嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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見ヶ〆

 

オオスの自宅が伊吹萃香に半壊された翌日、オオス達は一先ずの修繕を完了させていた。

 

良くも悪くもオオスの自宅は往来する人や妖怪等が増えていた。

 

オオスは今回被害にあった地上部分には劇物や危険物を置かないようにしていた。

 

結果的に鬼の四天王である萃香が暴れてもオオス的には最低限の被害で済んだ。

 

…萃香との乱戦が発生したが、部下達はやはりというかオオスよりも真っ当に強かった。

 

オオスは羽交い締めにされ死にかけたが、他の者達は奮闘していた。

 

オオスは純粋な個人の武力として火力を欲した。…オオス本来の気質と合わないので難しい課題である。

 

 

 

ちなみに、魔理沙からすればお前にそれを言う資格はないと断言するような能力をオオスは会得している。 魔理沙からすればオオスは大概であり、理不尽である。

 

…第二次月面戦争で月を謀略で蹂躙しただけでも十分過ぎる程に証明しているが、それでもなお全ての手札ではないのがオオスである。

 

オオスは一見すると正反対の性質のアリス・マーガトロイドとかなり気が合う。魔理沙もその事実を意外に思っている。

 

アリスは手段を全部使って後に引けない状況にしてしまうのが嫌いという部分でオオスと同じ感性であり、それなりに共感し合っていたりする。

 

オオスもアリスも手持ちの全力を使うが、他にも手は残している。

 

魔理沙の感覚は、飽くまで比喩だが核爆弾が欲しい奴にテレポート能力をチートというようなものである。オオスからすれば的外れな指摘であった。

 

 

 

そんなオオスは眼の前の光景、自宅半壊の事実について自分へ色々言い聞かせていた。

 

家はそもそも春に改増築を予定していた。それを少し早く融通して貰えれば良い。

 

河童と利益を分配して誤魔化すそもそもの計画が、守矢神社の影響で中止になった。

 

正直、どう考えてもオオスの利益独占であり、後の影響が怖くなるような状況だった。

 

この被害を喧伝すれば警戒も多少はマシになる。

 

そして、多少とはいえ過ぎた大金が減ること自体は喜ばしい。

 

 

妖怪の恐ろしさも人里に伝播するだろうし、オオスからすれば面倒なヘイト管理をする必要が少なくなった。

 

…オオスはなるべく前向きに考えた。しかし、流石に自宅を破壊されて傷心していた。

 

 

「これだけされてもそもそも文句は言えないのがなぁ…」

オオスは吾妻の訝しんだ顔を見て適当に誤魔化しながらボヤいた。

 

吾妻は天狗と対になるような妖怪であり、聞き耳が高いという感じである。

 

故に、復讐等してくれるなよという独り言というよりも牽制も含まれている。

 

 

吾妻はオオスの言葉の裏を読み取り、萃香への報復計画を脳内で取り下げた。

 

…忘れかけていたがオオスは里人として振る舞い続けている。

 

その体面がある以上、オオスからすればそのような行為は迷惑極まりないと思い至り自らの愚考を恥じた。

 

 

なお、オオスとしてはそれよりも考えていることがあるが、態々訂正する必要もない。

 

オオスは吾妻から他へ伝わるだろうと考え、清蘭達にも萃香への対応は自分でやり返すと伝えていたので一先ずの暴走は回避したと確信できた。

 

 

そもそも非戦闘地帯である人里からオオスの家は離れている。最悪破壊されても文句は言えない。

 

更に言えば、萃香の言うようにオオス周辺は謎の勢力になりつつあった。

 

萃香への報復は飽くまで個人の喧嘩に留めなければならない。

 

 

オオスとしてもその気なので予定を繰り上げてでも地底に行くつもりである。何としてもあの小鬼を懲らしめる方法を見つけるのだ。

 

 

そもそもだが、オオスはどこかの誰かに示しをつける必要があると考えていた。

 

当然だが、気まぐれであちこち存在する萃香は最初から勘定に入れていなかった。

 

オオスは自宅の補修工事の傍らで自分、『自分達』の行動計画を練り直していた。

 

 

 

博麗霊夢等による異変解決後にその『存在』が公然と認められるように必要な行為だ。

 

一応、オオスは霊夢に喧嘩を売っているのは趣味だけでなく、そういった観点からもあった。

 

なお、8割は純粋に趣味だ。負けるとしてもひと泡吹かせるようには考えている。

 

 

残りの2割で損得を計算して霊夢へ喧嘩を売るタイミングを見計らっていた。

 

オオスは理性で霊夢への恐怖を押さえつけつつ、同等以上の反発心も抑えていた。

 

 

霊夢に関してオオスは複雑怪奇な感情を持つ。負の感情もあれば正の感情もあるので古明地さとりでも読み解くのは難しかったりする。

 

少なくとも大部分は恋愛感情ではないが、一部分だけ切り取ればそう言えなくもないかも知れないとさとりは分析している。

 

 

さとりは少なくとも確実にオオスは博麗霊夢という存在へ『☓☓』という感情は抱いていると確信していた。

 

…オオスに尋ねたら面倒になると思い、それを口に出してはいないが。

 

八雲紫もオオスのそういう部分は察しており、感想として随分な歌で返されたと述べた。

 

 

先日、霊夢が岡崎夢美というマッドサイエンティストから助けた時には、オオスは正気が数十回は回転して、ほぼ素になっていた。

 

霊夢はオオスが余りにも普段と違うので数日おかしくなったが、オオスは霊夢というフィルターが外れてほぼ素になっただけでもある。

 

 

 

オオスは修繕の為に一時的に呼んだ人員を解散させていた。

 

頭を回転させて、次の手を考えながらオオスからすれば適当な作業をしていると誰かがオオスに背後に立っていた。没頭しすぎて気配感知も荒れていたとオオスは反省した。

 

 

「閣下、あの、お休みになられては?」

鈴瑚はオオスへ声をかけた。

 

鈴瑚はオオスが何をしているのかはわからないが、とりあえず休憩を挟んでできる作業ということだけはわかっていた。

 

 

そして何より、オオスが鈴瑚の気配を察知できない程に没頭しているとなると例の破廉恥な烏天狗が拉致しかねない。

 

鈴瑚達からすれば真面目に今これが最悪の可能性である。

 

 

 

「あの小鬼…ではなく、報復…ではなく…そうですね。…心配をかけてすみません」

オオスはところどころ本音が漏れつつ、鈴瑚の心配を察して作業を中断した。

 

オオスはほぼ無意識に萃香への対抗手段の為に地底に行くアーティファクトを作っていた。

 

…第二次月面戦争の報告が一番大切なことだった。オオスは感情に呑まれたことを恥じた。

 

 

「とりあえずは中断して…有情湖を見に来ませんか?」

オオスは気分転換に鈴瑚を誘った。オオスの自宅は人里から見て妖怪の山の反対にあり、有情湖は人里ではない一帯となる。

 

 

「はい!」

鈴瑚は即答した。今のオオスには護衛が必要であるが、連れが多いとオオスはそれを嫌がるだろうと言い訳して他には秘密である。

 

なお、オオスは別に人数が増えても気にしない。 そもそも他の面々も誘うつもりだったが、鈴瑚の返事で無粋であるとオオスは誘うのを辞めた。

 

 

 

オオスの部下や有情湖や有情地に一先ず在住している庇護者等は大体が守矢神社の信仰の力により、山の妖怪達が力をつけて生活を追われた者、争いを避けてきた者達で構成されていた。

 

オオスも彼女らには説明していたが、万が一大ぴらになった場合は困る。

 

麓の妖怪等が言いがかりをつけて万が一にでも戦争になれば全員が困る。

 

そして、オオスも里人として居られなくなる。そうならない為に必要な行為が一つあった。

 

 

 

オオスはあり得ないようだが、客観的に見てギリギリまだ里人をやれていた。

 

それはオオスが強引に納得させられるだけのあらゆる手段と権謀術数による物が大きい。

 

地底で心を読んだ古明地さとりが地底の方が楽じゃないかという程度には大変であった。

 

 

オオスが里人で無くなる場合、それなり以上の影響が出た。

 

とはいえ、オオスから見てそれはもう個人の問題の範疇でもある。…飽くまでオオス視点である。

 

阿求等はオオスが里人で無くなった場合でも稗田家と関わりを維持するように考えていた。

 

オオスも善良なる里人として、里人の資格剥奪は不本意極まりない。

 

しかし、悪影響を及ぼしてまでしたいとは思わない。

 

 

それ故、オオスは幻想郷に来て自身の行動の大部分を決めていた。

 

オオスは紅霧異変前から自分がするだろう行動とその影響に対してあらゆる対策していた。

 

 

それはオオスが射命丸文という優れた人里を見張る存在との接触以前からであった。

 

 

オオス自身のこれまでの経験と上白沢慧音などから聞き取りした幻想郷という異界の原理原則の推測と仮定、香霖堂で購入した電子機器等も利用した影響予測、河童や人里の退治屋等の人妖含めたコミュニティとの良好関係の構築等。

 

 

文すら当初のオオスは河童と取引して成功した元外来人の里人程度にしか見えなかった。

 

オオスから明かさなければ気の所為だと思うような暗中飛躍の数々である。

 

 

オオスは紙芝居屋で潜在的な妖怪達への畏れを維持しつつ、里人の危機管理も行っていた。

 

紅霧異変前のオオスは人里に益を齎しつつ、幻想郷という楽園の害にならないように勤めていた。

 

 

なので、今すぐオオスが里人を辞めても幻想郷の危機レベルではない。

 

オオスがあらゆる行動に対して予め対策をしていなければ、最初の一ヶ月に満たない段階で幻想郷全体に影響が出ていた。

 

…それこそ射命丸文は初対面で暗殺を測ってもおかしくないし、別の存在がオオスを始末する。

 

オオスがオオスでなければ幻想郷初期段階で始末されていた。

 

この世界、幻想郷でここまで暗躍して自分の立ち位置を確保した外来人は存在しなかった。

 

 

幻想郷という人妖入り混じった楽園はあらゆる存在を受け入れる。

 

だが、それに伴う結果に対しては残酷でもあった。

 

 

オオスという劇物は自分の影響を考え、益になるように勤めていた。

 

 

しかし、相当の勢力を持つとなると話はまた変わる。

 

先程述べたように一つ必要な行為が発生する。それはオオスや部下達にはできないことでもある。

 

 

第一にオオス個人が隠すにはあまりに大所帯になってしまっていた。

 

イーグルラヴィの引き抜きすらギリギリアウトラインである。

 

オオスは一人で月を見上げた時、紫が現れた際に婉曲な言葉で以て謝罪した。

 

 

最早、オオスの部下や庇護者達は隠せぬ存在になりつつあった。

 

オオスももう見捨てる気はないので覚悟を決めていた。

 

 

 

その為には、最悪でも好悪はどうでも良いが、どこかしらの勢力ないし大妖怪等に認められる必要があった。こればかりはオオス達ではできない行為でもあった。

 

 

それが出来るほどの存在となると幻想郷の賢者達、守矢神社や永遠亭、妖怪の山の天狗等であり、どれもこれも貸しを作るには高くなるだろうとオオスは考えていた。

 

 

実際はオオスが考えるほどの貸しにはならなかったりする。

 

オオスは自らの影響を過小評価する傾向にあった。…外にいた時は最悪の想定をしても更に最悪な原因だったりした経験から来るものであり、改善するには中々ややこしいものである。

 

 

オオスが保有するあらゆる手段と影響力はそれだけで利益となっていた。

 

オオスという個人だけでも幻想郷での影響力を強めたい勢力からすれば垂涎そのものだった。

 

妖怪なら畏れ、神なら信仰、外部からすればそれらへの切り札として機能した。

 

オオスと交渉する難易度を知っている他の勢力からすれば恩を売るだけで他への見せ札となった。

 

 

 

 

そんなことは殆ど知らないオオスだが、今回は最適解を引いたという確信があった。

 

第三者視点では比較的マシな部類である。しかし、オオスにとっては最良の存在だった。

 

 

 

鬼の四天王である伊吹萃香は謎の勢力を認めるに相応しい格があった。

 

今回の行為には誰もそのような意図は一切ないが、萃香が示しをつけたと言えば、もう誰しもが強く出れなかった。

 

幻想郷という勢力図を争う者達からすればである。オオスとしても心底どうでもいい政争の類である。

 

オオスは幽々子を思い出した。幽々子の立場も一応勢力図に入るのだが、一切気にしないで風情を満喫している。あの領域には自分では遠く及ばないとオオスは再認識した。

 

想定外とはいえども、ある意味で鬼という圧倒的強者に、それも四天王の萃香が後ろに控えた勢力になったに等しい。

 

これも政争的な意味での『示し』である。萃香自身はバカバカしいと一蹴しそうだとオオスは思った。

 

実際、オオスとしても理解できるからやらねばならないと思っているだけであり、行為そのものは馬鹿馬鹿しいと感じている。

 

今回の件で相応の示しはつけられているのでもう認められたようなものであるとオオスは解釈した。実際、言いくるめの材料としては機能した。

 

萃香も自分が示しをつけたオオス達に更にイチャモンをつけに行くような奴がいれば、それはそれで自らへの喧嘩と受け取った。萃香としては喧嘩したいだけでもある。

 

 

萃香はそこまでのことを考えていないだろうとオオスは推測した。実際、そんな細かいことを萃香は一切考えていない。

 

オオスの癖に何か群れというか勢力を築いて、更にそのことに関して自分に挨拶がないから殴りに来ただけである。

 

とはいえ、幻想郷を探してもこれ以上は難しい大妖怪がオオスの部下達の存在を認可したようなものである。

 

八雲紫が冬眠から目覚めても大きくは文句は言えないだろうとオオスは確信した。

 

こういう小細工を思いつく自分に嫌悪感を覚えるところは無くはない。

 

 

「だが、人の家を壊したのだからな。…ただでは起きんぞ」

オオスは鈴瑚に聞こえないように呟いた。

 

自分の善良なる里人生活…もとい、勢力となってしまった皆の為の布石となってもらう。

 

萃香への八つ当たりとして小賢しいことを考えつつ、オオスは季語では2月は春であると思ったので春を探しながら歩くことにした。

 

 

歩きながら春を探していたが、わかさぎも春の季語だったなとオオスは思い出した。それも今は2月である。

 

オオスは行き先にわかさぎ姫がいることを期待した。居なかったらそれはそれで仕方がないが、いたら縁起が良いだろう。

 

オオスは周囲に恵まれているなと思い、日頃の行いの良さを自画自賛した。

 

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