富士山より高い妖怪の山は人里より雪が降り積もっていた。頂上付近は一面の雪景色である。
そんな中、オオスは頂上付近の山の木に登り、霊視にて山を俯瞰していた。
仙果を食したこと結果、前では無理だった規模での霊視の行使が可能になっていた。
オオスは山の中腹にある大きなケヤキの木の近くが目的の仙人が住む仙界だと確信した。
あそこだけ空間が歪んでいた。オオスも権能として異界を持つ者である。簡単にわかった。
それは二年前に輝夜と妹紅の喧嘩による歪みを検知して、喪服で乗り込んだのと同じ理屈であった。
オオスは標的の仙人の居場所を特定した。冬以外ならば人里から早朝に出れば往復可能だった。
冬でなければとオオスは惜しんでいた。すぐそこに答えがあるのに届かない。
…元とはいえ探偵としてこれほどまでに悔しいことはない。
オオスは仙人がもしも邪仙だったらと、この怒りをぶつけると固く誓った。
基本的に仙果を食してもオオスは防御力が上がっただけであった。
…霊夢のワンパンで殺されることはなくなったのだ。偉業であるが、そう考えると空しい。
霊力を魔力に変換することで儀式魔法が広範囲で可能となったが、実用性に欠けた。
仙人系の技能は飛躍的に増大したと確信しているが、やはりオオスには火力がなかった。
オオスは科学や魔法よりの、ゲームで言えば技術職なのだ。
技術職に火力を求めるのが間違っている。…オオスもそれをわかっていた。
だが、霊力が上がったことは無意味ではない。火力以外では有益なことには変わらない。
手札の一つである『霊活符』による能力向上は常時可能となった。だが、自力ではない。
元々、オオスは霊力の扱いについて左程長けてはいなかった。
使えるのも霊力の燃費が少ない補助系ばかりだ。
霊活符も補助系だが、結構な霊力を消費した。…結局、オオスは霊力を持て余していた。
成果がないわけではないので、オオスは引き続き仙果を食するつもりである。
オオスは冬が明け次第、あのケヤキの木付近に住む仙人を尋ねるつもりである。
…オオスが持て余している霊力を仙術として行使できないか教わりたい。
オオスは教師役を欲していた。この際、仙人の正体が鬼じゃなくても良い。
仙術は仙人の気質からか、文献が散見している今から集めるのには手間がかかった。
自分も人里での伝手で集めてみるが、あまり大した成果は期待できないだろう。
鈴奈庵は冬の時期は多忙である。幻想郷で冬は冬篭りの読書の季節なのだ。
できれば迷惑をかけたくないが、聞いてみるのも手だ。
オオスは一応、妖怪の山で成果は得た。仙人の発見もそうだが、山の測量も大体完了した。
オオスは持て余した霊力で無理やり自身の脳を活性化し、色々と測量できた。
霊力による身体補助の応用だった。火力こそないが、利便性は増した。
弾幕はパワー、火力こそ正義と謳う魔理沙程ではないが、オオスは火力を欲していた。
観測が終わったオオスは守矢神社に戻ることにした。
オオスは早苗と共に今夜の夕食作りを手伝うのだ。
それ以外にも明日早朝、境内の掃除もあれば手伝うべきだろう。
オオスは守矢神社に世話になる以上、この際神云々は関係なく全力で取り組む所存であった。
守矢神社での急遽来た客人を招いた夕食は地味ながら大変美味なものだった。
「この煮物はしっかり染みていて旨いな!何より、酒に合う」
神奈子は大皿に盛られた煮物を絶賛した。
里芋と飾り切りされた蓮根と椎茸がどれもが味が染みていて美味であった。
神奈子達の酒を飲む手の邪魔にならぬよう、オオスは淡々と隙を伺い取り皿に分けていた。
「それオオスさんが作ったんですよ!」
早苗は神奈子に言った。…オオスはかなり料理が上手かった。
早苗はオオスの手際の良さと応用力に驚いた。
材料がなければアレンジするのだが、失敗がない。料理人として職になるレベルだった。
「鯨呑亭の煮物を再現しました。…人里の酒屋で出てくる煮物です」
オオスは飽くまで再現したのみと謙虚に振舞い、食した感想に耳を傾けていた。
オオスは世話になる以上、最大限に謙虚に振る舞っていた。
「食後に出てくるデザートも凄いんですよ!神奈子様、諏訪子様!」
早苗はオオスがデザートまで用意していることを暗に言った。
早苗としても外のデザート、洋菓子を久しぶりに食べられることを楽しみにしていた。
「あれは結構簡単に作れるのでレシピ置いておきますね」
オオスは褒める早苗に気を良くしてレシピを置いて行くことにした。
洋菓子に飢えているであろう早苗に気を使ったのだが、他にレシピを用意することにした。
オオスは夜の間に、観測した妖怪の山の鳥観図と洋菓子のレシピを作成するつもりである。
なお、オオスはデザートにパンの代わりに米粉でパンを作りそれを使ったタルトソレイユを用意していた。
タルトソレイユは太陽のような飾りつけをした菓子である。
オオスは仙果を一部ジャムにし、桃を主体に飾りつけをしていた。
…次に月へ潜入する際は菓子職人でいくのもありかも知れないとオオスは思った。
「基本、切ってねじるだけで作れる簡単な菓子ですのでそこまでのものではありません」
オオスは飽くまでも謙虚な姿勢を貫きつつ述べた。
タルトソレイユは結構簡単な部類の菓子であった。
早苗が喜ぶのならば、簡単に作れる洋菓子をメインとしたレシピをオオスは用意することにした。
「勿体ない。本当に勿体ないなぁ…」
諏訪子はオオスの手際の良さと謙虚さを見て呟いた。
普段の神への冒涜がなければ早苗の婿としてこれ以上ないくらい優良物件なのだが。
諏訪子は人知れずため息をついた。