嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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失われた存在は、忘れられた存在は

☓☓☓☓は夢を見る。統一原理に当てはまらない力が存在することを。

 

☓☓☓☓は夢を見る。魔力が存在する仮説『非統一魔法世界論』は正しかった。

 

☓☓☓☓は夢を見る。「「自分を消しても犯罪じゃないわよね」」。

 

負けた私は勝った私に吸収される。異なる2つが同じ1つとなり正常に戻った。

 

 

そして、1は零になった。

 

 

…異界で零となり、失われた存在は、忘れられた存在となることで新たな1である『私』を構築していった。

 

 

 

 

オオスは幻想郷の紙芝居屋であり、善良なる模範的一般里人である。

 

昨夜やって来た茨木華扇の話によれば雪がまだ降るこの季節に遭難者が出たという。

 

…何たる悲劇であることか!明朝、即座に行動することは善良なる里人の義務である。

 

年頃の娘を一人で雪山に登らせるような阿呆が里人にいるか、いないか。

 

 

オオスはあらゆる手段で問いただした。

 

結果、里人に娘を雪山に登らせる鬼畜、該当者はいなかった。

 

…ついでに判明した犯罪者達が自らの意思で磔に、雪の中で晒し者になっていた。

 

磔に関してオオスは無関係と全員口を揃えるようになったので何も問題はなかった。

 

 

オオスは善良なる協力者達に感謝して、華扇の仙界に向かうことにした。

 

善良なる協力者(半強制)の里人森岡はいつものように数日悪夢に魘されることとなった。

 

 

オオスは博麗神社の巫女である博麗霊夢へ報告するのを忘れていた。途中で思い出したが今回は異変ではないようである。

 

霊夢はどうせ寒いし動きたがらないだろう。そう考えたオオスは報告は後回しにすることにした。

 

 

里人でなければ外来人である。その時に纏めて報告すれば良い。

 

何なら華扇に報告を頼…と思ったが、オオスは自分で報告することにした。

 

 

霊夢は華扇に懐いているようであり、また変な誤解をされては今度こそオオスは霊夢に退治されかねなかった。

 

地獄の大火等により進化したはずのオオスでも霊夢相手は普通に死んだ。

 

 

 

妖怪の山の中腹のとある場所、ケヤキの大木前にオオスはやって来た。

 

華扇はオオスに自分のいる仙界の場所を教えていないが、オオスは知っていた。

 

オオスはこのケヤキの大木の先に華扇の仙界があると過去に調べ終わっていた。

 

 

今日は人間では間違いなく遭難する程度には吹雪いていた。華扇も流石に今日はオオスも来れないはずだと思っていた。

 

 

だが、オオスは自身の創造した春の剣『春季光星』によって一時的にその場ごと春にすることで問題なくやって来ていた。

 

オオスとしても摂理に反する力を無闇に使いたくない。

 

実際、オオスが躊躇なく力を使うならば地底の面々に挨拶しに行っていた。

 

地味に月との戦争の顛末の報告もまだであった。

 

 

しかし、オオスは昨晩、華扇の仙界へ訪問すると約束していた。

 

約束は絶対である。オオスは華扇の為に仕方がないと言い訳をして力を行使していた。

 

嫌がらせの為に、恣意的に力を使ったわけではないとオオスは主張するだろう。

 

 

なお、今回の訪問は華扇に対して無理やり押し切った形の約束である。

 

オオスは拒否してもなお夜中の自宅に来訪する華扇に対して苛ついていた。

 

なので、今回の訪問に関してオオスは気にしていない。

 

華扇は気にするのだが、そんなことは知ったことではないオオスは嬉々としてやって来ていた。

 

 

 

「というわけでやって来ました、仙界前。実況の華扇さん、今の天気の解説を!」

オオスはお天気キャスターの真似事をして華扇にリアクションを求めた。

 

誰もいない光景で一人で喋っている光景である。オオスの声が響き、やがて静寂に戻っていった。

 

 

当然、華扇は居留守を使っていた。オオスのボケには乗らなかった。

 

 

華扇はオオスにこれ以上好きにさせてたまるかとムキになっていた。

 

 

何故かオオスに仙界前の位置を特定されていた。

 

しかし、正路を通らないと華扇の仙界には入れない。

 

華扇はオオスが自分の邪智暴虐を反省するようなら入れてやらないことはない。

 

…少し懲らしめてやろうと思っていた。

 

 

とはいえ、華扇も意識不明のままの女性が気になっていた。

 

容態は安定しているのだが、何かがおかしい。

 

少なくとも華扇の知識ではもうとっくに意識があってもおかしくなかった。

 

 

 

そんなことを知らないオオスは華扇の仙界前で吹雪く中で立ち尽くしていた。

 

春の剣『春季光星』の力は収めたので天気は春の晴れ模様から戻っていた。

 

 

「華扇さーん…おーい…」

オオスは華扇から客人を招くどころか悪意を感じていた。

 

善良なる里人ではなく、悪意の迷路を解いてきた外の探偵はカチンときた。

 

約束は約束である。人の模範となるべき仙人がそれを守らないとはけしからん。

 

…僅かでも悪意があれば謎を解き明かせる元世界一の探偵は迷路等、朝飯前だった。

 

 

 

華扇は仙界内の自宅内にて、今回の騒動の発端となった女性に変化がないか確認していた。

 

目覚めぬ女性は髪から服から全部が赤く、服の裏地だけ黒いのがアクセントとなっている。

 

華扇は十代後半と推定される少女を見つめていた。

 

少女は寝言の一つすら立てずまるで死人のようではあるが、生きていた。

 

 

「この方、精神がバラバラですね」

華扇の横から誰かが感想を述べた。元狂気の世界の住民はあらゆる状態の精神を熟知していた。

 

声の主は透視という精神や魔力を見る目を使って女性の状態を理解した。

 

知りうる中では無知無能の神を直視した状態に近い印象を感じた。だが、安定していた。

 

 

「…!…!!」

華扇は横の人物、オオスがいきなり現れたことに文句を言いたかった。

 

だが、自分ではわからない女性の状態をオオスは理解しているようであり、検診を続けさせるために必死で自分の感情を押し殺した。

 

 

華扇は仙人として救えるのならば人命救助を優先していた。…自然の摂理にまでは介入しないが。

 

 

「例えるならばバラバラになった存在を再構築して…」

オオスは華扇の反応や自身の感情を廃して考えた。

 

 

正直、こんな状態の存在はオオスも見たことがなかった。

 

 

印象だけで言うのならば消去したプログラムを無理やり復旧させたが、再起動できないでいる状態である。

 

…永琳のような知恵者に力を借りれば間違いないのだが、オオスは嫌な予感がした。

 

 

「この人、途中まで私の仙界を目指していたように見えました。…私が声をかけるまでは、ですが」

華扇はオオスの真剣な顔から察して気持ちを切り替えた。ついで、当時の状況を説明した。

 

オオスの見立てでは華扇の想像以上におかしいらしい目の前の少女に関して情報を補足した。

 

 

「…持ち物ってありましたか?」

オオスは華扇に尋ねた。あの霊夢が頼るだけあり、感情の切り替えが早くて助かった。

 

 

「身につけていた物は一つだけ…これです」

華扇は保管棚に閉まっていた物をオオスへと渡した。

 

それはどこかの宗教を思わせる赤い十字架のペンダントであった。

 

 

華扇は異質な力を感じる十字架は病人に悪影響がありそうだとしまい込んでいた。

 

 

「ありがとうございます」

オオスは華扇から渡されたペンダントを受け取り感謝を述べた。

 

 

華扇はオオスの真剣な面持ちと態度を見ていつもこうしていればと一瞬思ったが、正気に戻った。

 

 

「…ハイパーボリア人のアーティファクト?いや、違う」

オオスは十字架に触れ、触り、分析し、理解した。…理解できなかった。

 

華扇から渡された十字架から異質な科学を感じ取った。

 

華扇が仙人として感じ取った異質な力をオオスは科学と直感した。

 

 

アメリカの、キングスポートで見た古代遺跡に記された古代人の物理学書。

 

それに似た技術体系、ないしは上回る可能性がある。

 

オオスはイーグルラヴィの面々から学んだ月の科学とも違うものを感じた。

 

…少なくとも現代では再現不能の技術であるのは間違いない。

 

 

オオスは十字架に込められた魔力の欠片を使えば精神を回復できるだろうと直感した。

 

その場合、この十字架が再使用可能かどうかはわからないが。

 

例えるのならば、一発だけ弾のあるピストルだ。弾の製法はわからないが、撃てはする。

 

 

「華扇さん十字架を使えば蘇生できそうなんですが、賭けになるかもしれません」

オオスは華扇に対して弱音を口に出した。

 

 

本来であればオオスは自身でやる以外の選択、永琳を頼る等をしたい。

 

だが、凄く嫌な予感がした。

言葉にできない予感でしかないのだが、直感100%の行為である。流石のオオスも踏み込めないでいた。否、オオスは普段なら踏み込めていた。

 

 

外に居た時の自分ならば躊躇なく実行するのだが、オオスは幻想郷で過ごして人を頼ることを覚えていた。

 

 

この時、オオスは年相応の戸惑いを見せていた。

 

普段の彼ならば見せない姿だが、霊夢が気を許す存在である華扇に自分も気を許してしまっていた。

 

 

「…」

華扇は年相応に見えるオオスに対してどう振る舞うべきか悩んだ。

 

いつものオオスならば華扇の知るように躊躇なく実行するはずである。

 

だが、自分の存在が枷となっていた。これがもし、自分の腕が揃った時に…。

 

 

華扇は天邪鬼で嬉々として誰かを弄り、人の心に無断で出入りするような相手の見せた動揺に対し、決断した。

 

 

「いつもの貴方なら私に無断でやるわよね?」

華扇は普段どおりに振る舞うことにした。

 

華扇としては、ここで蘇生しなければならないのかは全くわからない。

 

だが、理由なく何かをするような男ではないと知っていた。

 

 

華扇は何だかんだ危うい男のことを信じていた。

 

 

「…そうでした、そうでした。勘100でもやりますね」

オオスは華扇の振る舞いを見て調子を取り戻した。

 

 

そして、何の根拠もなく蘇生することを華扇に対して宣言した。

 

 

「ちょっと…!?」

華扇は普段のように戻ってしまったオオスを見て、思わず叫んだ。

 

華扇はらしからぬ男を見て、思わず背中を押してしまったことを後悔した。

 

…だが、その方が彼らしいとほんの少しだけ安堵した。

 

 

 

☓☓☓☓は夢を見る。岡崎夢美は夢を見た。岡崎夢美は…何かを取り戻した。

 

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