幻想郷の最東端にある博麗神社は博麗大結界を管理する博麗の巫女がいる神社である。
現在の巫女は博麗霊夢である。神社は人里から距離があり、更に獣道を通っていく。
それ故、神社への参拝客は人里を朝に出て夕方には帰らないと危うい場所でもある。
善良なる里人が霊夢にバレないように多少弄ったかもしれないが、夜道は普通に危ない。
…霊夢が努力しようとも天気の悪い日、とりわけ冬ともなると参拝客は来ない。
今日は妖怪の山で吹雪いているが、幻想郷全体も吹雪いていた。
博麗霊夢はどうしようもないので境内の雪かき等も諦め、部屋の炬燵で寛いでいた。
「あー…」
炬燵に入り、ミカンを食べていたが流石に飽きた。
あれこれ言う輩や競合他社、先日できた新興宗教等で無駄に考えることが多かった。
今日は誰も来ないので思う存分休めると思ったが、最近は色々動くのが癖になりつつあったようで暇なら暇で退屈だった。
魔理沙も今日は訪れないので霊夢は早めの夕食にしてさっさと寝ようかと考えた。
まだ夕暮れ前であるが、誰も来るわけがない。流石にこんな寒い日に動く馬鹿はいないと霊夢は思った。
そして、奇しくもどこぞの善良なる里人の想像した通りの行動であった。
その日、博麗神社へ光の洪水とも言うべき現象が襲ったことをほぼ全ての里人や妖怪が目撃した。
…第三次オオス事変と呼ばれる小規模な異変であった。
時は少し遡り、茨木華扇の仙界にて。
岡崎夢美を博麗神社に連れていくということになった。
オオスは夢美の様子がおかしいので後日にしようかとも提案したのだが、平気であるとのことであった。
「大丈夫なら良いですが、夢美さんは目覚めたばかり。…私に良い考えがあります」
オオスはどこぞの司令官のように自信満々に宣言した。
「…何か嫌な予感がするんですけど」
華扇はこれまでの付き合いからオオスが何かやらかさないか不安になった。
「あら、何かするのかしら?」
夢美はオオスの態度から何かするつもりなのか興味を抱いた。
華扇の魔法は多少観察できたが、オオスの魔法はまだ見ていない。
研究者としての夢美は興味津々であった。
「最近、霊夢さんから非人間的扱いを受け、あらぬ誤解を受けているようなのです」
オオスは初対面から変わらない自分への扱いを最近の悩みのように独白し始めた。
お得意のペラ回しでも誰にもその事実を全く変えようがないのだが、今回は岡崎夢美という存在がいた。
「ここの靈夢は随分と酷いのね…」
夢美は自分の話を聞いてくれ、色々と優しいオオスしか見えていない。
夢美は全面的に霊夢が悪いと判断した。 研究一筋の何やらは盲目過ぎた。
「事実ですよね」
華扇はオオスにツッコんだ。
色々隠れて霊夢のためにやっているが、その他の行為が大概人間であるとは思えない行動しかしていない。
「今日はかなりの降雪です。明日雪かきが大変なことでしょう。それに今頃退屈にしているはずです」
オオスは霊夢を慮るような口調で事実を抜き出した。
オオスは霊夢にボコられたら普通に死ぬのだが、それはそれとして最近大人しくしていたつもりである。
正月に宗教戦争手前まで行き、今日は人里で謎の大量磔が行われているのだがオオスのカウントは既にリセットされていた。
「幻想郷も大変なのね、自然が多いことも不便だわ」
夢美は天候すら科学力でどうにでもなる自分の世界を思い出して言った。
同時に豊かさという物に欠ける世界であり、科学ではどうしようもない豊かさを魔法に見出していた。
「…いやいやいやまさかと思いますけど、さっきのアレをする気ですか?」
華扇はオオスの真意に気がついた。おいバカ辞めろと止めようとした。
「知っていますか、華扇さん」
オオスは良い笑顔で華扇達を見て言った。
「やると思ったら既に行動していれば誰にも止められません」
オオスは既に春の剣『春季光星』のエネルギーをチャージしていた。
華扇は本能的に菖蒲の気配を感じて若干怯んだ。自分へは向けられていないが、咄嗟に止められない。
夢美は明らかに既存の物理学とは違うエネルギー、魔法を感じ取って興奮していた。
「さあ、冬から春に。降雪で退屈している神の下僕へ!」
オオスは予め用意していた博麗神社へ直通している門に向かって『春季光星』の春のエネルギーをぶっ放した。
溢れる光の本流は龍の如くとなっていた。 オオスが強化されたせいである。
人体に一切害はないから問題ないなとオオスは開き直っている。
それにこれらの行為は全て目覚めた人間である夢美を歩かせるわけにはいかないという配慮が根幹にあった。
紙一重の善意は性質が悪い。オオスは真面目な大馬鹿になっていた。
なお、その行為によって霊夢や周囲がどう感じるかはオオスは余り考えていない。
雪かきになるし、範囲も神社だけだからセーフ。
岡崎夢美に関しての諸事情、あまりにも色々考えすぎて疲れた脳は自殺癖を疑う行為をオオスに実行させた。