嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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虚構も嘘も真実も

 

オオスが地底、旧地獄へ趣いてから4日経過した。

 

 

地上にできた麓の妖怪から離反したメンバーが主体の組織『癲狂櫟林』。

 

真のトップであるオオスのいない間に発生した諸問題の解決に奔走していた。

 

紅魔館との契約内容の裏取りや麓の妖怪の有力者である人狼の長の訪問等を熟していた。

 

重要事項であるが、オオスに確認を取らずに判断して良いのか不安になるところもあったが、大体解決した。

 

…オオスの予想以上のハプニングはオオス自身の起こした玉座の爆破くらいであった。

 

 

 

人狼の長には誰か別にトップがいるのではと勘ぐられていた。

 

だが、それを表沙汰にして誰にも良いことはないのでスルーされた。

 

人狼の長は自分が来るとわかっていたのだろうと真のトップの意図を読み取った。

 

守矢神社へ中指立てる有り様から神か何かだろうと思った。…そこから先は思考を辞めた。

 

人狼の長の長年の経験から真実が誰も得をしないから回りくどい真似をしていると悟った。

 

とはいえ、自分以外の好戦的な輩が気がついたかどうか微妙であった。

 

…長は今泉影狼という群れから離れることになった同胞から感じた印象で読み取っていた。

 

 

人狼の長は他の麓の有力な妖怪では疑心暗鬼で何も伝わらないだろうと確信できた。

 

…裏の主は秘密を明かすに値するかを見定めている。

 

過激な組織名といい、その主は信仰も畏れも利用している。

 

しかし、本質は自分と同じく平穏な性質なのだろうと悟った。

 

神であろうとも無名に等しければ野良神のような扱いである。

 

それならば権力を分散した組織の方が舐められないと判断したと推理した。

 

 

実際は神に成りたくない自称善良なる一般里人枠の戯言、その我儘の面も大きかった。

 

人狼の長の考えていることは一部当たっている。

 

だが、それは結局は人狼の長にとって都合の良い真実でもあった。

 

真実を加工した職人は嘘はついていないし、それもまた事実だと言い張るだろうが。

 

 

 

他方、妖怪の山ではオオスのことを知る一部で情報の扱いに長ける者とそれ以外の大多数で反応が全然違っていた。

 

大多数は妖怪の勢力図の変換としか考えていない。

 

麓の妖怪の分派は過激そうくらいしか感じていない。

 

もはや、オオスが裏で絡んでいると直感していても公表したところで損しかなかった。

 

 

大多数が認識している麓の妖怪の分派の方が都合が良すぎた。

 

 

判断を保留していた妖怪も『癲狂櫟林』が妖怪主体で動いているのを数日で完全に把握した。

 

妖怪の組織だという事実を認めざるを得ない。4日しか、されど4日で大きく動いていた。

 

これ以上の判断の保留は自身の地位を脅かしかねない状況だった。

 

…支離滅裂なことを主張する狂人とされるか、大妖怪として采配を揮うかの二択である。

 

妖怪としてのプライドもあるが、勢力としての利益もある、どちらを選ぶかは容易だった。

 

 

 

オオスは嘘とわかっている者達に虚構を真実だと認めさせることに成功した。

 

地底へ出かけて本人不在という意味不明な行為だが、オオスが徹底的にいない状況である。

 

トップが不在であれば本来機能不全である。

 

だが、オオスとは無関係のように大事な部分を決めていった。

 

大事なことはどうするのかという場面で、合議制の組織であると外部から推測する材料はうっかりミスで判明していた。

 

オオスが采配を揮えば完璧な隠蔽ができただろうが、完璧過ぎた。

 

オオスを知らないが疑り深い者が納得できるようなミスが存在することがポイントであった。

 

 

誰しもが、自分の解釈で納得の行く勢力である『癲狂櫟林』が誕生した。

 

オオスの手が後から加わってもそれが内部からである以上はわからない。

 

後から外部により手を加えてもそれぞれの脳内にある『癲狂櫟林』という組織から推測、分析して納得する。

 

内部から不自然さをわざと出すことで完成した図式である。

 

オオス不在で組織としての在り方の固定概念が各々に定着した。

 

一度固定化された思い込みは拭えないものであり、虚構も嘘も真実となった。

 

 

嘘つきによる虚構は真実となり、その嘘を嘘だと言う者は嘘つきとなる。

 

オオスの手によらない、だが、手による組織が誕生した。

 

 

オオスが地底に滞在していた期間、そして地上への帰還までの間もオオスの持つ有情湖の利用権を巡っての交渉と思えば全てが解決した。

 

伊吹萃香が絡んできたところである。オオスは第三者、被害者として取り繕えた。

 

オオスは有情地並びに有情湖の所有権は確保しつつ、その利用権は妖怪の組織へという見せかけを完成させた。

 

どちらも事実上、オオスの手中にあることになった。それを知るのは内部の者とほんの僅かな賢者だけである。沈黙を選んだ賢者はそれを追認せざるを得なかった。

 

 

…オオスは歯向かうことを期待し反逆キャンペーンを設ける等したが、無駄であった。

 

さとりとの約束もあり、オオスは玉座に関する規定を撤廃した。

 

結果的にオオスがトップというのは公然の秘密となることが確定した。

 

百年もかければ良い後継が見つかると思っていたオオスはさとりとの約束をしなければと少し後悔した。

 

…実際は元々あった糞みたいな規定を撤廃しなくとも、玉座に座るような者は誰一人存在しない。

 

さとり目線ではこいしが仕出かす可能性を潰しただけなので、オオスの考える理想の後継者の育成はほぼ意味のない行為だった。

 

自由に動くオオスが不在でもそれなりに任せられる体制の構築という面では機能していた。

 

最初の数日の試行錯誤と玉座の爆破はそのスタートとしては大成功である。

 

…オオスは自分の作った虚構のルールで自分がほぼ永年トップに内定という形で手痛い敗北をした。

 

それは客観視の欠けたオオスならではミスであった。

 

新勢力『癲狂櫟林』設立時の最初にして最大のミスは後々のオオスに影響したが、まだ確定していないと思っているオオスは修正と評してトップをいつでも狙える組織にした。

 

力づくではなく頭脳で奪えならば、こいしも大変だろうと考えた。

 

オオスはこれならばさとりからも勇儀からも文句は出まいと無駄な足掻きをしていた。

 

…客観的に考えれば当然だが、オオスのあらゆる方面からの指摘にも言い訳できるように考え抜いた組織運営権譲渡の為の難題である。

 

それをクリアするのは、オオスの運営する組織ではまずあり得ない、邪悪で狡猾な野心家が誕生したとしても、その玉座を奪うよりも真っ当に幹部の仕事をした方が良いと匙を投げるような物になってしまっていた。

 

 

「まだ始まったばかり…今はまぁ、仕方がないが」

オオスはそう呟いて自分が不在の間に発生した様々な諸問題に関する資料を片付けていった。

 

オオス的には多少の修正はあるが、想定の範囲内である。

 

だが、新勢力としての体面を整えるとなると膨大な事務作業が発生していた。

 

オオスは責任者として追認と確認をしていくが、普通に里人を辞めた方が楽であったとオオス以外からすれば正気になるくらいには事務作業に没頭する羽目になっていた。

 

オオスはそれらの書類を全て確認する必要がないのだが、責任感から出来る範囲の全てを確認し尽くした。

 

そうしてしまうからドンドン既成事実となっていくのだが、オオスは責任感で仕事を完遂してしまっていた。

 

しばらく経過し、組織の動向が落ち着くまでそうした既成事実の積み重ねにオオスが気が付くことはなかった。気がついたときには手遅れである。

 

 

…虚構も嘘も真実も丸め込んだ男は最後はそれに巻き込まれて自滅した。

 

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