嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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恐怖の大王

月の海辺で霊夢達が弾幕ごっこで依姫に惨敗している頃。

迷いの竹林に八雲紫、八雲藍と月の民、綿月豊姫と玉兎、レイセンがいた。

 

 

「この扇子は森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす。

 …そんな月の最新兵器相手に貴方は何ができる?」

豊姫は八意様の策に千年の計に嵌った惨めな妖怪を見下ろして言った。

 

だが、

「あーはっはっ!」

八雲紫は笑った。…笑うしかなかった。

 

「もう降参!…戦う気力なんてないわ。まともに戦ったら勝ち目なんてないんだから」

紫は泣き笑いという表情で豊姫に敗北を宣言した。

 

「紫様…」

八雲藍は主人の姿に動揺した。そういう風な主人を見たくはなかった。

 

 

 

一方、玉兎、レイセンは勝ち誇っていた。月の都に叶うはずがない。

やはり月へ戻って良かった。…レイセンは八意様に感謝していた。

 

そして、勝者と敗者が確定した。レイセンはそう思った。

 

「囮作戦がバレた時点で勝ち目はなかった。敗れた側が乞うのも…」

紫は豊姫に許しを乞おうと土に両足をつけようとしていた。

 

だが、

「…それは無粋だ」

喪服の男が紫を手で制してそれを止めた。…男は紫の土下座等見たくはなかった。

 

「…!何故貴方がここに!?」

紫は驚愕した。オオスの目的は玉兎達の救済であったはずだ。

…もう彼の月面戦争は終わったと紫は思っていた。

 

「紫さん。私は月などどうでも良いのです」

オオスは紫に改めて宣言した。

 

「だから、貴方の誘いにも乗らなかった」

オオスは紫とは無関係であると暗に月の民、綿月豊姫に言った。

 

「…しかし、幻想郷そのものを人質に取る輩は許せない」

オオスは豊姫に向かい合って言った。

 

「無粋なのはどちらかしら?」

豊姫はオオスの無礼な登場を指摘した。

 

「…やはり貴方が現れた」

豊姫はそう呟いた。オオスが現れることも八意様は予期していた。

…武器の類が奪われること、それをブラフで言うことなどだ。

 

「ほう…流石永琳さんのお弟子さんだ。計算通りというわけですか」

オオスは感心したというように言う。実際、感心していた。

豊姫は能力等ではなく、オオスと同じように後天的に学んで力を得た存在だからだ。

 

…あの月の民とはいえ、オオスは彼女を一目置いていた。

 

「貴方の来ている喪服は火鼠の皮衣だと聞いています」

豊姫はオオスのブラフを一つずつ潰していくことにした。

…彼は八意様の通り喪服できた。

 

「…そんな物でこの兵器に太刀打ちできるとでも?」

豊姫はそう言いつつも、考えていた。

八意様は、オオスが月の兵器から生き残る可能性を示唆していた。

 

本来有り得ないが、豊姫は妹の依姫からオオスが異常存在であるとの報告を受けていた。

…神の力を一部無効化する武器を作成していたようだとのことだった。

 

「ところで、何故私が出て来ることがわかったのでしょうか?」

オオスはそんな豊姫の内心等気にせずに聞いた。

 

「…貴方なら千年の計を見破るかもしれないと八意様は仰っていた」

豊姫は手紙を読んだとき驚愕した。

師匠が千年以上も前に仕掛けたトラップもそうだが、それを看破する人間など有り得ない。

 

だから、暗に聞いていた。豊姫はオオスに対し、答え合わせを求めたいた。

 

「勿論です。私の名はオオス。人里の紙芝居屋。昔話は研究対象だ」

オオスはアレの正体等看破していた。興味がないといえば嘘になった。

だから、永琳に見破られているかも知れないと思った。…浦島太郎と連呼し過ぎた。

 

「月の民は地上の暦などどうでもよく、ただ十五夜と満月を完全に一致させない為だけに月の公転を狂わせたのでしょう?」

オオスは豊姫に尋ねた。これで合っているよなと尋ねた。

 

「…」

豊姫はオオスと紫が話していないのを知っていた。

オオスは今解けましたという感じではなく前々から見破っていたと言わんばかりだ。

…豊姫にはそれが嘘には見えなかった。

 

「そして、これは地上から見た月が満月である事が必要な者に対してのみ効果発動する」

オオスは看破していた。これが月の都へ行く方法論として一番簡易なものだった。

 

「ええ、だから貴方はこの妖怪に隠れていた。背後からずっとついてきて…」

豊姫はオオスが現れるのならば、紫達の背後をつけて来るはずだと書いてあったことを思い出す。

…武器が奪われないように注意しろとも書いてあった。

 

豊姫はオオスが八雲紫と手を組んでいたら本当に大変なことになっていたと安堵した。

 

だが、

「違います」

オオスは即答した。オオスはそんな方法を使わない。

月側が把握している方法等使うはずもない。夢の世界もドレミーという存在がいる以上使わない。

 

オオスは月へ行く別な方法をずっと前に完成させていた。

 

「えっ…」

豊姫は驚いた。…オオスの返しは八意様の予想と全然違うのだ。

 

「私の解析能力を舐めないでもらいたい」

オオスは豊姫に言い切った。

 

「満月等なくとも月の都への移動等開発済みだ」

オオスは答えを言わない。だが、別な方法は存在すると断言した。

 

「…では、何故現れたのかしら?扇子を一振りにすればこの幻想郷は一瞬でなくなるわ」

豊姫はオオスの発言をブラフだと思い、気を引き締めた。

実際、豊姫の、扇子の一振りで幻想郷は壊滅する。

…豊姫としても使いたくないが、八意様はこれでオオスは沈黙すると言っていた。

 

しかし、

「ええ、貴方達はお優しい。浦島太郎も貴方達姉妹の仕業ですね?」

オオスは減らず口を辞めない。

…浦島太郎を持ち出して豊姫に対して親し気に話しかけて来た。

 

「…八意様に聞いたのかしら?」

豊姫は紫を見て、素で茫然としたままなので、師匠に聞いたのかと尋ねた。

…玉兎達すら知らないことである。

 

「聞かなくてもわかります。私は紙芝居屋なので」

オオスは紙芝居屋として当然だと返した。

恐らく、豊姫が乙姫のモデルなんだろうなと思いつつ言い切った。

 

「答えになってないわ」

豊姫はオオスに呆れて返した。ブラフもここまでくれば大したものだと思った。

 

「…そろそろ時間かな」

オオスは豊姫と満月を見上げて言った。

 

「と、豊姫様!」

レイセンは豊姫に叫んだ。…有り得ないことが月で起こっていた。

 

「どうしたのかしらレイセン?今は…」

豊姫はオオスの警戒を解くわけにはいかなかった。

…オオスに対して力攻めすればこちらも危ういと八意様は書いていた。

 

「月の都で地震が起こったとのこと!…幸い被害はないようです」

レイセンは被害がないが、月の都で地震が起こるなんて有り得ないと思った。

 

「…これで貴方の妹はこちらに来られない」

オオスは月の都の防衛の任につく依姫の動きを阻害できたことに歓喜した。

…同時に勇儀のパワーは絶妙だと賛美した。仕事をきっちり熟してくれた。

 

何より幻想郷側には衝撃がない。

これでオオスの作戦の真の目的、あの土地の異常は豊姫には絶対バレないと確信した。

 

「…何をしたのかしら?月の都で地震なんて」

豊姫はオオスが確信して行ったことだと悟った。

…被害はないらしいが、オオスは何をしたか問い詰めていた。

 

豊姫はまだ上位者として語っていたが、今すぐにでも青い封筒を空けたかった。

だが、手元にない。豊姫は妹の依姫に預けていた。

 

…八意様の手紙を地上で紛失したら嫌だったからだ。完全に失態だった。

 

「ところで豊姫さん。貴方達はかつて殺した妖怪達のことを覚えていますか?」

オオスは話を続ける。前の月面戦争の話を暗に振る。

 

「…なんのこと?」

豊姫は何故今持ち出すのかと尋ねた。今は関係ないだろうとオオスに尋ねた。

 

「…ああ、なんということだ。貴方すら理解していないのですね」

オオスは豊姫の感情をコントロールできたと確信した。

…永琳の手紙を豊姫は持っていないと確信した。

 

恐らく、永琳の手紙にはこういう段階でのことも書いてあるだろう。

 

「何のことを言っているのかしら!」

豊姫はオオスへ叫ぶように問い詰めた。

 

「…月へ一泡吹かせてやりたい者達は今でも息をひそめて貴方達を見ているのです」

オオスは善意で忠告した。月は恨みを買い過ぎであると警告する。

 

「月面戦争で、友の亡骸を弔えなかった。関係ないのに巻き込まれた」

オオスは淡々と事実を述べる。…これは聞いた話で嘘はない。

 

「貴方達はそれを浄化というそうですが、巻き込まれる者が全滅したとお思いですか?」

オオスは豊姫に最大級の爆弾を見せつけた。…今は本当かどうか判断できないに違いない。

 

「忠告します。大人しく帰りなさい」

オオスは永琳の手紙を持っていない豊姫に善意で言い切った。…今すぐに帰れと言った。

 

「そして、我が名を知るが良い」

オオスは最後にもう一度大切なことを言うことにした。

 

「我が名はオオス。善良なる人里の民であり、幻想以上の古きを知る紙芝居屋」

オオスは豊姫に改めて自らの名を名乗った。

 

「…はいそうですかと帰るわけにはいかないわ」

豊姫はオオスという脅威を判断した。レイセンは怯えて使い物にならない。

自分がやるしかないと気を引き締めた。…相打ち覚悟で仕留める他ない。

 

豊姫は自らの訓練不足を嘆いていた。

 

「貴方の命は重い。…私を殺してもまだ脅威は残っている」

オオスは豊姫の意気込みを買いつつも、脅威を騙る。目に見えぬ脅威だ。

 

「ここは洞窟です。汗ばむ顔と松明に赤く映える顔。石多き所に死ぬばかり苦しむばかり」

オオスは地上の苦しみを謳う。暗く、深い恐怖は妖怪と人の関係性を表していた。

 

紫はそれは月夜にオオスが言った言葉だと悟った。…そしてオオスの策も真意も理解した。

 

「ある人は嘆きと悲しみを叫ぶでしょう。月の民が牢獄と例えるのも一理ある」

オオスは残酷な真実を言う。嘆き、悲しみは地上にありふれている。

オオスは暗に言った。

…月の民も認める。だが、それ以外に対しての風情がないとオオスは言う。

 

オオスはそう締めくくり、優雅な礼を豊姫に見せた。

…豊姫は一瞬、全てを忘れて見惚れてしまう程に男は美しかった。

 

全てが幻想にあるように。豊姫は惹かれてしまいそうになった。

 

「それを伝えに帰りなさいと言ったのです」

オオスは豊姫に優しく語りかけた。自分の善意は彼女にだけは届いたかもしれない。

オオスはそう思った。…もし、そうであるならばその事実だけで自らの命は惜しくない。

 

「私は幻想郷が無事な限りその方々には落ち着くよう説得します」

オオスは騙る。月への脅威を。…そしてそれは最終的に真実となる。

 

古明地さとりがオオスに断言したのだ。…それは可能であると。

 

「…だからこれは私個人と月との和平協定です」

オオスは善意で提案した。ここで帰ればまだ間に合う。豊姫の利をオオスは与えていた。

 

「…」

豊姫は黙った。地震程度で脅威になるとは言えない。月の使者として引き下がれなかった。

…豊姫はオオスが善意で言っていると直感で感じ取っていた。だが、なんなのかわからない。

 

「…貴方達は民に隠し事をするでしょう?」

オオスは帰らない豊姫にもう一つあれをやることにした。

 

「…ないとは言い切れないわね」

豊姫は素直に認めた。月の都は隠蔽体質である。

…オオスが善意で何をするのかは知らないが豊姫が引けぬ道理がそこにあった。

 

「…そこでもう一つサプライズを用意してあります」

オオスは豊姫の使命感に敬意を抱き、それを発動させた。

 

「と、豊姫様…」

レイセンは豊姫に声をかけた。今度は地震どころではない。

 

「何かしらレイセン…」

豊姫はレイセンに問いかけた。もう嫌な予感しかしない。

 

「…今度は海が割れたとのことです。それも豊かの海と静かな海の両方が」

レイセンは報告した。海割りの奇跡が月で起きていた。

 

月への侵略者が『馬鹿じゃねぇのあいつ』等と言っていると他の兎から聞いたがそれは報告しない。

 

「これで月の民や玉兎達へ隠し事は不可能でしょう?…これは私なりの善意です」

オオスはこれを飽くまで善意だと主張した。

 

「…地震だけなら兎も角海割り何て…隠せるはずがない」

豊姫は愕然とした。…もう隠すレベルの域を超えていた。

 

「私は過去に探偵をしていましてね。謎解き、明かしは大得意です」

オオスは淡々と過去の経歴を明かす。これもそれの応用であると戯言をほざく。

 

「ですが、改めて名乗りましょう」

オオスは今度は違う名乗りをすることにした。…豊姫が引かなかったからだ。

 

「我が名はオオス。地上の民にして恐怖を司る者」

オオスは自身が恐怖を月に与える者だと宣言した。

 

「…どうかこれで引き下がってください。これ以上は私もやりたくありません」

オオスは再度、優雅な礼をした。

 

…オオスは本当にヤバい劇物を用意している。オオスもやりたくない程のものだ。

 

「…引くわよ。レイセン」

豊姫はオオスから本気の意思を感じ取り、引くことを決意した。

 

「え、でも…」

レイセンは困惑した。地上の民風情にここまでコケにされて引いて良いのかと暗に言った。

 

「引くしかないわ。…何が起こるかわからない」

豊姫は全力で退くことを宣言した。

 

しかし、

「ああ、大事な事を言い忘れていた」

オオスは本当に大切なことを言い忘れていたので豊姫に伝えることにした。

 

「…何かしら?」

豊姫は再度嫌な予感がした。…それも最大級の予感であった。

 

「幻想郷に害があれば私が死のうともそれは発動します」

オオスは幻想郷に手を出せば今度こそ月が危ういと宣言した。

 

「ブラフでも何でもなく事実です。…私は月で地震と海割りをしましたからね?」

オオスは嘘偽りなく豊姫に言い切った。

 

「…貴方は神とでもいうのかしら?」

豊姫は思わず、オオスに聞いた。海割り等神の領域の技だった。

…月の海全体ともなればそれは神話に等しかった。

 

だが、

「神、神だと」

オオスはわなわなと震えた。

 

「よりにもよって私を神とは!…今すぐ月を滅ぼしてやろうか!?」

オオスは激怒して叫んだ。オオスは本気である。

 

「この人間に神は禁句なのです」

紫は呆然とする豊姫に言った。これでは意味がわからないだろうと善意で警告した。

 

「…幻想郷も危ないので早めの帰りをお願いしますわ」

紫はそう豊姫に言った。…内心、オオスの本気に驚愕しつつ。

 

「人間…これが?」

豊姫は目の前の男が神でなければ一体何なのか暗に紫に尋ねていた。

 

「…月の賢者達に伝えてくださいね。私達はいつでも貴方達を見ている、と」

オオスは怒りを鎮めて、月の賢者にオオスという存在を知らしめよと宣言した。

 

「…帰りましょう。レイセン」

豊姫は理解を放棄した。…だが、オオスという規格外の存在に興味を持った。

 

「は、はい!」

レイセンは急いで帰りたかった。…前回助けられた男は恐ろしい存在であった。

絶対に、何があろうとも幻想郷に手を出してはならない。

 

…それを仲間達に今すぐにでも伝えなければならないとレイセンは確信した。

 

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