嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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人の殴り方

 

『癲狂櫟林』(てんきょうくぬぎばやし)。

 

受け取る者や状況によって印象が変わる名前の発案者オオスは計画通り全てを出し抜いた。

 

オオスはあらゆる勢力の虚をつき、嘘を見抜いた者すら手出しできぬ地、地底の旧地獄へと旅立っていた。

 

オオスは紅魔館との交渉と帰るまでの他勢力の交渉等の全部を部下達に任せた。

 

 

オオスが不在の間に起こる人妖問わない乱数の発生によりそこらの賢者ですら見抜けない隠匿をオオスはなし得ようとしていた。

 

一応、最悪の場合はオオスが即座に拠点へ転移するようにセットしていた。

 

 

 

オオスがあらゆる想定をしてもこの世は理屈で動くわけではない。運の要素も必要である。

 

 

 

運の良さとは期間による類似が必要であり、それは賽の目を当てるような物である。

 

賽の目で1が出た次で1を出しても完全に全てが同じではない。

 

この差のことを期間の類似とオオスは仮定していた。

 

阿求は輪廻転生による経験でオオスの仮説が正しいだろうと返答したことがあった。

 

霊夢は賽の目を当てることが出来る豪運を持つ。

 

その運とは賽の記憶が確率を決定するような状況を指す。

 

 

霊夢が次の賽の目を宣言したという記憶が賽の目を収束させる。

 

この現象はオオスから見ても圧倒的な天運の持ち主である霊夢だから可能な反則級の能力である。

 

オオスも運を操る魔法そのものは知っているがそれを何重にかけたとしても霊夢のようなことは不可能に等しい。

 

運の良さ、豪運とはそういう者が持つ先天性の要素だとオオスは解釈していた。

 

魔法の発動に必要な構成要素の中には運も大事な要素である。

 

岡崎夢美が着目したのは魔法は運勢などオカルト的側面が強い。

 

夢美の住んでいた純粋な科学の世界では構成要素として運が軽視されていた。

 

それ故に、魔法の力を行使するために宗教ないし信仰による力で環境改善その他の利用などと言えば夢美の世界の学会は狂ったとして追放するのは間違いない。

 

この幻想郷の夢美はそこまでの結論にまだ至っていないが、元の世界の夢美はそれを元の世界でやらかしてもう一つの幻想郷へ逃避行して靈夢に泣きついていたりする。

 

外の世界の科学も運が介在する。量子力学などに運が絡むとまで言うのは極端だが、そのように振る舞いを見せるのも事実である。

 

だが、夢美の世界から見ればその科学は力学の統一原理が発見されていない世界の未熟さ故である。

 

そして、この世界の人間が発見できるかは5世紀の時間があってもそれは賭けになる。

 

魔法と科学が混在するこの世界と近似の平行世界では運が人類の発展の鍵となっていた。

 

 

 

オオスも4つの力が統一して理解した可能性がある種族は宇宙でもイス人程度だと思っている。

 

なお、偉大なる種族であるイス人はオオスに関わると大体碌なことにならないが、強制的に呼び出されたりしていた。

 

死んだか怪しい、人間かも怪しい男の喪失にもうそういうことがないとイス人達は安心していた。

 

…深きものを観測していた同胞が例のアレを発見したという情報でイス人界隈は発狂していたりする。

 

オオスは呼び出す気がないので安心して良いのだが、前科が有りすぎた。

 

イス人はその優れた頭脳で見て見ぬふり、放置を選択した。それこそまさしく最善の選択であった。

 

 

 

ともかく、統合された力学からなる科学は神すら能力として一部は行使できてもそれを完全に理解できているか非常に危うい。

 

例えばヘカーティア・ラピスラズリはそれこそ規格外の圧倒的な神であるが、それはそれとして知識として理解しているかは別である。

 

そもそも理解する必要がない程の権能や力である。なお、オオスは月の賢者である永琳すら知らないヘカーティアの存在を知っていたりする。

 

地球、月、異界の神である以上はオオスも人伝手で恐ろしい力を持つ神ということだけは聞き及んでいた。

 

普通に幻想郷や月の都など洒落にならない圧倒的な存在である。オオスは地獄の業火で焼かれはしたが、自分に関係するとは微塵も考えてすらいない。

 

なお、ヘカーティアはそんなことは知らないし、未だに謎の男を地獄で探している。

 

ヘカーティアも情報がなさすぎるので諦めかけている。どこの悪魔がやらかしたのかと思っているが、まさかそれが人間の仕業という発想に行くわけがない。

 

やらかしたのは人間ですと言われた日には冗談も大概にしろと怒りを通り越して笑い飛ばすであろう。

 

 

 

話が大幅に脱線したが、オオスは可能性を諧謔により引き寄せ収束させる能力がある。霊夢の運とはまた違うものだ。

 

オオスが外の世界で自分で開拓し、諧謔した異能である。そして、オオスの保有する唯一無二の『魔法』でもある。

 

しかし、オオスの魔法は霊夢のような運を持つ者がいないと真価を発揮できない。

 

 

オオスの魔法は他者依存という致命的な欠陥があった。元が世界一の探偵だろうが、自分ひとりでは解決できないことの方が多い。

 

そして、今回の勢力誕生である。オオスは場合によってはパワーバランスを崩しかねないような異能を有していた。

 

オオスの諧謔は立ち向かう意思のある者の運が0でなければ引き起こせる事象である。

 

オオス自身の運でどうしようもない場合はそのまま死ぬだけである。

 

オオス一人なら弱点の多い能力であるが、部下によって欠点を補えてしまうかもしれない。

 

 

オオスは春雪異変で桜、西行妖が開花した後にそれを封印した。西行妖は八雲紫すら危うい存在である。

 

あれはオオスが霊夢達の運に賭けたからできたことである。運命を強引に引っ張り出して、最善の結果を暴走前に持ってきた。

 

 

ちなみにオオスが月の都で稀神サグメに会おうとしたのは自身と似て非なる能力を持つ存在に興味を持ったからだった。

 

サグメは口に出すと事態を逆転させる程度の能力であり、下手に喋ることもできない。

 

サグメは他にも対象に言葉で世界を動かす効果を付与出来るなど圧倒的な神霊である。

 

 

オオスの『魔法』の真価を把握しているのは四季映姫や八雲紫、八意永琳等である。

 

誰も彼もがオオスの危険性を考えるだろうとほぼ確信していた。

 

オオスはあらゆる方面で全力で誤魔化していた。勢力がいたとしても諧謔の乱用はあり得ない。

 

 

そもそもオオスがそこまで万能ならば外の世界で殺されるような目に遭っていない。

 

というか西行妖の一件で既にオオスは死にかけているし、もう二度とやりたくない。

 

オオスの奥の手は他者の意思がなければ発動せず、飽くまで悲劇を喜劇に変える物である。

 

それを恣意的な使い方をするはずがないという思いが、オオスの今回の行動を決意させていた。

 

 

オオスは里人のままで居たいというのは本心であり、枷でもあった。

 

幻想郷を支配できる軍事、経済、政治の力がオオス個人に集約するのだけは避けたかった。

 

 

とはいえ、そんな真似をすれば霊夢がぶん殴りに来るとオオスは確信していたりもする。

 

霊夢に負けたくないが、強くあって欲しいというオオスの狂いそうな想いである。

 

 

 

そんなオオスの心を地霊殿で読んだ古明地さとりは月面戦争結果報告を星熊勇儀と共に聞いていた。

 

さとりは第二次月面戦争でもキツイのにまた面倒なことを仕出かした馬鹿に対してため息を吐いた。

 

 

「…勇儀さん、人の殴り方を覚えたいのでこの男を押さえつけては貰えないですか?」

さとりは勇儀へ依頼した。鬼に対して男とはいえ見た目は虚弱な人間をサンドバッグしたいというとんでもない依頼である。

 

普通、こんなことを頼めば勇儀は依頼した奴の方を殺すだろう。

 

 

だが、

「…おう!任せな」

勇儀はオオスの月面戦争以外にまたやらかしたと悟った。

 

…さとりがここまで物騒なことを言うのはそれほどのことである。オオスは大人しく殴られるべきだと判断した。

 

 

「え、ちょっと待ってください!二人がかりでしかも片方が鬼の四天王とか死ぬ…」

オオスは勇儀まで乗るとは想定外過ぎたので本気で焦った。何か変なこと…して過ぎていた。

 

オオスは勇儀もそれを察したので協力していると悟った。

 

だが、オオスも一方的に殴られるのは嫌なので無駄な足掻きをしようとしたが無駄だった。

 

 

「この…恐怖の大王が!!」

さとりは頭脳派のデスクワークからは想像できない力でオオスを殴りつけた。

 

さとりは自分たちも抑止力としてカウントしろと思った。

 

自分の力を恐れている人間に妖怪を舐めるなとオオスに対してその力関係を体でもって分からせることにした。

 

想起により暴力を開花させた。さとりはオオスの最も恐れる暴力である存在をその身に宿していた。

 

 

さとりはオオスの脳内にある霊夢から問答無用で殴る解決策を学んだ。…妖怪よりも凶暴な巫女だとさとりは思った。

 

オオスからすればさとりの行為も大概である。さとりはその思考を読み取り、仕置として更に追撃してその脳内を黙らせることにした。

 

 

なお、さとりは体力が妖怪でも人間と比するくらいには少ないので、途中でキツくなって休憩を挟んで再度殴ったりしている。

 

オオスとしてはただぶん殴られるよりもかなりの時間拷問を受けていた。

 

勇儀はさとりの気が済むまで殴らせていた。ある意味で約束だからである。

 

だが、流石に途中でさとりを止めた方が良かったかなと思った。半端は嫌いなのでしっかり落とし前をつけさせたが。

 

…勇儀は鬼だが、甚振るとか拷問などの趣味はなかった。

 

 

ちなみにオオスは理由さえあれば嬉々として拷問をし始める。

 

しかし、自分がする以上は誰かにされることも仕方がないと思っていた。

 

その為、さとりの拷問も始まってからは一切文句を言わなかった。

 

 

勇儀はそれはそれでどうなのかとオオスなりの示しのつけ方に関して考えた。

 

最初は回避しようと見苦しいくらい悪足掻きをするかと思えば、いざ始まればそのままやらせていた。

 

このオオスの姿勢は果たして潔い姿勢と評するべきなのか、勇儀は鬼として悩んだ。

 

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