異な人物は私的な、脳内のリストには入っていた。

…オオスという男が彼女達を守るために何か仕込んでいる可能性があると書かれていた。

オオスとやらは魔理沙がスペルカード戦に持って行くことを期待して仕込んだのだと依姫は確信した。

 

「八雲紫…とかね」

依姫は信頼性を増すために幻想郷の妖怪の名を挙げた。

 

「なんだよー。心配して損したぜ」

魔理沙は呆れた。…オオスの仕込みはあれだけかとホッとした。

 

「何でアイツが…月に何かしたの?」

霊夢の勘は嘘ではないと言っていた。だから純粋に疑問だった。

 

「していなくとも乗るのですよ。八雲紫は月に単独で来れる妖怪として」

依姫は淡々と霊夢に説明した。

 

「そして、オオスと名乗る男は月に届くかもしれない技術者として」

依姫は言い切った。手紙にはこういえば疑われないと書いてあった。

 

「…なるほどね」

レミリアは納得した。咲夜もである。オオスは自分一人で月に行けると豪語していた。

…それは本当だったのだと理解した。

 

「…疑問も晴れたことだろうし、スペルカード戦という物を教えてもらえないかしら?」

依姫は八意様の言う通りに推移していることに内心安堵しつつもそれを隠して言った。

…オオスという異常存在の脅威を脳に刻んだ。

 

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