嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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悪魔的思考

オオスは紅魔館へ訪れていた。オオスは魔理沙がまだ紅魔館にいることを知っていた。

恐らくだが、霊夢を待っているのだ。活動的な魔理沙は今日には帰るだろう。

 

魔理沙が昨日までに帰っていたら別の方法を考えていたが、いるに越したことはない。

 

いない場合は仕方がない。共犯者阿求への報告がオオスにとって優先事項だった。

オオスの仕出かしたことを魔理沙が調べる前に急いでいた。

魔理沙へ多少ネタバレをして、好奇心で深く調べないように釘を打つ必要があった。

 

そのため、先ほど、オオスの自宅前で騒ぐ二人にはいつも以上にキレてしまった。

…清蘭と文には後でフォローをするべきかとオオスは少しだけ悩んでいた。

 

 

 

オオスは紅魔館へ来ていた。今日はここに用があった。

塩屋敷の主人や地底も急ぎたいが順序があった。…地底は冬明けになりそうだ。

 

オオスは図書館で紅茶を飲んでいたレミリア、咲夜、パチュリーの紅魔組と魔理沙へ声をかけた。

 

「どうも、お久しぶりです。元気にしていましたか?」

オオスはおよそ二週間ぶりのレミリア達に挨拶した。優雅な礼を忘れない。

 

「…お前、月に居ただろう?」

魔理沙はオオスの海割りを見て確実にいたと思っていた。

 

魔理沙は月の兎の前で『あいつ馬鹿じゃねえの』と叫んでしまった。

犯人オオスが捕まらずに帰って来たようで何よりだと安心した。

…自分のせいで犯人特定されていたら少しだけ心配だったのだ。

 

実際の所、オオスは月に居ないどころか幻想郷でスイッチ押していただけである。

…あの時は、になるが。

オオスは月で地震を起こし、綿月依姫というチートバグを分断する必要があった。

依姫の仕事が月の都の防衛である以上、月で地震を起こしてしまえば幻想郷に行けない。

オオスも依姫に真っ向から対応するのは無理だった。

素で強い上に何でもありの能力者である。まず無理ゲ―だ。

 

「ああ、海割りどうでしたか?」

オオスはそんな内心を一欠けらも見せずに海割りの感想を求めた。

…こうすれば嘘は言わずにまるで魔理沙に同意したかのように見える。

 

「あれは良かったわ。スカッとしたわ!」

レミリアは本当にスカっとした。何せ海割りである。絶対オオスの仕業だと思っていた。

あの月の尖兵の絶句した顔をレミリアは忘れられない。実に痛快極まりなかった。

 

「それは何よりです」

オオスは優雅な礼をもってレミリアに応えた。

レミリアが素直に喜んでくれたのを見て、自分も嬉しくなった。

 

だが、

「…あの綿月依姫には正攻法で勝てない」

オオスは月の脅威を強調するように言った。実際、事実であった。

 

依姫に勝つ為には分断して焦土戦術等するしかない。

…だから今回、オオスは月で異変を起こして幻想郷に海を作っていた。

 

「一泡吹かせるためには別で行動せざるを得ない。それでお会いできなかったんです」

オオスは本音をそのまま述べた。実際、会うわけにいかなかったのだ。

 

「本当に申し訳ありませんでした」

オオスは真摯に詫びる。…結果的に彼女達を利用する形になったのだから。

 

「…貴方のくれたナイフは役に立ちましたわ」

咲夜はオオスに気にしないように暗に言った。

…ここにいる全員同じ気持ちであることに変わりはないと断言出来た。

 

「そういえばお前、いつから暗躍していたんだよ?」

魔理沙は雰囲気に流されそうになったが、気になっていたことをオオスに尋ねた。

魔理沙はこれ以上霊夢を待っても無意味と思い、もうすぐ帰るところだった。

…いいタイミングであると思い、オオスに直接尋ねることにした。

 

「ええと、月へのですか?」

オオスは思い出すように言う。実際当時を回想していた。

慧音との会話で吹っ切れたオオスは妹紅に会いに行ったのだ。

…あそこから暗躍していたと言えるだろう。

 

「…確か2年前の秋からですね」

オオスは淡々と答えた。その時点で鈴仙の能力を看破し、玉兎達の交信を傍受していた。

 

「春雪異変の前からかよ」

魔理沙はオオスが考えていたよりも相当前から暗躍していたのに絶句した。

 

「ああ、今回のには乗っかっただけですよ。個人的に調べていただけです」

オオスは真実を言った。…月面戦争は飽くまで乗っかっただけである。

 

「まあ、だよな」

魔理沙も納得した。オオスは神々の住む月へは行きたがらないだろう。

…何かきっかけでもない限りは。魔理沙はそれくらいにはオオスのことを理解していた。

 

「あの時点で月は正攻法で勝てないと悟りましたよ」

オオスは忌々しいが認めざるを得ないという表情で言い切った。…事実である。

 

「じゃあ、教えろよ」

魔理沙は思わずツッコんだ。正直、死ぬかと思った。

 

「そんな無粋なことを言うわけがないでしょうに」

オオスは言っても聞かないだろうと魔理沙に暗に言った。

 

「…まあ、言われてもムカつくだけだわな」

魔理沙はオオスの含まれた言葉に同意した。言われてもムカつくだけである。

 

「それに…禁じられた果物は甘いものです」

オオスは月への誘惑には魔理沙は叶わないと言った。

実に人間らしい欲望を持つ魔理沙だけを見ていた。

 

「そして、食べ物の恨みは怖い」

オオスはそう締めくくった。

 

禁断の果実を取り上げるような真似をすれば人間からは恨みを買うだけである。

 

「中々悪魔的な返しね」

レミリアはオオスの返しに悪魔として満足して言った。実に悪魔である。

レミリア的に神々のいる月で海割りをしながら、日々神への冒涜を忘れないオオスは悪魔でないのが惜しい。

 

パチュリーの側で聞いていた小悪魔も同調したように頷いていた。

小悪魔もオオスが悪魔でないのが惜しくてたまらない。オオスは素晴らしく悪魔である。

今度の休みに魔界へ帰ったらオオスの武勇伝を同期の悪魔達に伝えるつもりであった。

 

「本当にそのうち神罰とか食らうんじゃないのか?」

魔理沙はレミリアと小悪魔の喜び様を見て思わず呟いた。

今更だが、オオスは神に喧嘩を売り過ぎである。

 

「愚者のうちには、自らを知り、自らの愚かさを上手に使う人がいます」

オオスは自分に神罰を食らうことは無いと暗に宣言していた。

自らの愚かさを利用しただけで悪いことはしていないと宣った。

 

レミリアと小悪魔はオオスの悪魔的発想に衝撃を受けた。

…何て悪魔的思考なのだと思った。

なお、パチュリーは友と己の使い魔に呆れた。

 

「…私は踏めば窪むことを月の連中に教えたかっただけですよ」

オオスは何かレミリア達のウケが良すぎないかと困惑しながらも言葉を続けた。

踏めばどこかで躓くのだ。誰かが示してやる必要があった。

 

…今回の件は強者へ一矢報いることでそれを示したつもりである。

オオス的には善意であり、正義であった。月の民に届いたどうかはわからないが。

 

「踏まれた草にも花は咲きます。それが月の民はわかっていない」

オオスは月の民には風情がないと嘆いて言った。…彼らは自らの力に奢っていた。

 

「人を軽んずる者は、自らを損ないます」

オオスは言葉を続けた。月の連中はいつか痛い目を見るだろうと言った。

…暗にそれが今回のオオスの行為であると言っていた。

 

「他人に穴を掘る者は、自らそれに落ちるものです」

オオスは最後にそう締めくくった。

 

オオスは幽々子がいないのが残念だった。

…幽々子ならばここで風情ある返しをしてくれるだろう。

 

「…それで失敗していたらどうするんだよ、お前は」

魔理沙はオオスの行為の意味を何となく察した。…見ていて危なっかしくて思わず言った。

 

「成功は、結果であって目的ではないのですよ」

オオスは魔理沙の問に返した。失敗しても良いのだと言う。

 

実際、オオスはどう失敗しても目的は達していた。

どれが失敗しようがオオスの真の目的は達していた。

今回は全ての策が上手くいっただけである。

…オオスは海さえ作れれば良かった。それだけならば今回は可能だった。

 

「…はぁ。まあいいや」

魔理沙はオオスの返しに半ば呆れたように呟いた。

 

「私は帰るぞ。…霊夢帰って来るまでしばらくかかりそうだし」

魔理沙は帰ることにした。魔理沙は聞きたいことも聞けたので十分だった。

 

「お疲れさまでした」

オオスは優雅な礼を持って魔理沙を見送ることにした。

 

「じゃあな。後は悪魔同士仲良くやれや」

魔理沙は捨て台詞を吐いて去って行った。

 

「悪魔じゃないですよ。私」

オオスは思わず魔理沙の背に向かって不満げに言った。

 

 

 

魔理沙が帰ってオオスは小悪魔に紅茶を淹れて貰って改めて会話を再開していた。

…何故か小悪魔がオオスのサインが欲しいというので書いた。何に使う気なのか謎である。

 

「…言いたいことだけ言って帰りましたね」

オオスは小悪魔の入れた紅茶を飲みつつ、言った。

…神扱いでないだけマシであるが酷い言われようだと思った。

 

「…本当に二年前から活動していたのかしら?」

今まで黙っていたパチュリーが口を開いた。…ちょっと気になったのだ。

 

「ええ、月に関する表面的な情報は仕入れていました」

オオスはパチュリーの意図を読み取って言った。…彼女達を探していたと暗に言った。

 

「…通りで。あの兎達があんなに忠誠を誓っているわけね」

パチュリーはオオスの暗躍ぶりにため息をついた。

 

…オオスも意図していないだろうが、玉兎達の忠誠心は尋常じゃない。

死ぬ覚悟で八意永琳に歯向かっていた。…オオスはそういう意図はなかっただろうが。

 

「えっ、なんなのパチェ?」

レミリアは何が何なのか全然わからないのでパチュリーに尋ねた。

 

「彼、月から兎の部隊引き抜いて自分の配下にしていたわ。それと海を盗んできたの」

パチュリーは端的に説明した。オオスの暗躍ぶりを説明した。

…オオスはパチュリーも知らないことをまだしていそうであるが。

 

「…それはまた興味深い話ですわ」

咲夜は思わず口に出た。…玉兎達の性別が気になった。

 

「ああ、今朝、取材に来た天狗と喧嘩しちゃって…」

オオスは文と清蘭の喧嘩を思い出して言った。

 

「今日、本当は一緒に挨拶するつもりだったんですが置いてきました」

オオス的には清蘭を連れて行こうと思ったのだが、紹介できなかった。部下のお披露目である。

レミリア達の見て来た玉兎達とは一線を画す素晴らしい部下達である。

 

…オオスは上司として見捨てられないか少し不安だった。

 

「「はぁ…」」

パチュリーと咲夜は同時にため息をついた。咲夜は天狗と喧嘩というので性別を察した。

そして、オオスは玉兎達を本気で部下として見ていると確信した。

 

「え、なんですかこの反応」

オオスは咲夜達の反応の意味がわからないので困惑した。

 

「まあ、でも月の兎でしょ?大した事ないわ」

レミリアは玉兎等大したことがなかったとオオスへ言った。

 

「失礼な!私の部下達は月の最前線で実戦を積んできた戦闘のプロですよ!」

オオスは部下を馬鹿にされてキレた。…上司として見過ごせない暴言であった。

 

「…どうやって引き抜いたのよ、それ?」

レミリアはオオスの反応からガチだと悟った。どうやって引き抜いたのか気になった。

 

「殺し合いって穢れますよね。月で冷遇されていたんですよ、彼女達」

オオスはレミリアに端的に伝えた。冷遇されていたのを引き抜いたのだ。

黙って見て居られなかったので全員引き抜きをした。…オオスは全力で取り組んだ。

 

「ああ、なるほど」

レミリアは納得した。それならば納得である。

 

「…」

咲夜はオオスの行為を玉兎達がどう感じるかを想像し、頭を痛めた。

 

咲夜は確信した。オオスなら全力でやりかねない。それこそ命を賭して。

…紅魔館の図書館で喘息を起こしたパチュリーを助けた時のようにしたのだと確信した。

 

「どうしました?咲夜さん」

オオスは咲夜の反応が気になったので尋ねた。

 

「なんでもないですわ」

咲夜はオオスにそう返した。…どうせ言っても聞かないだろうと思った。

 

「しかし、月に喧嘩売ったのは良いことだけど大丈夫なの?」

レミリアは悪魔としてオオスを心配した。悪魔的には最高だが、大丈夫か不安であった。

 

「問題ありません。月に和平案を直接投げてきました」

オオスはレミリアに端的に言った。和平案、とっとと帰れである。

 

ついでにサグメとかいう月の賢者に会って来た。

喋れないのはキツイのではないかと思ったのだが、オオスの予想通りの存在だった。

…オオスは今後も月に潜入工作する理由が出来てしまった。あの忌々しい月の都に。

 

「…どこまで暗躍しているのか気になるけど、聞くのはちょっとだけ怖いかも」

レミリアはオオスの悪魔的行為が気になったが、少し怖くなって溢してしまった。

…悪魔としての会話なのでついうっかり溢してしまった。

 

「聞かない方が身のためですよ」

レミリアの内心等知らないオオスは人間として警告した。

 

「この会話もレミリアさんなら大丈夫だと思ってベラベラ喋っていますけどどうか内密に」

オオスはレミリアに内密にするように依頼した。他意はない。

 

「…そういうの控えた方が良いと思うわ」

レミリアは悪魔として思わず心を撃たれかけた。控えるようにオオスに指摘した。

 

「…?」

オオスは意味がわからないので反応に困った。

 

「レミィ。無駄よ」「無駄ですわ。お嬢様」

パチュリーと咲夜は同時にオオスには無駄だと言い切った。

 

「…そうね。無駄だったわ」

レミリアは二人に同意した。…オオスに言っても無駄であった。

 

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