岡崎夢美が知っている幻想郷の『博麗靈夢』とこちらの幻想郷の『博麗霊夢』の差を検証していた頃、オオスは気絶していた。
実はオオスは信仰されたことによる神通力の自動回復で気絶から目覚めることが出来るようになっていた。
だが、オオスは自分がいては話がややこしくなりそうという理由で気絶したままでいた。
…オオスは面倒事を茨木華扇に丸投げしていた。
それは後日謝罪するにしても、オオス的には上手くいくか不安であった。
なので、オオスは夢の世界から覚醒の世界である幻想郷博麗神社の様子を観察することにした。
そして、いざとなれば気絶から目覚めて止めに入れるようにしていた。
オオスは赤い五芒星が画面の四隅に刻まれた装置、64型テレビにしか見えないもの、をドレミー・スイートの管理する夢の世界に顕現させた。
レンのガラスというアーティファクトにオオスが大幅に手を加えた改良版である。
オオスが月面戦争に参加を決意し、イーグルラヴィを引き込んだことがあった。
自分の夢である深想世界に彼女らが避難していた際に貸し出したりもしていた。
現の様子がある程度わからないと永琳の口車に載せられるかもしれないとオオスは考えていたからでもある。
だが、玉兎達は月を完全に見限っていたので幻想郷で生活していく為の常識を多少観察した程度しか使われていなかったりする。
第二次月面戦争の下準備、事故を装ってイーグルラヴィである清蘭達を自身の世界へ避難させた際、月が彼女達を捨てた要するに損切りの速さを観察した機械でもあった。
観測した月の上層部の反応は使い捨てより酷い有様であり、オオスは激怒してその被害者である玉兎達から宥められたりした。
永琳はこのオオスの持つ魔改造アーティファクト『夢の射影機』の存在をまだ認知していなかった。
だが、オオスはこれくらいバレても最早時効であると割り切って使用していた。
オオスは日夜、奥の手を現在進行系で増やしている。これくらいならバレても永琳等の月の賢者が対応に混乱するだけである。
…バレたらバレたで余計に混乱するような悪質なネタバレとしてオオスは夢の射影機を堂々と使用していた。
オオスの自殺癖とも言える暴走、それは他への波及を計算された暴走でもあった。…本当に性質が悪い。
…オオスにバチが当たったのだろう、画面の向こう、博麗神社では華扇の起こした暴風でオオスは吹き飛んだ。
「ああ…私の体!」
オオスは打ちどころが悪ければそのまま死ぬ事態に思わず叫んだ。
起きるしかないと諦めかけたその時、霊夢がオオスを掴んだ様子が画面に映し出される。
「おお!何故か知らないが、霊夢さんが動くとは」
オオスは覚醒ギリギリでキャッチしてくれた霊夢の行動に驚いた。夢美が遅れてコンマ1秒差である。
…オオスは霊夢は夢美へ当てつけにやったのだと認識した。
「…ちょっと嬉しく感じた自分が悔しい」
オオスは霊夢の行為に感謝しつつ、微妙に複雑そうな顔を見せた。
ドレミー・スイートの管理する夢の世界は感情が表面化しやすい性質がある。
オオスもドレミーへの敬意として、その影響を受けるように適度に感情を緩めていた。
オオスが警戒を緩めていれば、夢の管理者は当然感知することができた。
ドレミーは夢の管理者として要注意人物オオスを監視しにやって来た。
「思っている事が何十倍にも増幅しているようですが…って、この機械は何ですか!?」
ドレミーはオオスの夢の中にある異物を見て叫んだ。…現を映すテレビである。
オオスの夢を分析して観測に徹するつもりだったのだが、思わず叫ぶ程の異物である。
ドレミーが知る限りでは、月の神々でもこのような完全に現と夢を結ぶ観測機器を作っていない。…作る必要がないというのが大きいだろうが。
今回は現実から夢へ干渉しているわけではない。ドレミーはオオスへ叱りつけるべきか悩ましかった。
「あ、ドレミーさん。こんにちわ、お元気そうで何よりです」
オオスはドレミーが態々来たので挨拶した。
オオスはドレミーの管理する夢の世界のルール違反はしていないのでセーフだと思いこんでいる。
オオスは、『×××××』は異なる夢の摂理の世界であるドリームランド、その史上最も偉大な王のクラネス王すら匙を投げた自己解釈の塊である。
クラネス王は人間である。それ故にオオスは同じ人間としてクラネス王を非常に尊敬しているが、明後日の方向への行動を決して辞めなかった。
ここにクラネス王がいればドレミー・スイートを労る言葉をかけずにはいられないだろう。
ドレミーは自身の手帳に記されたオオスの行動理由を読み込んだ。
オオスはドレミーの夢の世界の住民として記載されるようになっていた。
…オオスの夢魂等の観測が出来ていない上にまだ2日目である。
ドレミーはまだまだオオスを警戒していた。手帳にあるオオスの頁には付箋が挟まれていた。
平等なる夢の支配者は一人に対して全力で監視していた。
…オオスは異常な存在なので特別扱いはしていないとドレミーは思い込んでいる。
ドレミーはオオスの思考を直視したに等しい。それ故に、叱りつける前に論破されたような気分になった。
「どのような理由であれ、夢の世界で干渉されるのは困ります!」
ドレミーは夢の管理者としてオオスの越権行為に対して叫んだ。
…ドレミーは論破されるとわかっていても叫ばずにはいられなかった。
「えっ、紫さんに挨拶しに行ったわけでもないし、干渉も何も見ているだけですよ」
オオスはドレミーの手帳の記載通りに自分は何もしていないと断言した。
更には冬眠中の八雲紫に挨拶しに行きたいところを我慢しているのだからこれくらいは許せと戯言を言い始めた。
オオスは夢美の件で冬眠中の紫に聞きたいことがあった。だが、ドレミーから認めてもらえるまでは他者の夢に干渉することを抑えていた。
…オオスなりの誠意である。最も、ドレミーの常識とオオスの常識はかけ離れてもいたりする。
オオスは仙道を学ぶ過程や月への侵攻の際にドレミーの夢の世界の知識を学んでいたので小賢しい所行に関して理論武装が完成していた。
「…!……!!」
ドレミーはオオスの無自覚な煽りに対し、言い返したくとも言い返せないのでジタバタし始めた。
同時にドレミーは自分と似た種族とも言える存在との会話に対して内なる喜びもあった。
…そうでなければドレミーは自身の管理する世界の理に従っているオオスをその権限で以ってとうの昔に押さえつけていた。
オオスは現を映す画面を確認し、霊夢と夢美が大丈夫そうなので通信を切ることにした。
オオスは何故か憤怒している様子のドレミー・スイートを宥めてから覚醒することにした。
ドレミーに何かストレスでもあるのだろうかとオオスは心配になった。
…オオスは自分の行いがドレミーのストレスそのものだという自覚はなかった。