幻想郷は妖怪が主要な種族であるが、外の世界で失われ『幻想』と思われるようになった動植物も数多く存在している。
要は外の世界で絶滅した動物や絶滅危惧種が幻想郷では数多く生息していた。
例えば朱鷺が該当する。外の世界の常識では日本固有種は絶滅した。その後、中国から譲渡された朱鷺を試行錯誤で繁殖させ、少しずつ回復しているが絶滅危惧種である。
幻想とまではいかないが、昔は空を埋め尽くすほどいた鳥は今では殆ど見られない。
ところが幻想郷では朱鷺は数多く見られる。
妖怪達からすればある時から急増したような感覚はあったが特に気にしていない。
外の世界で絶滅したのではないかと悟る者は少しはいるが、特出して話題になることもない。
昔の外の世界でやたらいたし、幻想郷でもやたらいるようになった程度の考えしか無い。
故に、幻想郷に住んでいる者達にとっては朱鷺は絶滅危惧種ではなく数多く見られる鳥である。
外の世界では絶滅危惧種である朱鷺は、幻想郷では田畑を荒らす害鳥として人里で認識されている。
幻想郷では大量にいるので調達が比較的容易な身近な鳥であり、それなり以上に美味い肉である。
手軽に取れる食用肉として人妖問わず良く狩られている。何なら人里の肉屋でも安値で売られているくらいだ。
このように外と幻想郷では同じ日本文化圏のようでいて違うことが多い。
兎肉程度ならまだ地方文化差程度であるが、絶滅動物の肉が定番だったり等は外来人が幻想郷に定住を選択した際に良くある混乱である。
そして、オオスも外来人である。裏では妖怪だの神だの邪神だのと言われることもあるが。
出自は幻想郷外の人間である。そして、今はどうなのかは地獄でも審議中であるが。
オオスが人間と言い張る以上は幻想郷でオオスは人間である。
そして、自主的に反省して自らの意志で磔になっている里人はオオスが来てからは偶にいる。
オオスも周囲も異常無しとして、いつものように世間話に花を咲かせていた。
…幻想郷でもそれは無いという指摘は誰もしない。幻想郷は今日も平和で幸福だった。
「朱鷺の調理は慣れなくて…。朱鷺の妖怪が知り合いなので食べにくいところもありまして」
オオスは人里に住む奥さん達と今日の食卓について話していた。
オオスは基本的に何でも好き嫌いせず食べるが、部下の前では一応は同族を食さないようにしていた。兎肉も自宅では食べないし、魚もわかさぎ姫が来てからは控えている。
結果的にオオスの普段の食事は精進料理のようになってしまっていた。
控えるのは完全にではないし、本人の前ではしない程度だったのだが勢力ができたのでオオスの食事場は大変であった。
筋力が欲しいオオスは良質なタンパク質等を様々な手段で確保していた。
だが、勢力に部下達が来て中身も虫や魚、当たり前だが動物等の妖怪は存在するのでオオスの食事制限は増えていった。
部下たちの同族を普段はなるべく食べないように気をつけるとほぼ選択が無くなっていた。
季節や旬の食材や菓子、酒等は問題ないのが救いである。
逆に言えば華扇などはオオスの家に行けば菓子は必ずあると思われている程度には風評被害を受けていたりする。
岡崎夢美の遭難時にオオスが蕎麦を持っていった際、華扇が虚を突かれたような反応になったのもその印象が合ったからでもあった。
オオスはそういう無意識の思い込みもあらゆる人妖に対して利用しているが、華扇のような思い込みはオオスとしては結構心外であった。
オオスの妖怪の知り合いという言葉も一切気にしない幻想郷の人里のマダム達は会話を続けた。
ちなみにオオスは主婦に該当する職業が外でも幻想郷でも一番強い人種だと思っている。
「まぁ、知り合いだと思うと食べにくいかもしれないわね。あたし達は食べるけどさ」
人里の奥様方はオオスの話題に一部納得しつつも食うと断言した。ついでに笑い飛ばしている。
彼女たちの眼の前に鳥の妖怪が通り過ぎているが、安く買った朱鷺肉で鍋にすることを隠さないし、何なら自慢してすらいる。
流石、人里の主婦達であるとオオスは感心した。
冥界に死後の下見に行き、夫の世話は現世で沢山なのであの世では離れて暮らせるか等と聞き込みをしている。
地底、旧地獄に行く機会があれば彼女たちならばこれが本当の地獄めぐりとブラックジョークを言うだろう。
「まぁ、そうですよね。慣れない食文化に対する言い訳だったかもしれません。…どのように調理するか伺っても良いですか」
オオスは話題を変えることにした。
朱鷺子には悪いが、明日直接会うわけでもないので買いに行くことにした。朱鷺肉の調理法等はオオスも未知であり、興味津々であった。
オオスはタンパク質の確保に困っていた。その為に人里の奥様方に話を聞いていたが何かオオスの気にし過ぎかもしれないと自分の価値観の方を善良な奥様集団に合わせ始めた。
オオスは人間を尊重しているが、食生活においては主婦に敵う奴はいないと思っている。
なお、これだけ気を使っているように見えるオオスだが、宴会等の場ではその辺を一切自粛しない。宴会では無礼講であるとオオスは考えている。
因幡てゐや鈴仙の前で平然と兎鍋も食べるし、ミスティア・ローレライの前でもローストチキンをわざわざ調理してきた物を食べる。
喧嘩を売っているとしか思えないように何でも食べる。酒の席では無礼講である。
というか、オオスはレミリアに人間の血のスープを作ったこともある程の感性の持ち主だ。
そんなこんなでオオスの最近の食事場の悩みはまだ部下達に悟られていない。
魔法の森に生息する人喰い朝顔等、部下達や妖精等からすると異常な物を研究してまで食べている。ある意味で食を追求しているようにしか見えない。
今まで妖怪すら食べないような動植物を研究し、美味になるように調理法まで研究している。
春雪異変ではその辺りが大変役立っていたが、それはそれとして普通の食文化に合わせてほしいとも思われている。
ちなみにオオスもそうだがその辺の常識、認識のすり合わせは他の者達もしていなかった。
オオスの何が地雷かわからないからである。異常な物を普段から食べるのは気を使っているのが一番の原因であることは幽々子以外は気がついていなかった。
幽々子がオオスのそういう面を放置しているのは、新しい美味しい食材を見つけてくれるオオスの行為が楽しいからである。
オオスと語らう季節の風情も大切だが、珍味や新しい食に対して幽々子は誰よりも貪欲だった。
オオスが普通の食生活になっても気にはしないが、新しい食事への挑戦を積極的に止めたくないという乙女心である。
オオスが知っても未知の開拓という幽々子の思想に共感するし、妖怪から見てもゲテモノという存在の調理法や利用法の開発を辞めるつもりはない。
そして、主婦との会話の後日、白玉楼へ訪れたオオスは幽々子にその趣旨の発言をした。
これからも幻想郷にしかない食の研究は続けるとオオスは幽々子へ宣言した。
当然、幽々子は喜んだ。幽々子としては栄養はあるが不味い物は持ってこないだろうというのを理解していた。
オオスならばそれなり以上に美味しくて珍しい食材しか持ってこないだろうという信頼があった。
だが、
「貴様、幽々子さまになんてもの食べさせようとしている!」
白玉楼の庭師兼剣士はゲテモノを幽々子に喰わせるなと激怒した。妖夢からすればオオスのいう安全等信用できるものではなかった。
…助けられたことになるが、オオスは春雪異変の時に本気でテロる寸前だった実績があった。
妖夢はオオスから冥界壊滅破壊爆弾と詳細を教えられた際、卒倒しかけた。正直、妖夢はその仕組みは殆ど理解できないが、相当ヤバいことだけは確信できた。
しかし、
「辞めなさい。妖夢」
妖夢は幽々子に制止された。
いつもふわふわとした印象を受ける幽々子であるが今回は端的に厳しい口調であった。そんな気迫に押され、妖夢も思わず沈黙した。
話は変わるが幽々子は朱鷺肉も好きだが、焼き鳥が特に好物である。
オオスは白玉楼に滞在していた経験から当然それを知っている。
朱鷺肉は味は美味なのだが、生臭く筋もあり煮物や鍋になることが多い。
「…はい」
妖夢は沈黙から我に返り、頷いて姿勢を正した。
「…で、例の物はどうなったのかしら?」
幽々子は目を細めてオオスに尋ねた。幽々子は真剣そのものである。
オオスは真意が伝わって嬉しく思った。例の物も大事だが、その経緯を理解しているだろうと推測した。
事実、オオスが例の物を普通に調理しただけ訪れるはずがないと幽々子は知っていた。
春の変わり目であるこの季節、幻想郷において朱鷺肉は良く手に入る食材である。
「ええ…茹で、果実を用い分析し、発酵させる…。まさに試行錯誤の日々でした」
オオスはおおよそ把握し、更に研究を重ねていた。
それはまさに艱難辛苦。あらゆる知識を用いてもなお高く険しいものだった。
持ち味を損なわずに如何に引き出すか、その消すのか。…それだけを考えた当初の自分が恥ずかしいとオオスが思うような工程を経る必要があった。
「江戸時代に書かれた本草学の名著ともいえる『本朝食鑑』に記された知識。…それは幻想として、概念と化していた」
オオスは幽々子に真剣な面持ちで語っていた。幽々子も真剣そのものである。
オオスは例の物の知識を持つ人々が外でいなくなったことによる難解さを語った。
他方、
「……うん?」
第三者として話を聞いていた妖夢は何かがおかしいと思った。
オオスが試行錯誤で薬でも試したのだろうかと思ったが、幽々子に関係するのだろうかと疑問を感じた。
幽々子は亡霊であり、薬は殆ど関係ないに等しい存在である。
薬も物によっては多少は効くが妖夢が知る限り、それ以上でもそれ以下でもない。
オオスの弁舌は止まらない。今回の研究はオオスの仮定と推理により、他への干渉に成功した事例であった。
諸説あるが、錬金術は台所から生まれたという説がある。オオスは今ならばそれが真実でも納得できるだろうと判断し得る発見をしていた。
「そして、ついに答えに辿りつきました。…概念と化しているのならば逆を作れば良いのだと」
オオスはこの言葉だけで幽々子に伝わると確信していた。
幽々子はこの幻想郷において言霊に関して深い理解と風情を理解する存在である。
…幽々子はオオスの探求心と結果に感動していた。どれ程の困難か幽々子には理解できた。
オオスの行為は偉業として語り継ぐに相応しいと幽々子は確信した。
オオスがその発想に至ったのは皮肉にも唾棄する神、神霊の特性だった。
神霊は名を持つことで純粋な力を失うが、神としての力を揮うことができる。
だが、別に新しい神話を作ることで新しい特性を得ることができる。
弱点を無くすような神話をすることで元の神話があるにせよ弱点を軽減することもできるし、生まれたことで発生するので本来であれば一生変わらないはずの自己の気質を変更することすらできる。
なお、幽々子は自分の気質を弄ることができた。
亡霊なので種族的に火には弱いが、風情を純粋に楽しめるように生まれ持った特性へ干渉することができた。
オオスも同様に自分の気質へ干渉し、人の可能性を見出す術を身に着けていた。
自分が代わる代わる気質を変更し馴染ませることで諧謔し、編纂できていた。
神ではないはずの亡霊と人間はそれぞれである種の境地に達していた。
これは大妖怪である八雲紫すら抗えない、五行でいうところの生来の気質であった。
大妖怪としての差や計略等により大体の相手に優位を取っているが、相剋する属性には多少弱体化してしまう。
オオスは紫の気質は土だと考えているが、確かめたことも誰かに漏らしたこともない。
その一方で生来は水の気質であるはずの魔理沙が高い火力を発揮できるのは異質である。
オオスは魔理沙に興味を抱いていた。
魔理沙と霊夢と気が合うのは霊夢が木の気質であると推測していた。水は木を育てるという五行の原則である。
逆すれば霊夢と戦った場合、魔理沙は強化された霊夢を相手にするので多少不利になる。
魔理沙の火力を模倣するには独自要素が強すぎるが、人間の可能性の追求者だとオオスは自分の方が多少とはいえ折れる程度には評価していた。
でなければ、本来のオオスは魔理沙の泥棒や詐欺を容赦せずに取り締まる。ある程度効果があった場合などは見逃しているし、自分のいないところで発生した泥棒等も被害の声が大きく無い限りは放置している。
「木を燃やせば火を生む。水は木を育てるように。…幸いにも人に恵まれました」
オオスは部下の朱鷺子を思い出した。彼女のお陰で朱鷺という存在を理解できたのだ。
後は幻想ではなく、外の事実を尊重しつつ、幻想郷の認識を合わせるだけだった。
朱鷺は全滅はしていない、食する者も存在する。
そのような認識を外の人間であるオオスが本来ならば確実に臭みが取れる調理で考案したレシピ。
それを奥様方に本来の朱鷺肉の調理法を返礼としてオオスが教えていけば良かった。
オオスは幻想郷で妖怪を畏れる人間、その日々の食を担う主婦の存在の大きさと可能性を信じていた。
「結果、ついに生臭さという固定化された概念を晴らすことに成功しました!」
オオスは幽々子にこの偉業を告白した。
外の世界では朱鷺の肉を食すことが無くなった。
その為に『本朝食鑑』が幻想化した知識を有する書として機能していることを悟った。
オオスは朱鷺の妖怪である朱鷺子を理解することで知識の外の可能性を見出すことに成功した。
そして、
「朱鷺の肉の旨味を最大限に引き出した焼き鳥となります。…どうかご賞味を」
オオスは幽々子に保温箱に納めた焼き鳥を差し出した。絵面はふざけまくっているがオオスは至って大真面目である。
幽々子も真意をある程度汲み取れるので真面目に聞いている。幽々子の場合、美味しい焼き鳥が増えたのが一番ではある。
オオスも幽々子ならばそう思っていると悟っているので、特に気にするわけがない。
オオス的にはこれが萃香に勝てるかもしれない一手にもなった。とはいえ、余りにも可能性は低いのでまだ手が足りない。
鬼の伝承は幻想郷にすら残っていない。
後は鬼の話を聞ければ幸いであるが、もう分の悪い賭けである。そもそも会ってくれるのかオオスは心配であった。
いつも忙しいだろうが、死者の多い冬を越せばまた会えるかも程度しかない。
オオスは幽々子に早めにご賞味くださいと書かれた包み紙が見えるようにした。
ちなみに最近の幻想郷では紙の値段の低下が著しい。オオスは電子書籍普及が原因だろうと推測しているが、価格低下を有効活用する為に色々試作していた。
包み紙すらその研究の一端である。紙によってはオオス等の使う術式の効率の上昇も見込めるからでもある。
「…早速、いただくわ」
幽々子はそう言い、オオスから手渡された箱を丁寧に受け取った。
だが、
「………この阿呆!!」
妖夢は思わず叫んだ。
馬鹿馬鹿しい内容でやたら物々しい雰囲気を醸し出す二人に対してである。何も知らない妖夢から見れば何か馬鹿やっているようにしか見えない。
更に、二人とも一々説明する気がないというのも大きかった。
しかし、妖夢の罵声は馬耳東風の如く流された。
「五行くらい知っておくべきでは」
オオスは妖夢の学習意欲の無さに真顔で言いかえした。
自分と他者との相性から推測することができないとか剣士としてどうなのかとオオスは思っている。
妖夢はオオスなどよりも圧倒的な格上の剣術だが、それはそれである。
「……妖夢にはお勉強が必要ね」
幽々子もオオスに同意した。
幽々子としても妖夢が自分の剣術指南役である以上は相対する相手との相性くらいは把握するべきであると思った。
妖夢は言葉が足りなすぎる二人の理不尽に流石にキレた。
妖夢は知っている言葉が少ないので感情を言葉に出来ないからキレやすい。
オオスは幽々子とそのような会話をした。…半分くらいは当たっている。
本を読まない妖夢は言葉に出来ない感情を斬ることで解決しようとしている。
…その通りではあるのだが、妖夢からすれば理不尽の極みのような屁理屈でしかない。
この時、妖夢は余りの理不尽さに一時の家出を考えた。だが、妖夢は行き先をどこも思いつかなかった。
妖夢は行き場のない感情をオオスへ剣術指南としてボコボコにすることで解決することにした。
当然、オオスは妖夢の実力差的にボコボコにされたが、月の石等の回復用アイテムは充実していた。
オオスは余りにも怒りの感情が暴走し過ぎだと指摘した。オオスは疲れ果てている様子で殴る気力もなさそうな妖夢は放置した。
オオスとしては圧倒的力量差でも怒りで我を忘れているせいで理解し易い妖夢の攻撃を最低限のダメージで抑える訓練になっていた。
理不尽だが、妖夢の怒りを訓練として許した。
なお、妖夢側からすればかなりの屈辱であるが、オオスは妖夢を煽る意図はそこまでない。…無いわけではない。
オオスが今は何を言っても通じないだろうし、幽々子にお任せになるが次回用意することにした。
オオスは次回来る時は妖夢用の絵本を持って来ることを幽々子に約束して帰宅した。
オオスの帰宅後、妖夢は疲弊したわけでもないのにその場から動かず、己について考え込んでいた。
「…」
妖夢は我を忘れて力に身を委ねたことを恥じた。剣士として未熟そのものである。
オオスが一方的に妖夢の攻撃を受け続けたのはそのような妖夢に呆れたからだと悟っていた。
その行為よりもその意図に妖夢は屈辱を感じていた。その行為を取らせた自分の愚かさを最も恥じていた。
あの男は自分の怒りから来る衝動を、妖夢以外の他の何か、否、『誰か』に見立てていた。
妖夢は剣士として破格の才能を持つ。それ故に自分ではない誰かへ見立てたオオスを理解してしまっていた。
そして、そのものはおそらく暴力の化身のような存在なのだろうと妖夢は推察できた。
「妖夢」
幽々子はそのような妖夢を見て言葉をかけた。たとえ幽々子の言葉でも、言葉ではこの感情は晴らせないと妖夢は思っていた。
だが、
「身も心も強くなりなさい。真実を知って斬れるようになりなさい」
幽々子は妖夢に向かってそれだけ言って屋敷の方へ戻っていった。
幽々子の言葉は妖夢の師であり、祖父である魂魄妖忌の言葉と似て非なる言葉だった。
妖忌は『真実は斬って知る』と妖夢に教えていた。
オオスと強引に対峙した際、斬ってわかったことは自分を見ていないということだった。
斬って知ること、
「真実は眼では見えない、耳では聞こえない、真実は斬って知るもの」
妖夢は妖忌の言葉を復唱した。斬って確かめることでわかることは確かにあった。
だが、『真実を知って斬る』とはそもそもどういう意味か。
妖夢はオオスと幽々子の会話を馬鹿げた、どうやっても馬鹿げたものとしてしか理解出来そうにないのだが、裏に別の意図が合ったのかと思った。
五行だの何だの言っていたが、真実はおそらく違う。妖夢はそれだけは確信できた。飽くまで表面の真実である。
「…真実は眼では見えない、耳では聞こえない?」
妖夢は祖父の教えの真髄が斬る前にあるのではないかと思った。
仮にそうならどうなるのかと妖夢は考えたが、難しくて脳が沸騰したようになりまだ冷たさの残る地に伏した。
「……次はあの男にこっちを見させてから斬ろう」
妖夢はそれだけは決意して、脳が落ち着くまで伏せることにした。
そのまま妖夢は寝てしまったが、その主は従者が起きないように抱き抱え、屋敷へと運んでいった。
次会う時、妖夢に絵本を持ってきた彼はいらなかったと言うだろう。
幽々子はついクスクスと笑ってしまった。確かに朱鷺の焼き鳥は美味しかった。だが、鬼にはどうだろうと幽々子は思った。