嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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来年の話をすると鬼が笑う

 

立春の前日、2月3日の節分は人里は豆まきで大いに盛り上がっていた。

 

 

オオスも伊吹萃香へ昨年のお返しだと分速4000発の豆鉄砲を作成していた。

 

鉄筋コンクリート造の建物ですら数分で粉々にする、オオスとしても素晴らしい出来だった。

 

しかし、レミリア等に前回の行動を見られていたのもあり事前にオオスの傑作は没収されていた。

 

 

それ故、人里で本物の鬼である萃香が鬼役で豆まきに興じている様子を内心悔しがりながら眺めていた。

 

 

霊夢は萃香が無害そうなので無視していた。無視するように努力していた。

 

まともに対応したら人里が騒ぎになるのもあるが、神社の書き入れ時でもあった。

 

今年は守矢神社の存在もあるのでガチである。オオスは特に干渉していない。

 

ちなみに茨木華扇は自分の正体的に都合が悪いので、節分当日に手伝えという霊夢へ適当に言い訳して逃げていた。

 

 

 

オオスは華扇の強引な言いくるめを心を空にして観測されないようにしていたのだが、余りにも滑稽なやり取りに思わず吹き出してしまった。

 

華扇はその時は何とか堪えたが、霊夢との会話の後にオオスを〆ようとした。オオスは当然逃げ出した。

 

 

 

豆まきの終わり頃、夕暮れ時にオオスは華扇に追いかけ回されることになった。

 

オオスは節分の日まで完璧に華扇を撒いていたのだが、流石に当日に人里へ来ていたのでバレてしまった。

 

華扇的には社会的な生死が掛かっているのに等しい状況である。オオスはかなり怒られた。

 

 

 

そのうち、華扇は今日の主役の鬼役だった萃香がオオスの家に近づくのを察した。

 

華扇が萃香に遭遇しないうちに退散したのでオオスはほぼノーダメである。

 

 

 

オオスもだが、華扇も邪気を含む気配には敏感なので元同胞相手に機先を取れた。

 

何時ぞやの宴会異変のように幻想郷全体を包み込むようなことをされたら流石に厳しい。

 

だが、それ以外では華扇の方が行動速度は早かった。

 

オオスは事前にバフをかけないと流石に無理である。萃香がオオスへ危害を加えるつもりなら別であるが。

 

 

オオスは客として萃香を招き入れた。地味にオオスは一年ぶりの再会であった。

 

霊夢等にはからかい半分でちょっかいをかけているようなのだが、オオスは嘘つきなので会わないようにしているようであった。

 

鬼の四天王の来訪にオオスの家に住み込んでいる清蘭達は警戒していたが、オオス本人が辞めるように指示すると一応は抑えた。

 

 

 

「なんだ、お前は部下の躾がなっていないんじゃないのか?」

萃香は久しぶりに会えば随分様変わりしているオオスに対して責めるように言った。

 

オオスはただ適当に文句を言いたいだけだと看破した。

 

それなりに経験を積んだオオスは萃香の機微を以前よりは理解できるようになっていた。

 

 

 

「突然の来訪に驚いた程度、騒ぐ程かと思いますが」

オオスは萃香に躾云々言われたくないのでスルーした。同時に多少喧嘩を売っている。

 

いつもの口車への潤滑油は直前まで華扇相手で満たされていた。

 

 

 

「…こんな非力なのに従ってて大丈夫か不安だねぇ。なぁ」

萃香は涼しい顔で紅茶を飲むオオスではなく側にいた鈴瑚相手に絡み始めた。

 

その瞬間、その場の空気が軋んだような濃密な殺意が充満した。鈴瑚だけでなく全員がキレた。

 

だが、

 

「何かイチャモンつけたいのですよ、勝手に勢力作っておいて挨拶無しかという感じ」

オオスは鈴瑚が動く前に機先を制した。部下に当たるとは酷い客であると思った。

 

鈴瑚はオオスの言葉に応じ、事を構えそうになった周囲にいる同胞を制止した。

 

 

 

「…そこまでわかっているのなら何故来ない?喧嘩を売っているのなら買うぞ」

萃香はオオスの屋敷にわざわざ来た理由を悟っているようなので尋ね返した。

 

それなりに経過していて挨拶に来ないのは鬼である自分を舐めているのか。

 

萃香はオオスの首根っ子を押さえた。舐められたら鬼の恥である。

 

 

「いや、普通に萃香さんが普段どこにいるとか知りませんし」

オオスは萃香に極々当たり前のことを説いた。

 

どこにいるかわからない、異界にも地底にもあちこちフラフラしているような萃香相手にどうやって挨拶しろというのだろうか。

 

 

 

 

「…お前ってそういうの得意だろう?」

萃香はオオスの首根っこから手を離した。

 

萃香は普通にオオスなら自分の居場所くらい把握しているものだと思っていた。

 

だが、オオスの言葉は正直なようであり萃香も理屈は理解できた。

 

 

 

「いや、まぁ得意ですけど。だからといって四六時中監視しているわけではないですからね」

オオスは萃香の言葉を一部肯定しつつ、訂正した。

 

どうやらお互いの認識に齟齬があるようだとオオスは悟った。

 

 

 

「頑張ればわかるかもしれませんが、来客があるならともかく鬼の四天王を特定するとか無茶では?」

オオスは鬼相手に正直に言い切った。

 

実際、密と疎を操る程度の能力を持つ萃香の特定はかなり骨が折れた。

 

鬼に会いたいと思っていた当時ならともかく、今のオオスは地底へも遊びに行ったこともあった。

 

 

 

「…」

萃香は何故か自分が悪いことをしている気分になった。

 

もう面倒なので逆ギレしようかと考えた。だが、そういう開き直りをするとオオスが面倒になると知っていた。

 

 

目の前の男は本当に弱いのだが後ろめたさがある状態で突っかかる等すると下手な名のある妖怪より遥かに面倒だと萃香は既に知っていた。

 

 

昨年、幻想郷中を霧にした時点で萃香はオオスの能力のおおよそを察していた。

 

前回の時の萃香は純粋に昔の再来を起こす異変首謀者だった。それ故にオオスは大幅に弱体化していた。

 

 

この嘘つきは嘘つきの癖に嘘つき相手だと強い。…萃香としては正面からオオスが正論で言い返されると扱いにくいことこの上ない。

 

純粋な力関係でいえば勿論圧倒できるが、鬼として異端である萃香もそれで誇れるのか等と言われた日には言葉に詰まる。

 

 

 

「というか私は今日会えると思っておもてなしの準備をしていたのですが、具体的には毎分4000発の豆鉄砲を…」

オオスは今日なら会えると思って用意していたマシンガンが取り上げられたことを愚痴り始めた。

 

 

オオスの愚痴は止まらない。どれだけの苦労をしたと思っているのかと武器の詳細を解説し始める。

 

…萃香は詳細を聞き、オオスの殺意の高さに喧嘩好きの鬼であるのだが若干引いた。

 

 

「去年は毎分600発!…わかりますか、今回は4000発。約7倍まで改造したんですよ!?」

オオスはどれほど萃香を心待ちにして用意していた武装なのかと延々と語り始めた。

 

 

当然、物凄く物騒な話の内容に部下達はハラハラしていた。

 

オオスを止めたいが止めるなということなのでぐっと堪えた。

 

 

オオスはそんな周囲の反応を他所に萃香へ酒を持ってこさせ、自分もと酒を飲み始めた。

 

 

 

「今年の節分なら殺しに来るかなと思ってワクワクしてながら全力で返り討ちにするために殺意込めていた私の気持ちがわかりますか?…余りに酷いと思いませんか」

オオスは萃香相手に作成していたマシンガンばりに滅茶苦茶な話をぶちまけた。

 

 

 

 

オオスの話を酒の肴に…できないくらい頭電波過ぎる内容を自分でも分かる範囲で理解した萃香は一先ずオオスを殴って黙らせた。一応、気絶させないように手加減はした。

 

 

 

「要するに、お前は私へ挨拶できないので私に殺されると思った。それで私を逆に殺そうと思って用意していた武器を取り上げられた、と」

萃香は酒を飲みながらオオスの話を要約した。

 

凄いことにオオスの話は萃香すら脳が理解を拒むような内容であった。

 

…殺し合い前提で用意していた武器を取り上げられましたと素直に吐く奴がいてたまるか。

 

 

 

「…?この程度では貴方は死なないでしょう?」

オオスは萃香の要約に疑問があったので確認した。この程度で萃香が死ぬわけがない。

 

 

 

「…お前、何のためにそんなものを用意したんだ?」

萃香は支離滅裂な電波が更に飛んできたので呆れて尋ねた。

 

殺意込めていたというのも嘘ではなく、死なないと確信していたのも嘘ではない。

 

 

「ここでは人は妖怪を畏れ退治する関係でしょう。…勝てないからといって辞める馬鹿がいますか」

オオスは幻想郷の原理原則を萃香に説いた。

 

普段妖怪と仲良くしているオオスが言うなと誰しもがツッコむだろうが、オオスとしては萃香への敬意を含んでいた。

 

 

オオスではまともにやったら勝てないので節分というハンデを存分に活かした対等な喧嘩である。

 

弱点をついているが、それくらいでもしないといつまで経っても萃香に脅されるだろうとオオスはガチで挑むつもりだった。

 

 

レミリアから危険なことをする時はなるべく事前に連絡しろと昨年に言われていたのでマシンガンを明かした。そして、当然だが没収された。

 

 

 

部下達は飽くまでオオスの意思として大人しくしているつもりだった。

 

しかし、オオスが余りにも萃香に喧嘩を売るので流石に部下達は止めようと動こうとした。

 

 

 

だが、

 

「…そうだな」

萃香はオオスの言葉にこれ以上なく納得した。

 

オオスは相変わらず支離滅裂で滅茶苦茶なことを言っているが、『人間との真剣勝負』が行われていた昔を思い出した。

 

 

…またしても昔を思い出した萃香は暴れる気を失くしていた。

 

嘘つきなのに何故こうも思い出させるのかと萃香はオオスを眺めていた。

 

 

 

「…多分、来年も取り上げられると思うのですがどうにかできませんかね?」

オオスは萃香に相談した。…レミリアは節分になるとオオスから武器を取り上げるだろう。

 

オオスは死ぬつもりはないが、勝てないかも知れないが、萃香に首根っこを押さえられてたまるかという意思しかない。

 

 

非力な人間は鬼に対して純粋な喧嘩の為にどうすれば良いか来年の相談していた。

 

 

 

「…鬼に来年の話を振るんじゃないよ」

萃香はそう言って満面の笑みを浮かべた。来年の話をして鬼が笑った。

 

来年のことは来年にしかわからない。

 

 

 

…ついでに紫だけでなく自分を口説くのかと思ったのでオオスを羽交い締めにすることにした。

 

オオスは意味もわからずに羽交い締めにされ、ガチで死にかけた。

 

 

部下達は今度こそオオスと萃香の間に割り込むことにした。

 

萃香は笑いながら周囲を巻き込んだ。結果、盛大な大喧嘩となりオオスの家は半壊した。

 

不相応な勢力の新参へ示しをつけた萃香は満足して帰っていった。オオスは萃香へ向かって塩を撒いた。

 

 

 

オオスは節分以外で鬼を懲らしめる方法を探すことにした。雪解け前に鬼が住む地底に行こうと決意した。

 

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