嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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それはそれこれはこれ

白玉楼の庭で二人の剣を構えた男女がいた。

一人は妖夢であり、もう一人はオオスだった。

オオスは冥界に遊びに来ていた。そして、妖夢に再びの剣での試合を希望した。

 

新年早々の白玉楼で立ち合いがなされていた。

 

だが、今回は竹刀ではない。…妖夢の匙加減次第でオオスは死ぬ。

刃を潰された日本刀と30㎝程の同じく刃を潰した短刀での立ち合いであった。

そして、オオスは妖夢に手を抜かないで欲しいと依頼していた。

 

「…」

オオスは短刀を持ち、潰した刃を前に向けて腰前につけた。

 

「…」

妖夢は正眼の構えを取っていた。

…同時に格下のオオスが短刀という間合いのハンデを更に負う行為の意味を考えていた。

 

「…今回は少々実験的な意味合いです。他意はありません」

オオス妖夢の躊躇を看破して言った。

 

だが、この発言は妖夢に喧嘩を売るのも同意だった。

…格下のオオスが妖夢を試しているようにも受け取れた。

 

「…舐めるな!」

妖夢はオオスの発言を聞き、そのまま間合いを詰めた。

そして、肩の辺り目掛けてオオスへ袈裟切りをした。

 

「予想通り」

オオスはそう呟いた。

オオスは妖夢の袈裟切りを前に右足をすすめ、短刀の刃で上に受け止めた。

 

「…な!」

妖夢はオオスが自分の技をそのまま受け止めたことに動揺した。

…オオスは以前、そこまでの力はなかったはずと妖夢は感じた。

 

「何でもありと言ったでしょうに」

オオスはそう言って妖夢の剣の鎬を伝って擦り入るように攻めた。

 

「っ!」

妖夢はオオスが腕ごと刀を叩き落とそうとしているとわかり、素早く刀を振った。

 

「これも駄目か…」

オオスは妖夢の刀の振りに合わせて距離を取った。

 

「…参りました」

オオスは妖夢に打つ手なしと降参した。

 

「…まだ手を隠しているだろう」

妖夢はオオスに問いかけた。まだ手を隠していると剣を交えた直感が言っていた。

 

「小刀だと相手の力を利用した剣術が多いのです」

オオスは妖夢に隠している手を明かすように言った。

 

「…私向きと確信はできましたが、まだ理想の動きができません」

オオスは妖夢に見せる程の動きが、体ができていないと言った。

 

「このような未熟な身でこれ以上は恥。…申し訳ありません」

オオスは妖夢に謝罪した。

…自分から頼んでおいて立ち合いも何もないと無礼を詫びた。

 

「…前とは違い、誇りを感じる太刀筋だった」

妖夢はオオスとの立ち合いから感じたことを述べた。

妖夢は剣士である。そのため、言葉よりも斬り合いでわかることがあった。

 

「非力ながらも足掻こうとする者の剣だ」

妖夢はオオスとの立ち合いから武に対する真摯さを感じ取った。

以前のオオスは闇雲に何かを迷いならば、今は指針が見えていた。

 

「…」

オオスは剣術の先達としての妖夢の言葉を黙って聞き入っていた。

 

「…私としても剣士の誇りを持ったお前に手を明かせとは無粋だった」

妖夢はそう言ってオオスに言った。

…妖夢は剣士として手を明かすように言ったことを謝罪していた。

 

「…勿体ない言葉です」

オオスは圧倒的格上の剣士に謝罪されては否定するのは無粋として言葉を返した。

 

 

 

白玉楼の一室でオオスは幽々子と会話していた。

話題は先ほどの立ち合いの件だった。なお、新年の挨拶は既に済ませていた。

…オオスが新年の初稽古と称して立ち合ってくれないかと妖夢に無茶ぶりしたのだ。

 

 

「前よりも随分丈夫になったのね」

幽々子はオオスの立ち合いを見た感想を述べた。

オオスが前の立ち合いで立ち上がれない程疲弊していたのを思い出していた。

 

「…速やかなんことを欲すれば達せず」

オオスはそう呟いた。

…自らの新年早々に物事を急いで成果を期待してしまった己の風情の無さを詫びた。

 

「ふふふ。気にしなくて良いわよ」

幽々子は年齢相応なオオスの振舞いに気にせずとも良いと返した。

 

「ありがとうございます」

オオスは幽々子に礼を言った。

妖夢にも無論であるが、主人の幽々子にも場を設けてくれたことへ感謝していた。

 

「伝うる久しければ、すなわち論略くと言いますが。…わからないことが多かった」

オオスは幽々子にそう続けた。

オオスは剣術の文献や外での見聞したものを模倣して剣術を試していた。

脳内でシュミレーションもしていた。

だが、妖夢と立ち合ってやはり理想に現実が付いて来ないのを思い知った。

 

「何でも試してみるのは若い子の特権だわ。…あ、私はまだ若いわよ」

幽々子はオオスの反応に初々しさを感じつつも、自らは若い霊だと何度でも繰り返す。

 

「花に逢えば花を打す。…そのように言われなくとも存じております」

オオスは今、幽々子とだけ向き合っているのでちゃんとわかっていると返した。

 

幽々子が何故そこまで若いだのぴちぴちだの気にするのかオオスには分らない。

だが、幽々子は風情があり美しいと心の底からオオスは言葉を口にしていた。

 

「心を存するには寛舒ならざる可からずということかしら」

幽々子はオオスの返しに扇で口元を隠して言った。

幽々子は自らを反省して多少、寛容寛大な心持であるべきかと思った。

 

「菜根譚ですか…」

オオスはその先の言葉を述べることを辞めた。

オオスに取って賛辞でも幽々子が気にするだろうと思ったからだ。

 

「天を測り地を測りても、人の心は測りがたし」

幽々子はオオスの言葉に気づかいを感じてそう返した。

逆に気遣われると言われるよりも気にかかると幽々子の内心の複雑さを暗に伝えた。

 

「明心宝鑑ですか…菜根譚といい明代の頃の文化は風情があって良い」

オオスは幽々子の知識を賛美しつつ、古の風情を感じ取って言い切った。

 

「あら、私はぴちぴちの霊よ」

幽々子はオオスの言葉に含まれた感情を見抜いて言った。自分は古じゃなくて若いのだ。

 

「あっははは!」

オオスは笑った。どっちにしろ怒られると思い、オオスは子どものように無邪気に笑っていた。

 

「もう!」

幽々子は自らの言葉を思い出しつつ、それはそれこれはこれと開き直っていた。

 

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