薄っすら白い博麗神社でオオスは早苗から話を聞いていた。…仙人についてである。
「ふむ。なるほど…」
オオスは早苗から聞き取りをして情報を総合していた。
オオスの勘はそいつだと囁いていた。
…だが、あの鬼が改心していると認めたくなかった。
「あのー…どうしたんですか?」
早苗が真剣な表情のオオスへ恐る恐る尋ねた。
「ああ、すみません。私の探し人に特徴が似ていたもので…」
オオスははぐらかすように言った。事実を言うと引くかも知れないと思ったのだ。
だが、
「…え、探し人ですか」
早苗が何故か食いついた。…何か面倒臭い方向だと直感したが、オオスはわからない。
「私は帰るぜ。霊夢ももうすぐ帰るってわかったし」
魔理沙は外来人同士の話らしいので部外者は帰ることにした。
魔理沙としては珍しく善意であった。
「ああ、風邪を引かないようにお気をつけて」
オオスは優雅な礼をもって魔理沙を見送った。
魔理沙の精神状態という懸念していたことがなくなったとホッとしていた。
「ああ、魔理沙さん。また今度に」
早苗も魔理沙を見送りの声をかけた。
ちょっとオオスに聞きたいことがあった。…二人きりで。
「じゃあなー」
魔理沙は二人の挨拶に返事をした。
魔理沙は箒に跨って冬空を駆け抜けて行った。
魔理沙が帰って二人きりの博麗神社。
そこにいるのは清楚な雰囲気の少女と淡く儚い容姿の美男子である。
傍から見ると見目麗しいが、片方はオオスである。それだけで台無しである。
「で、探し人というのはどんな方なんですか?」
早苗はオオスに食い気味に尋ねた。
早苗はオオスの探し人という謎の女性が気になって仕方がなかった。
「ええと、まず力が強くて」
オオスは特徴を挙げていくことにした。…片腕以外だ。
「うんうん」
早苗は心の中でメモをする。早苗も身体能力には自信があった。
「邪法を使っていて」
オオスは茨木童子の特徴を述べる。…実に相手にとって相応しい。
「うん…うん?」
早苗が何かおかしいと思った。…何か早苗が考えていたのと違う。
「殺した人間を操って相手を圧死させたりする方です」
オオスはそう言い切った。
オオスはこいつは外道の極みであると確信し、相手にとって不足なしと判断した。
具体的にはオオスの権能でもって、一方的にズタボロにして宝物を献上させるのだ。
「あのー…仙人様なんですよ?」
早苗はオオスに仙人がそんなことをするはずがないと暗にオオスに告げた。
…早苗は自分が思っていたような甘い話題ではないと確信した。
そして、オオスは神にも、仙人に対して罰当たり過ぎないかと思った。
「片腕で仙人なら、今は邪仙になっているのかなーって」
オオスは自分の推測を述べた。今でも外道は外道であることをオオスは期待していた。
「罰当たりにも程がありますよ!仙人は人間の味方ですよ!」
早苗はオオスに叫んだ。
…好みの女性でも言うのかと思えばこれである。
「とはいえ、少し気になるんですよね」
オオスは早苗の叫びを無視して言った。
オオスは片腕の仙人とか何かそれ以外考えにくい。幻想郷で妖怪の山に住んでいるのだ。
萃香は今現在地上のどこかにいて、勇儀は地底にいた。
…茨木童子は、鬼の力が封じられて、隠れ蓑として仙人等しているのではないかと推理した。
「…それはどういう意味で?」
早苗はオオスが先程とは違う意味であると勘づいた。
早苗としては気になる情報なので恐る恐る尋ねた。
「いや、仙人ですし、神じゃないので」
オオスは誤魔化すことにした。
邪悪な鬼が今は仙人やっているのではとか言っても信じて貰えない。
「ええー…神だと駄目なんですか…」
早苗は凄く落ち込んだ。オオスは神は駄目らしい。
…必然的に現人神の自分はアウトである。
「…個人としては大丈夫です。早苗さんは話していて楽しい方だと思っていますよ」
オオスは本心を言った。忌々しい神であるが、半分人間である。
オオスは早苗には同じ外来人として接していた。
早苗は現人神にして風祝だが、オオス的には関わり過ぎなければセーフである。
「そうなんですか!」
早苗はオオスにとって自分は特別と言われたような気がした。
早苗は機嫌を取り戻した。
「ちょっと私が早苗さんを送っても大丈夫ですか?」
オオスは早苗に尋ねた。どうしても気になるので、早めに確認したかった。
具体的には今日中にである。…オオスは仙人の正体が気になって仕方がなかった。
「うん?良いですよ」
早苗はオオスの日本語がおかしいと思いつつも同意した。早苗としては歓迎である。
「じゃあ、この分社借りますね」
オオスは早苗の手を掴み引っ張った。善は急げである。
オオスはそう言って本来神しか使えない技を魔術で行使することにした。
ギリセーフだ。しかもこれは神を冒涜するに等しい術であった。オオス的には問題ない。
「え、待ってくださいことには順序という物が…」
早苗はオオスが意外にも大胆だったことに驚いた。
…オオスへ心の準備が出来ていないと主張した。
「博麗神社は境にあり、守矢神社の分社は本殿との境になっている」
オオスは淡々と早苗に説明した。
本来は祀られている神である神奈子等しか使えないし、許されない転移法である。
神奈子は分社と本殿をワープするように行き来できるのだ。
今回、オオスも片道だけなら可能だった。
博麗神社のような特異な環境だから行使可能な転移術であった。
「じゃあ早苗さん行きましょうか」
オオスは早苗に再度確認を取るように言って呪文を唱えた。
その瞬間、守矢神社の分社の手前に白い2m前後の隙間ができた。
…人が通れる程度の隙間であった。
それは『次元の門』と呼ばれる魔術だった。境界が認識できる時に使用可能な魔術であった。
博麗神社という特異な環境と守矢神社の分社。
これだけ条件がそろえばオオスでも簡単だった。早苗にも許可を取った。
…神奈子も怒りたくとも怒れないに違いない。
オオスは合法的に神に喧嘩を売れることに歓喜した。
「…え?何ですかこの白い隙間みたいなの」
早苗はオオスが何をしたのか尋ねた。この隙間はなんであるか尋ねた。
…一緒に守矢神社まで行くのではなかったのか。
「守矢神社と博麗神社を繋ぎました」
オオスは淡々と早苗に事実のみを伝えた。…この罰当たりは神しかわからないだろう。
「本来は神奈子さんとかしか駄目なんですが、早苗さんが良いとのことなのでセーフ」
オオスはそう言って早苗の返事を聞かずに神の社に喧嘩を売るような行為を平然と行った。
「え、えっちょっと待って」
早苗はオオスの言っている意味がわからず聞こうとした。
だが、オオスにやや強引に手を引かれるのに、逆らう気が起きなかった。
…逆らおうと思えばオオスと早苗では力の差で余裕なのだが。
オオスと早苗は白い隙間を潜り、博麗神社から守矢神社へ転移した。
…オオスは帰りのことを考えず、その場のノリでやってしまった。