嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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外の脅威

オオスは自宅地下の一室、情報の集積部屋で作業していた。

 

玉兎達の中でも情報分析に長けた鈴瑚にオオスへの協力を依頼していた。

他の玉兎が頼りにならないわけではない。

他の玉兎達にはオオスが求めている情報分析を任せていた。

 

オオスのパソコンを玉兎の科学力により改造して詳細なデータの入出力等して貰っていた。

オオスは指示するだけで良かった。オオスはこれ程皆が役立ってくれるのは想定外だった。

 

だが、オオスは情報を扱える技能持ちでかつ機密な作業に鈴瑚だけを携わらせていた。

オオスとしては一人でも漏れる可能性を消したかった。部下を信頼しないわけではない。

 

オオスは守矢神社の樹の上から見た鳥観図を元に改めて妖怪の山を分析していた。

 

オオスとしては人里その他、今後の計略に関わることだからだ。

全ては幻想郷と、人里のためのオオスの対策の一環であった。

 

 

オオスの籠っていた部屋にはこれまで解析したデータが山のように積まれていた。

そして、壁には違う視点から解析した幻想郷中のあらゆる場所の地図が張っていた。

外の世界で探偵として活躍したオオスでも幻想郷ではアナログな手法に頼らざるを得ない。

そこにイーグルラヴィの玉兎達が来てくれた。…それには本当に感謝しかなかった。

 

「…」

玉兎の一人、鈴瑚は入室の為にオオスがいる部屋の前でノックを三回した。

 

「どうぞ」

オオスは鈴瑚に入るように促した。今見られて困る物はなかった。

 

「失礼します」

鈴瑚はオオスの許可を元に入室した。稗田家で学んだ礼をもって優雅に振る舞う。

 

オオスは玉兎達皆、礼儀がしっかりしているので嬉しいが、無理をしていないか心配だった。

 

「閣下が霊視により数値化されたお陰で理論計算が可能になりました」

鈴瑚はオオスが求めていた情報の分析が完了したと報告した。

 

オオスの作業を手伝いたいと申し出たはずの鈴瑚達にとっても大変な作業だった。

…鈴瑚はオオスがこれを一人でやろうとしていたのかと思い、感嘆するしかなかった。

 

「こちら、妖怪の山の勢力図とそこから漏れだす妖力、魔力等の流れになります」

鈴瑚はプリントアウトした地図をオオスへ渡した。

オオスのコンピュータを用いることで微分方程式により大よそ近似値を得ることができた。

 

オオスのコンピュータを少し改造しただけであり、月の技術を使う必要はほぼなかった。

…時間さえあればオオスは一人で計算できただろうと鈴瑚は思っている。

 

「非現実性、幻想と全体の均衡…科学的な分析結果にしてくれたお陰で助かりました」

オオスは月の科学力に感嘆する他なかった。外の科学力を上回る所の話ではない。

…イーグルラヴィの分析能力を玉兎だと過小評価していた。オオスは月の脅威度を上げた。

 

実際は、玉兎達が月から脱走する前に詰め込んだ書籍や学習道具のお陰である。

オオスの夢の空間にいた際にイーグルラヴィの玉兎達で勉学した後付けの知識であった。

…オオスの月の評価は実際のところは過大評価なものであった。

 

オオスは部下の私生活になるべく口出ししないようにしていた。

だから、オオスはその過大評価、違和感に気が付けない。

…比較対象が鈴仙という八意永琳、月の最高峰の知性の弟子というのもあった。

鈴仙も独力で月の科学力を有していることをオオスは見知っていた。

 

それらを比較してはいけない。

オオスの月への潜入も短期であり、深入りできないので過大評価を修正できないでいた。

 

「閣下の霊視の精度のお陰です。正確な数値さえあれば問題なく…とはいきませんでした」

鈴瑚はオオスが霊視で得たデータを元に皆で計算したと説明した。

だが、正確なところまでは無理だった。玉兎達は知識の後付けなのを悔いた。

 

「まあ、大よそで良いんです」

オオスは渡された資料に目を通して、鈴瑚へ言った。これ以上は無理だとオオスは思った。

オオスの霊視は格段に向上したために思わず得られたデータだ。

玉兎達の科学力が如何ほどであっても2、3日で結果を得られたことに驚愕していた。

 

「日々妖怪等の活動で山自体が大きな変化する以上、これ以上は無理というものです」

オオスはそう締めくくった。オオスから見て鈴瑚達は頑張り過ぎである。

オオスは彼女達に感謝しながらもどうしたものか考えていた。…働き過ぎは良くない。

 

オオスは一先ずこれを見終わったら、皆で休憩しに行こうと考えた。

永遠亭に遊びに行こうかと思った。鈴仙もいるし、リラックスできるかもしれない。

 

だが、

「妖怪の山に守矢神社が出来たことはある意味人里にとって有益なのだが…少々面倒だな」

オオスは考えを中断した。不味いことに気が付いたのだ。

オオスは霊視で観測した妖怪、神等の勢力の解析結果を見てあることに気が付いた。

 

外と内の問題だった。今のオオスは外には干渉できない。…どうしたものか悩んだ。

 

「どういうことですか?」

鈴瑚はオオスが険しい顔をしたので尋ねた。何か不備があったのかと心配した。

 

「いえ、鈴瑚達に誤りとかはありません」

オオスは鈴瑚の心配を看破し、問題ないと言い切った。鈴瑚達の作業は正確だった。

だからこそ、飛躍した結論が出たかもしれない。オオスは自身の情報を整理したかった。

 

「…ちょっと相談して良いですか?会話で頭の中を整理したい」

オオスは鈴瑚との会話をもって情報を整理したいとお願いした。

 

「は、はい!」

鈴瑚は歓喜した。オオスから命を受けたことが嬉しかった。

 

…ここに誰もツッコめない主従関係の認識のズレがあった。

オオスはお願いしているつもりでも玉兎達は命令として喜んで引き受けてしまうのだ。

 

「辻神…ではなく、妖怪のことなんですけど」

オオスは鈴瑚の張り切り具合に思わず妖怪を神扱いした。

つい口が滑ったと反省した。妖怪に対して失礼なことを言ったとオオスは内心謝罪した。

 

「外で、守矢神社の力を借りて境界にいる妖怪を清める儀式があったんですよ」

オオスは淡々と鈴瑚に説明する。自分に言い聞かせるように確認していた。

 

「その地域では、毎年7月14日の盆の夜に獅子舞を行う儀式を行っていました」

オオスは口に出しながら考えていた。

八雲紫に聞きたかった。…これは放置しても大丈夫なのかと思った。

 

オオスの杞憂であると思うのだが、確認の為に紫へ聞きたかった。

紫の月面戦争が終わったら話がしたい。オオスはそう思った。

 

「…守矢神社は賽の神の役割ができるかもしれない」

オオスは結界に関する神の儀式が可能だと推測した。

飽くまでオオスのように気が付く者がいた場合である。

 

守矢神社の他にもこの原理を使えば、博麗大結界を外から破壊できる可能性があった。

知性と好奇心の塊のような存在がいれば可能だ。

幻想郷中にパワーストーン等をばら撒けばよい。…噂を流し回収させ儀式と化せば可能だ。

 

「それがどうかしたのでしょうか?」

鈴瑚はオオスに疑問を投げかける。オオスは会話を求めていたからだ。

 

「賽の神は境にあって、他から侵入するものを防ぐ神なのは知っていますよね」

オオスは鈴瑚の質問に答える。…同時に自分の認識であっているかを確認した。

 

「はい。玉兎なので多少は知識としてあります。災厄から防ぐ神様ですよね」

鈴瑚はオオスの確認の意図に気が付き、鈴瑚の知識でもあっていると答えた。

 

「…守矢神社が一強になると相対的に博麗神社の博麗大結界が弱まるかもしれない」

オオスは鈴瑚との会話を打ち切って結論を述べた。

 

「それは…どういうことなのでしょうか?」

鈴瑚は結論のみ述べたオオスに尋ねた。オオスは確認を求めていた。

軌道を修正するのも自分の役目だと鈴瑚は自覚していた。

 

「ああ、すみません。賽の神として守矢神社が博麗神社にとって代わる可能性があるんです」

オオスは端的に鈴瑚へ言った。自身の論理の飛躍がないか確かめることも含めていた。

 

「守矢神社への信仰が強すぎると、博麗大結界が守矢神社に変わる可能性がある」

オオスは改めて結論を述べた。結界を司る神社が、賽の神信仰を利用して取って代わる。

 

…それだけなら良いが外からそれを為すことも可能だとオオスは気が付いた。

それはオオスの内心に留めておくことにした。

飽くまでも仮説だが、内側の心配で外の心配が増えてしまった。

 

「幻想郷自体が様変わりしてしまう。…飽くまで私の仮説ですが」

オオスは表向きの理由を述べた。鈴瑚に余計なことを言って心労をかけたくなかった。

 

「悪いことではないのかもしれませんが、神奈子さんが何かやらかしそうで不安なんです」

オオスは心のそこから思っていることなので本音のまま言えた。

 

「…例の科学で信仰を得るという方針のことですか?」

鈴瑚は守矢神社の方針が性急過ぎると溢していた事を思い出して言った。

オオスは塩屋敷の主人の例のように緩やかな発展を望んでいた。

 

「過ぎたるは猶及ばざるが如し。守矢神社は性急過ぎる」

オオスは外のことは置いて、内側の心配をすることにした。

 

「この可能性にもう少し早く気が付いていれば…」

オオスは世話になっている以上、あの時は言えなかったが不安になってきた。

だが、オオスが干渉できる話ではない。神奈子へ無理に介入すればムキになるだろう。

何をするかわからないが、神奈子達には大人しくして欲しいとオオスは願った。

 

「いっそ、宗教施設が複数増えれば問題ないかもしれない」

オオスは思わず心の内を言葉に出していた。それは飽くまで解決策の一つだった。

…オオスは神を求めるような事を言ったことを悔いた。何たる醜態か。

 

「閣下…あの…」

鈴瑚はオオスの言うのはよくわからない。

だが、オオスの言葉から察すると自分達の教団を表に出せば良いのではと思った。

それで思わず口に出しそうになった。

 

…オオスが凄まじく自己嫌悪に陥っているので慌てて止めたが、鈴瑚はどもってしまった。

 

「どうしましたか?」

オオスは自らの世界に入り込んでいたと反省し、鈴瑚に尋ねた。何か言ったか気になった。

 

「いえ…失礼しました」

鈴瑚は言えない自分を心から申し訳なく思い、沈黙で返した。

 

「そうですか。…それについては深くは聞きませんが」

オオスは鈴瑚が語りたくないことを溢したのかと無粋なことを聞いたことを反省した。

 

「…私の憶測で不安にさせてすみません」

オオスは心の底から鈴瑚へ謝罪した。…オオスの研究につき合わせたことも含めて。

 

「いえ、閣下は悪くないんです!こちらこそ申し訳ありません!!」

鈴瑚は慌てて謝罪しなおした。

…オオスを神として崇めている宗教施設を作っていますとか言えない。

オオスには謝罪する他ないが、自分達も信仰を止められない。

 

「…では、気分を変えてこの作業は辞めて皆で夕食にしましょうか?」

オオスは鈴瑚の事情に深入りしないで夕食を提案した。皆で食べるのだ。

 

「は、はい!」

鈴瑚は満面の笑みをもってオオスに答えた。

 

オオスは誰かと自宅で食事という外ではしたことがなかったことを今更思い出した。

…幻想郷での現状と鈴瑚達へオオスは感謝していた。

 

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