オオスは『癲狂櫟林』の会議に参加していた。名目上は空の玉座に座って聞いている。
異変の調査も大切だが、すぐに起きるわけでもない。
日常を疎かにしてはいけないとオオスは考えている。
紙芝居屋のついでに勢力のトップでもあるオオスはバレない範囲で参加していた。
なお、必ず参加するわけではないのでオオスが来る時の面々は地味に緊張していた。
オオスは報告書を後から確認するが、抜き打ちのように現場を見に来ていた。
会議が無事終了した。いつもより疲弊しているが、オオスの無茶振りが原因である。
オオスが無茶苦茶言う。皆でどうにかしようと話し合う。
無茶振りを妥当なところに落とし込んだら、オオスがそれを添削してくる。
自分から無茶振りしておいて、現場で実践できるかとか無理でないかと質問してくる。
会議に参加する幹部が現場を把握することを疎かにしているとツッコまれる。
何回か経験した面々はオオスが直接指揮を取れば無理難題でも解決すると悟っていた。
だが、表向き合議制の組織なので突然そのように統率が取れるのはおかしい。
故に失敗しても良い会議で無茶振りを対応するのを見極めていると理解した。
要は味方内でもブラフを仕込んでいる。幹部の面々はおおよそ察していた。
だが、オオスも無茶振りをする相手は選んでいる。業務外のツッコミはあまりしない。
戦闘部門の幹部に至っては勝てそうかとか具体的にどうやって勝つ等と聞いてくる。
他の幹部とは違い学がないというコンプレックスを抱いていた彼女はオオスに尋ねていた。
なお、戦闘部門の幹部はオオスが拾ってきた白い翼を持つ悪魔である。
冬、博麗神社の裏山で行き倒れていた。
彼女はほぼ記憶を失っていた。唯一覚えているのは二人で一つの姉であるらしい。
オオスが幾ら調べても良く分からない悪魔だった。大物なのは間違いない。オオスは彼女の妹を捜索中である。
仮の名として『夢幻』と呼んでいる。夢幻曰く、多分本名と掠っているらしい。
規格外としか言えない強さを有しており、発狂すれば更に強さが増す。
オオスは相性により勝てる。だが、圧倒的な力を有する存在であり発狂を封じられている。
発狂さえしなければ、まだ弾幕ごっこが不慣れなため、複数の幹部の連携で倒せなくはない。
オオスが幻想郷弾幕花火大会等という事を考えない理由の一人である。スペルカードで制限かけても危ない。
夢幻はほぼ記憶を喪失している。言葉は通じるが、自動翻訳されているような感覚である。
オオスがつきっきりで日本語のひらがな・カタカナは教えていた。
夢幻は学がないというが、忘れているだけなのではとオオスは思っていたが素で怪しいところもあった。
滅茶苦茶強いのでまともに夢幻の相手にする場合、複数で挑まなければならない。
それでも負けると相手が強すぎると本気で泣く。
魔理沙が『癲狂櫟林』に突撃した際、疲弊していたのもあった。
夢幻を見た瞬間にその尋常ではない強さを察して即座に撤退した。山の妖怪達も何かヤバいのがいると戦慄した。
八雲紫が何も言わないのでオオスは幻想郷在住だと認識しているが、実は紫も知らないでいた。
オオスに懐いているので引き離すと面倒臭いので放置している。
そんな夢幻が会議後、オオスに話しかけてきた。
他幹部とも仲が良いが組織に所属しているのはオオスがトップだからである。
オオスは好き勝手にやっているが、夢幻は何故かトップにいると面倒になるよなと共感できた。
「よくわかんないけどもっと勉強した方が良いのかしら?」
夢幻はオオスに尋ねていた。会議で自分だけついていけていないような気がする。
「強さが全てではないが、まず手持ちの強みを活かせるようになりなさい」
オオスは子どもに語って聞かせるように言った。なお、夢幻の方が大きいし強い。
「全体を見通すような大きなことを学ぶよりも身近な事が出来るようにした方が良い」
オオスは夢幻の努力する姿勢を認めつつも焦らないように伝えた。
スペルカードが不慣れであるとオオスは暗に言った。
夢幻は弾幕ごっこではオオスが相手にならない程度には滅茶苦茶強い。
「優れた理想や思想よりも具体的な実践の習得が先です。口先だけ達者で何も出来やしない」
オオスは自分を卑下して言った。事実である。
「とはいえ、力だけで何とかなるわけではない。騙されてしまっては元も子もない」
オオスは夢幻の心配を認めた。実際、強すぎるので他に目が行くのもわかる。
本気の夢幻ならばオオスは相性のみで封殺できるが、現在の状態では普通に負ける。
「…まぁ、絵本の類から初めると良いでしょうか。馬鹿にしているわけではなく」
オオスは夢幻に手持ちの絵本を差し出した。紙芝居を読みやすくしたものである。
子供向けを更に子ども向けにしたものだった。
「皆は何か別なの読んでいるのだけど」
夢幻はオオスに他の幹部は新聞を読んでいることを伝えた。なお、夢幻は漢字が読めない。
「いきなり同じようにしても生活が疎かになれば意味がない」
オオスは夢幻に言いくるめた。内容を朗読してもらえれば理解できるだろうが手間である。
かといってオオスがあまり依怙贔屓しても良くないと思っていた。
「私よりも長生きなんだから。絵本等で共感できるところから取っ掛かりを見つけた方が良いでしょう」
オオスは夢幻にそう言った。記憶を取り戻す意味でも勧めていた。
忘れてもなお半身という妹を覚えていないのはオオスとしては悲しいと思った。
「じゃあ、読み聞かせしてくれないかしら?今、外にいる子達を含めて」
夢幻はオオスに絵本を読めと駄々をこねた。周囲の幹部は戦々恐々とした。
他の面々はオオスは今忙しいと察していた。夢幻の我儘は理不尽にもキレかねない。
「……まぁ、今日は大丈夫ですし、良いですよ」
オオスはガチで忙しいが、夢幻の言葉に同意した。
夢幻の言うようなことはともかく保護下にある部下達に少し会っていないのを気にしていた。
オオスは徒に策謀を巡らせるより周囲に目を向けるべきと夢幻に言ったばかりだった。
それを行動で示すことにした。他意はないが、その後のオオスは夢幻へ詰め込み教育を施した。
比那名居天子は何かヤバそうなのとのんびりしているオオスを見て異変に気づいていないと安堵した。
それと同時にイチャイチャしやがってとイラッとした。
ここまで自分が考えているのに無神経だと天子は横暴、理不尽なことを考えていた。