嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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滅んだ世界の機械人

 

魔法の森を通り越した先の裏にある再思の道の奥にある木々に囲まれた場所、無縁塚と呼ばれている。

 

無縁塚はその名の通り縁者のいない者の墓地であるのだが、博麗大結界が出来てからは幻想郷に迷い込んだ外来人の墓地として機能していた。

 

結果として外来人達が迷い込む終点となり、結界の歪みとなって非常に危うい場所になっていた。

 

 

縁者のいない者達の墓地であるため、良くて簡素な石が置かれている墓地となっている。

 

妖怪たちは偶に無縁塚に入り込んでその死体や迷い込んだ外来人を襲いに来る。

 

ただ、無縁塚より途中の再思の道の方が安全なので余程がないと妖怪も訪れない。

 

無縁塚に滞在すると異界の歪みで自分の存在が曖昧になることがある。

 

歪みで冥界に迷い込んで死ぬならまだ良いが、最悪の最悪の場合は存在が消滅しかねない。

 

無縁塚が幻想郷で最も危険と言われるのはそういう面が存在するからであった。

 

 

 

当然、そんな場所にピクニック感覚で行くような人間はいない。

 

 

「中々スリリングな場所ね」

岡崎夢美は無縁塚の歪みを検知して、科学者の好奇心が疼いていた。

 

 

「ええ、様々な空間の歪み。そういう意味では探索しがいのある地と言えます」

オオスも同意した。オオスも多少不謹慎だとは思うが夢美の好奇心が理解できた。

 

 

訂正、無縁塚にピクニック感覚で、1名はデート感覚で来ている人間がいた。

 

 

「とはいえ、ここはお墓なので先に弔いだけさせて貰いますね」

オオスは夢美に少しだけ念を押して言った。

 

オオスとしては有り得た自分の同胞とも言うべき墓である。

 

今回はややノリで来たがそれはそれである。

 

 

オオスは喪服に着替えていた。魂を鎮魂する儀礼である。

 

オオスは魔法を使用して、夢美が目にする前に遺体を土に沈むように埋めていた。

 

大地を操る諏訪子のようにはいかないが、オオスも気質を合わせることで簡素な墓くらいならば出来た。

 

 

「……そういえばお線香とかもってきていなかったわ」

夢美はオオスの真剣な表情と喪服まで用意していたことに対して好奇心を何とか抑えた。

 

夢美も流石に空気を読んだ。

 

そして、お墓参りと言えば線香であると思ったが、幻想郷でどこで買うかも知らなかった。

 

 

「今回は樒を持ってきました。全部に備えていたら時間が大変ですし」

オオスはそういって樒を取り出した。3月から4月頃に花を咲かせる常緑高木である。

 

神事に使う榊に似ているが、樒は線香やご焼香の原料であるように独特の匂いがした。榊は基本的に無臭である。樒は仏前やお墓に供える植物でもある。

 

 

オオスは葬儀の入り口に飾る門樒の代わりとして樒を土に刺した。

 

オオスは農作物への祝福の呪文の応用を唱えるつもりだったが、夢美も生命の魔法は研究していたとして手伝ってくれた。

 

結果、小枝で持ってきた樒は2メートル程の大きさになった。

 

オオスは夢美の研究の犠牲となった妖精達や成美にも黙祷を捧げることにした。死んではいないが。

 

 

「樒を四方で囲むと邪気を祓う結界として機能しますが、またややこしいことになるのでここまですれば良いでしょう」

オオスは夢美に礼を言いつつ、それなりには供養したとして気持ちを切り替えた。

 

 

「何か良い物があると良いのですが」

オオスは夢美にそう言って無縁塚にて探索をして廻ることにした。

 

 

 

 

結論からいえば、オオスにとっても夢美にとっても発見はあった。

 

それが効率的かは別である。オオスは効率的に考えれば偶に寄るくらいで良いと結論づけた。

 

 

外来から入ってきた遺品や幻想入りした製品を選別する作業が大変であった。

 

オオスは自分の夢の世界に放り込めるが、流石に不要な物まで持ち帰るつもりはなかった。

 

オオスとしては今回は下見、というか夢美が不自由しているだろうとやって来ているところが大きかった。

 

 

偶に出てくる魔法のアーティファクトに夢美は喜んでいるが、オオスからすれば魔理沙の霧雨魔法店よりはマシ程度だった。

 

夢美からすれば試行錯誤の研究途中も大きいので価値はあるのだろうと理解しつつ、呪い等があったら注意していた。なお、夢美は呪いでもお構いなしに結構な頻度で回収していた。

 

 

 

魔法の品を扱うなら魔法の森の側にある香霖堂だ。

 

森近霖之助は道具の名前と用途が判る程度の能力の持ち主である。

 

だが、使い方まではわからないので殆ど自力で試行錯誤していた。

 

オオスから使い方を教えてもらう場合、相当高くなるのでオオスには聞かないのが基本である。

 

魔法の道具ならば霖之助は自力で大体わかるし、魔法使いの客もいるのでオオスに尋ねるのは大体が外の世界の機械類である。

 

 

そんな魔法のアーティファクトを売る店の主のはずの森近霖之助は魔法の品々は余り目立つようには置いていない。

 

外来のティーカップ等が主な商品である。誰でも使い方がわかるようなものである。

 

紅魔館はお得意様であり、人里の富裕層も含まれる。

 

最近だと阿求が紅茶を淹れる練習の為にティーカップを買っていたのをオオスは知っている。

 

 

だが、魔法にしても何にしても本当に霖之助的に有益な品は売りたがらない。

 

非売品にして自分で楽しんだり使ったりしている。オオスから見ても非売品の数々は無駄に洗練されたコレクションである。オオス等がそれらを売れというと霖之助は拒否する。

 

 

そのため、普段の店はガラクタ同然しかないように見える。実際、使えないならただのガラクタだらけである。

 

霖之助曰く、魔法の品を扱う店として始めたという。だが、オオスだけでなく誰もがそれに関して疑問である。

 

 

 

現在の霖之助は自分で使えもしない外の世界のコンピュータ関連の品々をメインにしている。

 

オオスは霖之助の本末転倒さを嘆いていた。霖之助はその気になれば億万長者になれるようなアーティファクトを作成できる能力を有していた。だが、面倒なので作らない。

 

基本的に幻想郷に入ってくるようなパソコン関係の機材は外では名前すら聞かない程度には古い物である。

 

オオスからすれば霖之助の行為は能力の無駄遣いであった。

 

とはいえ、霖之助本人は大真面目なので止められもしなかった。

 

オオスからすると無駄な方向で情熱はあるので困る。ある意味最も趣味人でもあるので評価はしている。

 

 

そんな香霖堂では古いパソコン類、デスクトップやサーバー等も扱っていた。

 

オオスは小さい奴、ノートパソコン等でもそれらと同等以上の能力を発揮することがあるとは指摘していた。オオスから見ても香霖堂のスペースを取り過ぎていたので言いたくもなった。

 

オオスは余りにも古い電子機器は買わないことで香霖堂の店主である森近霖之助が察するように誘導していた。

 

 

オオスは霖之助が無縁塚から持ち込み過ぎたような場合、置き場に困るだろうと交渉している。

 

ちなみにオオスは香霖堂で買って再構築したパソコンには保護術等をかけて使用する。

 

そうでもしないとすぐ動かなくなるからである。なので、オオスは何時までも買う顧客ではない。

 

オオスの保護術が完全ではない問題もイーグルラヴィの面々が来て大きく改善していた。

 

少ないながら流出した月の技術でオオスの従来のツギハギよりも向上していた。

 

 

オオスが購入しなくてももの好きは稀はいる。大型で低スペックのパソコンは依然として香霖堂に存在した。…稀過ぎるので置き場が困るのが大体のパターンである。

 

本当に置き場所に困る場合はオオスが本当に端金で購入するか捨てるかである。

 

オオスも解体して幻想郷で手に入りにくい貴金属を回収することは出来た。

 

 

余りにも面倒なので端金でも基本的には買いたくはなかったのでオオスの夢の世界に並べて保管されていた。一気に効率化して貴金属等の回収を行う予定だった。

 

だが、オオスに部下が増えた中には貴金属を選り分ける能力者もいるので要改善事項でもある。

 

 

利用法が限定的な弱い妖怪でもオオスが妖術の使い方を教わった際、利用次第では大いに活躍できる妖怪が多数いた。

 

例えば特定の場所への方角を知れるだけの能力でも状況次第、組み合わせ次第で活躍できた。

 

敵味方を巻き込む系統の能力の強い妖怪の補佐となれば戦術的な手札が増えるなどである。

 

最も、これらはオオスの広範に渡る知識と応用力、カリスマ性とも言うべき才能があってのことである。更に言えば、オオスは根本的に弱いので誰にでも公平に判断できる才能があった。

 

妖怪社会では良くも悪くも力が正義な価値観、わかりやすい能力が求められていたが人間のオオスでは思考が違う。

 

古明地さとりはオオスがボスの『癲狂櫟林』は人間が持つ悪意の力と妖怪が元来持つ未知の力が融合した組織だと評価していた。

 

敵対すると面倒極まりない悪辣さである。

 

 

萃香もオオスに示しをつけた後は放置していた。

 

組織的に敵対されれば面倒だが、オオスが個人的感情で組織を動かさないと知っているので慢心していた。

 

オオスは負けるとわかっていても挑みにかかるような人間というのは知っていたが、現在進行系で自分への報復を考えていても組織のトップとなった以上は大したことは出来ないと思っていた。

 

その証拠に書類仕事に謀殺されているのを萃香は観察していた。

 

 

なお、オオスは萃香へ個人的に報復する気は今でも満々であり、日々努力を重ねている。

 

 

萃香は毎日観察しているとオオスも気がつくので途中で辞めたが、辞めた後が本番である。

 

オオスは事務仕事で少しづつ最適化し、ジワジワと研究や対策を進めていた。

 

 

 

そんなこんなで場所を取るような物を保管している霖之助としても捨てるよりはオオスへ売った方がマシだったりする。

 

だが、苦労して手に入れた戦利品を端金で売りたくないと意地で保管していたりする。

 

霖之助の仕入れは秋が主だが、他の時も行くことはある。だが、冬に商品の仕入れに無縁塚まで行くのはまずない。

 

その為、夢美が見たのはオオスの購入後の品々であった。科学力で劣るオオスからしても低スペックも大概である。夢美からすれば論外であった。

 

 

 

「そんなわけで香霖堂で冬の間の商品の品質は余りよろしくなかったりします」

オオスは夢美に一応、霖之助のフォローをした。

 

夢美からすればそれでも納得の行かない商品ばかりだろうが、無縁塚まで来るのは危ないという思いが半分である。

 

 

「……何というか、やっぱり優しいのね」

夢美はオオスがわざわざ自分の損でも霖之助と夢美の為に言う姿勢に対してそういった。

 

先に言えよ魔理沙なら言うだろうが、オオスは夢美が香霖堂へ行ったことを後から知ったのでどうしようもなかったりする。

 

 

 

「でも、これは直接来ないと見つけられなかったと思うわ」

夢美はオオスに戦利品を見せることにした。

 

隠す気はあまりないがオオスでも気がつくか怪しい物である。霖之助が価値を見いだせるとは思わなかった。

 

なお、夢美が霖之助の能力の詳細を知らないが故の評価である。

 

オオスは霖之助なら興味本位で持ってくる可能性もあると思った。見つけられるかは別として。

 

夢美の見つけた物は科学力が明らかに異質な物だった。

 

オオスでも言われないと素で流しそうになるが、断言された上で観察すればその価値が理解できた。

 

 

「…ロボット?ドローンのようにも見えますが」

オオスは夢美が纏めておいた戦利品、その脇に置かれている3体の機械を見ていった。

 

オオスがよく観察すると『ZB2950』と書かれたプレートとゴムではない未知の金属で出来た車輪が存在していた。

 

 

「危険物を管理する為のロボットだったみたいね」

夢美は分析した結果をオオスへ伝えた。良く分からないが、元々は魔法的な産物を管理する為のロボットだったらしい。

 

人間が扱わずにロボットに任せる類のアーティファクトだったのはわかるが、その辺りの情報の記録は第三者の夢美が判断するには少なすぎた。

 

 

「22年間は担当者が改定プロトコルをその都度入れていたみたいだけど、その後は更新無しで最大300年起動していたみたい」

夢美は平行世界の産物だと確信していた。オオスから見て2世紀程先の技術が用いられていると判断できた。…車輪の金属の加工技術は核融合炉並の電力がないと不可能である。

 

 

 

「300年間更新無しで…それって担当者が亡くなってしまったとかですかね?」

オオスは驚きつつも、夢美が言うのだから真実と仮定した。

 

一台は真新しいが、他二台もそこまで老朽化していないように見えた。

 

仲間の一人が最初に壊れて、他の二台、最後の1台は何を思って時間を過ごしていたのだろうか。

 

 

「私が靈夢に上げたる~こととほぼ同じの人工知能になっているっぽいのよね」

夢美は三台に残された履歴を解析して、自分の所有していたアンドロイドを思い出した。

 

 

だが、この三体はそれ以上とも言えた。

 

仲間の死に慟哭とも言える衝動。何時までも返答がない管理者。

 

それらを無視して、自分達を縛り付ける『物』を破壊していた。

 

存在意義の破壊に等しい感情で動いていた。

 

夢美は『生』と『死』の概念が理解できず、延々と管理者に訴え続けたのを悟った。

 

恐らく科学と魔法が混在した世界のロボットである。それが偶然にも自分の定義された一線を超えていた。

 

 

「これらは私が修理するわ。…元に戻すには色々足りないから弄るけれども」

夢美はオオスへはそのようなことは伝えずに魔法と混在した世界の新種を蘇らせることにした。

 

 

オオスは一瞬だが、目の前の動作を終えた機械に魂のような物を感じた。

 

意志とでもいう何かが再起動するような予兆である。付喪神でもこうはならない。

 

オオスは無縁塚とは異なる力が働いたと推測した。

 

 

誰にもわからないが、無縁塚はオオスによって清められ、それには夢美の魔力も混じっていた。

 

漏れ出したオオスの神とも言うべき力が夢美の意志に反応した結果であった。

 

そして、オオスは無意識過ぎるのと神の力に関して未知の領域である。

 

だが、人の意志で反応しての無意識である。…ギリギリ許容できる範囲でもある。

 

 

 

「…そうですか」

オオスは夢美に無粋なことを言うのは辞めて黙っておくことにした。

 

夢美がそれほどまでに思い入れる程の過去があったのは察せた。そして、その理由を根掘り葉掘り聞くほど無粋なことはない。

 

 

恐らく幻想郷でも外の世界でもない平行世界のロボットだ。その技術を取り入れることが出来れば相当の利益が見込めた。だが、オオスでは眼の前の種族を分解しか出来そうになかった。

 

オオスには過ぎた科学の産物はその手である夢美に、専門家に任せることにした。

 

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