前回のあらすじ、オオスが博麗霊夢へ喧嘩を売った。…即ボコボコにされた。
具体的には、オオスが転移した瞬間、霊夢は上昇した勢いそのまま蹴りを入れた。
空中での作用反作用の法則を利用した無慈悲なお祓い棒でオオスを叩き落とし、更に馬乗りになってボコボコにした。
オオスは月で神々から巻き上げた仙桃で多少強化されたのと、予め仕込んでいた魔法防壁で途中までは耐えたが、馬乗りからの連撃には耐えられなかった。
霊夢に対して女性が男に馬乗りになるのははしたない等と言ったせいでオオスは更に追撃を食らったりした。当然何度か死んだが、生きていた。
これまで霊夢にボコられないように必死だったオオスだが、今回は事情があった。
まず、岡崎夢美の存在である。彼女は博麗大結界に干渉できる程の科学力があった。
オオスは夢の超越者であり、自分の管理下にある深想世界があった。
それ故に、世界を区切る結界に関しては非常に詳しい。
外の世界で学んだ魔術等の知識も含めれば、オオスから見れば圧倒的格上である茨木華扇の仙界への入り口の特定とその入り方である正路の道筋まで把握し、侵入が可能だった。
オオスは岡崎夢美と同様に博麗大結界に干渉したことがあった。
…大規模な干渉や私的欲望がないので八雲紫等から放置されているが。
博麗神社にある守矢神社の分社を通して本社へ転移する程度ならば容易である。
…神奈子の怒りを買い、当たり前だが戻るとなると自力で戻る羽目になったが。
深きものどもの隠れ住む都市に夢伝いで侵入して魚を集めさせたのもその延長である。
だが、これらはオオスという存在が認知され、諸事情を弁明できる幻想郷であるから。
…又は人を狂気に陥れるはずの神話生物を発狂させる程の理不尽が可能な為である。
岡崎夢美は現在、持ち前の科学力を発揮できる状況下ではなかった。
オオスが夢美の持ち物から科学力の一端を察し、蘇生させるか否か悩む程である。
永琳ならば科学力だけで科学と魔法を混在した月の技術に届きかねない夢美の頭脳を警戒し、処分したであろう。
永遠亭の医学で夢美を蘇生した場合、永琳の領域ではオオスの擁護も間に合わない。
八雲紫はオオスのような劇物すら受け入れる懐の深さもある。多めに見てくれる可能性が高かった。
では、霊夢はどうであるか?夢美は人間である以上、霊夢は気にしないかも知れない。
だが、オオスは霊夢に警戒されていた。オオスとしては極めて理不尽だと思っている。
…大体自業自得だが、オオスの印象に引っ張られて夢美を無駄に警戒する恐れがあった。
オオスは実は生粋のサディストである。何故、ここまで霊夢に怯えなければならないのかと常日頃から思っていたりもする。
風見幽香とほぼ対等に苛めに関して語れ、自分の命より大切な部下達すら割と滝へ突き落とすような死なない範囲での苦行に追い込んだりする。
部下たちや周囲への思いやりの部分も大きいので性質の悪い洗脳みたいになっているのだが。
そして、岡崎夢美という厄ネタをどうすれば良いか考えた結論。
それは、自分が喧嘩を売って夢美の印象を操作するという発想だった。
…どれほど語ろうが、自殺癖があるとしか思えないレベルの短慮な行動である。
しかし、秒で動くオオスが霊夢へ歯向かう理由が出来てしまうとこうなった。
オオスの行為自体には被害はないし、雪かきも終わるという利益があるのも拍車を駆けた。
ついでにオオスは自分への信仰とかいう謎の現象も馬鹿を仕出かすことで収まらないかと期待していた。
幻想郷は全体的に吹雪の中、全く雪がなく春の天候を感じられるただ一箇所。
その博麗神社で正座させられているオオスは霊夢に尋問され、上記の内容の一部を吐いた。
霊夢は勘でオオスの隠し事があるだろうと見抜けるようになっていた。
「…なるほど、つまりはアンタは私に喧嘩を売りたかったのね」
霊夢は一部しか吐かないオオスの弁明という名のお巫山戯に納得した。
訂正、オオスは嘘をつかなくとも大体真実を改変するペラ回しは健在であった。
だが、第三者が聞けば岡目八目という言葉があるように違った真実が見えてくる。
「呆れるしかないわ…」
茨木華扇はオオスは大分霊夢に喧嘩を売っているが、それなりに考えがあったと納得した。
当然、庇いはしない。霊夢に喧嘩を売ったのはオオスの自業自得である。
「うー……」
岡崎夢美はその優れた頭脳から自分を思いやっての行為だと認識してしまった。
夢美はオオスの顔をとてもじゃないが見れない状態にあり、霊夢がオオスを殺そうとでもしない限り顔を埋めたまま動けなくなっていた。
「ついカッとなってやった。反省はしているが後悔はしていない」
オオスはこういう時の為にある現代日本人の定型文を再度口にした。
河童の春のバザーで川割りした時と同様、殺すなら殺せと言わんばかりの堂々たる振る舞いであった。
「…一回、本当に死になさい!!」
霊夢は取り敢えずオオスを本気でぶっ飛ばすことにした。
何か色々モヤモヤとした感情があるのだが、納得した瞬間に敗北したような気がした。
霊夢は渾身の右ストレートをオオスに向かって叩き込んだ。
「…ぶべらっ!?」
オオスは霊夢の拳を受け、させられていた正座の状態のまま吹き飛び宙を舞った。
…同時に霊夢の拳が霊力を纏っているにしても質量比的にここまでの威力があるのはおかしい等と思いながら意識を失った。
…今回の顛末は最初から最後までオオスの自業自得である。