嘘つき探偵と幻想郷   作:kohet(旧名コヘヘ)

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不思議の国のアリス

 

オオスはストレスから最近忙しくてかまっていない人物を思い出して手紙を送ることにした。

 

レミリアの妹フランドール・スカーレット宛である。内容は見られても良い感じに仕上げていた。

 

 

宛先は以下の通りだ。

『Frandre’s Right Foot, Esq.( フランドールの右足閣下へ。 )

 Dungeon, (地下牢、)

 Near the batty Vampire (少し気の狂った(コウモリの)吸血鬼付近)』

手紙の本文は絵本となっており、タイトルは『The Great Panjandrum Himself』だ。

 

日本語訳すれば『偉大なるパンジャンドラムその人自身』となる。

 

1775年サミュエル・フートの書いた18行詩の絵本版だ。

 

石鹸がないので唐突に男が死んだり、キャベツの葉っぱを切り取りアップルパイを作った等ありふれた内容である。

 

 

 

何故、オオスはこんなことをしているのか。

 

オオスは守矢神社の八坂神奈子に呼ばれたので渋々行くことにした。

 

なお、オオスは神奈子の名前を出して入れるように交渉した。

 

妖怪の山は天狗を始めとした妖怪達の縄張りである。

 

神の名前を出してきた相手に関する問い合わせから何やらの調整でせわしなく動いていた。

 

 

そんな中で善良なる一般里人のオオスは現在、守矢神社へ移送を待っていた。

 

要するに暇だった。護送という形で籠みたいなのに入れられていた。

 

何故ここまで警戒されるのだろうとオオスは他人事のように考えている。

 

 

その理由はオオスが素直に守矢神社へ来るとは誰も思わなかったからである。

 

一応、神奈子は天狗にも人里のオオスという人間が来るかも知れないと伝えていた。

 

早苗づてでオオスへ来るように伝えていたが、誰もがオオスならば勝手に来て勝手に帰っていくと思い込んでいた。

 

オオスは基本的には公的な手段を取る男である。無理な場合は不法侵入したりするが、今回は守矢神社の神奈子に呼びつけられていた。

 

善良なる里人としては公的な手続きを以て妖怪の山の頂上付近の守矢神社へ行こうとしていた。

 

 

オオスはどうせ連れて行かれるのであればと適当に電波撒き散らしていた。

 

ついでに『癲狂櫟林』の裏ボスとして手紙一つでどう反応するか見定めていた。

 

 

「……手紙は確かに。受け取りましたのでしばらくお待ちを」

白狼天狗の犬走椛はオオスの手紙を受け取って粗相のないように振る舞った。

 

前回、色々と仕出かした野郎だが、椛以外の他の面々は知らない。

 

 

 

何故人間を妖怪の山に入れるのかも内心文句のある者も多い。

 

他の妖怪の勢力の代表等ならまだしもたかが人間一人にここまで警戒と配慮をする意味が不明だった。

 

なお、その人間?は『癲狂櫟林』の公然の秘密であるボスである。

 

彼らが選ばれたのは間違っていなかった。それは椛も含めて誰も知らないでいた。

 

下級身分である白狼天狗の中でも絶対に公私混同はしない面々で護送チームは構成されていた。

 

 

上役に一人、烏天狗の姫海棠はたてが総責任者となっている。

 

オオスに詳しい射命丸文は今回の件から外されており、現在他の仕事を命じられていた。

 

ちなみにこの人事は射命丸文の直属の上司ではない大天狗の飯綱丸龍からの進言だった。

 

龍としては一番上の天魔の耳に入らないようにしていたが、何故か無理だった。

 

身内にスパイ…というのはおかしいが、天魔の耳に入るような妖怪がいると判断した龍は天魔の怒りを買わない範囲で調べていた。

 

龍は犬走椛がオオスを天魔のところに連れてきた詳細は他の大天狗の致命的なミスかつ天魔が咎めなかったので知らない。天狗の縦社会は絶妙な政争で成り立っている側面があった。

 

 

「面倒臭いと思いませんか?姫海棠さん」

オオスは何か射命丸文とは違う意味で他の天狗とは違う烏天狗に話しかけた。

 

他の烏天狗ならばプライド等から眼の前の男を無視するか空気を読むように叱責するかしただろう。

 

実際、椛も大天狗である龍の名で何かあれば止めるつもりでいた。

 

 

だが、

「そうよねー。面倒よねー」

はたてはオオスに同意した。何故ここまで時間がかかるのかと愚痴を溢していた。

 

はたては文の友人でもあるのでオオスのことを間接的に知っていた。

 

文が数年前に劇物みたいな資料を上層部に提出したことがあった。

 

目の前の華奢な美少女と見間違えそうになる容姿の男が原因なのかとも考えていた。

 

 

「花菓子念報、購読していますよ。見出しの三行で纏めてあったり、読みやすいですよね」

オオスははたての新聞である花菓子念報について褒めた。

 

 

 

花菓子念報はオオスが妖怪の山その他の情報源として文々。新聞以外にも購読している新聞の一つである。

 

 

なお、その件は山の妖怪達には当然バレていない。オオスは人里の里人である。

 

とはいえ、オオスとしてはこれくらい明かしても問題ないので平気で情報として出す。

 

 

「え、私の新聞も読んでいるの!?」

はたては自分の新聞の購読者に驚きと親近感をもって近づいた。

 

はたては仕事ではあるが、責任者としてずっと待機しているような状態なので暇だった。

 

オオスははたての新聞を正確な情報を心がけていると評価し、今まで読んだ中で記憶に残っていたのを幾つか話したりしていた。

 

 

 

オオスははたての能力は把握していない。

 

新聞の内容からおおよその推測はしているし、対策もしているので問題はない。

 

はたての新聞は写真から新聞記事を作っているのかのような内容ではあると思っている。

 

これだけで推測は可能であり、対策もできた。ガチガチにやると目立つので敢えて調べない選択をしているだけである。なお、はたて自身から能力が聞けるなら聞く。

 

 

はたてに関しては写真だけでなく取材をしてなるべく裏取りしている姿勢を評価していた。

 

天狗の間で一番人気の『鞍馬諧報』は無駄に情報量だけ多くて内容も薄い三流カストリ紙とオオスは酷評しているが、今回は天狗の前なので空気を読んで言わないでいた。

 

 

オオスは姫海棠はたてと初めて会うがそれなりに好感を持って購読している。

 

他方で、幻想郷の情報媒体にしてはネットニュースのような内容だと思っている。

 

読みやすいのだが、文のように考察の余地や知識としての価値は薄いのが減点だ。

 

 

 

オオスは『癲狂櫟林』の部下達にははたての花菓子念報を読むのを勧めている。

 

文のように主観や推理が入っていない分、正確性は上だからである。

 

 

オオスは外交担当部署の面々には偶に文の新聞を使ってその読解力をテストしている。

 

外交担当の幹部である吾妻には花菓子念報も含めた複数の情報媒体に目を通すように言っている。

 

外交部門以外はそこまで求めていないが、幹部クラスは1名を除いて全員読み込んでいた。

 

戦闘部門の幹部は新聞どころか文字すら怪しいのもあり、流言に惑わされる可能性もあるので無理しないように言っている。

 

戦闘部門は魔理沙の再侵入時に追い返したMVPだった。

 

 

幹部ではない面々では朱鷺子やヲロシアが外交部門。流通部門はわかさぎ姫、偵察部隊が影狼だった。

 

部署が違えど影狼とわかさぎ姫が大体いつも一緒だったりもする。

 

配属先は適正で判断しているが、部署の移動や応援などは明文化されている。

 

 

オオスは最終的には他の部署で得た知見を活かせるようにしたいと思っている。

 

しかし、何分妖怪なので個性の域を超えている面もあり地味に難しい。

 

オオスが不眠不休で無駄に事務仕事をしていた時期もあったが、何とか活かせないか試行錯誤した時期でもあった。種族によって価値基準が違う。

 

まだ設立して一年経過していない組織である『癲狂櫟林』では不可能と結論づけた。

 

妖怪達では気が付きにくい適正を加味した評価基準の作成はオオスによって一時中断している。

 

文官適正のある者が少ないので簡素化した物でデータを蓄積し、時間経過で再開するつもりである。

 

現在はオオスの初期案の評価基準に幾つかの意見が反映した物を運用している。

 

流石のオオスも一年経っていない状態で、自己申告である妖怪達に適応可能な書面の作成は無理だった。

 

誰もやっていない状況でほぼ1から作っているオオスは現段階でも末恐ろしいことを成し遂げていた。

 

 

天狗社会は外の世界の人類よりも高度だが、他種族含めた具体的な組織体系とその事務書類の作成というのは数千年の歴史のノウハウを蓄積したものだった。

 

千年前ならばまだ鬼が仕切っていたのでそれに合わせて簡素化できた。

 

だが、現在はそうした上の存在の鬼もいなくなった。天魔が必死になって千年かけて築いた組織体系である。

 

今は大天狗による分業体制である。本来の天狗とはかけ離れていないかと天魔は悩んでいたが、以前にオオスが外に連れ出した時に吹っ切れており、悩みはそれなりに落ち着いていた。

 

 

これを為せるのはオオスがトップであることに誰も異議がないからである。

 

またその実績でトップを交代できなくなるという部分に関して、オオスは天魔と共通する悩みとなる。それはまた別の話だ。

 

とはいえ、オオスは好き勝手する組織体制を構築できたので天魔のような苦悩はない。

 

オオスは表向き第三者という立ち位置で組織を構築したので、霊夢に勝手に喧嘩を売って負けても問題ないし、苛ついたら神だろうが喧嘩を売る。

 

組織の長としての苦悩、天魔のような嘆きは一切ない。

 

オオスにとって苦労とはしても後の為であり、苦労の為に苦労をするような人間ではなかった。

 

…客観視が足りないので人妖関係が非常に面倒臭いことになっていることに気が付かない。

 

 

 

そんなこんなで話をはたてとしていたオオスはネットニュースという記事形態を説明していた。

 

 

「要素を纏めるのにも読む側が取捨選択してしまう点が難点ですね」

オオスはネットニュースの情報媒体としての欠点を指摘した。

 

 

「と、いうとどんなところ?」

はたてはオオスと会話が弾んでいた。

 

 

大天狗の飯綱丸龍はオオスが他所へ連絡するようなことがあればそれを何とかして止めるかでなければ中身を検閲するとの命令があった。

 

はたては一応、こうして話すことで時間を稼ぐ仕事をしていた。話していて気がついたが、オオスにはそんなことはとっくに看破されていると悟っていた。

 

なので、上司が何の意味もない対策を講じている間、時間になったという連絡が来るまで普通に会話を楽しんでいた。オオスは話題が豊富なので尽きない。

 

はたては文の代わりに新聞を届けようかと考えていた。文がいたらこうなるから絶対会わせたくなかったと叫ぶこと間違いない。

 

 

犬走椛は何度も妖怪の山に不法侵入を繰り返していたオオスを知っていた。それも加味して大天狗の龍から指名されていた。

 

そして、椛は天狗社会の頂点である天魔から客人に粗相のないようにと婉曲に伝えられていたので離れられない。

 

白狼天狗の同胞に合図を出し、龍のところへ持っていくように指示を出していた。

 

大天狗の龍は一番知りたい天魔との直通連絡人である椛に重要任務を託していた。

 

オオスは天狗の縦社会と天魔の位置づけを知っている。龍の意図も大体看破していた。

 

なので、時間だけが無駄になるとも知っている。

 

何なら手紙の内容は毒電波みたいなものだ。フランドールに伝わりそうな題材を選んで書いている絵本である。

 

オオスは誰とも知らない天狗の上役はややこしいことしているなぁと思っていた。椛越しで天魔に手紙をこっそり渡しながら考えていた。

 

この場合の椛は龍よりも上位の天魔の命令に従っている。

 

姫海棠はたてが表向きの責任者であり、椛は大天狗龍の真意は理解する必要がなく生真面目に仕事を真っ当していた。

 

 

なお、英文を無理やり訳した烏天狗は内容の支離滅裂さに混乱して頭を強打した。

 

頑丈な妖怪なので頭をぶつけた程度では問題なく無事だった。

 

精神攻撃の類かと龍は勘違いして更に詳しく調べさせた。

 

結果、何の異常がないことが判明するまで無駄に時間を浪費した。

 

当然、オオスを疑って掛かったことになるので責任者の龍は地味に肩身が狭くなった。

 

 

オオスは無駄な時間経過から有能な誰かが自分の適当に書いた馬鹿みたいなトラップに引っかかったと思った。

 

これ以上、無駄にオオスを疑うような反骨心の高い上役でないことを期待していた。

 

 

なお、冒頭の手紙に関してフランドールから『ただのトランプのくせに!』という洒落の聞いた返事がオオスへ届いた。

 

オオスは纏めていないバラバラのトランプを封書して送付した。その意図についてレミリアは意味不明で疑問符を浮かべていた。

 

パチュリーは無駄に知性を感じさせる狂人同士のやり取りに苦笑した。

 

パチュリーは『不思議の国のアリス』をレミリアに渡した。読めばオオスと妹の支離滅裂なやりとりがどういう意図か大体わかる。

 

レミリアはオオスのように頭がおかしくなる不安を抱えながらもその昔話を読むことにした。

 

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