オオスは三時間しか寝ない。
そのため、三が日の最後の日、オオスは深夜から早朝にかけて自己の変化を確認した。
変化を確かめたのは触りだけであるが、オオスは検証を続けていればキリが無いと判断した。
何か想定より滅茶苦茶になっていた。具体的には力の出力がおかしかった。
肉体的には弱いままなのだが、魔力、妖力等の身体能力以外が想定より強かった。
オオスが幾ら多種多様な魔法や技術を詰め込んだとしても異常であった。
オオス的には悪いことではないのだが、学術的に疑問に思った。
…新しく創造した概念であるので計算外もあるとは思うのだが。
オオスの理論上は人間を辞めていないはずであり、それは確認できたので問題はない。
しかし、オオスは自らの行動に少しだけ違和感を覚えた。
良く考えたら何故、この年明けの、今のタイミングで計画を早めたのかと考えた。
…オオスはそれは計画を進めて今更だと思考を辞めた。自らの推理はキリが無い。
何も問題ないという可能性が自らの記憶を疑わない限り、論理的に考えれば一番であった。
自らの記憶を疑い出せばキリが無い。オオスは自分や他者の記憶を弄れた。
仙人ならば簡単にできるし、パチュリーくらいの魔法使いも同様だ。妖怪もできる者もいる。
…オオスは仮に記憶を改竄していたとしても過去の自分の計算内なのだと判断した。
だが、念のためオオスは他者から見た自分を想像した。この違和感を誰が察するか考えた。
まず変化自体はオオスが普通にしていれば気が付かれることはない。
なので、一番危険な霊夢にはオオスの変化は気が付かれない。
しかし、オオスはレミリアとパチュリーには自身の変化を気が付かれると判断できた。
特にパチュリーはオオスと共同で魔法の研究をしている。…パチュリーならばすぐにオオスの変化に気が付くだろう。
なお、永琳の方は別格である。もうバレない方が無理であるとオオスは確信していた。
…オオスは気分を変えた。新年の挨拶回りをすることにした。ただし、人里ではない。
オオスは、本来ならば三が日明けにお世話になっている人外の挨拶回りをする予定だった。
普段ならば気にしないが、去年は月面戦争だった。オオスは一応、確認も兼ねて行くつもりだった。
だが、それを今日することにした。早ければ早い程良いだろう。
イーグルラヴィの玉兎達も吾妻達もいるのでオオスが気に病むことは特に思いつかなかった。
なので、オオスは年明けの挨拶へ行くために自宅から距離的な近さをまずは考えた。
魔法の森に住む魔理沙、迷いの竹林の先にある永遠亭、霧の湖の紅魔館、人里から昇ったところにある博麗神社、空高いところにある白玉楼の順番で近い。
そして、オオスが知らない謎の場所に存在するのが八雲家である。
今のオオスが八雲紫を探せば多分、見つかるだろう。しかし、お互いに面倒になる。
オオスは内心紫に謝罪しつつも、紫への新年の挨拶を意図的に省いた。
オオスは紫の方から来れば喜んで出迎えるのだが、そうもいかないだろう。
そのため、オオスは魔理沙のことを考えた。
…オオスは普通に魔理沙宅へ年明けの挨拶に行かない方が良いだろうと思った。
オオスが正月の挨拶に来たとか魔理沙もどう反応すれば良いかわからないに違いない。
そもそも、オオスは一人暮らしの年頃の女性のところに行くのは返って失礼と思っている。
なお、オオスは霊夢や魔理沙を人外枠で数えていた。
確かにあの二人は普通の人間ではないが、自らを省みないオオスの姿勢がよくわかる。
実は迷いの竹林で最早迷わないオオスからすれば、距離的に永遠亭が割と近い。
初めて輝夜と会話した際に、永遠亭は遠いから来ないと言ったことがあるが京都弁である。
実際、肝試しの際には輝夜がわざわざオオスの家へ招いてもいないのに訪れたこともある。
そして、永遠亭に行くのならば鈴瑚と清蘭は連れて行かないのは不自然だろう。
オオスは新年早々に面倒だなと思った。自分の身に起こったことも含めまだ時間が欲しい。
…オオスの概念の創造についての詳細を輝夜に知られれば少々面倒なことになった。
だが、オオスはふと輝夜の行動を予測した。…輝夜ならばこの正月をどう過ごすのか考えた。
輝夜は寝正月に挑戦とか言って永琳からどこまで粘れるかやっているに違いない。
オオスは永遠亭を意図的に無視することにした。オオスは輝夜の寝正月を心から応援した。
なお、このオオスの輝夜の行動予想は当たっていた。
…輝夜は具体的には1月7日まで寝正月に挑戦する気であった。
しかし、オオスの予想に反して輝夜の挑戦は二日で終わった。
オオスの応援は輝夜に届かなかった。
月面戦争で彼が年明けの挨拶に来るかもと永琳が囁くと途端に輝夜は己の挑戦を辞めた。
そして、輝夜が心待ちにしているのにも関わらず、オオスがこのまま行かないとどうなるか。
…永琳の輝夜に対する発破を想定できない辺り、客観視が足りないオオスであった。
そして、それはオオスに対する永琳なりの仕返しであった。
次にオオスは紅魔館のことを考えた。普通に紅魔館の主レミリアに朝は辛いだろう。
オオスは新年の三が日の忙しい博麗神社、白玉楼、紅魔館の順序で挨拶しに行くことにした。
忙しいであろう博麗神社へ、神に祈らないオオスが行くことは合法的に神に喧嘩を売れた。
…オオスは素晴らしいアイディアであると自画自賛した。
オオスは考えが纏まった。やはり三が日で全部挨拶を済ませてしまおうと結論付けた。
オオスは人払いを解いた。もうオオスに声をかけても大丈夫という仕掛けを起動した。
オオスの家は当たり前の様に様々な改造されていた。
オオスが念じるだけで玉兎達の持つ携帯端末にメッセージが表示されるのだ。
自宅ならば人払い、人払い解除、自爆、食事等々である。意外と便利な機能が満載であった。
「閣下!おはようございます!」
鈴瑚がオオスへ朝の挨拶をしに来た。
…鈴瑚は約五秒でオオスの人払い解除に反応してやってきていた。
「…鈴瑚。今良いですか?」
オオスは鈴瑚へそう聞いた。
オオスは玉兎達を探して、今から出かけると言うつもりだった。
だが、鈴瑚の気合の入れようを見たオオスはこのまま追い返すのもどうかと思った。
「はい!」
鈴瑚は笑顔で答えた。
予め人払いを済ませたオオスなら出かけると確信していた。
鈴瑚は団子を食べて自身の能力を向上させていた。…他の仲間達を出し抜いていた。
「では、新年の挨拶回りに付き合ってくれませんか?…冥界にも行きますが」
オオスは鈴瑚の予測通りの回答をした。
そして、オオスは一人くらい先に自らの身のことを知っているのも良いかと思い直した。
「はい!…もう準備できています」
鈴瑚は既に準備していた。仲間達も準備していたが、遅れたのが悪いと鈴瑚は開き直った。
「…まあ、いいか。では出かけましょう」
オオスは鈴瑚にツッコむのを辞めた。
「先ずは博麗神社に行きますよ」
オオスは鈴瑚にそう言った。オオス的には何も問題なかった。
「…えっ」
鈴瑚は不味いと思った。…オオスは知らないが有情湖には既に参拝客が結構来ていた。
オオスは霊夢と新年早々喧嘩になるのではないかと不安になった。
「何か問題がありましたか?」
オオスは鈴瑚に純粋な疑問で尋ねた。
…オオスは有情湖の祠の詳細の記憶を改竄していた。
更には今のオオスは神化という事象に対する焦りが消えていた。…精神にゆとりがあった。
つまり、"今"のオオスでは鈴瑚の懸念を想像すらできない状態にあった。
「い、いえ、大丈夫です」
鈴瑚はどもりつつもオオスに問題ないと言い切った。…自分が何とかしなければと思った。
だが、鈴瑚はそう思いつつ、オオスの反応に違和感を覚えた。
鈴瑚は元旦までのオオスならば、博麗神社へ行くことを避けると分析していた。
オオスの神嫌いもそうだが、無意識のうちに鈴瑚達の行動を察するのを避けていた。
だが、鈴瑚から秘密を暴露するわけにも行かない。…鈴瑚は沈黙するしかなかった。
「何か懸念があったら言って欲しいのですが…まあ、いいか」
オオスは鈴瑚に違和感を抱きつつも、新年早々口うるさくしたくなかったので放置した。
オオスは参拝客を取られて激おこな霊夢の、神の社に向かうことにした。
オオスは湖の祠の件で霊夢に言いがかりをつけて来られるとは夢にも思わない。
…正確には“今”の状態ではそれをオオスは思いつかないのだ。