嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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一大勢力

オオスは当初の予定であった河童との取引等を辞めた。

わかさぎ姫と影狼から妖怪の山で急に力を持った妖怪から迫害されている経緯を知った。

そして、年末を使って麓の妖怪達の主に食事等の面倒を見ていた。

 

オオスは妖怪達と共に食事をし、時には悩みの相談に乗るなどしていた。

オオスは外での『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を遵守していた。

人里でもオオスは他者の衣食住に気を使っていた。過干渉しない範囲で面倒を見ていた。

妖怪にもオオスは同じように直接何か困ったことがないかと面倒を見ていた。

 

オオスはそれが弱肉強食の理にいる妖怪達から信仰を集めることになるとは思わない。

オオスは助けると決めた相手は誰であろうと最後まで面倒看ると決めているだけである。

 

そんな中でオオスは自身の身に変化があったことに気が付いた。

神化ではない。それをオオスは無理やり気合で無力化している。

神化は四季映姫から聞いていたので無理やり抑え込んでいた。

だが、オオスの身に別の物が宿りつつあった。

 

「…これは妖力ではないか?」

オオスは自身の変化に思わず呟いた。

 

弱小妖怪達の面倒を見つつ、同じ食事を取っていたらいつのまにか妖力が身についていた。

オオスの権能で自身の妖力は無力化できる。反対に活性化もできるが。

そのため人里での生活で問題にならない。しかし、オオスは別のことで悩んでいた。

…妖怪の妖術を使えるようになればオオスは更に強くなれるかもしれない。

 

妖力を使う人間は退魔士など人里にも多少いた。

オオスが知る中では藤原妹紅は妖力を使う人間の最たるものだ。

妹紅は退魔師ではないが、その火を操る能力は妖力による妖術だった。

他にはオオスが地底で一輪に聞いた話では異界に封じられた聖は妖術を使っていたらしい。

オオス並に手段を選ばぬ外道であるが、聖は信仰者のようなのでオオスとは相容れない。

オオスとしては一輪からのまた聞きとはいえ聖とは思想が似ているだけに残念であった。

 

オオスの妖力は恐らく人食い朝顔を食したのが原因であると思われた。

妖怪と同じように、また妖怪に誤解を生まないようにオオスは食事を同じくしていた。

…その献身的な姿勢が更に妖怪達の信仰を産むことにオオスは気が付かない。

 

妖怪達は人食い朝顔を食したところ他の食物よりも急速に回復していた。

オオスはそれを妖怪の回復力と個体差だと思っていた。

 

だが、オオスは自身の変化を自覚し、科学的分析ではわからない物があったと理解した。

そもそも朝顔は基本的に毒であるが、人食い朝顔は食用可能であった。

人食い朝顔は本来朝顔の持つ毒を、瘴気という環境で妖力に変換していたのかもしれない。

恐らくオオスの気が付かない程の瘴気から生まれた微量の妖力を人食い朝顔は進化に使ったのだ。

オオスは自らが瘴気を完全に無効化できるのでそれに気づくのが遅れてしまった。

妖力は微量であり、人里にも妖術を使う退魔師もいるので問題ないといえば全く問題なかった。

 

オオスが隠蔽工作している土地、『有情地』は現在、オオスと同じような微弱な妖力を使い生活している妖怪達がいた。

…オオスは彼等にその恩に付け込んで微力な妖力の活用法を聞き出せないかと考えてしまった。

オオスは自らの信義に反することを考えてしまった己を恥じた。

 

「どうされましたか?」

朱鷺子がオオスに尋ねる。

朱鷺子はオオスに雇われていた。既に何体かの自身と同じような妖怪を見つけていた。

自分と同じような者はいた。ある妖怪は山の妖怪から冬に備えた食料を奪われたりしていた。

 

そんな自分と仲間達の命の恩人かつ神の身に何かあったのか不安になり、尋ねていた。

 

「…私も皆と過ごす中で妖力を使えるようになったようなのです」

オオスは朱鷺子に失望されるのを承知で愚痴を言うことにした。

オオスは朱鷺子達からどうも過大評価されていると感じていた。

…ここらで失望された方がオオスとしては気が楽だった。

 

 

 

朱鷺子はオオスから悩みを聞いてくれないかと言われた。

朱鷺子は喜んで、だが、オオスの様子を見て心配して聞き入っていた。

 

「私は色々できる自覚はありますが、基礎的な能力は弱いのです」

オオスは朱鷺子に自らの弱さを吐露していた。

 

だが、朱鷺子は鈴瑚という同志から聞いていた。

オオスは自らの弱さに悩みを抱えているようだと知っていた。

 

オオスから雇用されるに当たってオオスについての諸注意を受けていた。

オオスを神として崇めるのは良いが、本人は神として扱われるのを嫌っている等である。

 

「その為、力を補う方法を模索していました」

オオスは淡々と語る。嘘は言わない。新しく出来た部下に対して愚痴を溢す醜態を晒す。

 

「私は突然沸いた妖力をどうにかして活用できないか考えました」

オオスは言葉を選びながら、だが、正直に言葉を述べていた。

 

「そして、ここ有情地にいる妖怪達から聞き出すことができないかと思いました」

オオスは本心から恥じていた。妖怪達の弱みに付け込んでいるようなものである。

それは、オオスとしては恥ずべき行為だった。

 

だが、

「え?…それくらい全く問題ないのではないでしょうか?」

朱鷺子はオオスの悩みを聞いた感想をそのまま素で返した。

オオスの行為に何か問題あるのだろうかと朱鷺子は思った。

 

「…いや、弱みに付け込んでいるような物でしょう?」

オオスは朱鷺子に語った。これは相手の弱みに付け込んでいる。

…フェアな取引ではないとオオスは思っていた。

 

「あのー、閣下」

朱鷺子はオオスの様子に少し呆れたように言う。

だが、朱鷺子はオオスの慈悲深さがよくわかった。

 

これほどまで些細なことを気にする存在は神だろうといないと朱鷺子は確信した。

 

「命の恩人に何かを返したいと皆思っているのです」

朱鷺子はオオスに指摘した。オオスは慈悲深い。

見も知らぬ妖怪に自らの限界ギリギリまで尽くしていた。

…だから、何らかの形で妖怪達、皆が恩を返したいと思っていた。

 

そして、オオスは弱っている者を利用することを恥じているのだと朱鷺子は理解した。

…誰よりも優しい彼の神は、本当に慈悲深い存在であったと朱鷺子は思った。

 

「それくらい大したことではありません」

朱鷺子はオオスの悩みを否定した。

寧ろ、それくらいの対価を払わないと気が済まないはずであると朱鷺子は確信していた。

 

「…」

オオスは言葉に詰まった。

オオスは外で誰かに助けられたことがなかった。利害が絡んだ時くらいの物だった。

 

オオスは初めて気が付いた。

もし、あの時の自分が誰かから救いの手を差し伸べられたのならばと仮定した。

オオスはその恩を返すために死に物狂いで何かをなしただろう。

他者もそれと大なり小なり似たようなことを思っているのだと理解した。

 

…それが信仰という形であるとは露にも思わないが。オオスは神を嫌悪し過ぎていた。

 

オオスは玉兎達からでは聞いても理解できなかっただろう。

現地の幻想郷の朱鷺子の、生の声を聴いてオオスは初めて理解できた。

 

「朱鷺子さん」

オオスは思った。…自らの求める強さの為に協力して貰えるのならしてもらいたい。

 

「はい!」

朱鷺子はオオスに返事をした。オオスは悩みを吹っ切れたようだと理解した。

 

「ありがとうございます」

オオスは朱鷺子に感謝した。本心から真心を込めて。

 

「…は、はい!」

朱鷺子はオオスの真摯な感謝に思わず狼狽した。自分でも顔が赤くなるのを理解した。

 

「…大丈夫ですか?」

オオスは朱鷺子の様子に困惑した。オオスは何か粗相をしたのかと不安になった。

 

「いえ、大丈夫です!」

朱鷺子はオオスの困惑を感じ取り、何でもないと否定した。

 

「…それならば頼んで良いですか?」

オオスは上司として部下の朱鷺子にお願いすることにした。

 

 

 

オオスは高台に乗っていた。…飢餓状態から回復した弱小妖怪達の前に出た。

オオスは先に妖怪達に話があると朱鷺子や玉兎達に宣伝して貰っていた。

 

「皆さん、集まって貰ってありがとうございます」

オオスは先に感謝の言葉を述べた。

…事前にオオスの求めることを伝えていた。だが、全員が協力してくれるとは思わなかった。

 

「私はこの先にある『有情湖』の管理人オオス」

オオスは湖の管理人として妖怪達の前で名乗った。

 

…オオスは、本当は里人と名乗りたい。

だが、里人と名乗って妖怪の味方をしたと言われるのを恐れていた。

霊夢から殺されるだけなら別に良いが、オオスへ味方した阿求等へも被害が行くかもしれないからだ。

 

「先に伝えたことを反故にしても、この冬の間の食物は必ず保証します」

オオスは先に述べた。全員が納得して参加しているとはオオスは思い切れなかった。

 

皆の善意を信じないわけではない。だが、それは奇跡である。…普通は有り得ない。

まるでオオスが神として扱われ、皆がその信仰を表しているような錯覚に陥るのだ。

 

「私は皆さんと共に過ごす中で妖力を手に入れました」

オオスは淡々と事実のみを述べる。一瞬皆がざわつく。

 

ざわついたのは神が妖怪を助けたことで穢れてしまったのではないかという焦りだった。

 

だが、

「それは、私が皆と共にあるとして寧ろ誇りに思っています」

オオスは皆の戸惑いを理解して問題ないと宣言した。

…オオスはまさか神として扱われているとは思わない。穢れたとかも思っていない。

 

妖怪達のざわつきは収まった。そして、感動していた。涙する者もいた。

彼の神は慈悲深く、自分達と関わったことで生じた穢れを誇りとして受け入れるという。

これほど慈悲深い神を妖怪達は聞いたことがなかった。いないと断言できた。

…妖怪達の信仰心は頂点に達していた。

 

「ですが、私は妖力の扱いを知らない」

オオスは端的に述べた。オオスが弱小妖怪達にこそ求めることだった。

 

「私の妖力は微弱です。ですが、それを、妖術を使えるようになりたい」

オオスは妖怪達に本心から言った。

 

妖怪達は歓喜した。自分達が彼の神に命の恩を返せると思った。

…だが、同時に自らの力の弱さを不安に思ってもいた。

 

「言い方は悪いですが、妖力が微弱だからこそ皆さんと同じ視点で力を得たいのです」

オオスは自らが弱いから弱者である妖怪達に教わりたいと堂々と述べた。

 

妖怪達は自らの不安すら看破して、同じ立場で看病してくれた彼の神のことを思い出した。

…妖怪達の信仰心は頂点を超えた。そこまで気遣ってくださる神に感謝した。

 

「貴方達、一人一人の能力を私に教授してもらいたいのです。…何卒宜しくお願い致します」

オオスは妖怪達に自分の教師になって欲しいとお願いした。

オオスは教わる以上は師弟の振舞いを心がけるつもりであった。

 

…妖怪達はもはや気持ちを抑えられなかった。

 

「あああああああ!!」「よっしゃあ!!」「おおおお!!!」「やったるで!!!!」

魂の歓喜を妖怪達は叫んだ。…妖怪達は後に恥じる程気合の雄たけびを挙げていた。

 

「…ありがとうございます!!」

オオスは妖怪達を見て、改めて心からの感謝の言葉を述べた。

 

オオスは誰からも見向きもされない弱小妖怪達の生きる知恵と能力を学ぶことを決意した。

 

 

その後、オオスは妖怪達から妖術の使い方を学んでいった。

…オオスは妖怪達と話す中で気が付いた彼らの能力の発展を次々に思いついた。

それは弱小妖怪達にとって自分で気が付けない自分の可能性であった。

オオスの信徒はオオスの言葉により力を増すことになった。

 

…オオスは図らずも麓の弱小妖怪達の力を増すことに成功していた。

そして、それは山の妖怪とは違い、自らの力を振りかざすことなく平和的なものであった。

オオスの信徒達はオオスという神から得た力を復讐等に使おう等とはしなかった。

…オオスに迷惑がかかる可能性があるからである。

オオスの信徒達はそれだけは絶対に避けることを誓い合っていた。

オオスの信徒達は理想の信仰者として誰にも気が付かれず、だが、着実に力をつけていった。

 

オオスは幻想郷にて一大勢力を誰にも気が付かれずに獲得した。

そして、それはあの八雲紫すら気が付かない。

…オオスすら意図していないのだからそれは当然であった。

 

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