嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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答え合わせ

月の民が去った迷いの竹林でオオスと八雲紫とその式神である八雲藍は話していた。

周囲に誰もいないことはオオスと紫、そして藍は断言出来た。

 

…紫は無粋な観察者がいないので今ここで話したかった。オオスも暗に同意していた。

 

「…一体何をどうやったのか多少なりとも教えてもらえないかしら?」

紫はオオスに率直に尋ねていた。言葉で飾る事をしないのは紫なりの誠意だった。

 

どうやって月へ移動できるかは教えてもらえないだろう。それは彼の切り札である。

紫は海割りはオオスの起こした河割異変の応用と確信している。…あの異変は予行練習だったのだ。

しかし、月への起こした異変の一部でも聞けるのであれば聞きたかった。

 

幻想郷の賢者としてオオスが危険なことをしていないか確かめる必要があった。

だが、もう既に月に個人で喧嘩を売るというのには目を瞑った。

…これは紫の私的な感情からの問だった。

 

「ああ、これを作ったんですよ」

オオスはそういって懐から鉄塊を取り出して、手渡した。

紫に聞かれると思って用意していたのだ。

 

「鉄の塊?溶解しているわね」

紫はオオスから受け取った鉄塊を受け取る。

…よく見ると元は箱のような形だったのだと理解した。

 

「これは門の箱と呼ばれる物です。それは試作品ですが。…もう一つこれを」

オオスはそう言ってもう一つの鉄塊を手渡した。

 

「…藍これ全く同じであっているかしら?」

紫は式神である藍に確認する。こういう測定や計算は式神が便利だ。

 

「…99.99%同じものです。小数点以下は2桁ですが、正確には…」

藍は紫の問に答えた。ほぼ同じであるが、正確な数字を伝えようとした。

 

「ああ、もう良いわ」

紫は藍の解答を聞くのを止めた。…つまり全く同じなのだ。

 

「…同じもの同士で共鳴して同じ反応を起こす魔術なのね」

紫は鉄塊を見て理解した。

同じものを作り出すことで魔術的な共振を起こすのだと理解した。

 

「その通りです。これとは別の全く同じ箱が月の至る所にありました」

オオスは紫の見解で合っていると回答した。…オオスはこれを月中にばら撒いたのだ。

無論、キチンと計算した上でである。

 

「人工地震というのを紫さんもご存知ですよね?」

オオスは紫に外の測定技術について尋ねた。…オカルトの方ではない科学である。

 

「爆発、振動、空気の膨張などを震源として利用して人工的に発生させた地震」

紫は淡々と答えた。オカルトの人工地震の場合、相当数存在する。

紫はオオスが言うのは科学的な人工地震だと理解していた。

 

「でもあれは、発生させた地震波を解析することにより、地下構造を調べる物よね?」

紫はオオスに聞き返した。あれは測定技術であり、人為的な地震を起こすものではない。

 

「…永夜異変を覚えていますか?」

オオスは紫に問いかけた。…紫はこれだけで理解するだろうと確信していた。

 

「まさか、あれより前から…」

紫は気が付いた。…オオスは古代の月と現代の月を観測したと確信した。

月の民が気が付かないであろう地盤の歪みを解析する。

…だが、それは人の身では不可能に近い。

 

「逆をやったんですよ。地下構造を予め解析して地震を人工的に起こす最適解を導き出す」

オオスは敢えて声に出して説明した。

…紫は理解しているだろうが、その答えで合っていると伝えた。

 

「私は香霖堂でパソコンを大量に買い込みました。それも常連になるくらい」

オオスはこの為だけに香霖堂へ連日通いつめ、パソコンを買いあさった。

…金に糸目を付けぬ程に。

 

「計算が人の手では不可能だったので人為的にスーパーコンピュータを作りました」

オオスはパソコンを並列に繋ぎ、人為的なスーパーコンピュータを作成した。

…古いパソコンでも改造すれば地形の解析位は可能だった。

 

「…自宅までは無粋だから調べなかったけどそんなことをしていたのね」

紫はオオスの監視をしていた際、彼の自宅内部までは調べなかった。

…貸家時代も含めて、だ。そこまで監視すると彼があの無貌の神だった場合危険だった。

 

だが、オオスが貸家時代から香霖堂でパソコンを買っていたのは知っていた。

 

その時から月の都に喧嘩を売る方法を考えているとは思えない。

もしもの為に用意していたのだろう。

 

恐らく、春雪異変の時に冥界に行く際もそのパソコンで計算していたに違いない。

人の身で冥界に行くことは上空を遥か高く飛んでいく必要がある。

…計算が狂えば空中から落下してしまう。当時の彼ならば下手をすれば死んでしまう。

 

だから、パソコンを買いあさって改造していたのだろう。

幻想郷に転移した初期段階から何か有事の際に備えていた。

…もっとも、紫はその時は冬眠中だったので正確な所はわからない。だが、ほぼ確信していた。

 

しかし、

「でも、それだと月の民に見つかるわ。幾ら貴方が空になれようとも」

紫はオオスの行為が月にバレなかったのを疑問視していた。

 

オオスは月へ行ってもバレないだろう。

…紫が幽々子に潜入工作を依頼しているのと同じだ。

オオスは穢れを無くして行動が可能だった。だから、地獄だろうと平然と歩ける。

それは、あの摩多羅隠岐奈ですら知らないであろう。

 

オオスの人生を四季映姫の下で見た紫だからわかる後天的な能力だった。

…彼は狂気の世界で邪神達へ対抗するために、何よりも『人』のために、この世全ての狂気を受け止めたのだ。

 

だが、門の箱を各地にばら撒けば、それこそ運が悪ければ見つかって終わりだった。

…綿月豊姫辺りなら見つけるだろうと紫は思っている。彼女は超幸運体質の持ち主だ。

豊姫は可能性が零でない限りほぼ見つける。

…オオスはそんな賭け事を好まないと紫は知っていた。

 

なお、豊姫は幸運体質にかまけて良く物を落とす。

大切な物は妹に預けるのをペットの玉兎達の念話を傍受していたオオスは知っていた。

だからこそここ、幻想郷で妹の依姫とかいうチートバグとの分断工作を行っていた。

幸運体質だろうとも普段の習慣は逃れられない。

永琳も下手に思考の妨げとなることをしたくないので二つに封書したのだろう。

今回はそれが仇となった。そして、それはオオスの読み通りであった。

 

オオスは思考を戻して、紫に何故自分の工作がバレなかったのかを説明することにした。

 

「これ見えますか?」

オオスはそう言って懐から何かを取り出す。

オオスもこれがあると認識していないとわからない。

どこかに落とせばオオスすら認識できない。…まるで裸の王様だとオオスは思った。

 

「…何も持っていないように見えるけど」

紫はオオスへツッコんだ。裸の王様の服のようだと思った。

 

「これはナコト五芒星というものが書かれています。

 あらゆる存在から身を守る守護呪文です。…本来の使い道は」

オオスは時間系の魔術を使用する際、使う完全に自己を守護する呪文を説明した。

遼丹と併用し、複雑な超幾何学的文様を描くことで時の天魔等のあらゆる存在や事象からの干渉を拒絶する呪文だった。

 

咲夜に渡したナイフもこれに近い物が書かれている。それは戦闘用に特化してあった。

オオスが春季光星を作った際のように、自身の血でヴールの印を刻んでいた。

…ナイフに血を吸収させて誰にも見えないように描かれていた。

 

神の力くらいならば避けてくれるはずだとオオスは依姫対策に渡していた。

永夜異変の際にロケットを作っていたので、念のために。

そして、月面戦争では魔理沙が閃くであろう交渉のために。

 

オオスは咲夜にプレゼントしたナイフの使い心地を聞いて繰り返し思い出させるようにしていた。

 

「ああ、なるほど…」

紫はオオスの行為の意味を理解した。…今更だが、何て罰当たりなのだろうと思った。

 

「どういうことですか?」

藍は紫に尋ねた。藍は解析は幻想郷の誰よりも優れている。

死神すら図れない三途の川の長さを測定する方程式を組み立てられるほどに。

だが、こういう創造的な発想が苦手だった。…紫は確認のためにも藍へ説明することにした。

 

「簡単に言うと爆弾をお守りにしたのよね?」

紫はこの認識であっているか確認した。

見えないお守りを内側から爆発させれば月で地震を起こすことも可能だろう。

 

「はい。他にも色々していますが…これ以上はその内判明します」

オオスはこのお守り爆弾に更に仕込んでいた。

漏れることは無いと思うが、明日になれば紫も結果でわかる。

 

…それは勇儀だけに話そうと思う。

月の超科学の耐震構造を突破する力を長期間かけて込めて注入して貰った礼であった。

 

「…私は余計な事をしましたか?」

オオスは紫に尋ねた。あの土下座すら計略のような気がしていた。

…ついかっとなって止めてしまったが、問題なかっただろうかと暗に言った。

 

「…貴方の方が大丈夫なの?あんなハッタリをして」

紫はオオスの意図を汲み取って言った。

自分の為を思ってくれた行為に感謝こそすれど怒りはなかった。

 

それにまだ紫の月面戦争は終わりではなかった。…オオスと同じように。

 

「…これからハッタリじゃなくなるんですよ」

オオスは紫に宣言した。嘘も後から造れば真実となるのだ。

今度こそ、彼女達の出番であった。ここまでがオオスの前提条件。

 

条件は全て満たされた。…オオスの月面戦争最後の仕上げだった。

 

「誰にも知られず、こっそりと。かつ大胆に隠れない」

オオスは口上を述べた。オオスという存在を月に知らしめるのは終わった。

…今度は地上に魅せるのだ。そして、それこそが月への最終兵器であった。

 

「さあ、我が月面戦争、その第三幕の開幕です!」

オオスは役者が劇の始まりを告げるよう、仰々しくも優雅な礼を紫達に魅せつけていた。

 

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