外の世界には、世界一の探偵がいた。
空前絶後もう二度と現れないだろう探偵だ。
それこそ事実は小説よりも奇なりと言う言葉が相応しい程多くの事件を解決した。
だが、その実情は非情なもの。悲劇で終わる事件を最低限の被害で解決して恨まれて来た。
人間は身勝手なものだ。自らが救われたとわかってもどれほど理を説いても被害があればわかりやすい『誰か』を恨まずにはいられない生き物だった。
恨みをかき消すような規格外の存在を『英雄』と呼ぶような時代はとっくに終わっていた。
それをわかっていた男は世に一切正体を現すことなく、恨まれ続けて怪しまれても事件を解決し続けた。存在しない世界規模の探偵は都市伝説の類となっていった。
恨まれた結果、裏切られ続けた男はあるときに事件を解決したという『結果』のみを再現できればそもそも事件は起きず誰も悲しまずに済む方法を考えついた。
それが結果的に男の利用価値を失わせ、破滅へと誘うものであった。
男は客観視が足りていなかった。
何よりも男はまだ少年であった。どれほど裏切られてもなお人間の可能性を信じていた。
そして、男は紫の定義する『誰からもいらない人間』として幻想郷に誘われた。
身勝手な理由で自殺した者、誰からも疎まれるような極悪人そういった分類で幻想郷にやってきた男は妖怪の餌にでもなり、死後の裁判なしに即死んで地獄へ行くはずだった。
だが、常に最適解を導き出せる男は死ななかった。
それが今はオオスと名乗る男の真実であった。
冥界から帰宅したオオスはしれっと取り返してきた春を使い、菖蒲に春を振りかけてみた。するとみるみるうちに成長した。オオスは外のまじない染みた非効率的な呪文や農業工場が馬鹿馬鹿しくなる程非常識な幻想郷の原理に苦笑いした。
オオスが自宅に転移した理由、それは端午の節句ということで菖蒲湯に入りたかったのだ。
…勿論、それはオオスが自らに言い聞かせた理由の一つでしかないが。
オオスはどこまでいっても極々普通の非力な人間の範疇をでない。努力しても一流未満。
その時々に最適解を導き出し行動することでカバーしてきたが、今回の幽々子の事例の規模ではどうにもならなかった。時間が足りない。信用が足りない。人材が足りない。
外にいた時、邪神同士をぶつけるという最適解をとったオオスですらお手上げだった。
解決だけなら簡単だが、いずれ誰かが悲しむ結果になった。
禍根を残すことなく解決するためにはオオスではどうしようもなかった。
オオスがその場では解決しても幽々子はまたやりかねない。
そのとき止められるかというと有限の時間の、人間であるオオスでは保証できない。
時間も能力も組織もないオオスは『英雄』に頼った。
霊夢に異変と認識させることが必要だった。
霊夢達の可能性に賭けたオオスは賭けには勝ったが、大いに自己嫌悪していた。
だから、風呂に入って忘れて今日は寝るのだ。そう言い聞かせオオスは湯舟に浸る。
…まだオオスは自分を客観視ができていなかった。