嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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科学者と苺の花言葉

 

オオスは茨木華扇と共に岡崎夢美へある程度の諸事情を尋ねていた。

 

とはいえ、夢美も幻想郷に長く滞在していたわけではないし、知ることも少ない。

 

 

食事後のまま三人でテーブルを囲んでお茶と茶菓子をつまみながら雑談をし始めた。

 

茶菓子はオオスが持ってきたお土産である和菓子である。

 

夢美は合成食ではない和菓子に感動してレポートを脳内で取っていたりする。

 

 

「自分殺しとは中々バイオレンスな方ですね」

オオスは自分が二人いるから本気で殺し合いをしたという岡崎夢美の話の感想を述べた。

 

華扇も同様の感想である。必要だったとのことだが、軽い世間話のように話すことではない。

 

 

「…ちゆりが私の機材を弄って船の座標が狂ったせいよ。それに殺してまではいないわ」

夢美は助手である北白河ちゆりのミスで同一存在が同時空にいたせいだと弁明した。

 

ついでに殺してはいない。一つになる為に片方を弱らせただけである。

 

…たとえ自分でも負けたくないのでお互い本気で殺し合いのようにはなっていたが。

 

 

「ええと…魂が分裂した程度というのもおかしいけれど、そこまでします?」

華扇は仙人としての知識から発言した。

 

生まれてから現在までの自分を想起させる魂の修行は華扇は日々取り組んでいる。

 

ある意味で夢美の行為と同質のような気がしたが、認識がズレている気もした。

 

 

「この場合、同一時空に全く同じ存在がいることによる修正力…私も詳しくはないな」

オオスは華扇の違和感に説明しようとしたが、途中で言葉が切れた。

 

仙術の知識との差異を説明しようとしたが、あまり詳しくないので断言できない。

 

 

だが、華扇も全く同じ自分が存在することが駄目であるとは理解した。

 

能力による分身や分裂とはまた違うのだろうことまではわかった。

 

…同時に自分の持つ仙人としての知識では理解は至難だと悟った。

 

天人になればまた違うのかも知れないが、世界規模の話では領域が違った。

 

 

オオスは華扇の持つ仙道の知識は破格であると知っていた。

 

幻獣を始めとした知識から遺失した文化的、経験的なものは相当である。

 

オオスも強襲されるなどがなければ、華扇を師として仰ぎたい程だ。今は論外である。

 

同時にある程度分野外の会話に着いていけるだけでも凄まじいと華扇に対して、戦慄していた。

 

 

「この世界ならともかく、私の世界だと平行警察が出張ってくるのよ」

夢美はオオスが殆ど概要だけならば理解していると悟った。

 

なので、その場しのぎの訂正による誤謬を防ぐために話を変えることにした。

 

学びたいなら詳細は後日…と思ってオオス達が学生でも助手でもなかったと思い出した。

 

 

「…凄い世界ですね。科学理論のみでほぼ構築された世界ですか?」

オオスは夢美の言う平行警察が、平行世界への干渉を監視している組織であると悟った。

 

元の世界で言うならばと、ティンダロスの猟犬や邪女神マイノグーラを思い出した。

 

あれらは監視等しておらず目をつけた異次元移動する存在を食し、甚振りに来るだけの存在である。

 

夢の管理人のドレミー・スイートと言い、オオスが幻想郷に来る前に出逢う存在ほぼ碌でもない奴らだと思った。

 

 

「…あら?貴方も随分詳しいのね」

夢美は五世紀程の知識的格差のあるオオスが自分の持つ知識で噛み砕いて理解しているのを悟った。

 

話の内容は魔法ではないが、夢美は教授であり教職とも言えなくもない。優秀な生徒、人材を見出すことは人並み以上には長けている。

 

…それで見つかったのが、ミスを仕出かした北白河ちゆりなのだが。

 

とはいえ、夢美は自分の仮説を門前払いする元の世界の奴らと比するまでもなくオオスに対して好感を抱いた。

 

 

「私の仮説が正しければ!魔法のみの世界、科学のみの世界、そして混雑した世界があるはずなのよ」

夢美は気分良くオオス達へ自説を語って聞かせた。

 

この幻想郷は混在した世界に分類される。夢美の仮説はほぼ証明されたに等しかった。

 

少なくとも夢美の元いた世界の理論である統一物理学への反証には成功していた。

 

 

「ちょっと話がわからないので質問するのですが、『世界』は天界のようなところですか?

 若しくは瞑想や仙薬でもって行き来するような…」

華扇は仙人として様々な世界があることを知っていた。…元の種族の知識としても。

 

故に、夢美の話に該当するような『世界』への知識はあった。

 

だが、それとは違うと理解しているので何が違うのか説明を求めた。

 

 

「…例えば蕎麦を食べた今の世界、饂飩を食べた別世界のような感じです。

 仙術を極めれば過去すら干渉できると言いますが、それは一つの中での改変です。

 岡崎教授のいう世界は簡単に言えば、別に分岐したありのままの世界の移動です」

オオスは華扇に平行世界の概念を伝えた。華扇なら初歩で十分脳内で解決できそうだと判断した。

 

華扇の世界認識も正しいのだが、今回は微妙に違う『世界』である。異世界と平行世界では認識に齟齬が出た。

 

同時に今回はどちらも当てはまりそうな事例なので、否定しないで夢美の話を聞く姿勢を示した。

 

 

だが、

 

「魔法にも似たような技術があるのね…素敵だわ」

夢美は異界への認識や時間転移等の魔法の存在を確信し、興奮していた。

 

オオスの望むような話の展開はなく、マッドサイエンティストの脳内で話が展開する。

 

 

「それに比べて私の世界は魔法の存在はインチキ扱い…実に嘆かわしいわ!」

夢美は自身を馬鹿にしやがった学会の連中を思い出して拳を振り下ろした。

 

オオスは拳がぶつかる前にテーブルからお茶等を移動させた。自説に関する話題で周囲のことを忘れるのはオオスも数多く体験してきていた。

 

 

なお、華扇は先程から荒ぶるマッドに気圧されていた。夢美はガンガンとテーブルを叩き、何なら割りそうな勢いであった。

 

 

「私達のいる世界は混在ですね。幻想郷は魔法よりの世界ですが、隔離されていますので」

オオスは話を元に戻した。地雷臭漂うマッドに対して別の素材を提供した。

 

 

しかし、

 

「ああ、博麗大結界だったかしら?解析するのに少しかかったけど…?」

夢美は持ち前の科学力で問題発言をした。

 

夢美はこの世界ではない博麗大結界を分析し、博麗靈夢にバレないように侵入することに成功していた。

 

夢美は知らないが、夢美の訪れた幻想郷はガンガン異界から侵攻されまくっていたのでそこまで気にされなかったが、こちらでは大問題である。

 

 

「待ってください。貴方、結界に何かしましたか?」

華扇が幻想郷の賢者としての顔を見せた。

 

雰囲気はガラリと変わり、危険人物を抹殺するなどと言いかねないように鋭い目つきである。

 

 

「仙人さん、待って、壊さないように私達の方の設定を弄ったのよ。…『可能性空間移動船』の設定を変えただけよ」

夢美は靈夢に怒られた以上の本気の殺意を感じ取って言い訳した。博麗大結界は弄っていない。

 

夢美達が結界に合わせて侵入した事実を断言した。

 

 

「…動力はなんですかそれ?」

オオスは華扇を宥めつつ、ついでに聞いた。凄いヤバそうな船である。

 

 

「核融合エンジンよ」

夢美は当たり前のように回答した。

核融合炉でも使わないと異界に等しい並行世界への移動等難しい。

 

それに核融合エンジンでも充電に中々時間がかかるのだ。

 

 

「核融合ですか、こっちだと外では秘匿扱い、幻想入り仕掛けているテクノロジーですね」

オオスはそれくらいないと出来ないよなと科学力に納得した。

 

…同時にそんな船で来たのならば痕跡が確認できないのはおかしいと自身の仮説を確信した。

 

 

「…この方、危険では?」「今、話を聞いていますから待ってください」

華扇は話をすればするほど危険な感じがしたのでオオスへ小声で尋ねた。

 

オオスは何とか華扇を抑えた。…実際、ガチでヤバい。

 

永琳へ連れて行こうと思った際、相当嫌な予感がしたのは正解だった。

 

 

「核融合ってそれ程難しい技術かしら?中学の理科の実験…」

夢美は言いかけて途中で辞めた。幻想郷の内外の科学力は小学五年生の教科書で満足するような水準だったことを思い出していた。

 

夢美からすれば諸問題の問題解決には魔法の方が素晴らしいのに科学へ興味を持たれても困る。

 

 

「貴方だけ科学への理解が高いような気がするのだけど、幻想郷の外から来たのかしら?

 私が前来た時にいた科学者と称する魔法使いはそこまでの水準に達していなかったわ」

夢美は前回の来訪時にいた科学者を名乗る魔法使いと比較して尋ねた。

 

明らかに一人だけ突出して理解力が高い。魔法への理解も深いようであり、仙人へ解説をしていたりもする。

 

岡崎夢美はオオスに対して興味津々になっていた。色々話が合うし、助手であるちゆりもいないしで内心寂しかったのかもしれない。

 

 

「…私は幻想郷の善良なる模範的一般里人です」

オオスは少しムッとして言った。善良なる模範的里人の過去を詮索するなど失礼である。

 

 

しかし、

 

「まだそれを言っているのかしら?」

華扇はオオスの態度に呆れ返った。いい加減それは無理があると思わないのか。

 

 

「この男は今は里人…?だけど、幻想郷の外から来た外来人よ」

華扇は夢美の疑問に答えた。オオスの言葉は回答になっていない。滅茶苦茶である。

 

同時に幻想郷に科学者を名乗る存在がいたかと思ったが、魔法使いと名乗る魔理沙くらいしか思い浮かばなかった。

 

 

「あら、素敵。私も学会へ恨みを晴らしたら幻想郷に定住を考えたくらいよ」

夢美はオオスの振る舞いから幻想郷に完全に定着した住民だと理解した。

 

同時に親近感を覚えた。この世界は研究の宝庫であり、平和である。

 

夢美としてはエネルギー問題さえ解決すれば行き来したいと思っていた。

 

 

「話が脱線しました。失礼ながら岡崎教授」

オオスは夢美に親近感を覚えつつも少し確認が必要だと思い、話を再度戻そうとした。

 

 

「夢美で良いわ」

夢美はオオスの話を遮って、下の名で呼ぶように言った。

 

教授と呼ばれるのも良いのだが、生徒や助手でもないので親しみを込めての発言である。

 

 

「…この『幻想郷』に夢美さんが来たとは思えないのです。いや、霊夢さんが問題を解決して放置することは良くあるので言い切れませんが」

オオスは本題を切り出した。ここまで濃い性格が果たして埋もれるだろうかという話である。

 

…霊夢なら一度来て相手して帰ったから良し!とかしそうなのがアレである。

 

 

「靈夢ってあの巫女さんよね?紅白の」

夢美はオオスの話から靈夢を思い出した。

 

変な女警察官が牢屋に入れて飼いたい等言われていた巫女である。

 

博麗神社の脇に船を置いたのでよく覚えていた。

 

 

「…霊夢のことまで知っているのであれば過去に来たのだと思うのだけど、博麗大結界のことを知っているようだし」

華扇はオオスに対して発言した。霊夢ならそのまま忘れていそうな気もしなくもない。

 

だが、たしかにここまでインパクトのある存在がそのまま忘れ去られるとも思えないので言葉を濁した。

 

 

「ちなみにこちらの霊夢さんの髪の色は黒、脇が出ている巫女服が特徴です」

オオスは霊夢の特徴を挙げた。何なら他に印象に残っていそうな人物と比較していくつもりであった。

 

 

だが、

「…私の知る靈夢は髪の色は紫がかっていて、脇とか出ていない普通?いや、私も普通かはわからないけどそういう服だったわ」

夢美は違和感に納得した。オオスの言う通りかもしれないと思った。

 

 

「…近似した平行世界という感じなのかしら」

夢美はあり得なくはない、だが、同時に現状ではどうしようもない状況だと理解した。

 

まだ検証が必要だが、こちらの靈夢と会話すればおおよそはわかる気がした。

 

 

「そうであるかと、私も夢美さんが過去に来ていれば人伝手で存在くらい知っていそうですし」

オオスも夢美に同意した。わかったところでどうしようもない状況である。身の振り方まで考えないとならない。

 

夢美の世界の平行警察がどの程度の組織かはわからないが、好き勝手して良いものか悩ましい。

 

好き勝手されると困るのだが、研究者に研究を辞めろとは言いにくい。

 

 

「私って、この世界ではそんなに変かしら?」

夢美は結構落ち込んだ。何せ、世界からお前知らないと突きつけられ、元の世界に戻ることも出来そうにない。

出来ても残滓である以上、待つのは吸収されるのみである。

 

それ自体は良いのだが、目下行動する世界で変な人と思われたくなかった。…自分のことを観察できないのは研究者によくあることなのかもしれない。

 

 

しかし、

「いいえ、苺のような可憐な容姿、その花言葉のように先見の明がある方です」

オオスは夢美にはっきり言い切った。極々普通の女性であり、視野が広い知識人である。

 

少なくともオオスはそう思っていた。オオスは自分が普通であるという異常者である。

 

似たような夢美も同様に普通であると認識していた。多少、インパクトがあるだけであると本気で考えている。

 

 

「…そこまで言われたのは初めてだわ」

夢美は自分の服に顔を埋めた。

赤い基調の服は苺のように赤く、花言葉等と持ち出された経験は研究一筋の夢美にはなかった。

 

 

…夢美は思わず赤くなる顔を自覚し隠す為に埋めたままゴロゴロ転がった。

 

 

「…」「痛い!…何するんですか!?」

華扇はオオスに拳骨を食らわせた。…何かムカついたからである。

 

 

岡崎夢美に関してオオスだけではなく、華扇も同伴して博麗神社へ霊夢に報告しに行くこととなった。

 

華扇は電波二人を行かせると面倒なことが更に悪化すると確信していた。…別に二人だけにすると何かあるとか考えてしまったわけではない。

 

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