嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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我儘

オオスは年明けの挨拶回り終え、各種研究や鍛錬に勤しんでいた。

オオスは松の内の7日を終え、いつものように鴉天狗を追い払いひと段落していた。

 

そこへ玄関の呼び鈴を連打する存在が現れた。

…既に清蘭達から聞いていた。面倒臭い宇宙人達だとオオスは思った。

 

「はーい。…只今、新聞勧誘はお断りしています」

オオスは風情もへったくれもなく招かれざる客を自ら招くことにした。

 

輝夜に鈴仙、永琳、てゐまでいた。永遠亭オールスターズである。

面倒臭いがいずれ行くつもりだったのでオオスは部下ではなく自分から行くことにした。

 

「新聞勧誘も何もないわ!…なんで来ないの!?」

輝夜はオオスに新年の挨拶もなく吠えた。

 

月面戦争ということもあり、訪問を心待ちにしていれば永遠亭にオオスは来ないのだ。

忌々しい鴉天狗の新聞でオオスが新年早々騒動を起こしていると知った輝夜は激怒した。

…何故、自分のところには来ないのかと自らの足で来た次第だった。

 

「あけましておめでとうございます。寝正月に挑戦とか考えているのではないかと…」

オオスは輝夜にそう言った。…寝正月に挑戦しているのだとオオスは本気で考えていた。

 

「そんなわけないじゃない!?」

輝夜はオオスの言い訳にキレた。激おこであった。

 

「うわ…合っているわ」

鈴仙が思わず溢した。オオスの推測通り、輝夜は途中まで寝正月をしていた。

 

だが、二日目でオオスがいつ来るかと待っていた。永琳の讒言である。

…オオスの見立ての半分は当たっていた。

 

「あけおめ!」

てゐは久しぶりにオオスと再会して適当に挨拶をした。

そして、てゐは手を差し出している。

 

オオスはてゐが何を求めているのかわかった。

 

「明けましておめでとう。…幾らが良いんだろうか」

オオスは圧倒的年上のガワ幼女にお年玉を上げようとしていた。

無論、わざとである。オオスは空気をぶち壊すてゐの悪戯に乗っかっていた。

 

「100円」

てゐはオオスへ現代価値で100万円を所望していた。

 

「ちょっと待ってくれ。今箪笥から出してくるから…」

オオスはそこまでの貨幣を常備していなかった。箪笥貯金を取り出すと言い訳できた。

なので、オオスは玄関の戸を自然に閉めようとしていた。

 

だが、

「自然体で逃げようとするんじゃないわよ!?」

輝夜はオオスの意図を察して閉じるドアの間に入り込んだ。

 

「ちっ!…済まないてゐ。100円は無理だ」

オオスは輝夜に舌打ちを隠さない。

そして、オオスはてゐへ取り敢えずの駄賃として1円札を手渡した。

 

「わーい!」

てゐはオオスのお年玉に素直に喜んだ。

オオスならワンチャンあると思ったが、思わぬ臨時収入に喜んでいた。

 

「てゐ!?」

鈴仙はてゐの滅茶苦茶に思わず叫んだ。

 

「…またね!」

てゐは鈴仙が面倒臭いのでオオスに別れを告げた。

この金で取り敢えず人里で何か買い物しに行くことにした。

 

「氷に滑らないように気を付けて」

オオスはてゐをにこやかに送り出した。

オオスもてゐの立場なら逃げ出すので文句は言わない。

 

輝夜から逃げられたのなら本気で100円出しても良かったのだが。

オオスはそう思いつつ、輝夜達を家へ招いた。

 

 

 

オオス家には輝夜、永琳、鈴仙という永遠亭勢力が勢ぞろいしていた。

何気に人を招くことは新年初である。

初の来客にオオスの研究成果を察せられる永琳がいるのはオオス的には少々複雑だった。

 

 

オオス宅はオオスの能力を拡張して外側も広いが内側は更に広くなっていた。

パチュリーから教わった空間魔法と咲夜の時空間を操る能力を参考にした。

オオスは仙術の異界の創造を元に空間拡張を思考錯誤していた。

 

オオスは地獄での体験を踏まえても中々戦闘能力が向上しなかった。

しかし、直接戦闘以外の能力は劇的に向上していた。

改めて、オオスは自分の身体能力的な素質は非常に乏しいようだと悟った。

だが、時間はある。オオスは以前よりは少しばかり気が楽になっていた。

…同時に何時来るかもしれない邪悪なる者共を想像し、早く力を欲していた。

 

「…何か滅茶苦茶になっているわね」

永琳はオオスを観察して気が付いた。

なお、オオス宅の空間拡張は仙術の一種の模倣と看破した。

 

永琳から見てオオスは人間であるのだが、人間ではない未知の"概念"に変貌していた。

長い時間を生きた永琳ですらよくわからない変化だった。

永琳的にはオオスの変化に関係するであろうその研究が気になって仕方がなかった。

 

蓬莱人ではない未知の可能性の創造にオオスは成功していた。

…この偉業は研究者として賞賛しかない。永琳からしても知りたくて仕方がない。

だが、オオス自身もことの本質がわかっていないかも知れないとも永琳は思った。

何せ、オオスは人間のまま人間を辞めているという矛盾の塊で構成されていた。

 

「神にならないための方策です。…腑分けしないでくださいよ」

オオスは永琳のマッドを看破して言った。オオスは永琳の好奇の視線を窘めた。

 

オオス自身もよくわからない変貌をしているので詳細を詰められても困る。

オオスの変化はある程度は計算通りなのだが、一部不明瞭なところがあった。

 

…自分自身を理解するという作業が必要とオオスは判断していた。

その為にも仙人の過去を再体験する修行法について直に学びたかった。

オオスは寿命を延ばしたいわけではない。

その為、その手の修行をあまり意識してやったことがなかった。

オオスが酒乱酩酊すればある程度は可能なのだが、自身が暴走する可能性もあった。

 

「…何かあったのかしら?」

輝夜は自分ではよくわからないのでオオスに尋ねた。

永琳に聞けば教えてくれるだろうが、無粋として目の前のオオス本人に尋ねていた。

 

「…玉兎達が私を神として祀ろうとしたんですよ」

オオスは端的に輝夜に述べた。

オオスはあまり感情を表に出さないように堪えていた。

 

清蘭がお茶を各々に持ってきていた。遠巻きに玉兎達が見ていた。

…オオスは彼女達を気にしていた。

 

「ええ…」

鈴仙は思わず清蘭を見た。…ついにバレたのかという表情を隠しきれていなかった。

 

「…申し訳ありません」

清蘭は改めてオオスへ謝罪していた。

オオスは表情を動かさないが嫌なのはわかりきっていたからだ。

 

「もう過ぎたことです。気にしないでください」

オオスは清蘭へ改めて言った。…新年早々に紅魔館へ愚痴りに行ったのは内緒である。

 

「答えになってないわよ」

輝夜はオオスに指摘した。自己完結されても困ると顔に書いてあった。

 

「…本当に興味深いわ」

永琳は輝夜に何と説明したらよいか判らない存在に好奇心が湧いて仕方がなかった。

昨年の春に見たメディスン・メランコリーという完全に自立した人形よりも興味深い。

 

「簡単に言うと神化される前に別存在として切り替わりました」

オオスは輝夜に説明することにした。

いずれバレるのでオオスの研究の一端を明かすことにした。

 

「私の魂は誰からも不要になるまでここに存在し続けます」

オオスは不死身に近しい存在へと変貌したと説明した。

 

「…それって私達と同じと言うこと?」

輝夜は蓬莱人になったのかとオオスに尋ねた。

オオスの説明だと違うと受け取れるが、永遠を受け入れたのかと尋ねていた。

 

「違います。私は死にます」

オオスは蓬莱人ではないし、神とは違い死ぬことを暗に言った。

 

「ですが、人間のまま不老です。そして、死ぬまでは能力は成長し続けます」

オオスは外的要因で死ぬまでは永遠に成長できる人間となったと明かした。

 

「仙人ともまた違うわよね。天人ともまた…」

永琳はオオスの言葉を元に分析していた。…永琳はオオスの言葉に偽りがないと判断した。

オオスがどんな研究をしていたのか気になって仕方がなかった。

 

だが、

「よくわからないけど…」

輝夜は気が付いた。輝夜はオオスの言質を取ったと思った。

 

「私が貴方を想っている限りはいなくならないということかしら?」

輝夜はオオスの言葉から連想して尋ねた。

…オオスが自身の変化を輝夜に知られたくないわけを言い当てていた。

 

「…はい」

オオスは永遠に想い続けられるわけがないと思っていた。

輝夜も時間が経てば一時の気の迷いだとオオスを見限ると思っていた。

…それでも期待している自分に嫌気がさしていた。

 

「そう…」

輝夜はオオスの間から何かを感じ取った。

オオスが誰にも漏らせない“何か”を感じ取った。

 

「それならば良かったわ」

輝夜はオオスを想い続けられると確信し、断言した。

…いつまでも諦めないと彼の目の前で誓った。

 

「…ハァ」

オオスは永遠を生きる姫の我儘にため息が出た。

 

しかし、

「今年もよろしくお願いします」

オオスはいつまでも続かないと思いつつも輝夜の目を見て言った。

一先ず、今年はこの姫から逃げられそうにないと悟った。

 

オオスは何故か嬉しかった。…その理由は自分ではよくわからなかった。

 

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