嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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経験不足

オオスは博麗神社にて霊夢に喧嘩を売った後、黄金の蜂蜜酒で紅魔館へ転移した。

 

そして、オオスは図書館にて、パチュリーへ約束していた春季光星を渡した。

春季光星は箱に入れてあり、万が一でも武器として使われないようにしていた。

 

「春季光星はその辺に置いておくだけで暖かくなりますので、これで良いでしょう」

オオスは挨拶も早々にパチュリーへそう言った。

 

春季光星には箱入りで悪いが、魔理沙辺りに持って行かれたくない。

その為にオオスは春季光星を箱に入れていた。

他人任せになるが、パチュリーが後は何とかしてくれるとオオスは期待した。

 

「…霊夢が戻って来たのね。レミィと咲夜が向かっているけど丁度良かったわね」

パチュリーはオオスのせわしない様子を見て確信した。

レミリアも霊夢が今日返って来ると自信満々で出て行ったが、丁度良かったと安堵した。

 

「春季光星を渡すと言っておきながら、大分遅れてすみませんでした」

オオスはパチュリーへ当日に春季光星を渡し、慌ただしくなったことを謝罪した。

 

本来ならばパチュリーもレミリアと一緒に行っていたのだろうとオオスは思っていた。

しかし、オオスが春季光星の貸出が遅れたために残っていたのだとオオスは考えていた。

 

「いいのよ。どのみちここへ来るのだし」

パチュリーはオオスへ気にしないように言った。霊夢はその内にここへやってくるのだ。

…挨拶はその時で十分だとパチュリーは思った。

 

そもそも海を作るのに最も大切な塩の方は即日届けてくれたのだ。

そして、春季光星は言うなればおまけの暖房程度だった。

パチュリーからすればオオスは気にし過ぎだった。

 

「でも、遅れそうになるなんて珍しいわね?…何かあったのかしら」

パチュリーはオオスに疑問を呈した。オオスは仕事が早い。

 

オオスが何かをするときに締め切りギリギリになることはほぼない。

特にパチュリーからすればこれが初めてであった。オオスにしては極めて珍しいことだった。

 

「春季光星と冬季清浄を合わせて実験していたら、前々からの研究が捗ってしまいまして…」

オオスはパチュリーに端的に説明した。

…オオスはギリギリまで二つの剣である実験していたのだ。

 

オオスは外で読んだ記述を思い出しながら、おぼろげな記憶を頼りに河童の秘宝を研究していた。

それは河童の秘蔵酒と呼ばれる物だった。

 

河童の秘蔵酒には二種類あり、特にその内の一つをオオスは求めていた。

幻想郷での自然採取ではどうやっても再現できなかった。

幻想郷とは違う気候を、二つの神器で季節を弄り再現した。

そして、求めていた材料が出来上がった。…幻想郷の気候では再現できなかったのだ。

別の伝承である河童徳利伝説の地、神奈川県茅ヶ崎の季節を再現したら秘宝が完成した。

 

幻想郷の河童達ですら口述でしか知らないかも知れない秘宝をオオスは手に入れた。

…知っていてもオオスのように幻想郷の気候で再現できないだろう。

オオスは河童に対して大きなアドバンテージを得て交渉に臨む準備ができた。

 

「…わかるわ。途中でやめられなくなるのよね」

パチュリーは研究者としてオオスに同意した。

 

パチュリーも春と冬を弄れるのならばしたい研究を山ほど思いついた。

…それが後少しで完成となれば、ギリギリまで粘る。

というかパチュリーなら誰かに貸さない。秘宝を簡単に誰かへ貸すオオスは極めて例外的であった。

オオスの実験は完成したのか、しなかったのか、どちらにせよ義理堅いとパチュリーは思った。

 

「ですが、問題ありません」

オオスはパチュリーに問題ないと言い切った。貸しても問題ないからと念を押した。

パチュリーが研究者として受け取りにくくなるかもとオオスは考え、敢えて発言した。

 

「そう…なら、これ以上は無粋ね」

パチュリーはオオスの気遣いを感じ、何か言うのを辞めた。

 

後日、聞けるのならオオスの研究を知りたいとパチュリーは思った。

…パチュリーもまた魔法使いという研究者だった。

 

「ええ、そうですね。…流石に海水浴で男一人とか気まずいことこの上ないので」

オオスは海水浴に一人男とか嫌だと心の底から言った。

 

男として全く興味がないといえば嘘になるかも知れない。

だが、それ以上にオオスからすれば立派なセクハラである。

自分の退路を断ち切るという意味で霊夢にも喧嘩を売って来た。

…早く帰らないと霊夢に殴られてオオスは死ぬ。

 

だが、

「…貴方はどんな女性が好きなのかしら?」

パチュリーはオオスに思わずと言った感じで尋ねていた。

…オオスが海水浴に興味がないわけではないとパチュリーは勘で悟ったのだ。

 

「藪から棒にどうしました?パチュリーらしくもない」

オオスは動揺して質問を質問で返した。それはパチュリーらしからぬ問だった。

オオスもパチュリーの問は想定外で少し慌てていた。

 

「ごめんなさい。…海水浴ということで変なことを考えてしまったわ」

パチュリーはオオスの動揺を見て、謝罪した。

パチュリーは変なことを考えてしまったのだ。…海水浴に来る中に好みの女性がいるのかと。

 

「…強いて言うのならば」

オオスはパチュリーの問に答えることにした。変な意図はない。

想定外に動揺したが、オオス的には言って何も問題なかった。

 

「一緒に居て楽しい人ですかね。パチュリーとか」

オオスは本心からそう言った。パチュリーなら一緒に居て楽しい。オオスの本心である。

 

「…そういうの素で言うと困るわ」

パチュリーはそう呟くように言った。パチュリーはオオスに背を向けていた。

…あからさまにパチュリーは動揺していた。

 

「事実を言ったのみなのですが…」

オオスは首を傾げながらパチュリーへ言った。

 

オオスはパチュリーの動揺に気が付かない。…その辺の情緒については経験不足だった。

だが、オオスはパチュリーから背を向けられるようなことを言ったか考えていた。

 

「あ、不味い。そろそろ霊夢さん達が来ますね」

オオスは時間的に喧嘩を売った霊夢が来ると確信し、言った。…逃げなきゃ死ぬ。

パチュリーの様子は気になるが急いで退散しなければ不味いと判断した。

 

「…海水浴が終わったらまた魔法研究しましょうね」

オオスはそれだけパチュリーへ言って慌てて帰って行った。

 

オオスの身代わりは機能するがそれだって無駄にできないのだ。

オオスは霊夢から逃げ出した。今の装備ではただ死ぬだけだからという理由であった。

霊夢と死ぬ気で喧嘩自体はしても良かった。…経験という得るものはあるからだ。

 

「ええ、楽しみにしているわ」

パチュリーはオオスに背を向けたまま言葉を返した。…顔をオオスに向けられなかった。

 

 

紅魔館の図書館では今、パチュリーと小悪魔の二人きりであった。

小悪魔はオオスとパチュリーの会話を聞いてしまっていた。

 

小悪魔はパチュリーへ声をかけることにした。若干気まずいが。

 

「パチュリー様…」

小悪魔はパチュリーに恐る恐る声をかける。…何を言って良いかはわからないが。

 

「こあ…今のは誰にも言うんじゃないわよ」

パチュリーは淡々と、だが、凄んで小悪魔に命令した。

 

「は、はい!」

小悪魔はパチュリーに気圧されつつ、同意した。小悪魔は絶対にこのことを他言はしない。

 

…小悪魔が見たパチュリーの顔は真っ赤だった。

 

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