嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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マッドサイエンティスト

 

幻想郷全体の吹雪が収まりつつある夕暮れ時、博麗霊夢は岡崎夢美の希望と茨木華扇の要望もあり一時的に夢美を預かることにした。

 

他方のオオスは夢の世界にいたのだが、ドレミー・スイートが叱りつけようとした原因である『夢の投影機』を片付けたこともあり、有耶無耶に言いくるめて気絶から回復した。

 

 

華扇は夢美の処遇を霊夢に託せたのもあり、オオスのことを忘れて帰宅していった。

 

華扇は昨日からオオスに振り回されて色々と疲れていた。

 

オオスは霊夢がいる死地に置きざりにされたので、華扇へ謝らないことを決意した。

 

 

「おはようとこんにちわ?」

オオスは夢美と霊夢の居る部屋に入るなり適当な挨拶をした。

 

助けてくれた感謝はあるが、夢から見ていたでは無粋。故に曖昧な挨拶となっていた。

 

 

「あら、起きたの」

霊夢はオオスの様子を見て若干嫌そうな顔をして言った。

 

霊夢はオオスの存在を忘れていた。こいつだけでも華扇に引き取って貰えば良かったと後悔した。

 

 

「ああ、良かった。起きたのね」

夢美の方もオオスを忘れていたが、心配はしていたので安心した顔を見せた。

 

…時間も大分経過したのである種の感情を整理できていた。

 

夢美の不慣れな隠蔽もオオス相手ならばバレはしない。他の面々は別であろうが。

 

 

「ええ、お陰様で。…華扇さんはお帰りになったんですね」

オオスは華扇がいないことを今気がついたという風に言った。

 

実際はオオスの権能で華扇の気配は微かだがわかる。既にいないのは把握していた。

 

 

「華扇もこいつだけでも持っていってくれたら良かったのに…」

霊夢は愚痴を溢した。そして、華扇の言葉を思い出した。

 

夢美は自分の世界に帰ろうにも帰れない。

 

博麗の巫女として霊夢が対応すべきと正論を言われては断れなかった。

 

 

ちなみに、霊夢も華扇もオオスに任せるという選択肢はなかったりする。

 

…電波二人が相乗効果で何仕出かすかわからないからだ。

 

夢美の方は異界の観測ができる場所として博麗大結界が直ぐ側にある博麗神社が適切なこともあり、色々片付くまでは霊夢の世話になりたいと願い出た。

 

夢美はオオスの家に大変興味はあったが、流石にまだ早い等と言い訳をしていた。

 

 

「夢美さんは博麗神社で霊夢さんが預かることになったのですか?」

オオスは詳細がわからないので素直に尋ねた。

 

自分の家で引き取るという選択肢もあったのにとやや疑問に思った。

 

オオス的には今更厄ネタが増えようが変わらないし、今後の夢美の自立を考えるのならばオオスの家に保管している機械類で出来そうだと思った。

 

 

「元の世界の私に吸収されるにしても、しばらく過ごすにしても博麗神社の近くだと丁度良かったのよ」

夢美はオオスに表向きの理由を説明した。

 

管理人である八雲紫が冬眠中なのもあり、準ずる立ち位置の霊夢の側で様子見されることになった。

 

夢美視点でも今後どうなるかわからないので、博麗大結界の近くにある方が変化に対応できると判断した。

 

 

「アンタに預けるとまた異変だとか言われそうだし、私が預かるしかないでしょ」

霊夢はオオスを露骨に疎んじるような態度でため息を吐きつつ言った。

 

夢美はオオスの小細工よりも遥かに厄介な物が作れるらしいと霊夢も悟っていた。

 

電波二人を同じ場所に置いてはいけない。華扇も霊夢もそこは全く同じ認識だった。

 

 

「私のような善良なる里人に対して信用なさ過ぎ…」

オオスはショックを受けていた。どの口でショックなのかは本人にしかわからない。

 

今日起こした博麗神社での騒動は『第三次オオス事変』として幻想郷の歴史に残るのだが、オオス的には個人的な些細な諍い程度でしかない。

 

 

「…そういえば貴方、十字架のペンダントみたいなものは知らないかしら?」

夢美はオオスを慰めようかと思ったが、霊夢の逆鱗に触れても困るので話を変えることにした。

 

夢美はオオスの行為が博麗神社に損害どころか益しか与えていないのだからそこまで怒ることないのにと思っている。

 

岡崎夢美はオオスと大体似た思考回路の持ち主であった。何なら夢美の方がオオスよりやや強引まである。

 

 

「ああ…。あの、それなんですが」

オオスは夢美のペンダントを思い出し、懐から出した。

 

壊していないか不安であった。オオス的には皆目見当のつかない産物であった。

 

 

永琳すら理解にしばらくかかるであろうことは間違いないとオオスは考えている。

 

 

夢美の不可思議な世界を超えてなお形を保っていた唯一無二の超科学の産物であるペンダント。

 

オオスは封じられた魔力が科学的に生み出された夢美の魔力だと使用して初めて理解した。

 

 

そして、それは完全に科学のみで再現された産物であった。オオスも似たようなことは可能だが、どうやっても魔力である魔術等を使用してしまう。

 

正確にはこの世界の存在では無意識レベルで魔力を使ってしまう。

 

そしてそれはこの世界に存在するありとあらゆる神々でもあろうともその原理原則からは抜け出せない。

 

 

オオスも魔力が存在する世界の科学であるハイパーボリア人や古のもの、月の神々の産物ならある程度は理解できた。

 

 

岡崎夢美の科学力はオオスの世界より五世紀は進んだ物である。

 

…気球どころか人が飛ぶ等というのが常識的にあり得ないような時代。

 

そんな人間が現代の最新戦闘機を使いこなせるかと例えれば、夢美の技術の扱いの難しさがわかるだろう。

 

 

オオス達の住む世界では魔法と科学は近似している。人類が稚拙な論理で無理やり科学と分類している技術にも微量ながら魔力が含まれている。

 

だが、岡崎夢美の世界は完全に科学だけが独立している。認知する技術力等さえあれば、魔法を分析して魔法がある科学と認識できた。

 

…世界に存在しないはずの魔法を認識する発想がまずないだろうが。

 

 

本来はどちらが優れているということはない。そもそも関わることのない全く異なる未知とも言うべき世界観だ。

 

 

だが、岡崎夢美という超科学の最先端の先にいた天才は不可能を成し遂げてしまっていた。

 

魔法にもデメリットはあるが、科学のみではどうやっても解決できないことが存在するのが夢美の世界でもある。

 

 

99%と100%の立ち位置の違い。それを完全に識別できるのは100%の存在である。

 

月の賢者である永琳ならば観測機等を用いて強引に識別可能にすることができるだろうが、オオスの技術力ではほぼ不可能であった。

 

 

 

オオスの不安を他所に礼を言って受け取った夢美はペンダントを解析していた。

 

…夢美は自分が覚醒した原因がわからなかった。夢美の科学世界ではあり得ない平行世界の残滓の発生である。人為的にならば引き起こすことはできるが、偶然はあり得ない。

 

あり得ない偶然が発生する魔法という『可能性』に満ちた存在に夢美は興味を抱いていた。

 

 

夢美が30分程調べた結果、擬似的に創造した魔力が失われているのが判明した。

 

夢美は魔力を意図的に放出したことはわかった。…夢美は興奮した。

 

 

「ねぇ、これどうやったのかしら!?魔力が精神から来るものなのは理解していたけれども、私の状態から察するに魔力を精神に再構築したのよね?魔法ってそんなこともできたのね!?」

 

夢美は大興奮でオオスに詰め寄った。完全にマッドサイエンティストである。

 

オオスは夢美にとって未知の行為を実行していた。夢美の科学がオオスにとって未知であるようにその逆も同様だった。

 

 

幻想郷では魔力が生命に干渉することは日常である。妖精が酒を飲み興奮しただけで蔦が大蛇のごとく蠢いて妖精の家を塞いでしまい、自滅もとい封じ込めることもあったりする。

 

夢美はここではない幻想郷へ来て『魔法』と『魔法使い』を研究していたが、飽くまでもデータとしてしかない状態であった。 そのデータを分析する装置や技術も今はない。

 

しかし、持ち前の天才という表現が生ぬるい頭脳と技術力がある以上はそれなりに時間をかければ設備を整えられるだろう。

 

この幻想郷に存在する『岡崎夢美』はデータの収集こそしていたが、その検証をしていない、学会にも報告していない岡崎夢美であった。

 

 

本来の世界にいる岡崎夢美は保有する魔法に関するデータの検証が終わっていた。

 

結果、宗教で精神の力である魔力を集めることで環境問題その他に対応できるという頭電波な論文を書いている最中であったりする。

 

論理的なカオスともいうべき執筆者の脳内を疑う内容である。

 

一応、論文をきちんと読めばわかるのだが、その前に認識を拒む冒涜的な魔導書のような文章となっている。オオスならその論文を平然と読めるが、当然例外中の例外である。

 

学会も完全に狂ったとして夢美の追放は間違いないある意味で完璧な論文であり、助手のちゆりがせめてもう少しマイルドに修正しろと指摘しても、夢美は全く言うことを聞かないで書き上げている。

 

 

オオスは知らないが、岡崎夢美その人がこの幻想郷に来ていた場合、大変なことになっていた。

 

本来の夢美が来ていた場合、オオスは宗教を起こして幻想郷の諸問題を解決しているような存在であった。

 

…その場合、オオスは間違いなく研究対象として拉致されてしまっていただろう。

 

 

 

そんな本気で洒落にならない爆弾ではない夢美は興奮し過ぎて、オオス相手にガンガン質問をぶつけていた。

 

オオスは夢美の世界の科学がわからないのにも関わらず自身の世界の専門用語を捲し立てていた。

 

 

…最終的に夢美は霊夢に気絶させられた。オオスもこの霊夢の行動には本気で感謝した。

 

霊夢はオオスが縋り付くように本心からの感謝してきたので、霊夢は意識しないようにしていた美少年とも言える顔を直視することになり、オオス相手に迫られてかなりドギマギしていた。

 

 

なお、気絶から目を覚ました夢美は険悪だったはずの霊夢に本気で感謝をするオオスを見た衝撃で気が狂いそうになった。

 

この幻想郷にいる夢美は元の世界の助手であるちゆりが絶句する程の猛省の結果、マッドサイエンティストの発作をほんの少しだけ抑えられるようになった。

 

…本当に少しなので元の世界の夢美の所行を知らない第三者からすれば全く変わらなかったりもする。

 

 

オオスは霊夢への行為に対して正気に戻り、夢美も正気に戻った。

 

電波二人は性質の悪いことに錯乱した精神状態を即座に回復する術が身についていた。

 

夢美の装置はそれなりに時間をかければ元に戻せるということで二人は落ち着いて歓談し始めた。

 

 

なお、博麗霊夢は落ち着くのに数日かかった。

 

…本気のオオスに迫られて戻るまで、霊夢はかなり心身共に疲弊したのだが、誰もそんなことは知らなかった。

 

 

 

そして、落ち着いた霊夢は手始めにオオスを問答無用で特に理由もなくボコボコにした。

 

オオスは神の下僕である巫女に理不尽の極みを感じた。…霊夢の攻撃に悪意がないので防御系の権能が一切働かなかった。

 

理由もなくオオスが霊夢の手でボロ雑巾にされたことにより人里では第三次オオス事変の裏が噂になったりした。

 

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