オオスは紙芝居の休みの日、『癲狂櫟林』の面々を集めた場で適当な話をしていた。
オオスは好き勝手やるが、組織としての形態をとっている以上は言っておく感じである。
オオスは夏の暑さを感じながら気象が乱れてきたのを察していた。
気づくものは出てくるだろう、だが八雲紫からの連絡はない。
オオスは自己の立場を俯瞰して考えていた。割りと真面目なお話である。
今回、オオスは『癲狂櫟林』の全員をわざわざ集めていた。
話はすぐ終わるので防衛等はイーグルラヴィの面々に任せている。
円卓に座る幹部を始め、集まった面々は真剣な面持ちだった。
オオスとしてはそこまで気合を入れなくても良いと思っているが、口には出さない。
「さて、当たり前ですが幻想郷において『癲狂櫟林』は歴史や伝統等ない組織です」
オオスは前提を話す。守矢神社を起点とする騒動に巻き込まれたのが大半だ。
オオスは行き場の無い行き倒れ達に居場所と仕事を与えた程度である。
そこで勝手に生まれた宗教染みたことは表向き辞めさせている。
オオスは聞きたくないので実態を把握していない。
宗教的組織は纏めやすい。その性質によっては弱点もある。
オオスは外でそれを逆手にとって内紛を起こしたこともあるので大変詳しい。
オオスは信仰の自由を掲げているのでまだ存続しているのだろうなとは思っている。
実際は更に強化しているが、オオスには秘密である。
オオスが表向き第三者で裏で支配者やっているという自由を得た反動で凄い事になっていた。
オオスの想定以上の新興宗教である。オオスがその事実を知ったら3日は寝込む。
「そんな組織ですが、最大の問題は組織として自らを維持することにあります」
オオスは言葉を続ける。正直、記憶喪失の夢幻とかが居なくなる可能性が高い面々がいる。
正直、基本的に妖怪は纏まらない存在だと認識している。
オオスの懸念は恩義を無視する人間視点では正しかった。
普通の飢餓ならば無視する妖怪がいたかも知れない。
だが、守矢神社と山の妖怪に追いやられたという意識があり、宗教的団結も含まれている。
「あらゆる組織は他の組織との境界をはっきりと区別していることが必要です」
オオスは組織の規範や規則は作ったが、大切な意識共有をしておきたかった。
ここは外部の第三者では出来ないので言葉に出しておく必要があった。
「正直、『癲狂櫟林』ではそこがはっきりしていませんでした」
オオスはそう言って周囲の反応を見た。
影狼は人狼の長に気さくに話していたのを思い出した。
わかさぎ姫も草の根妖怪ネットワークの繋がりは維持していた。
その他の面々も思い当たる節があるので沈黙した。
「言っておいてなんですが、別に責めているわけではないです。個人の交友は寧ろ好ましい」
オオスはこれまでの交友関係を無にしろと言うつもりはないので一部訂正した。
「人間と妖怪は敵対という面さえ守っていれば最悪問題ないです。後、私が所属しているのも」
オオスは妖怪の組織である『癲狂櫟林』は幻想郷での規則を守れと断言した。
ついでに善良な里人がトップやっているとは言うなよと警告した。
「他の妖怪組織との違いは私が所有する土地であるので人間と取引していると示されていること」
オオスは暗に相手が自分だからといってへりくだるとかするなと言い切った。
「それ以外は自由にしてくれて問題ありません。人里で暴れるとか規則違反しなければ」
オオスは妖怪達に好きにしろと言い切った。その責任は自分が取るとも言っている。
もちろん、規則違反や人里を襲うとかは事前に再三言っているので論外である。
善良なる里人とか言っている人間オオスが極論人間襲っても良いという。
幾人か絶句しているが、後でフォローが必要だと上役である幹部は悟った。
オオスは最悪やるかやらないか見極めていたが、この様子だと問題ないと結論づけた。
「組織は環境から課されるいくつもの制約に適応しなければならない。そのため、いつかは存続に関わるような問題に直面するでしょう」
オオスは話を纏めることにした。飽くまで今回のは確認である。
皆心の奥底ではわかっていたことだとオオスは見抜いていた。
オオスが人間なので躊躇し過ぎである。怪しまれはしていないが、長期間放置もできない。
天人が何か仕出かした後、連動して何か起きやしないか不安なので今のうちに言っておいただけである。
「他の組織は幻想郷の勢力争いなど小賢しいことをしていますが、私達は自由に楽しく生きましょう」
オオスは糞みたいな政争にウンザリしている。
そして、ここにいる面々の大半も同じ感情を多かれ少なかれ持っている妖怪達であると知っていた。
だが、オオスはそれだと覇気のない組織にならないかと不安になった。
「…負けたくないとかであれば政争も良し、何なら地位も私の席も楽しんで奪いましょう!」
オオスはそう言って話を終えた。満面の笑みの理由は最後の自分の席を奪えである。
最後のは大真面目である。当然だが、奪おうとか思っている奴はいない。
元々、自由に楽しく秘密結社をやっている面々はオオスの言葉に歓声を挙げた。
聞くに聞けない事を言葉にしてくれたという安心。
それもあるが、カリスマ性のあるトップが自分達を見守っている。
宗教的カリスマも合わさり『癲狂櫟林』のトップの地位は盤石になった。
ある意味オオスは盛大に失敗したが、これで何の憂いなく好き勝手やれるのは成功していた。
オオスは予想と反応がズレていることに疑念を抱きつつ、歪な組織が完全に纏まったと確信した。