嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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自分の種族を忘れ過ぎ

 

紅魔館に訪れたオオスはその図書館にてレミリアと雑談しているパチュリーを見かけた。

 

二人に挨拶をしつつ、逃げようとするレミリアをついでに巻き込んだ。

 

パチュリーは小悪魔に紅茶を持ってくるように命令した。

 

 

ちなみに咲夜は屋敷の雑務でこの場にはいない。

 

里の方へ買い出しに出かけており、オオスとはすれ違っていた。

 

咲夜は閻魔から指摘された人間に対する優しさというのをそれなりに気をつけていた。

 

妖怪に与する者として咲夜を見ていた他の里人も何だかんだで咲夜に対して余所余所しさが薄れてきていた。

 

 

…一番の要素はオオスが紅魔館に出入りをしまくっているからでもあるのだが。

 

更にレミリアが里人の上役等を招いたパーティを主催しているのもあった。

 

レミリアの気まぐれはそれなりに緊張をほぐす役割として機能していた。

 

 

とはいえ、人間が食料である吸血鬼の真祖が率いる軍勢である。

 

紅霧異変前に幻想郷を窮地に陥らせた事実もあるので当然だが恐れられているのは変わらない。

 

そこに平然と出入りしているオオスに疑問を呈する者は『お話』される。

 

紅魔館は一般的な里人達からすれば恐怖の対象である。

 

オオスは妖怪が恐怖されるのは幻想郷の維持的には良いと放置している。

 

なお、オオスの方が怖いという里人はそれを口に出さない限り問題ないので安全である。

 

 

例えば酒屋の里人である森岡はオオスから恩恵を受けている身であるが、賢明なことにオオスへの印象に関して一切口に出さない。

 

森岡は酒の豊富な知識と製法を学び、活かす材料、それに必要な権力者への根回しまで揃えられている。

 

オオスは問題があろうともそれぞれにメリットを提示してくるので模範的善良なる里人として振る舞っていた。

 

疑問に思いながらも誰も口には出さない。オオスは完璧に幸福な善良なる里人であった。

 

 

 

そんなオオスは霊夢に突然ボコボコにされた話をパチュリーやレミリアにした。

 

数日前のオオスが起こした小規模な異変に関しては説明不要だった。

 

またオオスが仕出かしたで満場一致である。それを口に出すことはレミリアでもしない。

 

 

「この間はともかく今日は異変も何もない。常識的に考えておかしいですよね?」

オオスは自分が如何に被害者かを力説した後に常識を語った。どの口がほざけるのか。

 

 

「…アンタが常識を説くのもおかしいのだけれども」

レミリアは紅茶を飲む手を辞めて、オオスへ指摘した。

 

一番常識に反する奴が何を言うのかと全力でツッコみたかった。

 

 

「霊夢にとっては何かあったのかもしれないわね」

パチュリーはレミリアの発言が過激にならない内に話に割り込んだ。

 

パチュリーは霊夢自身の問題にオオスが関係していただけのような気もしていた。

 

 

実際、オオス相手にドギマギした後にオオスがオオスしていてぶん殴っただけである。

 

霊夢としては殴って良い相手に殴っただけであり、もうほぼ覚えていない。

 

 

「一応、私は里人でかつ人間ですよ。博麗の巫女が何してくれるんですか」

オオスは博麗の巫女として霊夢に呪詛を吐いた。

 

善良なる里人に問答無用で殴るとか酷いと思いつつ、多少はオオスも前回やり過ぎた感があったので反省もしていた。

 

 

反省はオオスがいきなり博麗神社の気候を弄ったことであり、霊夢の拳の原因ではないのだが。

 

 

「あ、ついに一応とか言い出したわ」

レミリアはオオスが非人間と認めるような発言をしたので思わずツッコんだ。

 

特に悪意はないが、オオス相手には軽率な発言であった。

 

 

「…レミィ、そういうところよ」

パチュリーは自分がフォローしようとしたのをブチ壊したレミリアに呆れてそう言った。

 

オオスの地雷である。パチュリーとしても確かにと思うが、それはそれである。

 

 

「…レミリアさんに関しては後で自動的に発動するのでまぁ良いでしょう」

オオスはレミリアの戯言を流すことにした。

 

 

ついでに言えば自動的に発動するレミリアへの罠が起動するか確認したかった。

 

その数は数百にも及ぶ。レミリアはオオスに弱みをあらゆる角度から握られていた。

 

紅魔館で死亡時の罠は完璧であるが、それなりに機能するか試したい罠がいくつかあった。

 

 

「ちょっと待って!?何が後で、自動的なのよ!?」

そんなことを知らないレミリアはオオスの発言に恐怖した。

 

オオスはレミリアが力ずくで何かしようにも逃げ出せるので本当に厄介な存在であった。

 

 

実際、何度か力関係をわからせようとしたが、ほぼ全て倍返しにあっていた。

 

オオスは霊夢等には弱いのに何故か悪魔等には強かった。対悪特攻だとレミリアも悟っていた。

 

なお、対神にも強い。…小悪魔はオオスのことを完全に同族の悪魔と確信していた。

 

オオスは自分の定義する輩には異様な強さを発揮する生命体であった。

 

 

ちなみに単純な嫌がらせだけなら霊夢にも効力を発揮するので霊夢もあまり関わりたくない。

 

 

「それよりも里人の立場で霊夢さんに物申そうとすると結構厳しいんですよ、実は」

オオスはレミリアの恐怖を見てそれなりに満足したので話を戻した。

 

レミリアが自分の運命をどこまで変えられるのか。実験の結果を待つ姿勢である。

 

 

「あら、意外ね。貴方ならそういうのを気にしないで文句言うと思っていたのだけれど」

パチュリーもレミリアに対した害はないと悟ったので話を戻すことにした。

 

オオスが異様に霊夢に対して恐れるような反応なのも気になっていた。

 

 

そんな霊夢相手に気にしないで異変を起こすオオスである。

 

殆どの関係者は気が付かないが、パチュリーは悟っていた。

 

 

「パチュリーの言う通り、基本的には関係ないのですが…」

オオスはパチュリーの真意を汲み取って多少口を濁した。

 

基本的には霊夢相手だろうが関係ないが、里人として振る舞う以前にオオスは霊夢には弱かった。

 

 

「私と扱いの差が酷くないかしら?」

レミリアはパチュリーと自身への差が余りにも違わないかと抗議した。

 

 

レミリアのカップにある紅茶は半分より減っていた。

 

焦りからか少し喉が乾いたのだとオオスは悟った。オオスは小悪魔に目配りした。

 

小悪魔がおかわりにと新しい温めたカップを提案するがレミリアは断った。

 

なお、レミリアはオオスと小悪魔の完全なアイコンタクトを悟っていない。

 

パチュリーは自分よりもツーカーになりつつある己の従者に後で仕置することにした。

 

 

「非人間扱いするのと普段との行動の差異ではかなり違いますよ」

オオスはレミリアに対して差別ではないと説明した。

 

パチュリーの発言を表面的にしか読み取らないレミリアへの軽い罵倒も含まれていた。

 

 

「レミィも悪気があったわけではないから…」

パチュリーはレミリアを擁護した。

 

オオスもレミリアが気が付かないとはいえ、少々言い過ぎであると指摘してもいた。

 

 

「パチュリーは優しいですね。…良い友人を見習うべきでは?」

オオスはパチュリーの真意を汲み取った上で反省した。反省したが、レミリアへ追撃した。

 

少しはパチュリーを見習えというのはオオスの本心である。

 

 

「アンタにだけは言われたくないわ!?」

レミリアはオオスにだけは言われたくないのでキレた。

 

オオスこそパチュリーや咲夜を見習うべきである。

 

 

まぁ、紅茶に毒入れたりする己の従者や体調が改善しても引きこもる友人を見習えというのも違う気がしたが。

 

 

「レミィ…」

パチュリーは相変わらずオオスに振り回されて成長しない友人に頭を抱えた。

 

 

「まぁ、やることが変わらないところで」

オオスはレミリアへ死刑もとい私刑宣告を再度行った。

 

何時起こるかわからない恐怖で魘されるが良いと言わんばかりの態度である。

 

 

小悪魔はオオスに紅茶のおかわりを持ってきた。

 

オオスは礼を言いつつ、堂々たる態度でレミリアを見つめた。

 

…どちらが悪魔の館の主かわからないとレミリアは思った。

 

 

「一応、私って真祖の吸血鬼でこの館の主なんだけど」

レミリアは多少自信を失って言葉を漏らした。

 

いや、周囲に軽視されているわけではないと自分に言い聞かせた。

 

 

「場の空気の支配権は私にあるので問題ないですね」

 

オオスはレミリアの弱音を一蹴した。場の空気を支配しているのは自分だと言い切った。

 

 

「問題しかないわ!?」

レミリアは何度目かわからないがオオスへツッコんだ。

 

場の空気の支配とかいう謎理論で主導権を握られてたまるかとレミリアは憤激した。

 

 

「レミィ、そういうところよ」

パチュリーはレミリアのそういうところがオオスに漬け込まれるのだと思った。

 

堂々たる態度で流せば良いのだが、レミリアはオオスへの対応を誤っていた。

 

 

「話を戻せば、博麗の巫女というのは里人からすると普段はともかくそれなりに尊ばれる立ち位置にいます」

オオスは何時まで経っても埒があかないので強引に話を元に戻した。

 

誰が原因であるかは言うまでもないのだが、オオスはオオスである。

 

 

「まぁ、異変解決やら普段の妖怪退治やら博麗大結界等色々あるといえば説明不要と思いますが」

オオスは霊夢の立ち位置が里人から敬われる特殊な立ち位置であることを確認した。

 

要するにオオスがいくら里内であれこれしようが霊夢には関係ない立ち位置である。

 

オオスの小細工が一切通用しない。最も、オオスも霊夢に関してはする気がないのだが。

 

 

「里人であるアンタは何時もその博麗の巫女、霊夢に歯向かっていないかしら?」

レミリアはオオスへ反論した。オオスは客観的に見て霊夢にあらゆる角度から喧嘩を売っていた。

 

 

「里人でも個人の意思は尊重されます。…神の下僕に頭を垂れろとでも言うのですか?」

オオスはレミリアに苦言を呈した。悪魔でもあろう吸血鬼が神の下僕に頭を垂れろというのか。

 

何たる姿勢かと叱責を込めていた。オオスは自分のことを普通の人間であると思い込んでいる異常者である。

 

 

「…私の失言だったわ。そう言われればその通りね」

レミリアはオオスの言葉に心底納得し、反省した。言われてみればその通りだとオオスに全面的に賛同した。

 

 

「…」

パチュリーは先程まで善良なる里人だの人間だの言っていたオオスと賛同しだす友人に呆れた。

 

ついでにその光景に感動している自分の使い魔をいい加減どうにかしないといけないと思った。

 

 

「ですが、前回のやらかしから日が浅い。訴えるとなると里人としての領分を逸脱しかねない」

オオスは先日の異変として扱われる可能性を鑑みて訴えようにも訴えられない屈辱を言葉に出した。

 

自業自得であるのだが、オオスは自分が悪いという認識がないので本気で憤っていた。

 

 

「契約を重んじる悪魔ならわかりますよね、このもどかしさを!」

オオスはレミリア達悪魔相手に力説した。契約に反する行動が出来ない屈辱である。

 

オオスは自分を人間と思っている癖に悪魔に賛同を求めた。

 

 

「ええ、わかるわ。…契約は絶対、それに反する行為はできないものね」

レミリアは真祖の吸血鬼としてオオスの言葉に共感した。

 

小悪魔も賛同の意を示している。パチュリーは後でどういうことか詰問する予定である。

 

 

「わかってくれましたか!流石、レミリア・スカーレット。真祖の吸血鬼であらせられる」

オオスはレミリアの共感に感動し、敬意を評して言葉を続けた。

 

 

神への怨嗟、ついでに契約に関してずる賢い輩への罵倒等で悪魔達は盛り上がっていた。

 

 

 

「…二人ともそれでいいのかしら」

第三者視点で蚊帳の外になったパチュリーはそれで良いのかと呟いた。二人共自分の種族を忘れ過ぎである。

 

自分の使い魔に軽く教育しながらパチュリーはその光景をしばらく眺めていた。

 

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