オオスはイーグルラヴィの玉兎達へ一先ずの諸注意を終えた。
そのため、オオスは自宅の地下から外に出た。…気がつけばもう夕暮れになっていた。
「閣下、私達の為にありがとうございます」
清蘭がオオスへ感謝の言葉を述べた。
他のイーグルラヴィの玉兎達はオオスの言葉を元に教義の修正と編纂していた。
オオスに認められたので活き活きとして活動していた。…オオスは複雑であった。
なお、清蘭はオオスの邪魔にならない範囲で付き従う者として皆から権利を勝ち取っていた。
「気にしないでください…と言いたいのですが、本当に気を付けてくださいね?」
オオスは清蘭の感謝の言葉を受け入れたかったが、改めて注意した。
…オオスは清蘭達がキチンと聞いていると理解したので解散としたが不安だった。
「はい!」
清蘭はオオスの言葉を元に忠実なる信徒として頑張ることを堂々と誓った。
オオスの言うことは勿論、気を付けている。
だが、堂々と活動できることが清蘭は嬉しかった。
「ならばよし」
オオスは清蘭の堂々たる態度を見て問題ないと思った。
しかし、オオスは恩恵も受けにくい神でもない人間に祈るのが理解できなかった。
「…ところで、私今から紅魔館に行ってきますね」
オオスは清蘭に伝えておくことにした。
オオスは今ならレミリア的にも大丈夫な時間帯だと思った。
オオスは本来の目的である挨拶回りを出来る限りしたかった。
オオスが今話しているのは清蘭であった。
そして、皆に話をしに自宅の地下へ戻って説明しては本当に時間がなくなる。
「失礼ですが、今はもう夕暮れ時です。…危険ではないですか?」
清蘭はオオスに尋ねた。
そして、清蘭はオオスに冬の夕暮れの時間帯は危険だと指摘した。実際危険であった。
「フフフ。私はもはや神にならない。その証拠となる力の一端を見せてあげましょう」
オオスは清蘭の言葉に反応した。
地獄での混成呪術と魔改造した魔法等により得た新たな力の一端を見せることにした。
オオスはまず、その場で霊視を行った。
そして、エノク魔術に部類される星気体投射を使用した。
星気体と呼ばれるもう一つの身体を肉体から分離し、遠方を確認する魔術である。
オオスは夢の世界を支配し、実体で異界に潜入することもできる。
しかし、現実世界での転移まではできない。
オオスは精神体を分離し、自在に転移させることが可能になっていた。地獄での成果である。
オオスは今まで魔力や神化の進行等の理由で行使しにくかった。
…なお、常人がこの魔術を下手に真似すると精神分裂を起こして自我が崩壊する。
無知無盲の神を直視できるオオスの精神力があれば問題ない。
だが、普通は地道な経験を積む必要があり、その者達でも一歩間違えれば危険な術だった。
星気体で紅魔館へ転移し、その場に存在する空間の歪みを霊視によって感知した。
一方、肉体でオオス家に存在する空間の歪みを霊視によって同じく感知する。
星気体投射と霊視による組み合わせにより、転移が可能となった。
その歪みを神道の、神通力による界渡しで転移する。
これは以前、オオスが無縁塚で行使した力であった。
しかし、オオスは今回、神化等とは無関係に完全に人間のままで行使した。
オオスの混成呪術による地獄体験により魂が高次元化したことにより可能な術だった。
だが、早い話が八雲紫の隙間の劣化である。…オオスは八雲紫の力の強大さを理解した。
オオスからすれば早苗に見せた『次元の門』を恒常的にできれば効率的にも一番良い。
だが、オオスはまだその域に達していない。
そして、肝心要の攻撃力のある能力も今はほぼない。
オオスの知識や技能は小手先の術に偏っている。
オオスの知る攻撃手段とするとなるとどうしても出力に見合う肉体が重要になってくる。
…仙果以外にも身体能力向上手段を探すことが現在のオオスの方針である。
しかし、オオスが今の所やれることは地道な鍛錬しかない。
その為にも、茨木童子と目される、妖怪の山に住む地仙にオオスは会いに行く必要があった。
「では、行ってきます」
オオスは清蘭にそう言った。
オオスは何でもないように神不在での神の力を行使した。
死神の小野塚小町にももう自分のことを神とは言わせないとオオスは確信した。
…オオスは最早神にならない。
人間のまま神等いなくともこの程度の奇跡は使えることを証明したのだ。
オオスは自らの研究をそのように自画自賛し、紅魔館の門前まで転移した。
唖然としてオオスの奇跡を見ていた清蘭は漸く気を取り戻した。
オオスが無事であるならば良い。
自らを伴わないのは悪魔のところに行くオオスなりの配慮と理解していた。
だが、
「確かに神ではないのでしょうが…」
清蘭はオオスの行為を見て呟いた。
…オオスのような理外の存在を、人は神と呼ぶのではないかと少しだけ思ってしまった。
だが、オオスは理論上では神ではないと断言できた。事実、それを論破するのは不可能である。
現に証拠として、是非曲直庁の執務室で四季映姫はオオスの所行に頭を抱えていた。
オオスは寿命が存在しない人間と化していた。
四季から見てある意味、この時点でオオスは天人や神をも超えていた。
仙人や天人ですら生きていれば寿命ということで来る地獄からのお迎え。
…オオスはその対象外となる謎の異常存在となっていた。
寿命が存在しないので死なない。しかし、肉体的には脆いので死ぬときは死ぬ。
オオスは不老ではあるが決して不死ではない。しかし、長生きすればどうなるか。
…死後の管理人である四季達は放置するしかない。
裁くにしても個人の為に新しい法を作るのかという問題もあった。
人類史上初の存在『人間』に死後を裁くはずの是非曲直庁はその扱いに頭を悩ませていた。
神ですらここまで理不尽じゃないと四季映姫は思った。…四季はオオスを別の意味で裁けなくなった。
自分が言いたいのはそう言うことじゃないと四季はオオスを今すぐ呼びつけたかった。
そんな死後の世界の事情を知らない清蘭もオオスの余りの理不尽さに呆れていた。
オオスからは確かに神の気配は一切感じないが、神の力を清蘭の目の前で行使した。
…オオスとしてはこの行為そのものが神に喧嘩を売ったつもりだと清蘭は理解した。
肉体こそ弱いというが、オオスは一体どこを目指しているのだろうかと清蘭は思った。
…清蘭は恐らくオオスの外での経験から来る者だと悟った。他の者も同様だと思っている。
だが、オオスはそれを話したがらないのだった。
…いつの日か、オオスが自らに話せるような存在になろうと清蘭は決意した。
清蘭はオオスが出かけたことを皆へ伝え、編纂の手伝いをし、そして鍛錬をすることにした。
オオスは部下達より自分が弱いことを悩んでいる。
しかし、部下達はオオスの鍛錬を見て更に自らを鍛えていた。
…オオスが戦闘力において彼女達を超える日は果てしなく遠かった。