嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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善意ほど性質の悪いことは無い

オオスは守矢神社にて神奈子に怒られていた。

オオスの行為は、自分の分社を玩具にしたようなものである。当然の怒りであった。

 

だが、

「ついかっとなってやった。反省はしているが、後悔はしていない」

オオスは神奈子に謝らない。…早苗に許可は取ったと開き直っていた。

早苗が無知なのが悪い。オオスは暗にそう言っていた。

 

…早苗を甘やかし過ぎではないかという意図も含まれていた。

 

「…早苗に免じて許すが、私の分社で遊ぶな!」

神奈子はオオスの裏の意図を読み取りつつも、オオスを叱った。

…実際、早苗はオオスの行為の意味がわかっているか怪しいので怒るに怒れなかった。

 

「まあまあ、神奈子。この桃硬いけど美味しいよ」

諏訪子はオオスの行為を左程気にせず、仙果を食していた。

 

…神社を勝手に幻想郷に飛ばされても左程怒らないだけはあるとオオスは諏訪子に感心した。

神奈子よりも度量がある。ちょっとしたお茶目くらい神奈子も許せとオオスは思った。

オオスは神を軽んずるというレベルではないことを内心考えていた。

 

「あー…その桃はオオスさんが高天原の神々から巻き上げたとか言ったました」

早苗は神奈子の怒りを逸らそうとオオスが言っていたことを思い出して言った。

実際、自分も良く聞かないで同意した負い目があると早苗は思っていた。

…オオスとは偉い違いである。

 

「…本当に?」

神奈子はオオスに振り返って聞いた。…それはマジかと言いたげだった。

…人間が高天原へ行けるかわからないが、神奈子はオオスなら出来そうな気がした。

 

「本当です。あそこに潜入して巻き上げてきました。…素寒貧ですよ奴ら」

オオスは神奈子に同意して言った。嘘ではないと強調した。

…この気持ちは神奈子ならばわかるだろうと言わんばかりの暗い笑みを浮かべていた。

 

「それは小気味いいわ!ハハハハ!」

神奈子はオオスに同意するように笑った。実に小気味良いと心の底から思った。

 

「急に機嫌を取り戻しましたね…」

早苗は神奈子が急に機嫌が良くなったので困惑した。

…何故、他の神とは言え、オオスが神からカツアゲしましたと聞いて喜んでいるのだろうか。

 

「あー。早苗は知らなくて良いよ。昔の話だから」

諏訪子は早苗まで神奈子の個人的な恨みに関わらせたくないと気にしないように言った。

 

「?」

早苗は混乱した。諏訪子なら勉強したらとか言いそうなのに今回はしないで良いと言う。

早苗には意味がわからなかった。

 

「しかし、人の身でどうやってあそこに行ったのかはわからんが、気を付けなさいな」

神奈子は実に小気味良い話を聞かせてくれたオオスに気を付けるように言った。

穢れを嫌う連中だ。地上の民のこと等ゴミ程度にしか考えないだろうと思い心配していた。

 

「ああ、前に天津神から逃げたんですが、あれは内心冷や汗をかきましたよ」

オオスは一番ヤバかった思い出を話した。サグメから逃げたときだった。

サグメの能力を確信していて逃げ切れると断言出来たが、それとこれとは別だった。

 

「…何で人間のままで逃げ切れるのかが疑問なんだが、いや信じないわけじゃないけども」

神奈子はオオスの話を聞いて呆れて呟いた。

オオスは神奈子から逃げるだけなら十分可能ではあるし、真実だと思ってはいるが。

 

「稀神サグメという方で事象を逆転できる能力の持ち主でした」

オオスは神奈子の内心を無視して説明を続ける。…サグメの脅威を教えていた。

 

「早苗さんも月へ攻め込む際はお気をつけて」

オオスはそう言って早苗を見た。月へ攻め込むならば早苗であろうと心配だった。

 

「攻め込みませんよ!…というか最早戦いにならない神だと思うんですけど」

早苗はオオスにツッコんだ。

そして、戦いの土俵どころか逃げるのも不可能な神ではないかと思いオオスへ指摘した。

 

「事象を逆転できるということは可能性が零ならば問題ない。…恐ろしく強いだけです」

オオスは早苗にサグメ対策のコツを伝授した。可能性が零ならば攻略は案外容易い。

…オオスは逃げるしかできないが。

 

「…それができるのは多分貴方しかいないと思うよ」

諏訪子は黙って聞いていたが、オオスへツッコんだ。

可能性を零にするとか普通に無理だと思った。

 

「月の都だと可能性を零にするのがキツイのは確かですが…そこまでではないかと」

オオスは祟り神の頂点ともあろうものが、弱腰なと思い指摘した。

早苗ならきっとできる。オオスは人の可能性を信じていた。

…半分神なのが気に食わないが。

 

「いや、無理だって」

諏訪子はバッサリとオオスの戯言を否定した。

…オオスが早苗を評価してくれるのは嬉しいが、それとこれとは別だった。

 

「…そういえばどうやって帰る気なんだい?」

神奈子はオオスの転移の原理を聞いて、帰りはどうするのか尋ねた。

 

…オオスのやり方では行きは良くても帰りは無理じゃないかと神奈子は指摘した。

 

「あ…」

オオスは今更気が付いた。…どうしよう確かに帰れない。オオスは馬鹿をやったと悟った。

 

「おい」

神奈子は思わず素でツッコんだ。考え無しかと。

神に仇名すことがそんなに楽しみだったのかとオオスに対して怒りを通り越して呆れた。

 

「考え無しで来たんですか!?」

早苗はオオスへ叫んだ。無茶苦茶である。

何せ物凄く標高がある妖怪の山の頂上付近に守矢神社はあった。雪山となれば普通に死ぬ。

オオスは早苗のような体力はないと早苗はもう知っていた。

 

オオスもこの山の正体が幻想入りした本来の姿の八ヶ岳であり、富士山より高いと知っていた。

富士山に住む木花咲夜姫が八ヶ岳に住む石長姫の山の方が高いのがムカつくという理由で破壊し、低くしたのだ。

神というのは本当に碌な事をしないとオオスは心底思っている。

なお、石長姫がこの山にいることもオオスは知っていた。会いにはいかないが。

 

「大丈夫…一応、奥の手はあるから…」

オオスは一応奥の手があったので、問題ないと説明した。だが、もう夕暮れに近い。

…念波で玉兎達には帰りが遅くなると伝えるにしても、帰りは明日以降になるだろう。

 

「…取り敢えず今日は泊っていくかい?」

神奈子はオオスが無理を仕出かすつもりだとわかり提案した。

今のうちに天狗を呼んでおいて、明日オオスの帰りを任せようと思った。

…神奈子的には善意であった。

 

「…安全を取るべきですね。此度はお世話になります」

オオスは神奈子の内心を知らずに心からの礼をもって返した。

なお、その善意はオオスにとって勘弁して欲しいものだった。

…善意ほど性質の悪いことは無い。

 

「…随分しおらしいわね」

神奈子はいつもと違って素直に礼を言うオオスに困惑した。

ここまで素直だと神奈子すら勘ぐってしまう程にオオスは礼儀正しかった。

 

「お世話になるのだから当たり前です」

オオスは神奈子に言った。

神であろうが、世話になる相手には相応の礼節をもって接するべきとオオスは思っていた。

 

「何だかなぁ…神の軽視というか、それがなければなぁ…」

神奈子は物凄く惜しいと言わんばかりに嘆いていた。

 

「…高天原でカツアゲしてきたのは、軽視とかそういうレベルではないと思うんだけど」

諏訪子は神奈子が流しているが、オオスの行為を指摘した。神に対してそれはヤバい。

 

「細かいことは良いんだよ諏訪子」

神奈子は諏訪子に細かいことを言うなと流した。

 

「ええー…良いんですか神奈子様」

早苗は思わず神奈子に言った。…オオスが居るのは嬉しいがそれはそれであった。

 

「良いんだよ。あそこの連中なんだから」

神奈子は早苗に言った。あの忌々しい連中である。寧ろ神奈子は聞いていてスカッとした。

 

「そうですよ。早苗さん。あそこの連中なんですから」

オオスも神奈子に同意した。あの連中は痛い目を見るべきである。

 

「…本当に言っていた通りの反応をしていますね」

早苗は神奈子の反応がオオスの言っていた通りなので苦笑した。

 

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