嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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裏切り

オオスは紅魔館で魔法の研究以外にも、自らの支配地である有情地にて麓の有力妖怪にして部下である吾妻達から妖術の使用法等を教わっていた。

系統だった知識、謂わばエリートに属する妖怪達の知識を吸収していた。

なお、新しくオオスの部下になった者達はオオスに対してその知識を随分あっさりと教えてくれた。

 

…正直、オオスが払う対価よりも多くの物を受け取ってしまったと考えている。

その為、オオスは保護した者達へのケアを常に気にかけていた。部下達にも当てはまる。

 

オオスは面倒見が良く、大抵のことは頼まれる前に解決してしまう傾向がある。

オオスもそれを自覚しており、過保護にならない程度に気にかけている。

その証拠に、これは人間側になるが博麗神社の十日戎もオオスは華扇に丸投げした。

オオスは十日戎については微塵たりとも関わっていない。今回は森岡に変な依頼もしない。

 

しかしながら、そんなオオスにも構いたくともどうしようもない事柄というものは存在した。

 

 

「幼馴染の裏切りねぇ…」

オオスは自宅の屋根で一人考えていた。部下、今泉影狼についてである。

オオスは影狼が有情地に連れて来てから無理に気合を入れているのを薄々察していた。

 

同じ人狼の仲間にオオスはこっそり影狼の身辺について聞いた。

その者によれば影狼と裏切った幼馴染は良い感じの仲だったらしい。

 

「…私にはそういう物はわからない」

オオスは恋愛の知識は小説等で詳しいつもりだ。何なら詩を諳んじることもできる。

更には痴情の縺れによる殺人等含め、感情も絡む事件の数々を解決してきた。

裏切りについてもオオスは後ろから刺されるような体験は数多くしてきた。

 

そんなオオスからできるアドバイスはその男を磔にしろである。というか既にした。

その幼馴染は現在進行形で目の前で磔にしていたが、これで良いのだろうかと悩んでいた。

 

「ふが!…ふが!」

気が付けばオオスに縛り上げられていた畜生に落ちた影狼の幼馴染は口と目、耳がふさがれていた。

 

「そろそろ黙らないと銀の杭で心臓串刺しにしますよ」

オオスは骨振動の要領で狼男に直接声を脳に送り込んだ。

 

しかし、

「ふがぁぁあああー!!」

狼男はこれまでにない程の勢いで叫んだ。

 

オオスは妖力を込めた声色で脳に送った。そして、神経に直接痛みを与えていた。

それは魔の風を操る吾妻から教わったのとカシャンボの能力の応用だった。

簡単に言えばオオスは狼男の体内の神経を弦楽器の様に弾いていた。

 

…それは壮絶な痛みだ。麻酔無しで歯を削り、爪の間に針を突き刺すような痛みである。

 

オオスとしては影狼が味わったであろう痛みからすればカスみたいなものだ。

オオスもこの手の拷問は外で幾らでも体験したことがあった。

オオスは勿論、相手が死なないように見極めていた。

妖怪だということを加味すればこれくらいは温情だとオオスは思っている。

 

だが、

「今すぐそれを辞めなさい!」

動物愛護者の仙人はオオスを今にも殺さんと言わんばかりの形相で睨みつけていた。

狼男は華扇の手の中にいた。狼男は拷問から解放されたが、気絶しているようである。

…オオスより格上の仙人なので、華扇に本気を出されるとそうなってしまう。

オオスも影狼と会わせるべきか悩んでいたので拘束を少しばかり緩めていた。

 

「ああ、丁度良かった。ご相談したいことがありまして…」

オオスは華扇の激怒した様相を見つつも尋ねることにした。

女性目線でこの男の裏切りをどう思うか尋ねたかった。

 

「あなたと話すことはありません!…彼の痛みを知りなさい」

華扇は激怒していた。オオスの問等聞こえていなかった。

華扇からみてあまりに凄まじい拷問を加えていたオオスに対して容赦する必要性を感じない。

華扇はオオスをぶちのめすことにした。

 

 

 

数分後、オオスは華扇から一方的に殴る蹴るの暴行の後、首を締めあげられていた。

オオスも抵抗しなかった。…言い訳しようとも無駄だとわかっていたからだ。

 

「何故、このようなことを仕出かしたのか…」

華扇はオオスの余りの無抵抗さに冷静さを取り戻した。

…今更ながら華扇は理由も聞かず、オオスを嬲り続けている自分に気が付いたのだ。

 

オオスは全身の骨にヒビが入り、うち何本かは折れ、内臓に致命的なダメージが入っていた。

それでも無抵抗を続けるオオスの様子から華扇はこれには理由があるものと理性が働いていた。

…大分遅い気づきではあるが、華扇からすればオオスは大分印象が悪い。

最初の出会いからこの間も最低であった。

オオスもそれをわざとやっていたので自業自得な面もあった。

 

「ああ、そ…げぼっ」

オオスは答えようとしたが血反吐を吐いた。

内臓にダメージが入り過ぎて声にならない。骨が何本か貫通していた。

オオスは自分へのダメージを観察した。この経験は貴重である。

オオスは今後の課題とすることにした。このような状況の中でもオオスは新しい手段を模索していた。

 

「ど、どうしましょう…これじゃ百薬枡も使えないわ」

華扇はオオスが自分から簡単に逃げられる程度の能力を有していると知っていた。

その為、里人には善人であるオオスが本気で死にそうになるとは思いもしなかった。

オオスは悲鳴も上げずに何度でも立ち上がってきた。

華扇に対して平然としているように見えるので華扇はオオスへの暴行の辞め時を誤った。

 

「…」

オオスは華扇の慌てぶりを見て手で制した。というか心配し過ぎであるとオオスは思った。

オオスは華扇が良き他人の為にここまで怒れる善人だと確信した。

オオスは懐から相変わらず毒物しかみえない薬物であるパウトを二本取り出した。

そのうちの一つをオオスは自らの体にかけた。

血が蒸発するような臭いを醸しながらも、肉体が強制的に回復したのを見計らってからもう一本をオオスは飲んだ。

 

「ふむ…少しは回復できたかな」

オオスは薬物による人体の回復の人体実験を実地で自分を使って観察していた。

最近は月の石という便利な道具に頼り過ぎていた。

月の石である。月の民等に無効化されることも考えてオオスは実験をついでに行っていた。

 

「さて、どこから相談したものか」

オオスは華扇が呆気に取られた今こそチャンスだとわかりながらも悩んでいた。

…取り敢えず気絶している狼男にオオスの姿を目撃されたくない。

オオスは先ず華扇に対して狼男の目隠しだけは外さないように言うことにした。

 

 

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